帰国後は2週間待機

米国から入国に検疫強化

 日本の総理大臣官邸で23日、第22回新型コロナウイルス感染症対策会議が開催され、新たに米国からの日本人を含む入国者に対する検疫強化が決定された。日本への帰国・出張などの際には注意が必要となる。

 日本人を含む米国全域からの入国者に対し、検疫所長の指定する場所(自宅・宿泊施設等)で14日間待機し、国内において公共交通機関を使用しないことを要請する。米国太平洋時間3月25日午前8時以降に米国を出発し、日本に来航する飛行機または船舶を対象とし、4月末日までの間、実施する。

 この措置の実施に伴い、厚生労働省は次のように注意を呼びかけている。米国から来航する航空機などで入国する人すべてについて、健康状態に異状のない人も含め、検疫所長の指定する場所(自宅など)で14日間待機し、空港等からの移動も含め電車、バス、タクシー、国内線航空便などの公共交通機関を使用しないことをお願いする。このため、飛行機に乗る前に、以下について、確認するよう注意を喚起した。(1)このような要請がなされることを前提として、入国後の旅程に支障がないこと。(2)入国前に自分で入国後14日間の滞在先(特に外国人の場合は,

自宅がないので,宿泊施設)を確保していること。(3)空港からその滞在先まで移動する手段(公共交通機関以外)を確保していること。帰国の際は空港から待機場所までの移動には、公共交通機関を利用できないため、自家用車、レンタカーなどの移動手段の確保を事前に行う必要がある。

詳細は外務省海外安全ホームページ

https://www.anzen.mofa.go.jp/info/

新規ビザ発給停止 在日米国大使館

 在日米国大使館は3月18日、対面対応が必要な一般査証の新規発給を3月19日より停止すると発表した。東京にある在日米国大使館はもちろん日本国内各地にある米国領事館すべてで停止する。非移民ビザの面接が一時的に停止されるとともに、3月19日以降の非移民ビザの予約はすべてキャンセルされた。

 今回の措置は、新型コロナウイルスの感染拡大抑制の観点から、緊急の場合を除き、在日米国大使館及び総領事館職員と一般査証申請者との対面でのやり取りを避けるためにとった一時的な措置であり、オンライン申請の可能な電子渡航認証システムであるESTAによる短期商用・観光・トランジット等を目的とする米国への渡航は引き続き可能だ。また、領事との面接が必要でないビザ申請は引き続き受け付けており、ビザ申請が郵送申請の条件に該当するかは在日米国大使館・領事館のウェブサイトhttps://jp.usembassy.gov/jaのビザ・サービスを参照のこと。

 ビザ面接予約はキャンセルとなったが、ビザ申請料金は支払日より1年間有効で、ビザ面接が再開され次第、有効期限内であれば新たに申請料金を支払うことなく再度面接予約を取ることが可能。なお、米国へ緊急で渡航する必要がある場合の緊急面接の申請は、ビザコールセンターへ連絡する。詳細は前記ウェブサイトまで。

テイクアウト&デリバリー レストランのお弁当 郊外の在宅勤務で需要増

新型コロナウィルスの感染予防対策の一環として、レストランやカフェ、バーなどの飲食店は店内営業ができなくなり、テイクアウトとデリバリーだけしかできなくなった。20日記者会見したクオモNY州知事は、これらのビジネスを助けるために「バーやレストランでフードをぜひ注文して欲しい」と市民に呼びかけている。
店側もランチに限らず夜までテイクアウトやデリバリーでなんとか危機を乗り切ろうとしているが、一方で、レントや従業員の給与が払えないために一時閉店を余儀なくされる店も相次いでいる。
22日からは州全域に外出禁止令が出され、在宅勤務する人や、公立学校が休校となって自宅に子供がいるために手が回らない保護者が増え、レストランのテイクアウトやデリバリーがさらに「有難い存在」になっているのではないか。本紙は今週号で、テイクアウトができるレストランと家庭とを結びつける特集を緊急で組んだ。
19日昼過ぎ、ウエストチェスター郡ハリソン駅前にあるすし店「はじめ」(ハルステッド通り267番地/電話・914・777・1543)の店主、高橋治さんは、近隣の日本人家庭からの同店人気のちらし(14ドル)=写真=のテイクアウトの注文に追われていた。鉄火丼(14ドル)、寿司ランチ(12ドル)の注文も電話で次々とかかってくる。取りにきた母娘連れは「美味しいから頼んでます」 と笑顔を残して出て行った。(写真・三浦良一・週刊NY生活 3月28日号 特集記事2面〜3面に)

チェルノブイリ2

国連アート探訪 ⑧ 
よりよい世界への「祈り」のシンボルたち
星野千華子

廃炉作業の騎士たち
福島を国連で思う

 廃炉作業のご案内をしていただいた職員の方々と食堂で昼食をご一緒しているときに、「廃炉作業、そして除染作業、福島をもとに戻そうというまだ人類がだれも成しえなかった事業に取り組まれて、とても感激したしましたし、みなさまのことを誇りにおもいます」と話しかけました。驚いた顔で私をみつめ、「そのような有難いお言葉をいただいてもよろしいのでしょうか?」と戸惑い気味におっしゃり、その肩が小刻みに震え何度も目頭をぬぐっておられました。

 実は、と取りだされた身分証明書ホルダーの中には、みなさん子供や家族の写真をいれておられました。「子供たちにこの作業を引き継がせない」「自分たちで終わらせる」そのような覚悟で作業をなさっていることを、その時初めて知りました。

 ドラゴンに挑む彼らに剣も盾もありません。

 それでも、真摯に作業に取り組む「騎士」たち(毎日2000人が作業に携わっています)。電気をお金さえ払えば、無尽蔵に使えると勘違いしている私たちは、この黙々と困難に向き合っている騎士たちにもっと敬意と感謝を払うべきであると強くおもいます。

 私たちが日々当たり前に手にしているものすべてが、誰かの尽力と、何かの犠牲(例えば地球環境)、によってもたらされていることを、このタペストリーのご紹介とともに一緒にお考えいただきたいと切に願ってやみません。

 と申しますのは、高校生だった時に社会の授業で、「脱ダム」問題にふれました。先生が「私は毎日寝る前にテレビや使わない家電製品のコンセントをすべて抜きます。これで1円分の電気の節約になります。」と話され、周りの女子生徒たちは、「そんな、面倒なことをする人とは、結婚したくない」と一斉に声をあげました。その時先生が、「そういう身近な努力を怠る人には、脱ダムの問題を語る資格はない」と厳しくおっしゃり、私たちはぐうの音もでませんでした。

 このタペストリーの左のキリストの涙が事故による悲劇とするならば、右に描かれている智慧の象徴であるフクロウは、私たち人間が国も民族もイデオロギーも越え、「智慧」を結集させることで、蘇っていく未来への希望のシンボルであり、その前に立つ私は、「自分の出来ることに心を尽くす」との誓約書であると思っています。

(筆者は、日本政府国連代表部勤務の幹部の配偶者でニューヨーク在住)

和食家庭料理宅配します 週替わりのメニュー2人分を 自然食材使用し5日分お届け

和食家庭料理の宅配サービス「マイ・ハッピー・タミー・クラブ」は、妊婦や産後ママ、共働き、小さな子供のいる忙しい家庭、独身・単身で多忙な人、年齢とともに健康が気になる人などへ、できる限りオーガニック食材を使用した和食を提供している。
週替わりのメニュー(メインコース3品、副菜3品、スープ1品)を大人2人用、5日間分をセットで自宅まで届ける。この作り置きコースを注文した人には日系スーパーでの買い物も無料で代行し、一緒に届けることもできる。食物アレルギーやビーガンにはパーソナルシェフの派遣もしている。1品料理も各種オーダー可能。配達エリアはマンハッタン、クイーンズ、ブルックリン、NJ州フォートリー近郊(そのほかのエリアは要相談)。
問い合わせ・料金・注文などの詳細はウェブサイトwww.myhappytummyclub.com/を参照。

自然の野菜届けます NY農場フレッシュ4月から宅配復活

コロナウイルスの影響を受けて食生活が不安定になっているこの時期に、安全で、健康的な日本の食をお届けするNY農場が、
【NY農場フレッシュ】nynojofresh.comとして、復活した。4月から宅配サービスを開始する。中心商品は、鈴木ファームの有機野菜セットや日本のお米。登録制のサービス。問い合わせは[email protected]または、テキストで516・769・1683。
詳しくは本紙22面の広告参照。

がん患者が答える人生相談

幡野広志・著
幻冬舎・刊

 がん患者としての素直な思いをブログやSNSで発信する写真家、幡野広志さん。写真家として独立した2011年に結婚、16年に長男が誕生するもその翌年の17年、34歳で血液がんの一種である多発性骨髄腫を発病。半年ほどひどい腰痛に悩まされて病院を回っていたが原因がわからず、その痛みが骨に転移したがんによるものだとわかったときには、痛みの原因が判明したことにほっとしたという。同時に妻と幼い息子のことを思ってひと晩泣いた。さらに検査結果で「完治が難しいタイプ」と診断、末期がんで余命3年の宣告も受けた。

 ある日突然、突きつけられた「余命3年」。SNSでそのことを告白すると、以来、幡野さんのもとに多くの人生相談が届くようになった。相談の内容は病気や健康のことに限らず、恋愛・不倫、人生、親子関係などさまざま。クリエイターが各自のコンテンツを発表してファンと交流するウェブメディア「ケイクス(cakes)」において、『幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。』のタイトルで掲載し、人気連載となった。本書はその中から36本のお悩み相談を収録。今年2月の発売日翌日には重版が決まるほどの反響を呼んでいるが、本人は「過大評価されすぎだ」と謙虚に受け止めている。

 人から好かれようが嫌われようが気にならないという達観した彼の回答には、読者から多くの共感と、腑に落ちるという声が挙げられている。「家庭のある人の子どもを産みたい」「親の期待とは違う道を歩きたい」「いじめを苦に死にたがる娘の力になりたい」「ガンになった父になんて声をかけたらいかわからない」、または「風俗嬢に恋をした」「売春がやめられない」「兄を殺した犯人を、できるならば殺してやりたい」など。これらの問いに対し、幡野さんはちょっとシュールなジョークとともに意見を綴っている。

 また、書籍カバーをはがすと美味しそうなフルーツパフェとカフェラテの写真が出てくる。これらはひとり旅をしているときに高知県の石摺岬と釧路の喫茶店で撮影した写真だという。実際に本を手に取った人しか見ることができない幡野さんの思い出の写真、その遊び心も素敵だ。

 なぜ、相談者たちは誰にも言えない悩みを余命数年の写真家に打ち明けるのか。本書を読む前に私が感じた疑問だが、人生相談を通して幡野さんから届く言葉は彼らにとって強いいのちのメッセージとなり得ているのかも知れない。人生はただ長ければいいというわけではなく、多くの人に影響を与え、生きた証を家族に残してゆけるなら最期のときに幸せだったと思えるのではないだろうか。

 本書を読んで思うことは、もしも彼ががんを公表していなくてもブログを読んでいれば「この人に相談したい」と思われる人なのだろうということだ。幡野さんは前述のウェブメディア「ケイクス」(有料会員制/https://cakes.mu/)で現在も人生相談を募集している。

      (高田由起子)

イスラム教徒の女性、ファッショナブルな装い

 クーパー・ヒューイット・スミスソニアン・デザイン博物館(東91丁目2番地/五番街)で、「現代イスラム教徒のファッション」と題する初のイスラム圏ファッション展示が開催されている。現在はコロナウイルスの感染拡大予防のため一時閉館になっているが、会期は8月23日まで続く。

 イスラム教徒の女性は黒い布で頭からつま先まで覆うという先入観念を取り壊し、展示ではハイファッションから、街着、カジュアル・ウェアー、オートクチュールまで、イスラム圏や欧米で活躍中のイスラム教徒デザイナーの作品80点と写真40枚が展示されている。マネキンの装いや数か所に置かれたビデオテープや見ると、今日のイスラム教徒の女性は長袖、ハイネック、長いスカートなど着用、肌は見せなくとも、シースルーの絹や化学繊維を流行のデザインに纏め、伝統を保ちながら現代ファッションを楽しむ様子が伺える。「伝統的」で「慎み深く」「流行を取り入れた」ファッションがそこに見られる。

 地理的には中近東の展示もさることながら、インドネシアのコレクションが特に目を引いた。「西洋の先入観に反して、今日のイスラム圏はファッション業界が最も成長期を迎えています」と、同博物館キュレーターのジル・ダレサンドロ氏が説明する。特にイスラム人口の多いインドネシアのファッション業界の成長は目覚ましいと指摘した。

 この展示は2018年9月にサンフランシスコのファインで始まり、ドイツのフランクフルトを経由してニューヨークでの最終展示となっている。

 開館時間は毎日午前10時から午後5時まで。入場料:大人16ドル、シニア(62歳以上)と身体障害者は10ドル、学生は7ドル、会員と18歳以下は無料。

 問い合わせは電話・212・849・8400。

(ワインスタイン今井絹江、写真も)

サーカスの道化師で役者にも

フィジカルコメディアン
岩佐 麻里子さん

 日本大学芸術大学演劇学科卒業後、ディズニーランドパレードダンサーやストレートプレイ、ミュージカルなどを経てニューヨークに2006年の12月末に来米した。スタンダップコメディーショー、バラエティショー、オフオフブロードウェイなど様々な舞台に出演したあと、2012年11月から米国で一番の老舗サーカス、リングリングブラザーズ・アンド・バーナムアンドベイリーサーカスにクラウン(道化師)として17年5月の最終公演まで参加した。18年に拠点を再度ニューヨークに移し、現在は日米問わず舞台作品、音楽ライブ、スタンダップコメディーライブ、バラエティーショー、ホスピタルクラウン、老人ホーム訪問、イベントなど様々な分野で活動している。

 ニューヨークに戻ってきて最初にオーディションで得た仕事は、シラキュースのレッドハウスシアターで上演されていた「チャーリーブラウンクリスマス」のスヌーピー役。ぬいぐるみを着るのではなく、黒い耳をつけてメイクは鼻を黒く塗るだけ。首輪の代わり蝶ネクタイ。白いズボンに白いサスペンダー。モノトーンの出で立ちで、チャップリンかバスターキートンの無声映画時代のようなフィジカルコメデイーを演じた。

 「スヌーピーって、まったく、クラウンそのものなんですよね。立ち位置というか、まず、犬で、人間じゃない、なんでもできるけど、ちょっとボケている。安心して見ていられるというか。サーカスも、スリリングな演技や猛獣使いが出てきたりしてハラハラどきどきの場面の連続だけど、その幕間に、♪ちゃっちゃチャラララって楽しい音楽で出て来るクラウンの登場で、その場の空気感が変わるというのがシアターでも使えると思った」という。

 英語で、クラウンと呼ばれる職業。日本語に訳すと道化師。クラウンの中にピエロ、ジョーカー、宮廷道化師のジェスターなどが入るらしいが、その区分けの微妙なところは自分でもよくわからないそうだが、自分はピエロではなくてクラウンだと思っている。最近は、映画「ジョーカー」のおかげか、映画を見たというフェイスブックのお友達から仕事をお手伝いしたいというメッセージも来るようになった。

 クラウンで培った経験でソロ公演にも挑戦する。4月末に予定されていた公演はコロナウイルスの感染拡大の外出禁止令などで劇場が締まってしまったので、予定は未定だが公演日程が再度決まるのを待つ日々だ。

 (三浦良一記者、写真も)

https://www.facebook.com/marikoiwasaofficial/

祝ご卒業

ガウンを着て卒業証書を受け取る卒業生

温かさにあふれて
NY育英学園小学部

 ニューヨーク育英学園全日制部門(ニュージャージー州イングルウッドクリフス、岡本徹学園長)では、3月13日に小学部卒業式が行われた。

 会場には、小学部の卒業式では、在校生が描いた卒業生の似顔絵が壁いっぱいに飾られ、幼児部では、等身大の自画像が飾られて、温かさがあふれる中での式となった。

 小学部では、卒業に際し、岡本徹学園長からは「この学園で学び、体験したことを国際人として生かし人間として大きく成長していって欲しい」との言葉が贈られた。また、来賓として在ニューヨーク日本国総領事館より大橋建男領事部長が出席。祝辞を述べた。また、同学園アドバイザー コミュケーション・セラピストのカニングハム久子氏からは、はなむけの言葉として、子ども達の心に響くメッセージが贈られた。

 式の途中、感極まって泣き出してしまう在校生がおり、卒業生に対する想いの深さがうかがえた。また、それを受け止める卒業生と保護者、そして教職員の目にも涙が光っていた。

式の最後は卒業生による「旅立ちの言葉」。学園生活での様々な思い出や保護者、教職員への感謝の気持ちを力強く述べ、「私たちは力強く生きていきます」の言葉と共に9人の小学部卒業生が旅立った。

 新型コロナウイルスの影響により、その後予定されていた幼児部卒園式、サタデースクール・サンデースクール各校、アフタースクールの卒園卒業式はすべて延期となった。

 同学園への見学・編入の問い合わせは電話201・947・4832(学園事務局)まで。

(写真:)

明るい未来へ羽ばたいて
NY日本人学校

教師や在校生に見送られる卒業生たち

 ニューヨーク日本人学校(コネチカット州グリニッチ、小島昇校長)は3日、初等部第45回・中等部第43回卒業証書授与式を実施し、6年生9人、9年生23人の卒業生が巣立っていった。式には在ニューヨーク日本国総領事館山野内勘二総領事・大使をはじめ、8人の来賓が臨席し、卒業生の門出を祝った。

 式辞で小島校長は「皆さんが学校文集『LIBERTY』に書いたように、ここで出会った仲間を大切にし、自信をもって新しい世界に羽ばたいていくことを期待します」と卒業生に最後の言葉を述べた。来賓の祝辞では、「皆さんの進路はそれぞれ異なれども、きっと明るい未来が待っている」と激励を交えた言葉を賜った。次に、5年生と8年生の代表児童生徒が送辞を述べ、卒業生との思い出を語った。6年生による「門出の言葉」では、初等部での生活を振り返りながら、楽しかった思い出や感謝の気持ちを呼びかけにして伝え、合唱曲「旅立ちの日に」を力強く歌った。次に9年生代表が「仲間と過ごした日々は、ふと後ろを振り返った時に思い出となって輝いていることでしょう。私はこれからもこのクラスで学んだことを忘れずに、自分の道を精一杯歩んでいきたいと思います」と答辞を述べた。答辞の後、9年生全員で「桜の季節」を心一つにして歌った。

 式後は在校生・保護者・職員一同で卒業生を見送った。穏やかな春の風に包まれながら卒業生は見送りの花道を通り、それぞれの道への第一歩を踏み出した。

現実と妄想の衝突 The Invisible Man

 「SFの父」と呼ばれたイギリス作家H・G・ウエルズの同名小説をベースに物語を大幅に脚色したSFスリラー。姿の見えない影におびえる女性が次から次へと体験する奇妙な出来事。姿の見えない影とはつまりは透明人間なのだが、それが彼女の妄想なのか、それとも隠された秘密があるのか、初めから最後まで張り詰めた雰囲気が途切れないスリリングな展開だ。 

 主演は人気TVドラマ「マッドメン」のペギー役でブレイクし、「トップ・オブ・ザ・レイク」や「 The Handmaid’s Tale」( ハンドメイズ・テイル/侍女の物語)が爆発的人気を呼んでいるエリザベス・モス。元々、演技には定評のあるモスだが、本作では見えない相手に恐れおののく弱さと、奥に秘める芯の強さを絶妙のバランスで表現する。監督・脚本は「 Insidious Chapter 3 」(インシディアス 序章、2015年)のリー・ワネル。 

 セシリア(モス)は光学エンジニアで富豪のエイドリアンと結婚し、サンフランシスコ郊外の海の見える豪邸に住んでいる。一見、優雅な生活を送る幸せそうな夫婦を装っているが、エイドリアンはセシリアに対し異常なまで支配力が強く、精神的虐待もエスカレートしている。 

 遂にセシリアはすきを見てエイドリアンの元から逃げ出し、友人で刑事のジェームスの家にかくまってもらうが、いつエイドリアンが自分の居所を見つけて連れ戻しに来るかと思うと家から一歩も出られないほどだ。しかし、しばらくしてエイドリアンが自殺したことを知る。しかも、彼はセシリアに500万ドルもの遺産をのこしていた。 

 セシリアが家の中で奇妙な気配を感じ始めたのはそれからまもなくのことだ。そしてセシリアと姿の見えない相手との戦いは他を巻き込んだ衝撃的な出来事へと突き進んでいく。 

 セシリアが直面する精神的、肉体的恐怖。しかし実際に誰かが存在するのか、それともセシリアの恐怖心が生み出す「誰か」なのか。直球で攻めてくる質の高いサイコ・ホラーだ。1時間50分。R。(明) 

https://www.universalpictures.com/movies/the-invisible-man

新作映画を自宅で

コロナウイルスで現在、映画館閉鎖のため本作品は次の動画配信サービスを通じオンディマンドで視聴することができます。 Comcast , Sky, Apple 、 Amazon。料金は $19.99で視聴有効時間は48時間。

その1 第7回十字軍

ジャズピアニスト浅井岳史のエジプト旅日記

 フランス国王ルイ9世が13世紀に起こした第7回十字軍の船隊は、王妃マルガリータ・デュ・プロヴァンスの故郷、南仏のプロヴァンスを出港しエジプトに向かった。塩の産地として有名な南仏の街カマルグには、今もなお、十字軍が出港して行った長方形の砦が残る。私は、そのプロヴァンスから金曜日にNYに戻り、土日の演奏とたった1日のオフを挟んで、火曜日にエジプトに飛んだ。

 エジプトでコンサートをすることになろうとは夢にも思っていなかったが、素晴らしい縁をいただきカイロとアレクサンドリアでコンサートをすることになった。私が研究をしている(笑)ルイ9世の因縁なのかどうかは知らないが、地中海を挟んで全てが対極の国、南仏とエジプトで演奏を行うのだ。

 出発はいつものようにJFKから。エジプト・エアーでは随分とチェックインの勝手が違う。搭乗客はほとんどがエジプト人で、中には大型液晶パネルを持ち込んだり、一人で10個ものトランクケースを持ち込む人もいる。少々古い飛行機ではテーブルが傾いていて、手で押さえていないと機内食がこちらに流れてくる。機内食もビーフとジャガイモと卵の無骨なエジプト料理であるが、大食漢の私には嬉しかった。

 機内ではフランスとNYの演奏の疲れが出たのか眠りこけた。途中目を覚ますと、アドリア海上空を飛んでいた。ギリシャの上を飛んでエジプト入りだ!

 10時間のフライトの末に、太陽が眩しいカイロ空港に着く。人がまばらでニース空港のあの明るさとおしゃれ感は全く無い暗い空港であった。25ドルでビザを買う。それをパスポートに貼って入国。ビザってそういうもの?かなり待って荷物を受け取る。そのあとはウーバーだ。驚いたことにこの国でもウーバーが使える。空港でも”Uber in Arabic is Uber.”と大きく宣伝している。英語がほとんど通じないウーバー運転手と、待ち合わせ場所の混然さ、それに焼け付くような太陽の下でのピックアップはかなり苦労した。が、香港帰りという若いハンサムなエジプト人がわざわざ運転手に電話をして話をまとめてくれた。感謝!

 私は出かける国の言語はなるべく覚えようとするのだが、今回はアラビア語を何一つ覚えていない。運転手に「Thank you」は何というか聞いてみた。「ショコラ」だそうだ。フランス語のチョコレート?そいつは覚え易い。

 途中の景色は壮大で、今まで見てきた国々とは全く違う砂漠であった。緑の全くない荒地に砂が舞う。最近は海外の資本が入ってきているのかCocaCola等の西洋の看板を見るが、アラビア語で書かれた道路標識の高速道路を、荷物を山のように積んだ小さなトラックが走る。砂漠の際には崩れかけた建物が密集し一見するとスラムのような街が続く。かなりの頻度で月のマークの塔が立った建物がある。イスラム教の寺院、モスクだ!

 今回は、カイロ在住20年というベテランの日本人の新聞記者のアパートにお世話になる。最初はネットでカイロのダウンタウンにホテルを取っていたが、治安が悪いというので現地の方からホームステイのオファーをいただいた。そこに何とかウーバーで辿り着かねば。かなり近づいたと安心していたら、そこからは車が入れないというので、途中で降ろされた。困った。場所もわからないし荷物もある。仕方ない。GoogleMapを頼りに自分で歩く。太陽が焼けるように熱い。道はボコボコでトランクケースを頻繁に持ち上げなければいけない。ごった返した路地に、馬とロバと猛スピードで原チャリに毛が生えたようなタクシーが駆け抜けていく。いきなり大変な試練を味わっている。まずい!iPhoneのバッテリーが無い!時差ぼけの体に40度はあるのではないかと思うこの暑さは応える。現れる女性は全てベールを被っており、強烈にエキゾチックである。

 かなり心細くなりながらも必死で荷物を引きながら歩いていると、いきなり「アサイさん」と呼ぶ女性がいた。今回の世話役を買ってくれた現地の女性である。ホストの日本人ジャーナリストの下で働くエジプト人秘書で、なんと日本語が堪能なのだ。私が着くのをずっと玄関で待っていてくれたそうだ。救われた!安堵感と汗が滝のように流れた。早速クーラーの入った部屋に入り、彼女がラザニアとモロヘイヤのスープを作ってくれた。モロヘイヤってエジプトの植物だそうで、ねばりっこいものは日本人の口に合うと彼女がスープにしてくれた。

 食後はベッドに入って眠りこけたいところであるがそうはいかない。まだ外は明るい。食後に近所に散歩に出る。いやー、これ異文化!生きたひよこが段ボール箱に入って鳴いていたり、サボテンのようなものを並べて売っていたり、タライに入れた魚を猫を避けながら売っていたり、ヘチマが積まれていたりする。

 こうして今日から9日間、エジプトの生活が始まる。とりあえず無事に着いて自分のベッドがあることに感謝。(続く)

浅井岳史(ピアニスト&作曲家)

www.takeshiasai.com