編集後記

⬛︎編集後記

 みなさん、こんにちは。今週も無事に昼からのクイーンズ工場での新聞の印刷が終わり、マンハッタンの設置先での新聞の減り具合や今週号の設置状況を配達車で回って一通り確認してオフィスに戻るのが夕方の7時すぎ。新聞やニュースの決まりごとの中で大切なことの一つは、きちんと定刻に配達されること。決まった時間に、当てにしていた通りの新聞が配達されること。大ニュースが載っていなくても、新聞が届かないと不安になるものだ。


自宅で宅配購読しているニューヨークタイムズも昨年まで、1週間の平日5日間で平均2日くらい配達されない日が半年以上も続いた。日本では考えられないこと。日本なら、新聞社の本社または販売店に電話すれば係員が飛んでくる。日刊紙の場合は、部数獲得競争が激しいので、ニューヨークでもまだ読売、朝日、日経の3紙が現地印刷して販売員がくまなく配達していた時代、といっても25年ほど前の話。夜勤で読売新聞米国法人のオフィスで原稿を書いていると夜の8時を過ぎたあたりに購読者から「今日、新聞が届かなかったんだけどどうなってるの」と日本語で電話がかかってくる。電話を取ったのが、販売部の人間であろうと編集部の人間であろうと「お客様、お住まいはマンハッタンですか? 今からすぐお届けします!」と言ってオフィス取り置きの本日の新聞を持ってオフィスを飛び出していく。若かった私も何度か夕方に新聞1部を持って地下鉄に乗って新聞を届けたことがある。そうするとどうなるか。「わざわざすみませんね。今日の新聞は今日読まないと気分が悪いんで、来てもらってなんか、感激、ありがとう」と、以後、大切なお客さんとなってくれて、帰国しても新聞を継続購読してくれる。
 
 こういうひと昔前のお伽話のようなエピソードは今の日本にもあるのかどうか、しばらく日本を離れてしまったので状況がわからない。新聞購読者は減っているらしい。そしてアメリカ。新聞不配の連絡はウエブサイトで通知。午前10時までの連絡なら本日中の配達、または1部の代金を来月分購読料からクレジット払い戻し。または翌朝の配達、という選択肢があり、選んで終わり。チャット機能ボタンを押して、「どうしてこうも頻繁に新聞が届かないのか理由が知りたい。訳を教えて」と英語でテキストする。先方からすかさず「はい、私はチャーリーです」と名乗る相手から長文の丁寧なお詫びのテキストが届く。「配達現場の担当責任者に厳重に注意し、二度とこのような遅れ、不配のご迷惑をおかけしません。誠に申し訳ありませんでした。他にできることはありませんか?」と聞いてくる。

私は「お詫びが聞きたいのではなく、どうして、こんなにも新聞が届いたり届かなかったりするのか、なんでそんなにいい加減なのか、その理由が知りたい」とまたテキストする。「理由については分かりませんが、払い戻しか、翌日配達させていただきます。他に何かできることはありませんか?」とまた同じような問答を毎日繰り返して、相手がAIだと気づくのに1週間かかった。全く改善もなくそんなやりとりを繰り返しているうちに、AIの返答に変化があった。「Eメールで連絡されます?」。メールアドレスが指定してあった。Eメールがあるんなら早く言えよと思わず叫んだ。

 私はこう書いた。「私はニューヨークタイムズ紙を1990年代から自宅で定期購読している愛読者だが、ここ数か月、あまりにも新聞配達が不安定で、届かない日が続いた。私は名前から見てわかるかどうか知らないが、日本人だけど、昨今アメリカで流行っているこれはアジアンヘイトの一種ではないのかと正直思い始めているところだ」と。

すると2分も待たずにメール返信が来た。メールの送信者は今度は明らかに人間だった。しかも前回までと比較にならないほど単刀直入な即答ぶりだった。「明日からきちんと配達します」


 翌日からは、今まで新聞にはついていなかった、私の名前と住所のラベルが貼られ、以後は遅れることなくニューヨークタイムズは毎日早朝に自宅に配達されている。いい加減な配達員はクビになったようだ。日本なら電話1本ですむトラブルもアメリカでは大仕事だ。なので、私たちは、読者の気持ちになって、毎週新聞をお届けしています。それではみなさん良い週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)