【今週の紙面の主なニュース】(2025年11月15日号)

(1)空港で欠航続く 日航と全日空は通常運航

(2)ロケッツ100周年 NY冬の風物詩

(3)現代美術家 松山智一のスタジオから芽吹く 7人のグループ展

(4)三島由紀夫論 平野啓一郎氏が討論

(5)週刊やさしいにほんご生活

(6)「日本の防衛力を抜本的に強化」 米空母で高市首相が決意表明

(7)JAMSNETが第12回世界大会NYで開催

(8)DEEPなQUEENS  ディトマース・スタインウェイ

(9)チームで作り出す「かっこよさ」 佐藤栞さん

(10)品川哲山作品展 ギャラリー・マックスNYで

空港で欠航続く 日航と全日空は通常運航

 11月10日で40日目を迎え史上最長となった連邦政府の閉鎖が続く中、ニューヨーク市の主要空港で混乱が拡大している。連邦航空局(FAA)の職員約6割が無給休職となり、航空管制や安全点検業務が縮小された結果、運航便数の削減や検査遅延が相次いでいる。10日だけでラガーディア、JFK、ニューアークの3空港で合わせて250便以上が欠航し、搭乗カウンター前に長蛇の列ができ、旅行者からは「検査が遅く振替便も取れない」と不満の声が上がった。全米ではこの日だけで約2700便が欠航した。日本と米国主要都市を結ぶ路線で運航している日本航空、全日空は共に11日現在通常運航を維持しており、利用客に混乱は出ていない。

 日本航空米州広報室によると、同社の10日現在の国際線は通常運航を予定しているが、利用客には出発前に最新の運航状況を確認するよう案内を出している。特にコードシェア便を含む他社運航便の予約を持っている利用者には、事前に最新の運航状況について、各運航会社のホームページを確認するよう呼びかけている。

 全日空は、ANA米州広報室によると米国と日本を結ぶフライトスケジュールに影響はなく、減便や欠航も出ていないが、乗り継ぎ便利用者は、ウェブサイトで最新の運航状況を運航航空会社に確認するよう呼びかけている。

 航空各社は振替・返金対応に追われる一方、パイロットや整備士にも欠員が生じ、混乱が長期化している。FAAは「安全確保を最優先とする」と説明するが、運航制限により出張や物流への影響も拡大。特に感謝祭を控えたこの時期の混乱は経済活動に深刻な打撃を与えている。ニューヨーク市経済開発公社は「空港関連産業の停止が1週間続けば、市経済への損失は少なくとも40億ドルに達する」と試算した。

連邦政府の閉鎖解除早ければ今週中にも

空の便の乱れは回復に時間

 一方、ワシントンでは閉鎖終結に向けた動きが進んだ。上院は10日夜、政府を暫定的に再開させるためのつなぎ予算案を60対40で可決。法案は共和党議員のほか、民主党議員8人が賛成した。政府機関の活動を2026年1月末まで延長し、未払いとなっている連邦職員給与を補償する内容。法案は下院審議に送られ、成立すれば40日を超えた政府閉鎖はようやく終止符を打つ見通しだ。ただし、医療保険補助(オバマケア関連税控除)の扱いなどをめぐって民主・共和両党の対立は残ったままだ。政治的膠着が続く中、ニューヨークの空の玄関口は依然として混乱が続いている。

空港へ大混乱

JFK、ラガーディア、ニューアーク空港

1日で欠航250便

 米国政府機関閉鎖による離発着への影響について日本航空と全日空の米国の広報室は本紙の取材に10日現在次のように答えている。

 日本航空は「米国における政府機関の閉鎖に伴い、現地時間11月7日(金)から米国内空港を離発着する便の一部で遅延等が発生する可能性がございます。現時点では、弊社国際線は通常運航を予定しておりますが、ご出発前に最新の運航状況をご確認くださいますようお願い申し上げます。発着案内は、ご搭乗前々日(国際線)からご利用いただけます。運航状況のご案内(国際線)については弊社とのコードシェア便を含む他社運航便のご予約をお持ちのお客さまは、事前に最新の運航状況について、各運航会社のホームページをご確認いただきますようお願い申し上げます。皆さまのご理解ご協力のほどよろしくお願い申し上げます」。(原文まま)。

 全日空は「ANAの米国と日本を結ぶフライトスケジュールに影響はなく、減便や欠航もありません。また、弊社ウェブサイトにはお客様へ向けて、下記の文言が掲載されています:『米国連邦政府機関封鎖の影響により米国内離発着の一部の航空会社の便に、遅延や欠航など運航への影響が発生する可能性がございます。現在のところ、ANA運航便は平常どおり運航していますが、お乗り継ぎ便をご利用のお客様は、最新の運航状況を運航航空会社にご確認ください』」。(原文まま)。

早めに空港へ

出発前に予定便の当日確認も

 連邦政府の閉鎖が続く中、全米の空の便に大きな影響が出ている(1面に記事)。今週末にかけて、主要空港では欠航や遅延が相次ぎ、航空会社各社は「感謝祭前のさらなる混乱」に備えている。

 航空データ会社シリウムによると、連邦航空局(FAA)が主要40空港に対し4%の減便を指示した金曜日から日曜日の3日間で、国内線約5000便がキャンセルされた。日曜日には全体の1割が欠航し、今年4番目に多い規模となった。10日だけでラガーディア、JFK、ニューアークの3空港で合わせて250便以上が欠航し、搭乗カウンター前に長蛇の列ができ、旅行者からは「検査が遅く振替便も取れない」と不満の声が上がった。全米ではこの日だけで約2700便が欠航した。FAAは1か月以上無給で勤務を続けている航空管制官の負担軽減を理由に挙げており、週末までに削減率を10%まで引き上げる見通しだという。

 一方、政府閉鎖の打開に向け、民主党の上院議員8人が党方針に反して合意案を支持。合意が成立すれば、長期化する閉鎖がようやく終結に向かう可能性も出てきた。航空業界はこの動きを歓迎している。

 週末の欠航はアメリカン、デルタ、ユナイテッドの3大航空会社に集中。各社とも全体の8〜11%の便を取りやめた。ニューアーク空港では18%、ラガーディア空港とアトランタ空港でも15%前後が欠航となった。

 遅延も広範囲に及び、日曜日は運航便の3分の1に30分以上の遅れが出たが、月曜正午には全体の85%が定刻運航に戻り、混乱はやや落ち着きを見せている。

 トランプ大統領はSNS上で「出勤しない管制官は減給だ」と発言し、波紋を広げている。一方で、閉鎖中も勤務を続けた職員には1万ドルのボーナスを推奨すると投稿した。感謝祭の旅行シーズンを目前に、空の混乱がどこまで収まるかが注目される。

ロケッツ100周年 NY冬の風物詩

ラジオシティーミュージックホールで開幕


 ニューヨークの冬の風物詩として知られる、ホリデーシーズン限定のダンスショー「クリスマス・スペクタキュラー」が6日から、ラジオシティーミュージックホール(6番街50丁目)でスタートした=写真・三浦良一=。世界的に有名なダンスカンパニー「ザ・ロケッツ」が息のあったラインダンスのほか、トナカイ、サンタクロース、おもちゃの兵隊などの衣装で90分のパフォーマンスを披露する伝統的なエンターテインメント。煌びやかな衣装と舞台セットで子供から大人まで楽しめる。今年はロケッツにとって100周年目の記念すべき年となる。日によって1日2〜5回上演、感謝祭の日も含め、来年1月5日まで公演される。チケット・詳細は公式サイトhttps://www.rockettes.com/christmas/

現代美術家 松山智一のスタジオから芽吹く 7人のグループ展

Sprouting in GreenPoint

 インテリアデザイン、コンサルティング、コーディネーションのトータルサービスをグローバルに展開する株式会社GARDE(本社:東京都港区、代表取締役社長:室賢治)は、20日(木)から12月20日(土)まで、同社が手掛けるアートギャラリーGOCA by Garde(西23丁目515番地)にて、グループ展「Sprouting in GreenPoint」を開催する。

 同展では、ニューヨークを拠点に世界的に活躍する現代美術家 松山智一氏が主宰する「松山スタジオ」にて研鑽を積んだ7人のアーティストによる作品を展示する。彼らの作品を通じ、松山スタジオが育んだ創造的エネルギーと、瑞々しい新たな感性が産み出す多様な表現を紹介する。参加アーティストは、藤本まり子、金和司、小野原和紀、川植隆一郎、雨宮ホザナ栄輝、グノテール、福田桂子。オープニングレセプションは20日(木)午後6時から9時まで。入場無料。開廊時間は火〜日曜の午前10時から午後6時まで。月曜休廊。問い合わせは電話646・260・1548まで。詳細は公式サイトhttps://www.goca.gallery/を参照する。

三島由紀夫論 平野啓一郎氏が討論

JSでスーザン・J・ネイピア氏と

 ジャパン・ソサエティー(JS)で6日夕、「三島由紀夫・生誕100周年シリーズ」の関連イベントの第2弾として「三島の残したもの:平野啓一郎とスーザン・J・ネイピアによる対談」が開催された。芥川賞作家の平野氏は、23年に『三島由紀夫論』(新潮社)を出版。23年を費やした672ページの大作は文芸批評として異例のヒットとなった。

(写真上)左:1969年の三島由紀夫と東大全共闘の討論会について語るネイピア教授。右:今年の夏からニューヨーカーになった平野氏

対談するネイピア教授(左)と平野啓一郎氏(右)

 イベント冒頭では、タフツ大学教授のネイピア氏が旭日中綬章を授与されることが発表され、会場から祝福の拍手が起こった。日本文学研究に40年以上携わり、アニメ批評を通じて日米の文化交流に貢献した。ネイピア氏は「三島、記憶と嘆き」と題して講演し、三島作品が色褪せないのは現代社会との共鳴があるためと述べた。平野氏は著書の構成や、三島が高度経済成長期に抱いた違和感やニヒリズムが、バブル後の停滞感と共鳴していると自分は感じたと述べた。三島のファン以外にも現代の日本史を学ぶアメリカ人の大学生もきていた。熱心な質疑応答の後、約1時間半の対談を締めくくった。  (菊楽恵、写真も)

週刊やさしいにほんご生活 日本の自動販売機、ちりも積もれば山となる

この連載は、日本語を勉強している人を読者対象としたコーナーです。日本文化やマナー、タイムリーな日本に関する話題などを簡単な日本語で毎月第3週号に掲載します。アメリカ人の友人などにご案内ください。また、漢字をまだ習っていないお子様にとっても社会を知り、漢字に接するよい機会になります。


日本の自動販売機


 日本を訪れる人が驚くもののひとつに自動販売機(自販機)があります。街角や駅、温泉街、さらには山の上やお寺や神社の境内にもあり、その数は全国で数百万台と言われています。日本の自販機は外置きが中心ですが夜でも安心して使え、とてもきれいに管理されています。治安の良さも日本の文化です。また飲み物だけでなく、傘、お米、おみくじなどを売るものもあり、種類の多さに驚く人も多いです。さらに、日本の自販機には「おもてなしの心」があります。冷たい飲み物と温かい飲み物が並び、季節ごとに商品が入れ替わる工夫がされています。自販機は単なる販売機ではなく、日本人の心配りを感じる文化のひとつです。

(長久保美奈、マナー講師)

わくわくことわざ(15)
文とイラスト 平田恵子

ちりも積もれば山となる

 ほんのわずかなものでも、積もり積もれば山のように大きくなるの例え。転じて、小さな努力の積み重ねが立派な成果につながるという教えになっています。「ちり」は、風に舞い上がるような細かな土埃のことですが、ここではわずかなものの意味。ゴミやつまらないものではありません。「日本語学習は、ちりも積もれば山となるだよ。一日に漢字を三つ覚えて、その漢字を使って日記を書いてみよう。二年後には手紙もスラスラ、小説も読めるようになるはず!」などと使います


《言葉の意味(ことばのいみ)》

・自動販売機 vending machine

・境内 temple/shrine  grounds

・外置き located outdoors

・安心して safely 

・種類 variety 

・おもてなし hospitality

・季節ごとに depending on the season

・心配り thoughtfulness / consideration

・積もる pile up

・転じる meaning change ,move, turn 

・「ちりも積もれば山となる」と同じ意味の英語  Many a little makes a mickle.

「日本の防衛力を抜本的に強化」 米空母で高市首相が決意表明

 10月28日午後3時45分頃から約45分間、高市早苗総理大臣は訪日中のドナルド・J・トランプ米国大統領と共に、横須賀に入港している米空母「ジョージ・ワシントン」を訪問した。高市総理大臣とトランプ大統領は、自衛隊員及び在日米軍人に対して激励の挨拶を行い、高市総理大臣はインド太平洋を自由で開かれたものとし、地域の平和と繁栄の礎とする決意を述べ、トランプ大統領と共に世界で最も偉大な同盟となった日米同盟を更なる高みに引き上げていく覚悟である旨を述べた。首相挨拶は次の通り(外務省発表)。

挨拶をする両首脳(写真提供:内閣広報室)

 本日、米国の海軍創設250周年という記念すべき節目に、トランプ大統領とともに、地域の自由と平和を守る象徴である空母「ジョージ・ワシントン」で、挨拶するチャンスをいただいたことを心から光栄に思います。まず何よりも、日夜、我が国と地域の平和と安全のために尽力してくださっている自衛隊、そして在日米軍の軍人の皆様に、心から敬意と感謝を申し上げます。

 6年前、この横須賀の地で、トランプ大統領と亡くなった安倍晋三総理が、日米が共に手を取り合って、この地域の平和と安全を確保していくという決意を示しました。今ここに、再び日米の最高指揮官が並び立ったこの機会に、私は、その決意を引き継ぎ、インド太平洋を自由で開かれたものとし、そして、地域の平和と繁栄の礎とする決意を新たにしました。いま、我々はかつてないほど厳しい安全保障環境に直面していま

す。平和は言葉だけではなく、確固たる決意と行動によってこそ守られます。

 あちらに見える「もがみ」と「まや」を含む自衛艦と、「ジョージ・ワシントン」は、数多くの訓練を重ねてきました。また、横須賀にいる多くの補給、整備に携わっている日米関係者の方々、そして地域社会との絆が、米海軍の活動を長年にわたって支えてきました。こうした幾層にもわたる日米の協力が、日米の抑止力・対処力を確かなものとしております。

 私は決意しています。今後、日本の防衛力を抜本的に強化して、この地域の平和と安定により一層積極的に貢献していきます。そのことにより、トランプ大統領と共に、世界で最も偉大な同盟になった日米同盟を更なる高みに引き上げていく覚悟です。日米は共に帆を掲げ、自由で開かれた海を進みます。この横須賀から紡がれる航路は、日米の絆を輝く未来へと導くことを確信しています。(原文まま)

JAMSNETが第12回世界大会NYで開催

片平大使公邸でレセプション

 邦人医療支援ネットワーク(JAMSNET、本間俊一会長)は7日夕、ニューヨーク総領事公邸で、第12回世界大会のレセプションを開催した。米国内だけでなくドイツ、カナダからも合わせ26団体の関係者40人が参加した。新しく着任したNY総領事の片平聡大使が祝辞を述べた。

 同団体は、2006年に当時の米国日本人医師会(JMSA)会長でコロンビア大学の本間俊一教授と在ニューヨーク総領事館の仲本光一医務官が呼びかけ、在ニューヨーク日本国総領事館が側面支援することでニューヨークで設立された。

 ニューヨークには、医療や福祉、教育、心理の分野で邦人コミュニティーを支援する団体が多数存在していたが、連携した活動はしていなかったことから、現在も、米国日本人医師会(加納麻紀会長)を中心に日米ソーシャルサービス(JASSI)など26団体が参加している。

アワードを受けたオコーナー・イアンさん(中央)

 当日の式典では、今年度のコウタロウ・バーンズ・アワードがニューヨークのオコーナー・イアンさんとドイツ・デュッセルドルフ在住のホーネカムプ山本有さんに贈られた。

 また、翌8日午後には一般参加者向けの介護や医療、安全についてのプログラムがニューヨーク日系人会で開催された。内容は「介護支援ロボットの現状と近未来像」(浅田春比古マサチューセッツ工科大教授)、「サムライ介護」(理学療法士・介護福祉士の岡田慎一郎氏)、「安全な生活のために」(在ニューヨーク日本国総領事館・松永直樹領事部長)、「世界からの医療事情」柴田のりこさん(カナダ)、柏原誠さん(ドイツ)、柳沢ロバートさん(米国)、「これからのセルフケアー声を共鳴させる」(音楽療法士、ソーシャルワーカーの灘田篤子さん)。

 本年度のコウタロウ・バーンズ・アワード受賞者の横顔は次の通り。▽オコーナー・イアンさん(米国ニューヨーク)=カリフォルニアで育ち、補習授業校のあさひ学園に通った。大学はニュージャージー州のラトガース大学に進み、日本人学生会を立ち上げた。卒業後は「NYでボランティア」に所属、他のコミュニティにも目を向けスープキッチンなどで奉仕できるプログラムを企画中。現在は、マウント・サイナイ病院で研究員として勤務。医師になることを目指している。

▽ホーネカムプ山本有さん(ドイツ、デュッセルドルフ)=ドイツの認定臨床心理士の資格を持ち、長年にわたってドイツ、特にデュッセルドルフ近郊在住の日本人の心のケアに従事。ドイツの公的資格を持ち日本語で対応し、連携できる限られた専門家としてドイツでは貴重な存在。デュッセルドルフ日本人学校のスクールカウンセラーとしても子どもや保護者や学校を支え、またJAMSNETドイツでは「こころの相談メール窓口」も担当。JAMSNETドイツ副代表。

DEEPなQUEENS  ディトマース・スタインウェイ

世界的なピアノ産業で成長

 クイーンズ区ディトマース・スタインウェイ地区北部は、広大なコン・エディソン(電力会社)施設などがある産業エリアですが、19世紀頃の景色は全く違い、ピアノで有名なスタインウェイ家のビジネス関連一色の地区でした。

 ドイツ系移民の創業者ヘンリー・スタインウェイが始めた「スタインウェイ・ピアノ」工場があり、息子のウィリアム経営時に一層発展します。多くの技術革新や特許取得をし、世界的な高級ピアノブランドに成長。そして、ピアノ工場のみならず、近隣に工場労働者向けの住宅、教会、図書館、学校(キンダー)、公園、インフラを整備し、理想的な労働環境を目指した産業コミュニティとして、約400エーカーの「スタインウェイ・ビレッジ」も作っています。

 さらに、フェリーでマンハッタンから行ける海辺の家族向けリゾート地として「ノース・ビーチ遊園地」を1896年に開業。ここはクイーンズのコニーアイランドと言われたリゾート地でしたが、残念ながら1920年代後半頃には次第に衰退。今その跡地はラガーディア空港のターミナルA周辺です。

 加えて、マンハッタン区との交通手段の必要性から、イーストリバーの下に「スタインウェイ・トンネル」を作り、1915年に地下鉄が開業。現在は地下鉄7号線グランド・セントラル駅からハンター・ポイント・アベニュー駅間として使用されています。

 スタインウェイ家は、小高い場所に建つ「スタインウェイ・マンション」に1870年から1920年代まで居住。米国国家歴史登録財でNY市ランドマークですが、現在は私有地であり非公開。かつては広大な敷地内にあったこの邸宅は、産業地区の中でひっそりと佇んでいます。

 創業家によるピアノ会社経営は1972年に終息していますが、ピアノ事業、産業コミュニティ、遊園地にトンネルとさまざまな事業でビジネス手腕を発揮し、スタインウェイ家は地域リーダーとしてアストリアの発展に影響を与えたそうです。

 スタインウェイ・マンションまでは最寄り地下鉄駅から徒歩20〜25分です。

プロフィール: 明石鯛

兵庫県明石市出身、ウエストチェスター在住。週末の街歩きグループと共に、未知なるNY市内を元気に探索中。

チームで作り出す「かっこよさ」 佐藤栞さん

メイクアップアーティスト

 佐藤栞さんは、東京都小金井市出身で、バンタンデザイン研究所を卒業後、現在はニューヨークを拠点に活動しているメイクアップアーティストだ。来米して4年、この間にヴォーグ、ロフィシェル、エルなど一流ファッション誌やニューヨーク・ファッションウィークの現場でメイクを担当、既に第一線で活躍している。メイクアップを通して「その人らしさ」や「作品全体の空気感」を表現することを大切にしているという。

 佐藤さんが考える「その人らしさ」とは、作品に関わるすべての人──フォトグラファー、スタイリスト、モデル、ヘア、メイクなど──それぞれの「かっこいい」や「こだわり」が作品の中に自然に息づいていることだ。チーム全員の頭の中にあるイメージや感性を、ひとつの世界観としてどう形にしていくか。そのプロセスの中に「その人らしさ」があると思っている。

 また「作品全体の空気感」とは、関わる全員のやりたいことをただ詰め込むのではなく、それぞれの想いをどう美しく調和させ、ひとつの作品として完成させるかということ。時には意見の衝突もあるが、その中で最適なバランスを探り、みんなが「かっこいい」と思える作品を追求していくことを何よりも大切にしている。

 「チームで作品をつくるとき、全員の意見や想いを形にするのは簡単なことではありません。けれど、試行錯誤の末に『これ、ほんとにかっこいいね』と全員が同じ瞬間に感じられたとき、そこには言葉にならない感動があるんです。その瞬間に立ち会うたびに、みんなで協力してひとつの『かっこいい』を作り上げることの素晴らしさを改めて実感します」と話す。

 メイクを始めたきっかけは、高校3年生のときだった。それまでバドミントン部に所属していて、メイクをする習慣はまったくなかったという。部を引退して、時間に余裕ができたころ、自然とメイクをするようになって、そのときに「メイクってこんなに印象や雰囲気を変えられるんだ」と強く感じた。そこから一気に夢中になって「なんていうか、まさに目覚めたような感覚でしたね」。

 そんなとき、母との会話で「メイクアップアーティストってどう?」と何気なく言われ、その言葉に興味を持って調べたのがきっかけで、翌年、バンタンデザイン研究所へ進学した。

 「私は、メイクには正解がないと思っています。正解がないからこそ、自分が何をしたいのか、自分が好きだと思えること、かっこいいと感じる表現を追することを大切にしています。

そしてそれは、アートやファッションにも通じます。作品をつくるたびに『こうすればよかった』と思うこともありますが、それも次に生かしていくための大切な過程です。アシスタントとして現場に入ることも多く、学びの途中にありますが、ニューヨークという多様なカルチャーの中で刺激を受けながら、自分なりの表現を模索しています。完璧ではなくても、自分のペースで成長しながら、自分にしかできない『美しさの形』を見つけていけたらと思っています」と語った。(三浦良一記者、写真も)

品川哲山作品展 ギャラリー・マックスNYで

 「野人生涯」を貫いた書家、品川哲山(しながわ・てつざん)の作品展が11月4日から15日(土)までソーホーのギャラリー・マックス・ニューヨークで開催されている。これにあたり、 哲山の孫となる品川耕太氏ら親族がレセプションに参列した。耕太氏は、1981年ソーホーに創業した日本食レストラン「おめん」の創始者・故品川幹雄氏の甥で、現在は京都銀閣寺前にある「おめん」を経営している。

 アメリカでの最後の展覧会からおよそ30年の時を経て開催されるこの書道展は、再び日本の書の真髄に触れる貴重な機会とななった。

 品川哲山、本名品川要治は1910年、群馬県の織物業者・実治とたいの三男として生まれた。1930年代には赴任先の中国、朝鮮にて漢詩と書を学び、戦後は困窮の中にあっても精神的豊かさを追求し、筆をとり続けた。作品には、古代日本、中国、東南アジアの古典文学、更に西欧哲学の研究を通じて培われた豊かな教養が、ゆるぎない精神性として昇華されており、現代世界への深い洞察、美に対する純粋な称賛、先人への敬慕の念、そして家族に対する深い愛情が込められている。

 孫の品川耕太さんは、「今展覧会のテーマは『PASSION』。書を揮毫(きごう)する瞬間に拳を振り上げ、 込み上げる心の衝動を口ずさむ姿を家人は何度も目にしており、今展に相応しい一言と確信している。ニューヨークに『おめん・あぜん』を築き、発展へと導いた品川幹雄の根底にも流れる理念を、哲山の書から感じ取っていただければこの上ない喜びだ。自分の代で祖父の展覧会をニューヨークでできて嬉しく思う」と話している。(三)

編集後記


 編集後記

 みなさん、こんにちは。ニューヨークの市長選挙は投開票され、急進左派のニューヨーク州下院議員の民主党候補ゾーラン・マムダニ氏(34)が初当選しました。インド系移民でアフリカ東部のウガンダ生まれのマムダニ氏は、家賃値上げの凍結や市営スーパーの導入といった生活コスト低減政策を掲げ、物価上昇に苦しむ若年層を中心に支持を集めたと言われています。昨年までは無名で、7年前に米国市民権を取得したばかりの若干30代の元外国人の若者が、全米最大都市ニューヨークの市長に選出されたことは歴史的快挙といえますが、前途は多難なスタートになるかもしれません。

 英紙「デイリー・メール」が投開票前日の11月3日付で、マムダニ氏がニューヨーク市の次期市長に当選した場合、同市から少なくとも約76万5000人、最大で約200万人規模の市民が流出を「検討」または「確実に移住する」という世論調査の結果を報じました。マムダニ氏を批判しているニューヨークポストは同日、さっそくこれを紹介しています(本紙今週号4面に記事)。 
 それによると市民の9%が「確実に市を出る」と回答し、さらに25%が「離れる事を検討している」と答えており、合計でおよそ34%が離脱・市外への移住の可能性を示したのです。同市の人口は約850万人で、34%は約290万人に相当します。特に高所得者層の流出危機も指摘されており、年間所得25万ドル超の回答者のうち7%が「確実に離れる」と回答。ニューヨーク市では上位1%の所得層が市税収の半分近くを担っているとの指摘があり、彼らの大量流出が現実のものとなれば、市財政への打撃は深刻です。

これに加え、マムダニ氏を「100%共産主義の狂人(Lunatic)」などと批判してきたトランプ大統領は2日、CBSの報道番組「60ミニッツ」で、マムダニ氏が市長になれば、「大統領としてニューヨークに多額の資金を提供するのは難しくなるだろう」と語り、「共産主義者がニューヨークを統治すれば、そこに送るお金が無駄になるだけだ」と付け加え、当選発表後には、自身のSNS(Truth Social)に「…AND SO IT BEGINS!」と投稿しました。

 全米最大都市とはいえ、地方自治体の長の選挙で、大統領が自分の党推薦候補の応援演説をするのはいいでしょうけど、逆に対立候補や気に入らない候補に投票したり当選させたりしたら、国(連邦政府)が有権者や市政に懲罰的な報復を示唆するというのは、やりすぎのようにも見えるのですが、そんなことが許されてまかり通るというのも、議会制民主主義とはいえ、大統領という王様のなせる業と言えるのでしょうか。大統領令って自分で勝手に決められるんですからね。

 普通は、このような政治・社会環境の中では、報復や受難を恐れて、今回のような弱い立場の群衆の代表みたいな人が当選してしまうということは政権基盤の脆弱な国でもない限りあり得ないでしょうが、それがこの米国最大の大都会のしかも、全米最大の富裕層が集中する街の市長に選ばれてしまうところに、ある意味、アメリカ人の「やってみなければわからんでしょ」と実際に自分たちの身を切ってリスクを取って理想のままに進んでみるということを体現できるというのが、まだまだアメリカという国のポテンシャルを逆に感じました。トランプ大統領の圧力と富裕層を敵に回してどうやって弱い立場の人々が自分達の未来を切り開いていくのか、トランプ劇場に新たな一幕が加わり、新人の脇役が登場、果ては主役を食うかの見ものです。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)