編集後記

【編集後記】


 みなさん、こんにちは。ニューヨーク市議会は9月30日、信号無視をして横断歩道を渡る行為、いわゆるジェイウォーキングを違反とはみなさない法案を可決しました。NY市では、交通規則を無視して道路を横断する行為は違法で、1回毎に罰金250ドルが課せられます。しかしNY市当局に違反者として記録されている多くは黒人やラテン系で、同法案を提出したメルセデス・ナルシス同市議会議員は「市民のほとんどが信号無視をしている一方、違反者の人種が偏っている不均衡を指摘する」と会見で語りました。同法案はエリック・アダムス同市長の承認後、執行となります。私もニューヨークに来てまもないころ、ニューヨーカーが信号を無視して交差点などを渡るのを見てびっくりして、前から来るおまわりさんを見て、ああきっとみんな、おまわりさんに注意されるぞと思っていたら、そのおまわりさん自身が信号無視して渡ったのでまたびっくり。これについて当時受けた警察の説明は、もっと凶悪犯罪を取り締まることに重点をおいているので、些細な軽犯罪をいちいち取り締まってられないというようなものでした。凶悪犯罪取り締まりか、まあ理にはかなっていたのでなんとなく納得したのですが、今回の、罰金を課せられているのが有色人種ばかりで差別だからやめろというのは、悪い方の水準に世の中を合わせることになるのではないか。悪貨は良貨を駆逐するというグレシャムの法則を高校時代だったか習った気がしますが、まさにそんな感じです。悪事を働いたものが人種差別を理由に自らを正当化することがまかり通るのか、私の見方が偏見なのか、よくわからなくなってしまうことがここ数年相次いでいるように思います。時代とともにアメリカも変わっていくのでしょうか。大統領選でまたぶれないことを祈るばかり。あ、このニュースは、今週入れようと思っていて、うっかり入れ忘れたニュースで、来週号で掲載します!それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)
  
 

【今週の紙面の主なニュース】(2024年10月12日号)

(1)令和遣欧使節団 410年目の節目 宮城県とNYから

(2)第12回カジキズショー 花と芸術の祭典

(3)ベスト30ゴルフ 山本竜也さん優勝

(4)在外投票16日から開始 NY総領事館で20日まで

(5)在外有権者の代表を送る可能性を考える

(6)永住帰国に備える JAAで山口さん来米講演

(7)新生モモタロー誕生 東京のAYOMOTが経営

(8)メディカル美容サロン Re:forma 開店

(9)永住帰国者の手続きを支援する 山口里美さん

(10)ジョーカーが描いた夢  シネマ映写室

令和遣欧使節団410年目の節目

宮城県とNYから訪問

日欧の末裔が再会へ
合唱団交流でつなぐ歴史

 伊達政宗が派遣した慶長遣欧使節団がスペインに到着して410年目の節目の今年、宮城県民から参加希望者を募り「令和遣欧使節団2024」として10月16日から9日間スペイン・イタリアの慶長使節団の足跡を辿るツアーが開催される。2019年以来5年ぶりに日本人の血を引く末裔とされるハポンさんたちとの交流も深める。さらに、新たに合唱団「コロ・はせくら」を結成し、使節団ゆかりの深いコリア・デル・リオ市とチビタベッキア市にて現地の市民合唱団と合同演奏会を開く。

 この「コロ・はせくら」にニューヨークの合唱団JCH「とも」が加わることになっており、NYから一緒にツアーに参加する。ニューヨーク発で今回JCHからは同合唱団の元音楽監督を務めた白田正樹さんを含め16人が参加、現地で仙台から派遣される約30人と合流する。

  白田さんは「伊達政宗が支倉(はせくら)常長を大使として派遣した慶長遣欧使節がスペインに到着して410年。その節目の年にコロナ禍で一時途絶えていた日西および日伊文化交流が再開できるのは嬉しい。特に今回は常長直系の14代当主と支倉本家の末裔も参加し、宮城県議会議長や石巻市長らから預かった親書をセビリア市長、コリア・デル・リオ市長、チビタベッキア市長に手渡す予定でその歴史的な意義は大きい。常長ゆかりの宮城県の都市や常長が滞在した世界の各都市の間で単に観光だけでなく教育、文化、経済面でも強い協力関係を築こうという『ハセクラ・リーグ』の目指す使節でもあるからだ。またNYのJCH「とも」は以前から音楽を通して、コリア・デル・リオ市のハポンさん達や合唱団と交流してきた。ニューヨークにも何度も招待しているし、独自にセビリア市、コリア・デル・リオ市、チビタベッキア市で演奏会をしてきた。特にチビタベッキア市の聖殉教者教会で着物を着たマリア様を背に宗教曲を歌った事など貴重な思い出となっている。今回、この使節の一員として宮城県で新たに結成された合唱団と合流し、スペイン、イタリアのイベントに参加することで『ハセクラ・リーグ』の広がりに大いに貢献できると思う。今後とも、JCH『とも』の果たす役割は大きい」と語る。

(写真左)チビタベッキア市の支倉像の前で(2019年、Photo Kyoko Gasha)

第12回カーネギーホール公演 花と芸術の祭典

カジキズショー

  第12回カーネギーホール公演〜花と芸術の祭典 Japanese style〜Kajiki‘s Showが10月3日(木)午後7時30分から、カーネギーホールのワイル・リサイタルホール(7番街と57丁目)で開催された。無料招待チケット制で、来場者にはスワロフスキーネックレスがプレゼントされた。

 司会は梶木敏巳と西岡舞。出演者は、Team KAGUYA(朗読・歌・舞)、声優の美月あい&たえ、千尋(歌)、綱島芽浬(バレエ、14歳)、ヒーリングシンガーここり&ピースエンジェルズ(歌・コーラス)、ミラクルバード(歌&ピアノ)、茶道デモンストレーション (茶道&フルート・ピアノ)、絆(日舞とピアノ演奏)安久親子3人、Future-inspired Kimono Show (着物反物ショー74人)、コトダマロック(和歌をロックで歌う)坂井洋一&フレンズバンド コトダマロックバンド 坂井洋一 : 映画プロデューサー兼映画バイヤー・作詞作曲家・古代史ハンター(言語学を含む古代史セミナー公演)、琉球芸能&和太鼓『花火‐HANABI』、圧巻は沖縄の伝統文化と和太鼓。着物ドレス (着物を切らずにドレスとして着付ける新しいスタイル)たえ、Petit Allonge Bella NY (バレエ)イザベラ&生徒たちが舞台で華やかな演技を繰り広げた。今年は、例年になく客席でアメリカ人観客の顔が多く、ニューヨーカーの日本文化に対する関心の高まりをうかがわせた。

ベスト30ゴルフ、山本竜也さん優勝

団体戦はチームFURM

第48回大会ブラックベア・ゴルフ場で開催

 1976年に始まり今年で第48回目を迎えるベスト30ゴルフトーナメントは秋晴れの下ブラックベア・ゴルフコースで5日、6日の週末に行われた。

 個人戦の優勝は初日71と一人だけアンダーパーを叩き出した山本竜也さんが後続を振り切っての一昨年に続き2度目の快挙。準優勝は過去優勝経験のあるギャネン・クマーさん、3位は初参加の若手、白倉龍馬さん。同時に行われた団体戦の優勝はチーム名FURM、2位はPAR-TASTIC FOUR、3位はチエと仲間たちだった。協賛企業、有志の支援者は次の通り。T.UP TRADING, INC.、Y’s Publishing Inc.、Kintetsu International & United Airlines、 Mr. Hiroyasu Ishikawa、宮崎太輝プロ、笹生優花プロ、Mr. Koichi Sato、初花、よみタイム、Cue International、Mr. Frank Hayakawa、 Mr. Tatsuya Yamamoto、 Mr. Yoshio Fujii、 Mr. Hashimoto Junichi

(写真)優勝した山本さん(中央)、2位クマーさん(右)、3位白倉さん

在外投票16日から開始 NY日本総領事館で20日まで


 第50回衆議院議員総選挙にともない在外選挙が行われる。ニューヨーク日本総領事館における在外投票開始は10月16日(水)から20日(日)の午前9時30分から午後5時まで。土日も行う。予約はいらない。投票するためには在外選挙人証、写真つき身分証明書が必要。投票所は総領事館内に設置。住所はパーク街299番地。有権者は「在外公館投票」「郵便等投票」「日本国内における投票」のうちのいずれかを選択して投票することができる。これと同時に第26回最高裁判所裁判官国民審査及び令和6年10月参議院議員補欠選挙(岩手県選挙区)の在外投票が行われる。

在外有権者の代表を送る可能性を考える

 衆議院議員選挙が10月15日公示、27日投開票で実施される見通しとなった。選挙のたびに思うのだが、何としても在外有権者の利害代表を国会に送りたいと思う。以前に問題提起したのは、在外票を固めて参院の全国比例代表に1議席から2議席を送るという構想だ。けれども今回は衆院選であり、この方法は使えない。衆院の場合はとにかく、一番大事な小選挙区において、在外票がバラバラになってしまうのは困る。ここは、制度の改正を伴う問題であるが、在外選挙区というのを衆議院の小選挙区に1枠から2枠設定してもらい、その選出議員が在外日本人の利害代表として国会で活躍してもらうのが良いように思う。

 仮に2議席を確保できたとしたら、地理的な区分で2選挙区を分けるのではなく、在外の通算年数で10年以上はA選挙区、10年未満はB選挙区と分けるという考え方もある。在外年数が短い人は、その多くが日本に本帰国する可能性が高いし、子どもの教育や企業との関係など日本在住時の利害関係を引きずっている、その場合は、このA選挙区の議員を選ぶ際には日本の政権選択に近い判断になるであろう。一方で、10年以上ともなれば在外の生活環境に定着しており、日本との関係は出入国や税制、老親のケア体制、老後の本帰国など特定の問題になっていく。こちらのB選挙区の代表は在外日本人のニーズに即した動き方をしてもらうことになる。勿論、AとBに共通の利害となる事項については、連携して2議席のパワーを活かして動いてもらうのだ。

 では、実際に在外邦人として、何をどう要求してゆくかだが、問題は多岐にわたっている。その中から今回は4点挙げてみたい。1つはマイナンバー制度である。在外生活を送る場合にはマイナンバーは特に必要はないが、それでも過去に番号を振られた人から順にマイナンバーを活かす動きが出ている。ただ、マイナンバーが日本の銀行口座と紐づけされた途端に「非居住者」だと判明して口座閉鎖に追い込まれるケースがあるという。政府や銀行が海外逃亡中の凶悪な詐欺団や強盗団と対決しているという事情は理解できる。だが「マイナンバー」というのは、そうした悪質な人物であるかないかを判別するのも一つの機能であるはずで、正直に紐づけたら口座閉鎖というのはおかしい。

 2つ目は、国際売春組織の存在だ。近年、単身で来米した日本人女性が、入管で厳格な取り調べを受けるケースが続出している。本人には全く非がないのに犯罪者扱いという不快な経験になる。それもこれも、悪質な売春組織が日本人女性を勧誘しているからで、その取締りが不徹底なせいだ。日本の警察は送り出し側の問題として当事者意識を持って米国当局と協力し、この種の問題を根絶すべきだ。とにかく日本人女性が単身渡航すると、売春予備軍とみなされて「別室送り」となるのは異常である。

 3点目は税制の問題だ。在米年数の長い邦人が日本に本帰国して居住者になれば全世界合算課税となるのは当然だ。だが、その後に配偶者が死去して一定額の遺族年金(例えば社会保障年金の夫婦の差額の半額など)の受給権が残った場合に、現在の日本の税務署は「相続財産」だとして、残された人の平均余命までの通算額に相続税を課すという。これは余りに理不尽だ。

 4点目はパンデミック対応だ。SARSやエボラ出血熱のような強毒性のウィルスであれば、日本は島国の特質を活かした感染対策をするのは当然だ。だが、コロナ禍に際してはウィルスが弱毒性だと判明した後も、在外日本人には検査を義務付けたり、アプリで追跡したり入国後も病原菌扱いした。それどころか外国籍者は一切シャットアウトして、例えば国際的な構成の家族を引き裂いて平然としていた。根拠は非科学的であり、国内の感情論に迎合した結果だ。この種の弱毒性のパンデミックの場合は、二度とこのような排外心理に迎合した鎖国を許してはならない。

 この4つの問題は、国内在住の日本人にはなかなか理解の難しい問題だ。だが、在外日本人には深刻な問題であり、日本の立法府に改善を求めるには何としても代表を送り込むしかない。今回の選挙を、こうした問題を考える契機としてはどうだろうか。(れいぜい・あきひこ/作家・プリンストン在住)

新生モモタロー誕生

東京のAYOMOTが経営

サミーさんは名誉会長に

 ニューヨークで半世紀にわたり日系ヘアサロンを経営してきたモモタローのサミー宮本社長(78)がこのほど名誉会長職に退き、東京南青山で美容サロンAYOMOTを経営する鈴木朋弥氏(53)に経営権を譲った。その披露パーティーが新店舗となる五番街575番地2階で開催された。

 「自分がなりたいイメージになれる美容サロン、21世紀の顧問美容師」を目指して25年間日本で活躍してきた鈴木氏が、念願のニューヨーク進出を果たした。鈴木氏は「50年もの間、ニューヨークで愛され続けてきた老舗サロン、モモタローが、このたび、五番街に移転し、新たなスタートをご報告できることを大変嬉しく思う。NY店創業者であるサミーさんが築き上げたこのサロンは、技術、文化、お客様への心配りを大切にしてきた。サミーさんは今後、名誉会長としてサロンを見守っていただく。これからもこの精神を受けつぎながら、私たちはさらに進化していくつもりだ。今回、五番街でジョン・アレン氏と新たなパートナーシップを結べることに感謝している。彼とのコラボレーションにより AYOMOTの強みであるヘア、メイク、ファッションの融合をさらに進化させ、このサロンから多くの新しい物語が生まれることを楽しみにしている」と挨拶した。

 花束を受け取り、バトンを引き渡した宮本さんは「こうして鈴木くんが、モモタローを今後さらに築き上げてくれるということを私は非常に嬉しく思う。50年を超えて皆さんのおかげでここまで頑張ってこれたことに本当に感謝してます」と語った。

(写真)花束を受けるサミーさん(左から2人目)と鈴木氏(左端)

メディカル美容サロン Re:forma 開店

女性を幹細胞製品で内面から美しくする。
男性向け頭髪の回復プログラムも充実。

 ニューヨークの中心、マンハッタン西56丁目に日本の伝統的な美意識と世界中の最先端技術を融合し、内面からも外面からも輝けるようなトータルケアを提供するメディカル美容サロン「Re:forma(リフォーマ)」が9日、開店した。

 安心で信頼できるクリニックを目指す同サロンは、男性にも対応しており、加圧トレーニング、メンズフェイシャル、そして男性向けの髪の回復プログラムも提供している。頭からつま先までの全身アプローチを提供している。さらに、幹細胞治療や再生医療に重点を置き、ボトックス、IV注射、SKINVIVE™、リジュラン®、AQUAGOLD®などの肌の再生を目的とした医療サービスも提供。加えて、ウルセラピーやレーザー治療などの最新技術を用いた美容と健康をトータルでサポートする。

 加藤康子オリジナル・メソッドのゆる加圧®・ゆる圧®ビューティーや加圧トレーニングなど、ニューヨークでもほかでは体験できない独自の技術を提供。美容加圧を含む包括的な加圧ケアは、循環改善や代謝向上、筋力強化を促進し、短時間で最大限の効果を実感している。

 日本製の幹細胞製品は特に更年期の女性の健康に役立つ製品を提供しており、女性のホルモンバランスや健康維持に貢献し、外からのメイクアップではなく、女性を身体の内面から美しくするアプローチが特徴だ。料金は、それぞれメニューによるが、初回すべて、パッケージも含め2割引。週刊NY生活を見たと言うと10月は、3割引きになる。


Re:forma 

https://reformanyc.com

営業時間は10am-8pm  定休日 月曜日

(646)-370-3064

hello@reformanyc.com

39 W 56TH ST, 2nd Floor, New York, NY 10019


藤田カンナ=美容クリニック「Re:forma」と「Kirei House」の代表として、日本の美の哲学と、米国および世界中から取り入れた先進的な技術を融合させ、心身の調和を重視した総合的な美容と健康ケアを提供している。コロンビア大学で学んだビジネスと経営の知識を活かし、最先端のアプローチを追求している。

永住帰国に備える JAAヘルスフェアで山口さんが来米講演

早めの計画が必要

日本のマイベストプロが講師を海外に派遣

 NY日系人会第18回JAA秋のヘルスフェアで6日、一般社団法人日本リレーションサポート協会代表理事で司法書士の山口里美さんが、NY日系人会館で「最新版!!日本への永住帰国に向け、抑えたい7つのポイント!」と題して講演した。後半は「安心ライフ!チェックノートで万全対策」と題する対面講演会を開催した。この講演は、日本で活躍する専門家を紹介するサイト「マイベストプロ」を運営するファーストブランド(河本扶美子代表)の協力でNY日系ライオンズクラブの企画として2018年から毎年開催しているが、今回は5年ぶりの対面式ニューヨーク開催とあって70人以上が参加する満席となった。講演のあとには、個別相談会も限定予約3人で行われた。

(写真上)帰国に伴う日本でのさまざまな手続きについて解説する山口さん(6日NY日系人会館で)

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 山口さんは、帰国対策のタイミングは「気付いた時」だという。日本の現状は1年間に157万5936人が死亡。日常生活に制限ない健康寿命は男性が72・68歳。女性が75・38歳。平均寿命との差は男性が8・73歳、女性が12・06歳あり、その差が不健康な期間とされる。

 これからの相続対策は、認知症対策がポイントになる。内閣府の調査で2025年は認知症は5人に1人なのが、2060年には3人に1人になる。そんな中で増えているのが一人暮らしの高齢者数で700万人を超す。講演の要旨次の通り。

今年4月に相続登記が義務化

■相続・認知症
抑えたい7つのポイント

挨拶するファーストブランド河本社長

(1)重要書類のリストアップ(不動産権利書、遺言書、銀行通帳、保険証券、証券会社の証書)他人が手出しできない。遺言書は貸金庫には入れないこと。銀行口座やカードは減らす。銀行の定期預金は早めに解約して生命保険など置き場所を変える。デジタル遺品の管理(Eメール、SNS、オンラインバンキング、クラウドストレージ、定期購読)。紙媒体での保管がポイント。

(2)エンディングノートの活用(目的は自分の最期の意思を家族に伝える。緊急時の対応を円滑にする)内容は、医療、介護、葬儀の希望、財産の情報、その他パスワードや重要書類の保管場所、親しい人へのメッセージ。大切なのはコミュニケーション。

(3)認知症対策(任意後見と民事信託)銀行や不動産の契約行為は本人の「意思確認と署名」が必要。2つある成年後見制度=判断力が低下したあとは「法定後見制度」、判断能力が低下する前は「任意後見制度」がある=表(1)。信頼できる親族に任意後見人になってもらう。特定の財産の所有権のうち、管理処分権だけ受託者に移転(名義は移転するが、財産権は移転していないので受託者は課税対象とならない)。元気なうちに子供に民事信託で不動産を預けることで、子供が自由に不動産の修繕、売却、建て替え、賃貸契約、管理委託契約が可能となる。

(4)遺言書の作成(遺言書は遺書ではない。意思、想い、希望をしっかりと家族に伝える大切な権利)。公正証書遺言の活用を。どんな人が必要か=再婚をして前の配偶者との間に子供がいる、結婚しているが子供がいない夫婦、特定の子供に多くの財産を相続させたいなど。

(5)不動産の管理(相続登記の義務化)、不動産の共有はできるだけ避けたい。不動産の処理は早めに考えておくこと。

(6)葬儀(葬儀・お墓のことは生前に自分で考えておくこと)墓じまいも家族で話す。

(7)相続登記がすんでいるか確認する。相続登記の放置、山林・農地を受け継いだが何もしていない人は司法書士に相談を。2024年4月1日から相続登記が義務化された。3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象に。義務化前に相続した不動産も対象になるので要注意。不動産の名義変更、住所変更も変更から2年以内に登記申請しないと5万円以下の過料対象になる。

     ■

 相談の多い事例=老人ホーム入居相談、海外から帰国時の在留手続き、身元保証・死後処理、遺言・相続、不動産売却、後見人・財産管理。大切なポイントは「帰国前から早めに検討する」こと。(山口さんの仕事内容とプロフィールは11面NY生活ウーマン欄に掲載

永住帰国者の手続きを支援する

一般社団法人日本リレーションサポート協会代表理事

山口 里美さん

 米国在住の多くの在留邦人の関心事は、「いつか日本に帰国するかもしれない。だが、それはいつ?」ということだ。

 ニューヨーク日系人会で、第18回秋のヘルスフェアが開催されており、6日、一般社団法人日本リレーションサポート協会代表理事で司法書士の山口里美さんが、「最新版!!日本への永住帰国に向け、抑えたい7つのポイント!」と題して講演した。この帰国後の準備と日本の社会保障制度などをテーマに講演するのは今年で7年目。パンデミック以降、5年ぶりの対面式NY講演とあって、会場は入室定員上限の70人いっぱいの超満員となった。

 日本の現状は1年間に157万5936人が死亡する。これからの相続対策は、認知症対策がポイントになる。内閣府の調査で2025年は認知症は5人に1人なのが、2060年には3人に1人になる。そんな中で増えているのが一人暮らしの高齢者数で700万人を超す。

 「米国からメールで連絡いただきZOOMで、そして、帰国されてから弊社オフィスでと、約10名の方々のご相談をお受けしております。内容は、施設をお探しする、遺言書を作成する、死後事務委任契約を結ぶなど、さまざまです」という。例えば、帰国後に自分で高齢者施設を探そうとしても、そもそも、情報がゼロからのスタートだと探すのに相当な時間がかかる。事前に情報を得ておくことで、目的に合った施設を早く探すことが可能となることを講演会で解説した。

 「誰に相談してよいかわからなかったけれど、山口さんのセミナーを聞いて、お願いすることができて本当によかったと言われます。『私の友人にもこのサービスを紹介したい』とお友達を紹介して下さった方もいます」という。

 また、米国在住者で帰国する人の経済面での大きな関心は、米国で受け取っている米国年金をどのように日本での受給に切り替えるかだ。「日本とアメリカは年金協定国であるので、日本の年金事務所の手続きを行えば、基本的には年金を受け取ることが可能です。具体的なお手続きがわからない場合、日本の専門家をご紹介することも可能です」という。日本への帰国相談窓口として、山口さんに相談すれば大体の解決策は見つかるところが心強い。

 「自分で自由に動くことのできる健康なうちのご決断をお勧めします。帰国後、手続きで役所に行く、住居を探すなど、結構体力の必要なことでもあります」と話す。(講演要旨5面に、三浦良一記者、写真も)

ジョーカーが描いた夢  Joker: Folie à Deux 

  「ジョーカー」(2019年)の続編。ピエロのバイトで生活するアーサー・フレックが社会の隅に追いやられ、殺人鬼ジョーカーに変貌してから2年。死刑求刑が確実な裁判に臨むアーサーの生活ぶりと彼が思いがけずに出会ったハーレー・クインとの狂気の恋が語られる。 

 ミュージカル仕立ての心理スリラーという変わったジャンルでクインに扮するレディ・ガガとジョーカーのホワキン・フェニックスの歌う場面が随所に挿入され、ややミュージカルの比重が大きい。前作に比べて殺人場面など目に見える残虐さは抑え気味だが悲痛、絶望といった内面の残酷さが増幅され、暗さで押しつぶされそうな雰囲気が漂う。 

 アーサーは逮捕後アーカム州立病院に収容され裁判を待っている。矯正施設のようなもので環境は劣悪かつ看守は暴力的だ。げっそりやせ細り、ピエロ姿で闊歩したあのジョーカーの面影はない。 

 弁護士のスチュワート(キャサリン・キーナー)は殺人を犯したのはアーサーの中にいるもう一人の人物ジョーカーなのだといわゆる多重人格を理由に「精神障害による無罪」を勝ち取る戦略だが、アーサー自身の反応は鈍い。事件をきっかけに社会への不満を募らせる人々の代弁者として祭り上げられたものの、アーサーには将来の希望もなく「生きたい」という情熱が無くなっていたからだ。 

 しかし変化が訪れる。ある日、アーサーは病院内で合唱グループに参加するハーレー・クインに出会い、二人は恋に落ちた。明らかにアーサーの顔には微笑みが戻り、見違えるように覇気が感じられるようになった。ただし、クインのアーサーに対する想いにはどこか屈折した感情が入り混じっていた。 

 クインとの未来を切望するアーサーはスチュワートを解任し、自身が弁護人になることを選ぶ。しかもジョーカー姿で。アーサーはジョーカーの格好をしている時は驚くほど自信に満ち溢れていた。2年前のあの時のように。2時間13分。R。(明) 

(写真)アーサー(フェニックス)はクイン(レディ・ガガ)に恋をした 
Photo : Niko Tavernise/™ & © DC Comics /Warner Bros. Pictures 


■上映館■

Regal Times Square 

247 W. 42nd St. 

AMC Empire 25 

234 West 42nd St. 

AMC 34th Street 14 

312 W. 34th St.