早めの計画が必要
日本のマイベストプロが講師を海外に派遣
NY日系人会第18回JAA秋のヘルスフェアで6日、一般社団法人日本リレーションサポート協会代表理事で司法書士の山口里美さんが、NY日系人会館で「最新版!!日本への永住帰国に向け、抑えたい7つのポイント!」と題して講演した。後半は「安心ライフ!チェックノートで万全対策」と題する対面講演会を開催した。この講演は、日本で活躍する専門家を紹介するサイト「マイベストプロ」を運営するファーストブランド(河本扶美子代表)の協力でNY日系ライオンズクラブの企画として2018年から毎年開催しているが、今回は5年ぶりの対面式ニューヨーク開催とあって70人以上が参加する満席となった。講演のあとには、個別相談会も限定予約3人で行われた。
(写真上)帰国に伴う日本でのさまざまな手続きについて解説する山口さん(6日NY日系人会館で)
◇
山口さんは、帰国対策のタイミングは「気付いた時」だという。日本の現状は1年間に157万5936人が死亡。日常生活に制限ない健康寿命は男性が72・68歳。女性が75・38歳。平均寿命との差は男性が8・73歳、女性が12・06歳あり、その差が不健康な期間とされる。
これからの相続対策は、認知症対策がポイントになる。内閣府の調査で2025年は認知症は5人に1人なのが、2060年には3人に1人になる。そんな中で増えているのが一人暮らしの高齢者数で700万人を超す。講演の要旨次の通り。
今年4月に相続登記が義務化
■相続・認知症 抑えたい7つのポイント
挨拶するファーストブランド河本社長
(1)重要書類のリストアップ(不動産権利書、遺言書、銀行通帳、保険証券、証券会社の証書)他人が手出しできない。遺言書は貸金庫には入れないこと。銀行口座やカードは減らす。銀行の定期預金は早めに解約して生命保険など置き場所を変える。デジタル遺品の管理(Eメール、SNS、オンラインバンキング、クラウドストレージ、定期購読)。紙媒体での保管がポイント。
(2)エンディングノートの活用(目的は自分の最期の意思を家族に伝える。緊急時の対応を円滑にする)内容は、医療、介護、葬儀の希望、財産の情報、その他パスワードや重要書類の保管場所、親しい人へのメッセージ。大切なのはコミュニケーション。
(3)認知症対策(任意後見と民事信託)銀行や不動産の契約行為は本人の「意思確認と署名」が必要。2つある成年後見制度=判断力が低下したあとは「法定後見制度」、判断能力が低下する前は「任意後見制度」がある=表(1)。信頼できる親族に任意後見人になってもらう。特定の財産の所有権のうち、管理処分権だけ受託者に移転(名義は移転するが、財産権は移転していないので受託者は課税対象とならない)。元気なうちに子供に民事信託で不動産を預けることで、子供が自由に不動産の修繕、売却、建て替え、賃貸契約、管理委託契約が可能となる。
(4)遺言書の作成(遺言書は遺書ではない。意思、想い、希望をしっかりと家族に伝える大切な権利)。公正証書遺言の活用を。どんな人が必要か=再婚をして前の配偶者との間に子供がいる、結婚しているが子供がいない夫婦、特定の子供に多くの財産を相続させたいなど。
(5)不動産の管理(相続登記の義務化)、不動産の共有はできるだけ避けたい。不動産の処理は早めに考えておくこと。
(6)葬儀(葬儀・お墓のことは生前に自分で考えておくこと)墓じまいも家族で話す。
(7)相続登記がすんでいるか確認する。相続登記の放置、山林・農地を受け継いだが何もしていない人は司法書士に相談を。2024年4月1日から相続登記が義務化された。3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象に。義務化前に相続した不動産も対象になるので要注意。不動産の名義変更、住所変更も変更から2年以内に登記申請しないと5万円以下の過料対象になる。
■
相談の多い事例=老人ホーム入居相談、海外から帰国時の在留手続き、身元保証・死後処理、遺言・相続、不動産売却、後見人・財産管理。大切なポイントは「帰国前から早めに検討する」こと。(山口さんの仕事内容とプロフィールは11面NY生活ウーマン欄に掲載 )