編集後記

【編集後記】
みなさん、こんにちは。 落語家の柳家東三楼さん(47)が、芸歴25周年、真打ち昇進、柳家東三楼襲名10周年、米国移住5周年を記念して22日、カーネギーホールのワイルリサイタルホールで独演会を開催しました。日本の落語家がカーネギーホールで独演会を開くのははじめて。彼はこれまで「日本の落語を世界のRAKUGO」にとの使命でアメリカ、カナダと多くの英語公演をしてきています。Z世代の弟子を伴った珍道中や彼が海外で英語落語をやることを決心した自作の「動物園」のエピソードなども話し、名作の「時そば」「死神」「芝浜」を日英両語で通訳字幕なしで行いました。日本語が分からないアメリカ人の観客の多くは、パンフレットの英語解説を読んで理解して、結構、話についてきて笑っていましたね。東三楼さん、多くのお客様の温かく、強い拍手をもらって、25年の噺家人生で初めて、高座で泣いてしまいました。落語は稽古に稽古を重ねた形式美もありますが、アメリカのスタンダップコメディを座布団の上に座ってやっているような趣もあり、アメリカ人にも違和感はなさそうでした。これからも頑張ってほしいですね。ニューヨークでは、柳家東三楼さんと、外人の落語家、桂サンシャインさんが双璧で頑張っているようです。これからが楽しみです。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2024年4月27日号)

(1)柳家東三楼が独演会 カーネギーホールに笑い

(2)村上隆描く歌川広重 ブルックリン美術館

(3)おおはしこうじ親子展 シャドーボックスで竜描く

(4)フィラデルフィア桜祭り 日米の絆深める

(5)エッセイ入賞者を表彰 ストーニーブルック日本センター

(6)若手社員が交流 日系3団体が共催

(7)恋の歌も地球の叫びも 八神純子6月にNYライブ

(8)NYの舞台芸術に魅せられた元ヅカガール

(9)生き生きEATS 海老天の秘訣と蕎麦の美味さ

(10)米社会を魅了した日本人画家 犬飼恭平

柳家東三楼が独演会

カーネギーホールに笑い

 落語家の柳家東三楼(47)が芸歴25周年、真打ち昇進、柳家東三楼襲名10周年、米国移住5周年を記念して22日、カーネギーホールのワイルリサイタルホールで独演会を開催した。日本の落語家がカーネギーホールで独演会を開くのははじめて。

 東三楼はこれまで「日本の落語を世界のRAKUGO」にとの使命でアメリカ、カナダと多くの英語公演をしてきた。今回は「時そば」を日本語と英語、「死神」を舞台をニューヨークに移して英語で、名作「芝浜」は日本語で行った。日本語が分からない来場者もパンフレットの英語解説を見て内容を理解し、通訳、字幕なしで熱心に聞いて声をあげて笑った。公演後、東三楼は「カーネギーホールで落語会をする、と半分洒落で言っていたことが実現した。半分以上が英語で、しかも自分で翻案した作品だった。落語ファンには暮の代名詞、落語界の第九といわれる『芝浜』では、私の人生とも重なり、サゲを言った後、思わず涙がこぼれてしまった。多くのお客様の温かく、強い拍手をいただいた。これからも落語と私の応援をよろしくお願いします」と話していた。

(写真)「時そば」を話す東三楼(22日ワイルリサイタルホールで、写真・本紙・三浦良一)

おおはしこうじ親子展、シャドーボックスで龍描く

ギャラリー60NYC
4月27日から一般公開

 ギャラリー60NYC(東60丁目208番地)で4月27日(土)から5月19日(火)まで、大橋禾苗・おおはしこうじ親子によるシャドーボックス(切り絵アート)展が開催される。

 シャドーボックスは、ヨーロッパ貴族の遊びから生まれた技法。同じ絵を何枚も切り抜き、特殊な糊で重ねて奥行きを持たせる立体アート。完成品に光を当てると、まるで生きているように生命が蘇る。

 今展のテーマはドラゴン。これまでに大橋親子が手がけた龍を題材にした作品を中心に展示する。大橋禾苗は、80年代のニューヨークでこの技法を学び、日本に持ち帰った。ミケランジェロや葛飾北斎などにも題材を取り、絵の解釈、カットの精度、奥行きの深さなど、従来のシャドーボックスの水準をはるかに超えるものを創造。ルーブル美術館の国際芸術コンクールでのグランプリ受賞、バチカンのローマ法王からの表彰、日仏芸術親善大使、オランダ王室やザルツブルグ宮殿美術館からの表彰など、シャドーボックス発祥の地であるヨーロッパで最上級の評価を得ている。2018年には文部科学大臣賞を受賞し、日本国内においても、名実ともに工芸から芸術へと昇華した彼女の作品は「光と影の立体芸術」と呼ばれるようになった。

 若い世代や子供たちにシャドーボックスの裾野を広げたいと願う大橋禾苗は、やがて長男・おおはしこうじが描く、80年代のニューヨークで身に着けたカラフル・ポップな色彩感覚と大胆な構図の絵に注目。おおはしこうじは、自らのオリジナル・キャラクター、「熱血・目ヂカラ3歳児ルキぼん」と「 クマの王子マンハッタン」をフューチャーしたコミック・アートを制作。その原画を母・禾苗がシャドーボックスにして展示したところ、「人生が楽しくなる」「見るだけで元気になる」と大評判を呼んで以後、おおはしこうじは、電通の広告マンを辞めて母・禾苗のシャドーボックス用のオリジナル原画制作に打ち込み、コピックペンを画材に、浮世絵の要素も取り入れ圧倒的なスケールの絵を次々と生み出している。オープニングレセプションは27日(土)午後5時から7時。参加希望者は要予約 gallery60nyc.com

村上隆描く歌川広重

現代とコラボ
所蔵118点を公開

ブルックリン美術館

 ブルックリン美術館(200 Eastern Parkway)は今月5日から、歌川広重の「名所江戸百景(feat. 村上隆)」と題した展示を開催している。江戸時代の浮世絵師、歌川広重(1797〜1858)の同美術館所蔵の作品118点を展示。劣化を防ぐため普段は展示していないため、今回は2000年の展示会以来、24年ぶりの公開となる。

 「名所江戸百景」は1856年から58年にかけてかけて制作された連作浮世絵名所絵で、春のお花見、夏の暴風雨や両国の花火、もみじの落葉、雪景色など、江戸の四季折々の風景に出会える。広重の浮世絵は、幕末を迎えた江戸の名所と街並み、そこに暮らす人々が生き生きと描かれている。ゴッホが模写した作品として有名な亀戸梅屋敷、大きな鯉のぼりが泳ぐ水道橋駿河、雪の浅草寺など、大胆な構図に加え、同美術館の所蔵品は初摺りに近い貴重なものといわれているだけあって、その色の鮮やかさに驚く。また多くの作品に富士山が描かれており、江戸時代はこうだったのかと思いを馳せながら楽しめる。会場には、広重と村上隆による2部構成で200点以上の作品が並び、その数の多さと美しさに圧倒される。この企画展のために制作された現代美術家の村上隆による大型作品も同時公開されている。

(高田由起子、写真も。関連記事11面に)

歌川広重の江戸百景

ブルックリン美術館で


Utagawa Hiroshige. Kiyomizu Hall and Shinobazu Pond at Ueno (Ueno KiyomizudM no ike), no. 11 from 100 Famous Views of Edo, 4th month of 1856. Woodblock print. Brooklyn Museum; Gift of Anna Ferris, 30.1478.11. (Photo: Brooklyn Museum)

 ブルックリン美術館(200 Eastern Parkway)は今月5日から、歌川広重の「名所江戸百景(feat. 村上隆)」と題した展示を開催している(1面に記事)。江戸時代の浮世絵師、歌川広重(1797〜1858)の同美術館所蔵の作品118点を展示。劣化を防ぐため普段は展示していないため、今回は2000年の展示会以来、24年ぶりの公開となる。

 「名所江戸百景」は1856年から58年にかけてかけて制作された連作浮世絵名所絵で、桜の下でのピクニック、夏の暴風雨や両国の花火、もみじの落葉、雪景色など、江戸の四季折々の風景に出会える。そのほか江戸の地図や、タンス・下駄・番傘・のれんなどの民芸品も展示。

 この企画展のために制作された現代美術家の村上隆による大型作品も同時公開。江戸百景をモチーフにした作品の中には村上のポップなキャラクターも描き込まれている。また、広重が描いた風景が現在の東京にどのように変化していったかを写真などで紹介している。同展は8月4日まで。 

 入場料は一般20ドル、学生・シニアは14ドル、会員・4歳以下は無料。

 また29日(月)午後7時からは、村上隆がキュレーターと都市の歴史や環境の変化、村上の絵画の新シリーズなどについて語り合うトークイベントも開催される(入場料40ドル、会員24ドル)。詳細はウェブサイトhttps://www.brooklynmuseum.org/を参照する。

フィラデルフィア・桜祭り

日米の絆深める春の祭典

 晴天に恵まれた4月13日と14日、フィラデルフィアのフェアモントパークで「スバル桜ウィークエンド」が行われ、今までの最高記録となる総勢約5万人が参加し春の恒例行事を満喫した。フィラデルフィアと日本の結び付きは長く、1926年に日本政府がアメリカ独立150年を記念し、フィラデルフィア市に1600本の桜を寄贈したことから始まった。1998年から2007年にかけて、フィラデルフィア日米協会は10年間に渡り1000本の桜を市内にあるフェアモントパーク公園に植樹し続け、2023年から「フィラデルフィア・桜祭り」が毎年春に開催されるようになった。車のメーカーである「スバル」が主要スポンサーとなり、今では地元だけでなく遠い郊外からも数万人が訪れるフィラデルフィアを代表する春の風物詩となっている。

 今年は3月24日より「桜ウィーク」が始まり、フィラデルフィア各地にある重要な文化財で新たな歴史を刻む色々なイベントが行われた。竹久夢二の生誕 140周年を祝い、彼が繋いだ大正ロマン溢れる邦楽と洋楽の宴を皮きりに、アメリカ独立国立歴史公園でフィラデルフィアの桜まつり開催を祝う式典が行われたりもした。2年後に迎えるアメリカ建国250周年を記念して、2026年までにフィラデルフィアに更に250本の桜の植樹が計画されており、その花は両国間の長年にわたる友情の証となっている。

 迎えた「桜ウェークエンド」では、4月12日にThe Fallser Club (フォルサークラブ)で前夜祭が行われ、書道家で文化庁文化交流使の海老原露厳氏による書道パフォーマンスや、さまざまなジャンルの踊りや演奏が会場を盛り上げた。4月13、14日のフェアモントパークのイベントでは、和太鼓演奏・コスプレショー・カラオケ大会・ダンスパフォーマンス等の情熱溢れるパフォーマンスが繰り広げられ、参加者の心を躍らせた。着付けや茶道などが体験ができるブースに加え、祭りを賑わす屋台・クラフト・お土産などの出店も多く、参加者はフィラデルフィアにいながら、まるで日本にいるかのようなひとときを堪能した。最終日には、フィラデルフィア市長のシェリー・パーカー氏やニューヨーク総領事の森美樹夫大使が参列し、フェアモントパーク敷地内で厳かに桜の植樹式が行われた。

 フィラデルフィア日米協会が継続して植樹している桜は、今後も長く続く「日米の友好のシンボル」として国境を越えた絆を育んでいく。

第19回ストーニー・ブルック日本センター主催エッセイ入賞者を表彰

高校生大学生を対象に
ロングアイランド地区で

日本研究の中心に

 第19回ストーニー・ブルック日本センター主催、キヤノンUSA後援のエッセイ・コンペティションの表彰式が4月20日、ストーニー・ブルック大学校内のチャールス・ワン・センターにて行われた。

 尾島巌ストーニー・ブルック日本センター理事長によるストーニー・ブルック日本センターの紹介のあと、小林伊三夫キヤノンUSA社長、森和也ニューヨーク日本総領事館ジャパン・インフォメーション・センター長から受賞者への祝辞が贈られた。

 引き続き賞状、賞金、副賞のキヤノンのカメラなどが各受賞者に授与され、入賞者は各自の作品を朗読し、参加した家族、友人知人、関係者から盛大な祝福を受けた。式の後のレセプションでは入賞者を囲んで参加者は軽食を取りながら歓談しラッフルなどを楽しんだ。

 賞金賞品は、高校の部第一位最優秀賞は賞金3000ドル並びに日本国総領事特別賞、第二位は賞金1500ドル、第三位は賞金1000ドル、内田メモリアル賞は賞金1000ドルと夫々に副賞のキヤノン製品が手渡された。

 入賞者と入賞作品は次の通り。

【高校の部】

最優秀賞第一位、日本国総領事特別賞

Talia Beck (タリア・ベック)

“Reflections”

Hunter College High School(ハンター・カレッジ高校)

第二位

Anderson Maziero(アンダーソン・マジエロ)

“The Sound of Drums Behind a Stage”

Bethpage High School(ベスページ高校)

第三位

Arihunt Garg(アリハント・ガーグ)

“Embracing the Harmony of Silence”

The Brooklyn Latin School(ブルックリン・ラテン高校)

【大学の部】

最優秀賞

該当者無し

内田賞

Marisa Yamamoto(マリサ・ヤマモト)

“Sparks of Identity”

Syosset High School(サヨセット高校)

入賞作品はhttps://www.stonybrook.edu/commcms/japan/programs/essay-comp.phpに掲載。

(写真)

上段左から(敬称略)

佐藤恵里子(実行委員長)、尾島巌(ストーニーブルック日本センター理事長)、小林伊三夫(キヤノンUSA社長)、森和也(ニューヨーク日本総領事館ジャパン・インフォメーション・センター長)

下段左から(敬称略)

高校の部第三位:Arihunt Garg(アリハント・ガーグ)、第二位:Anderson Maziero(アンダーソン・マジエロ)、最優秀賞第一位、日本国総領事特別賞:Talia Beck (タリア・ベック)、内田賞:Marisa Yamamoto(マリサ・ヤマモト)

若手社員が交流

日系3団体が共催

134人参加で大盛況

 ニューヨーク日本商工会議所、日本クラブ、ニューヨーク日系人会(JAA)の日系3団体が合同で4月18日、初の「若手社員のための交流会」を日本クラブで開催し、日本企業に勤める若手駐在員を中心に約134人が参加した。 

 このイベントは、異業種他社の同世代の人との交流の場を設けることによって、各分野の人材が、それぞれの業務の中で培った知識やノウハウ、スキルや経験を共有し、仕事で抱えている問題への解決の糸口や、キャリアの一層の成長に役立てることを目標とした、ヤングプロフェッショナルのための交流会。

 まず初めにパネルディスカッションが行われた。ピアニストの角野隼斗(すみの・はやと)さんと日本テレビ記者の松岡志保さんにモデレーター司会進行役の遠藤祐希さんが質問した。現在国連担当記者を勤める松岡さんは2014年から日本テレビニューヨーク支局報道プロデューサー。ロシアがウクライナ侵攻を開始した際には1年間で3回ウクライナ国境に赴き現地取材した時の激務の様子を語った一方、副業としてモデルとしても活躍していること、オフブロードウエーミュージカルに2回出演するなど仕事とプライベート面を両立していることも披露し、本人は「仕事が忙しいほど、積極的に遊ばないとバランスが取れない。自分の思った生き方をして欲しい」とアドバイスした。

 角野さんは、2018年に東京大学大学院在学中にPINAピアノコンクールにグランプリ受賞者として音楽キャリアをスタートさせた異色のキャリアの持ち主。「音楽は感情的な表現と思われがちだが、作曲には数学的な経験も役立っている」などと話し、パネルディスカッションの後に、サプライズで演奏を披露して大喝采を受けた。

 このあと、「お互いの視点や経験を共有したい」「経営者やさまざまな業界の人たちと繋がりたい」「人脈を広げ、情報交換や意見交換を行いたい」「ビジネスコラボレーションの機会につなげたい」そんなさまざまな思いを抱いて集まった参加者たちは、日本クラブが用意した料理を楽しみながら大いに歓談し、盛況となった。参加者からは「なかなか他社の同年代の人と知り合うチャンスがなかったのでよかった」「いつもメールとZOOMで連絡していた取引先の担当者と今日初めて対面した」などリアルでの交流の大切さを実感したようだった。

恋の歌も地球の叫びも

八神純子6月にNYでライブ

 初の単独ニューヨーク公演を6月30日(日)午後5時30分からバードランド(西44丁目315番地)で開催する。ワシントンDCで一昨年、女性シンガーソングライターの殿堂入りを果たした。「そんな私が日本だけで歌っていてはいけないなという思いで、ニューヨーク公演が実現しました」。1986年から西海岸に住んできた八神。「この10年間ずっとニューヨーク公演を考えていたんです。『水色の雨』、『パープルタウン』といった私のオリジナル曲を楽しみに来てくださる日本人の方がほとんどだと思いますが、私のミッションとして歌っている今回のライブの原動力になっている曲は、地球の温暖化が沸騰化となり、終わらない戦争、人種差別、経済の問題、パンデミック、黙っていたら何も起きない。歌を作り声を上げれば何かが起きるかも知れないという気持ちから生まれた曲です。今までの私の音楽人生はこのアルバムを作るためにあったんだと強く感じています。そして、そればかりになってしまわないようにシンガーソングライターとしてはずっと恋の歌を歌えるような、作れるような、それが似合うような歌手でもいたいと思います。社会に向けた目と愛の心、その両方を歌っていけたらと思います。今回のライブは、客席と近いステージなので、皆さんと目をあわせて歌えると思います。ぜひいらしてください」。

 開場は午後4時30分。入場料はテーブル席35ドル46セント、バーカウンター24ドル91セント。チケット発売中。詳細はhttps://www.birdlandjazz.com/tm-event/junko-yagami-duo/を参照する。

(三浦良一記者、写真も)

NYの舞台芸術に魅せられた元ヅカガール

俳優・ダンサー

漣(さざなみ レイラさん

 宝塚歌劇団の男役、94期生、漣(さざなみ)レイラの芸名で星組に14年間在籍した。本名吉田奏恵さん。現在、ニューヨークに住み、傑出した外国人芸術家に与えられるOビザを無事に取得し、目下5月5日(日)にジャパン・ソサエティーで開催される子供の日フェスティバルで上演されるミュージカル桃太郎(MOMOTARO: In Search of a Hero)の芝居出演の稽古に専念しているところだ。宝塚歌劇団が110年前に最初に公演した舞台が「どんぶらこ」、桃太郎だったことにも奇遇の縁を感じて出演を引き受けた。演出はCJA芸術監督の河原その子(公演概要18面に)。現在そのリハーサルをしながらオーディションを受け続ける日々だ。

 宝塚で男役でずっとやってきた。ダイナミックなダンスで存在感を放ち、『THE SCARLET PIMPERNEL』でのクーポー役、『ロックオペラ・モーツァルト』でのフリードリン役、『デビュタント』でのバルタザール役など個性的な役もこなす星組の戦力として幅広く活躍。2021年12月『柳生忍法帖』『モアー・ダンディズム!』で宝塚歌劇団を卒業後22年4月にNYへ。改めてエンターテイメントの魅力に心を奪われ、劇場に関わる仕事がしたいと決意したと言う。現在はパフォーマーに向けたPerforming Arts Empowerment Coach として演者をサポートしながら、自らもダンスや歌のレッスンに通い、学びを深め挑戦を重ねている毎日だ。「オーディションは毎回、心地よい緊張感と周りの方々の自信に溢れた姿に刺激を受けながら受けています。まだまだ結果は落ちてばかりですが、着実に前に進んでいる感覚があります」と話す。「ニューヨークに来てパフォーマンスをする方々の心のあり方に触れて気づきを得る機会が多々あり、メンタルトレーニングも舞台に立つスキルのひとつとして取り入れられていることに興味を感じました。第一歩として日本でメンタルトレーナーの資格を取得しましたが、結果にとらわれず自分自身に挑戦し続けることが何より大切なんだって心から思います。ニューヨークには宝塚出身の先輩方もたくさんいて、本当に様々な面で助けていただいています」と宝塚歌劇団が最初の米国公演をしたラジオ・シティーミュージックホールの前で満面の笑顔を見せた。

 (三浦良一記者、写真も)

海老天の秘訣と蕎麦の美味さを生かす技

プロに聞く、生き生きEATS(イーツ)

元気と美味しいを求めて料理の達人が腕を振るう (52)

 ニューヨークのイーストビレッジにある蕎麦屋は、手打ち十割蕎麦を出す店として知られる蕎麦処の銘店。今回は蕎麦を使った料理2品と、職人が揚げるプロの海老天ぷらの揚げ方を、滞米18年のベテラン日本食料理人、姉妹店酒蔵の井上勝久シェフに教えていただいた。

蕎麦屋

229 E9th St.

New York,NY 10003

Tel:212-533-6966

年中無休 12:00-22:00

sobaya.square.site


◾︎海老天ぷら

【材料】 

無頭海老 2本

天ぷら粉A 150g

天ぷら粉B  50g

水 200g〜250g

大根 (適量)

生姜 (適量)

【作り方】

(1)天ぷら粉Aと、水を合わせる(卵のいらない市販の天ぷら粉を使用)

(2)無頭海老の下処理をする。第一関節を残し、殻をむき、揚げた際の破裂防止に尻尾の先を切り、角を外す。背側に切れ目を入れ背わたを取る。揚げた時に海老が曲がらないように腹側に切れ目を4、5本入れ、身を伸ばす。神経が切れるブツブツという音がする。真っ直ぐなひょろひょろな紐状の海老にする。

(3)大根と生姜の皮を剥き、おろし金でおろしておく。

(4)直径20センチくらいのフライパンに2〜3センチほどの油を入れ160度C〜180度C。

(5)海老を天ぷら粉Bにまんべんなく付け、(1)の衣に海老を潜らせ、尻尾を持って第一関節残しで潜らせ油へ入れる。

(6)油に入れた海老を真っ直ぐに整え、箸を4本ほど使って、天衣を海老にたらし「花」を咲かせる。できれば両面。(結婚式場のように大量に海老天を作る場合は、先に天かすを作ってその中に海老を落として花を咲かせて衣をつけるが、家庭では前述の方法がオススメ)

(7)油に入れた海老からの泡が、大きい泡から小さい泡になってきたら油から引き上げて揚げ台でしっかり油を切る。これで衣サクサク、中身ジューシーな海老天の出来上がり。


◾︎蕎麦いなり

【材料】 

蕎麦 茹で上がり200g

味付けいなり皮 4〜6枚

めんつゆ 8g

大葉 4〜6枚

卵 1個

【作り方】

(1)蕎麦は茹でて、水でしめておく。(冷凍・乾麺で可)

(2)卵を割りよく解いて裏ごしして、中火のフライパンで薄焼き卵焼きを3センチの細切りにする。

(3)カニカマを1センチに切り、マヨネーズで和えておく

(4)蕎麦にめんつゆを掛け混ぜる。

(5)(4)をいなり皮に詰めて口が上になるようにし、大葉、薄焼き玉子、カニカマ、天かす、ネギを盛り付ける。

 蕎麦といなり寿司の味を同時に楽しめる前菜などにはピッタリの料理だ。


◾︎焼き蕎麦がき

【材料】 

そば粉 75g

水A 200g

めんつゆ 25g

水B 100g

片栗粉 5g

ワサビ 適量

ネギ 適量

【作り方】

(1)鍋にそば粉と水Aを入れ、火にかけ木べらで混ぜ、粘りが出てきたら火から下ろし、予熱が取れたら適量に丸める。

(2)鍋にめんつゆを適量の水Bで割り、一度沸騰させ、水溶き片栗粉を入れ、麺つゆ飴にする。

(3)丸めた蕎麦がきを中火のフライパンで焼き目がつくまで焼く。

(4)焼き上げた蕎麦がきを器に盛り、めんつゆをかけてネギを盛りワサビを添える。

米社交会を魅了した日本人画家

デイヴィー美代子・編著

吉備人出版・刊

 ニューヨークで活躍した日本人芸術家と言うと、イサム・ノグチ、草間彌生、国吉康雄の名前はすぐに浮かぶだろう。しかし、その国吉と同じ時代の20世紀の初頭、岡山から海を越えアメリカ社会で成功をおさめた画家がいたことは、故郷の岡山でも、日本でもあまり知られていない。肖像画家・犬飼恭平だ。この作家の絵が偶然、ニューヨーク在住の日本人コレクターの目にとまり、魅了されたそのコレクターによって、いくつかの作品と自伝がみつかった。その犬飼の作品群と歴史を掘り起こしたのは、マンハッタンに住む美代子デイヴィーさん(89)と夫のジョン・デイヴィーさん(故人)だ。本書は、犬飼の作品と詳細な年譜、犬飼の自伝『異教徒の告白』を収録している。「肖像画では当時『マダムXの肖像』(メトロポリタン美術館所蔵)で知られる、ジョン・シンガー・サージェント(1925年没)が大活躍していましたが、彼の死後は、犬飼が当代切っての売れっ子肖像画家として活躍したんです」と美代子さんは、セントラルパークを見下ろす居間に飾られている犬飼の絵の前で語った。

 本書には、これまで日本でほとんど知られなかった犬飼恭平の作品や人生が明らかにされている。

 犬飼恭平は、1886(明治19)年岡山県都窪郡庄村山地(現在の倉敷市山地)に生まれた。12歳から13歳ころには画家になることを志し、1900(明治33)年14歳のとき従兄犬飼勘太郎とその家族について神戸港からハワイに渡った。17歳でマ ーク・ホプキンス美術学校に最年少で入学。1908年シカゴ美術学校に「霽上がる霧(Clearing Fog)」 出品。また同年シカゴの社交界で知られるルシーン・グデナ ウと婚約。 1942年、56歳のとき回想録「ある異 教徒の告白」の執筆を始め54年没。享年68。当時、海を渡った多くの青年たちがそうであったように犬飼の人生もまたドラマに満ちた生涯だった。

 美代子デイヴィー 美代子・海野さんは、静岡県静岡市出身。1967年来米以来マンハッタン在住。夫のジョン・デイヴィー氏(故人)と共にファンドマネジメント会社「DAVEY&UNNO Inc.」を33年間経営し、現在も資産運用と株のトレーダーを続けている。ジャポニズム作品のコレクターとしても知られ、 2011年に東京の三菱一号館美術館で「Collection Japonism collection 2011」を開催。その後同館の所蔵となる。 ティファニーランプコレクションと犬飼恭平作品コレクションの蒐集家。ダコタハウスのセントラルパークを真下に眺めるリビングの壁に大きな絵を掛けていた跡がいくつも残っていた。10月5日に日本やアジアの作家が並ぶブルックリン美術館200年記念展のために、自宅に所蔵する犬飼作品25点余りの中から大作5点を寄贈したのだと言う。同美術館が仰天歓喜したのは言うまでもない。同書は英語版も出されている。  

 (三浦良一記者、写真も)