日本のカイシャ改革は4月の行事見直しから

 日本の文化には四季の移り変わりを楽しむ習慣が濃厚にある。まずは花鳥風月を愛でることに始まり、祭礼などの行事、四季折々の食文化があり、季語を詠み込む俳句という文学まである。こうした季節感は大いに結構と思うが、教育やビジネスにおける、いかにも保守的な「季節感」については、そろそろ再考しても良いのではないか。

 まず教育については、桜の季節にランドセルを背負わせた「絵」で子どもの成長を感じたり、最近は温暖化で開花が早まっているので、桜の咲く中で卒業式をしたりするのは日本独自の文化だ。こちらも、共同体への帰属と同調を刷り込むだけで、個の覚醒や成長には効果が薄いと思う。何よりも卒業において、個人の達成を評価する要素が少なすぎる。

 それはともかく、この春、4月の「風物詩」ということでは、企業カルチャーにおける問題は相当に根深いと言える。日本の「カイシャ」という文化は、とにかくここまで生産性の低さが問題になっている中では、一旦解体して再構成(リストラクチャー)すべきと思うが、まず手始めにこの4月に起きていることについて、確認をしてみたい。

 まず、今でも多くの企業では入社式を行っている。今年は、久々に「対面」で実施できるなどと話題になっているわけで、まだまだこの儀式は健在だ。問題はその「式」の中身である。社長が壇上から訓示をするのだが、成人式で行われる首長のスピーチと大差ない儀礼的なものが多い。訓示の内容は2つであり、江戸時代のように保守的な社会人の心得を説いているくせに、自分の中長期ビジョンなどを披瀝して「君たちも未来を目指せ」などと語る中で見事に自己矛盾を演じつつ、喋っている社長自身はその矛盾に気づかないのが「お決まり」となっている。

 驚くべきことに、近年の入社式には「保護者」を招待する企業が多いという。保護者に「ブラック企業」だと思われて、入社早々に退職を勧められては大変なので、好感を持ってもらうのが目的で、企業としては必死の工夫だというのだが、奇妙な話だ。

 新入社員はまだいいが、中堅社員になると4月は人事異動、具体的には転勤や昇格人事の季節である。まず転勤については、夫婦共働きが常識となっている現在の日本では、異動には単身赴任という国際的には他に例を見ない習慣が重なっている。政治家も「家庭を大事にするのが日本の美風」だなどと説くのであれば、まずこの悪習、つまり本人の望まない勤務地へ異動は禁止するような提案をすべきだろう。

 昇格人事に一喜一憂するのもおかしな話だ。管理職は管理のプロが任命されるべきで、過去の業績への報奨として管理ポストを与えるというのはナンセンスだ。つまり、本人も組織も不幸にし、最終的には企業を衰退させるということに、いい加減気づくべきだろう。

 入社式や人事異動と並行して、この4月というのは多くの企業では決算シーズンに当たる。この決算というのも、日本企業の場合は大いに問題ありだ。まず、4月に決算の作業を行う企業は3月末が決算期であり年度の会計を〆る。その結果を公表するのはいつかというと、実は1か月半後の5月中旬という場合が多い。これは非公式な短信であり、正式な数字を報告する株主総会は6月末というスローぶりである。

 どうして遅れるのかというと、在庫管理や売上計上、売掛金の管理などについて多くの企業では、日次、月次の管理が緩いために、決算期に正確な数字がすぐに出せないからだ。これに加えて、どうしても節税したいとか、反対に利益を見せて株主を安心させたいなどの動機から、決算期に「悪あがき」をすることもある。そもそも現場が貸借対照表を理解しないので、決算の作業そのものが難航する場合も多い。

 そんな中で、世界では当たり前になっている四半期決算を止めようとか、四半期ごとの発表は非公式の短信でいいなどという甘えた話が日本では横行している。その方が「サステナブル(持続可能)」だなどという議論まであるので笑止千万だ。国際会計基準を理解し、世界中どこでも使っている会計ソフトを忠実に運用し、経営幹部以下が決算期の例外的な会計操作を止めれば済む話である。毎月の月次決算を3つ足せば四半期決算になり、1年分を足せば年度の決算になるのが当然であり、コソコソと「鉛筆なめなめ」2か月もかけて決算をやるから、生産性が上がらないのだ。

 多くの企業が新年度を迎える4月、恒例になっている行事の多くを徹底的に見直すスタートの季節にしてみてはいかがだろうか。

(れいぜい・あきひこ/作家・プリンストン在住)

国連国際学校で千葉さん和菓子の実演

日本語を学ぶ米国の高校生370人参加

 米国東海岸で日本語を学ぶ13校の高校生370人余りが参加して3月27日、第28回北東部日本語教師会(NECTJ、津田和夫会長)主催の春祭りがニューヨークの国連国際学校(UNIS、田中雅裕同祭実行委員長)で開催された。同校は国連職員の子弟のために創設された学校。

 日本政府を代表してニューヨーク日本総領事館の森和也広報センター長が祝辞を述べ、国際交流基金ニューヨーク事務所日本文化センターの下山雅也所長が出席した。

 同祭では式典の冒頭に、ニューヨーク在住の料理研究家、千葉真知子さんが、電子レンジ・クック膳を使った和菓子制作の実演を披露しながら講演した。お干菓子の材料、寒梅粉20グラム、和三盆40グラム、色粉、しとりみつ小2(しとりみつは、水あめ、水でつくる)を英語で説明しながら「昔からあるお干菓子の木型は4万5000円もして、型を彫る職人は日本にはもう数人しかいなくなり、お干菓子のプラスティックの型を私が考案しました」と言うと会場から拍手が湧いた。春祭り会場では、日本文化を体験するブースが1階ロビーに設けられ、千葉さんのブースには早速高校生たちが集まり、まずは、練り切りをアンパウダー、砂糖、塩、水をクック膳で3分加熱して和菓子の型に詰めて出来上がるところまでを体験して、最後はパクリとかじって「うーん、美味しい! 柔らかい日本の味です」と綺麗な日本語で感想を語り笑顔を見せていた。(写真上=講堂で和菓子について説明する千葉さん)

千葉さんの指導で和菓子の制作に初挑戦する米高校生たち

 国連国際学校での実演の前、一時帰国から米国に戻る直前に千葉さんは、文化庁の都倉俊一文化長官を訪問した。千葉さんは「都倉長官は、日本の伝統文化である和菓子を世界に発信していきたい。木型を彫る職人が数人しかいなくなり、高額なことも問題だと話され、私の開発した20種のプラスチックの和菓子の型、英語の本に大変興味を持ってくださいました。簡単に作ることも外国人には必要とも。パリのコルドンブルー料理学校の先生たちに和菓子の指導をした事も大変評価してくださいました」と話した。

社会貢献は教育支援から

コロンビア大学理事

花沢菊香さん

 花沢菊香さんはこの春、コロンビア大学の理事に選出された。同大学初の日本人女性理事だ。東京生まれの花沢さんは、コロンビア大学のサマープログラムに入るため1989年に来米、その後美術史を専攻して2000年に同大学を卒業した。

 大学の理事会は大学がつくるミッションの遂行をサポートするためのもので、学長を選任・罷免する権限をもつ。一方で、報酬はない。花沢さんのモチベーションとなっているのは、次世代の教育に対する情熱だ。「社会貢献のためにビジネスや非営利団体の活動をいろいろやってきましたが、行き着くところはいつも教育です。社会問題をどうやって変えていくことができるか、それを解決する人をつくるのは教育だからです」と花沢さんは語る。

 花沢さんは、日米のファッション業界で30年以上にわたり企業経営、投資、慈善活動を続けてきた。ニューヨークのファッションブランド、VPLのCEO(最高経営責任者)を務める一方、東日本大震災後に「ファッションガールズフォーヒューマニティー」を立ち上げ、大がかりなサンプルセールを開催して東北やハイチなど自然災害被災地に寄付金を送った。コロナ禍では、生地があって縫製できれば、型紙をダウンロードして医療防護服を自分で縫える仕組みを構築。昨年は分権型ファッションのプラットフォーム「ヤビー」を創業し、白衣通販のクラシコのアドバイザーも務めている。コロンビア大学では2020年、同大学の1つであるスクール・オブ・ジェネラル・スタディーズの理事に就任した。スクール・オブ・ジェネラル・スタディーズは1947年に退役軍人のために設立されたが、現在ではコミュニティカレッジから編入する生徒、モデルやダンサー、ミュージシャンなど高校から直接進学できない生徒にもアイビーリーグの教育が受けられるように門戸を広げている。花沢さんはまた、毎年5人の日本人もしくは日本で住んだり働いたりしたことのある生徒の支援をするため、125万ドルをコロンビア大学の基金に寄付した。

 コロンビア大学では今年7月、エジプト出身でアメリカで教育を受け、現在ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの学長を務めるイギリス人のミノーシュ・シャフィク氏が新学長に就任する。コロンビア大学の女性理事は花沢さんと新学長を入れて8人となり、女性の割合は4分の1から3分の1に増える。花沢さんは「日本は女子大以外では女性の学長は少ない。研究者も少なく、理事会の理事も少ない。理事に関していえば、今後少子化で学校の経営が難しくなっていく今、卒業生のコンサルタント出身者や経営者など、どんどん外部から登用すべき」と指摘する。その上で「(コロンビア大学で理事になることは)日本のようなジェンダーギャップが激しい国の学校で、女子に日本はダメじゃない、これから日本は女性が変えていくと応援することでもあります。次の世代の未来がよくなるためにできることを、これからは教育を通じてやっていこうと思っています」と語る。

 コロンビア大学の理事の任期は6年で2期まで。通常12年続ける人が多いという。12年後、花沢さんの望む風景が日本でも広がっていることを共に願いたいと思う。杉本佳子(NY在住ジャーナリスト)

編集後記 2023年4月1日号

【編集後記】 みなさん、こんにちは。ポスターハウス(西23丁目119番地)で「メイド・イン・ジャパン・20世紀ポスターアート」展が開催されています。戦前、太平洋戦争・第2次世界大戦中、戦後復興、高度経済成長、国際化、環境意識の台頭という日本の20世紀という時代を映す鏡としての宣伝・広告ポスターで100年を72枚の作品で構成した類稀な美術展と言えます。2019年に開館して程なくパンデミックとなってしまったため、その存在はまだ余り知られていないのですが、マンハッタンの23丁目にある同館は、ポスターという媒体によってアートを表現し時代を物語る美術館であり博物館としてこれから多くの市民や世界の観光客が訪れる名所となりそうです。 今回の展示作品には、戦前・戦中のポスターは愛国心を鼓舞し、プロパガンダを流し、戦局を支えるために消費者の自制を促すような作品、第二次世界大戦後は、日本企業が世界的なブランドとなるにつれ、日本のアーティストたちが、日本の伝統的な美意識と西洋のデザイン様式をミックスした新しい形態のグラフィックメディアを考案していく変遷が作品とともに展示されています。亀甲雄策、田中一光、横尾忠則などのオリジナルのポスターがズラリと展示されているのは圧巻で、これまで横尾忠則の作品は雑誌やオンラインで見たことがあるがポスターの実物は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で数点を見たことがあるだけで、これだけ集まると見応えがある。実物のポスターがかなり大きいものだったのだと驚きました。この展覧会のことを知って驚くのは横尾忠則さんご本人かも。本紙でも昨年の新年号の表紙など、連載記事を執筆していただいているだけに、今週号を早速ご本人にも知らせようと思います。同展を広報するルーベンスタイン社のシニア・バイス・プレジデントを務めるケイト・ブラムさんは「20世紀の日本の歴史は激動の100年で、戦争を経て国際社会の一員として経済成長することを目指し、世界からの評価を求めるために走った時代がポスターに表されている。米国の60年代70年代の社会運動とも交差し広告を通して日本という国の20世紀を描けるような展示構成になっている」と話しています。展示は始まったばかりで、9月10日まで開催されています。アートと歴史にご興味のある方、ぜひいかれると面白いですよ。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2023年4月1日号)

(1)パスポート申請 オンラインで可能に

(2)20世紀の日本のポスター展 広告と宣伝の歴史

(3)大石育子の暮らしのテーブル イースター

(4)春の重ね着術 イケメン男子服飾Q&A

(5)海外日本人サポート

(6)園さんに在外公館長表彰 日本食の地位向上に貢献

(7)ジャパンパレード出るよ! 森大使と会食でNY市長

(8)大西熊本市長が出席 国連で世界水会議開催

(9) 11回目のカーネギー公演 マリンバ奏者 ミカ・ストルツマンさん

(10 ) ニューヨーカーに人気 JAPANFES

パスポートの申請オンラインで可能に

在留届け情報利用

スマートフォンにアプリをダウンロード
3月27日から既にスタート

 外務省は3月27日からパスポートの発給申請手続きの一部をオンライン化した。各自のスマートフォンから、オンライン在留届(ORRネット)への登録情報を利用したオンライン申請を行うことで、在外公館に行く必要がなくなるとして利用を呼びかけている。なお、パスポートを受け取るためには、引き続き在外公館へ出向く必要がある。

 パスポートの受け取りはすべて在外公館の窓口になる。また、すべての新規発給申請手続き(初回の人、有効期限が切れている人、紛焼失後の新規取得の人など)、及びパスポート面の記載事項を変更する手続き(氏名や本籍地の都道府県名の変更、国際結婚等で外国人配偶者の氏を別姓として併記または削除する方など)においては、戸籍謄本原本を在外公館の窓口提出、または、トラッキング可能な方法で在外公館まで送付すること。

 戸籍謄本提出の省略が認められる切替申請は、申請時に在外公館の窓口へ出向く必要がない、(受け取る際は、必ず前回のパスポートを窓口に提出)。査証欄の余白が無くなった人は切替新規、氏名や本籍地等に変更のある方は訂正新規の申請が可能。 

 米国などに住んでいる国外居住者は、オンライン在留届(ORRネット)へ登録した上で、在留邦人用旅券申請スマホアプリを携帯にダウンロードし、それを通じてオンライン申請が可能となる。オンライン申請は、アプリの画面上の案内にしたがって実施、近日中にNY日本総領事館のホームページ上で案内する予定だ。

 新しくパスポートを申請する場合や、旅券面の記載事項に変更がある場合は、戸籍謄本を用意する。戸籍抄本では受付できない。ただし、有効期間内のパスポートの切替更新の場合は、戸籍謄本の提出は原則不要。パスポートの査証欄(ビザページ)を追加する増補制度が廃止に。余白がなくなったら、新たなパスポートを申請する。新しいパスポートが発行され、6か月以内に受け取らないと、パスポートは失効する。失効後5年以内に次のパスポートを申請する際には、通常より高い手数料となる。

パスポートの更新をオンラインでする場合に必要な「オンライン在留届」の方法についてNY総領事館に聞いた。

質問(1)(リリースの)文面で、お手持ちのスマートフォンから、オンライン在留届(ORRネット)への登録情報を利用したオンライン申請を行っていただければ・・・とありますが、既に在留届をNY総領事館に提出している人も再度、オンラインで登録する必要がありますか?

答え 在留届を紙やFAXなどで提出済みの方は、再度、オンラインで提出いただく必要がございます。オンラインで提出後、当館(ryoji@ny.mofa.go.jp)まで、①氏名②生年月日③在留届にご登録のEメールアドレスをご連絡くだされば、在留届のデータを整理いたしますのでご協力をお願いいたします。

質問(2)オンライン専用アプリというのは、どんな名前で表示されているのですか? スマホでのアプリのダウンロード時に必要な「アプリの名称」を教えていただけますか?

答え スマホアプリの名称は「パスポート申請(海外在留邦人用)」です。アプリのURLやQRコードは、次の当館ホームページをご参照ください。

https://www.ny.us.emb-japan.go.jp/pdfs/smartphone.pdf

以下の在留届(ORRネット)を通じた旅券のオンライン申請時にのみスマホアプリが起動しますのでご注意ください。

https://www.ezairyu.mofa.go.jp/RRnet/residencereport/login

 ご参考までに、旅券オンライン申請の手順を次の通りお伝えします。

①オンライン在留届(ORRネット)で在留届を提出します。②スマホアプリ「パスポート申請(海外在留邦人用)」をダウンロードします。③ オンライン在留届(ORRネット)にアクセスします。④ 「旅券・証明のオンラインを行う」を選択します。⑤ログイン認証で「利用者IDをお持ちの方」を選択します。⑥ ログイン画面が表示されるのでID、パスワード(PW)を入力します。⑦入力後、「ログイン」を選択します。⑧ メールアドレスに届いたワンタイムPWを入力します。⑨在留届メニューが表示されます。⑩画面をスクロールして「筆頭者の旅券申請」または「同居家族の旅券申請」を選択して申請を開始します。⑪ 以降、画面の案内に従い申請を進めてください。

質問(3)確認ですが、今後は、すべてオンラインでないとパスポートの書き換えの申請ができないということではなく、在外公館の窓口でも、やろうと思えば従来通りの更新手続きはできるという理解でいいですか?

答え もちろん、これまでどおり窓口での手続きも可能です。オンラインでの手続きに換えたい場合は、オンラインでの領事届の登録が必要ですが、そうでない場合は、従来どおり窓口にお越しいただいて構いません。どちらでもお選びいただけます。

20世紀の日本のポスター展

広告と宣伝の歴史を紹介

 ポスターハウス(西23丁目119番地)で「メイド・イン・ジャパン・20世紀ポスターアート」展が開催されている。日本の象徴的な広告・宣伝ポスターのメッセージに影響を与えた近代日本の文化・政治の変化を浮き彫りにする73点の作品を紹介している。

 同展では、日中戦争、第二次世界大戦をはじめとする20世紀のポスターが紹介され、戦前・戦中のポスターは愛国心を鼓舞し、プロパガンダを流し、戦局を支えるために消費者の自制を促すようなイメージがデザインされている。第二次世界大戦後は、日本企業が世界的なブランドとなるにつれ、日本のアーティストたちが、日本の伝統的な美意識と西洋のデザイン様式をミックスした新しい形態のグラフィックメディアを考案していく変遷が作品とともに展示されている。亀甲雄策、田中一光、横尾忠則などのオリジナルのポスターが展示されている。20世紀末には、気候変動や世界平和といった社会問題を、日本のデザイナーがアートを通して取り上げるようになったことも紹介して入る。同展は9月10日まで。同ハウスは2019年に開設された新しい美術館。期間中、「ブラックパワーからブラックピープルへ・ ブラックパンサー党のブランディング」展も同館の春季の2大展示として併設され一般公開されている。 

(写真左)田中一光の作品 Nihon Buyo, 1981 Ikko Tanaka The Merrill C. Berman Collection

時代映す鏡としてのポスター
20世紀を語った日本のアーティストたち

 ポスターハウス(西23丁目119番地)で開催されている「メイド・イン・ジャパン・20世紀ポスターアート」展(1面に記事)は、戦前、太平洋戦争・第2次世界大戦中、戦後復興、高度経済成長、国際化、環境意識の台頭という日本の20世紀という時代を映す鏡としての宣伝・広告ポスターで100年を72枚の作品で構成した類稀な美術展だ。2019年に開館して程なくパンデミックとなってその存在はまだ余り知られていないが、マンハッタンの23丁目にある同館は、ポスターという媒体によってアートを表現し時代を物語る美術館であり博物館としてこれから多くの市民や世界の観光客が訪れる名所となりそうだ。

 今回の展示作品には、戦前・戦中のポスターは愛国心を鼓舞し、プロパガンダを流し、戦局を支えるために消費者の自制を促すような作品、第二次世界大戦後は、日本企業が世界的なブランドとなるにつれ、日本のアーティストたちが、日本の伝統的な美意識と西洋のデザイン様式をミックスした新しい形態のグラフィックメディアを考案していく変遷が作品とともに展示されている。亀甲雄策、田中一光、横尾忠則などのオリジナルのポスターがズラリと展示されているのは圧巻だ。同展を広報するルーベンスタイン社のケイト・ブラム・シニア・バイス・プレジデント=写真=は「20世紀の日本の歴史は激動の100年で、戦争を経て国際社会の一員として経済成長することを目指し、世界からの評価を求めるために走った時代がポスターに表されている。米国の60年代70年代の社会運動とも交差し広告を通して日本という国の20世紀を描けるような展示内容になっている」と話す。4月7日(金)には子供向けのアートワークイベントが開催され、終日入場無料となる。(三浦)


Poster House

119 W23rd St (Bet 6&7th Aves)

New York, NY 10011

Tel: 917-722-2439

月・火・水は休館

木・金・土・日 10:00~

https://posterhouse.org/

漆×アメリカンコレクティブルズで愉しむイースター 

 暖かくなるのが早いのかと思ったらまた急に寒くなって寒暖の差が激しいこの時期ですが、皆さま如何お過ごしでしょうか。東京は桜が見ごろとなり華やかな季節を迎えました。

 セントラルパークも少しずつ春の花々が咲いて美しい景色を楽しめる頃ですね。

 今年は花粉の量がとても多く普段そんなに影響を受けたことのない私でも目がかゆくなったりくしゃみが出たりしています。

 しばらく日本を離れて忘れていましたが車についた花粉を見ると目で見てもその花粉の多さに驚きます。日本でも少しずつマスクを外す人がでてきましたが、季節柄もあり、まだまだマスクが手放せないという人が多そうですね。

  今回春号では、いわゆる昔ながらの漆器ではなく、現代の生活で使いやすいラインをそろえた越前漆器のtowanとアメリカが誇るファイヤーキングのジェダイ(翡翠色)、つぶつぶが可愛いキャンドルウィックなどを掛け合わせたイースターテーブル(今年は4月9日)を作ってみました。春らしい花柄に合わせた春のテーブル。イースターはもうそこまで来ています。

 漆というと赤や黒と言ったイメージが強く、海外で暮らすスタイルとは合わせにくい印象ですが、最近では手に取りやすく気軽に使える可愛いものが沢山出ています。

 このテーブルはランチのイメージで作ったテーブルですが、ナイフフォークではなく、日本流にお箸で気軽に食べることを提案しています。お箸もちょっとしたことですが、梅結びの飾りがついているのも素敵な演出ですね。

 春を彩る柔らかい色の漆器とコレクティブルズの和洋のコラボレーションをお楽しみください。

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◆イースターテーブルのポイント♬

Point1 うさぎの形のナプキン折り

 いくつか折り方がありますが。今回はこちらをご紹介。ナプキンに厚みがありすぎると後ろ側がきれいにできないこともあるので、耳の付け根を麻ひもやリボンで結んだり、写真のようにティーカップに入れると安定します。紙ナプキンで折ってもかわいいですよ。

Point2 細長いプレートも2枚重ねで折敷に♬

 長細いプレートはフィンガーフードを乗せたり、チーズボードのように使ったりとテーブルの真ん中を演出するのにも便利なものですが2つ重ねて折敷としても使えます。

Point3 うさぎのフードピックをつくろう♪

 楊枝と色画用紙で自分だけのオリジナルなフードピックをつくってみましょう。うさぎのクッキー型があればペンでなぞって線の通りに切って両面テープで楊枝につければ出来上がり。ひよこや蝶々などほかにも好きなものをつくればおもてなしのフードもグッとイースターモードになりますね。

 3月のクラスのテーマはイースターのテーブルでしたが、特にオンラインクラスではおうちにある自分のものでテーブルを作っていただくのでイースターらしいものが無いとおっしゃる方も多かったのですが、簡単な作り物で手を加えたり、ニンジンやキャベツ、イチゴやオレンジなど身近にある食材もテーブル小物としてイースターらしさを作ることができます。

 あるものにちょっと手を加えることで生活を楽しむ工夫も皆様にお伝えしていかれたらと思います。

素敵なイースターをお過ごしくださいね。


大石育子(Ikuko Oishi)

インテリアコーディネーター、食空間プランナー、日本クラブカルチャー講座講師。東京ドームテーブルウェアフェスティバル2019,2020年入選&奨励賞受賞。2023年佳作受賞&入選。

春先の重ね着術

 皆さんこんにちは。日が長くなってきましたね。春はすぐそこ、そしてサマータイムも始まりましたが、気温については三寒四温と言っていいのか、まだまだ安定しておりませんよね。4月に雪が降ることもよくありますから。

 ということで、過去にもこの時期のオススメとして御話をしたことがありましたが、今年流の「春先の重ね着」術について触れてみたいと思います。

 一番上に着るのはまだしばらくトップコート、もしくはダウンジャケット等になるかと思いますが、ダウンは軽く暖かくて良いのですが、動物保護の観点からダウンの代わりに化学繊維が入ったジャケットがお値段もよりお求めやすくていいですよね。表地には撥水加工がされた合成繊維が汚れも付きにくくてよろしいかと。品質、機能表示をチェックする習慣をつけましょう。

 そしてこの様なコート、ジャケットは上着のジャケットの上に着るから、という理由だけではなく、防寒そして健康上の理由からお尻が充分隠れる長さであることが大切です。お尻を冷やすと疲れやすく、体力を消耗するのです。ここしばらくピッタリとフィットしたTシャツやシャツの裾を出して着るのが人気でしたが、今回は少し違った御話をいたしたく(笑)。

 これも以前から申し上げてはおりますが、男性はオンオフいずれにおいても上着〜ジャケットを羽織られることをオススメしております。左右の内ポケットに御財布、携帯を収める習慣をつけておきましょう。

 まず、ジャケットには紺でももちろんいいですが、春先にはロイヤル・ブルーなどと言われております少し明るめのブルーやグリーン、もしくはタンなどと呼ばれるやや茶がかったベージュが良いでしょう。ボタンはHorn、牛などの角を削ったボタンがオススメです。

 で、今シーズン、チェック柄のシャツが人気なのです。春先なのでヴィヴィッドな色合いも出てはおりますが、グリーンやイエロー、ライトブルーなど爽やかな色遣いのチェック柄のシャツがよろしいかと。そうなんです、ジャケットの色合いをシャツのチェック柄で拾うんです。コツの一つはシャツの柄の色をジャケットより明るめにされること。そして仕上げには「ハイネック」と呼ばれております、タートルネックのようにはネックの部分を折り返さない、でも首にフィットするシャツがオススメです。ハイネックのシャツは首が隠れることでシワも目立たなくなりますし、保温上も大切な部分ですし、そしてこのスタイルにおける重要なポイントとなるのです。素材は薄手のウールですと少し値は張りますが体温調節には良いです。綿のジャージー素材も家で洗濯出来て便利ですよ。

 想像してみてください。ロイヤル・ブルーのジャケットに茶系の角ホーン・ボタン、シャツは少し厚手のコットン地にブルー/イエロー/紺のプリントのチェック柄。そして仕上げにハイネックのシャツですが、チェック柄の3色、どの色を合わせるかで印象が変わります。とても愉しいですよ。気温が上がればチェック柄のシャツを脱ぐか、ハイネックを脱ぐかはユア チョイス。

 靴は茶色のスポーティなシューズであればこれまたナンデモOK。

 それではまた次回。

けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス.カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。

旅券更新のネット化がネット投票の後押し

 河野太郎デジタル担当大臣は3月24日のメルマガで27日開始のパスポートのオンライン申請について次のように説明しました。「パスポートの切替申請がオンラインでできるようになる。申請時と受取時に2回在外公館に行く必要があったものが受取1回で済む。16の府県では、戸籍謄本を別途郵送することでパスポートの新規申請と変更が可能になる。24年度からの戸籍の情報連携システムの開始に伴い、郵送を不要とする完全オンラインの新規申請を可能とする予定である。パスポートの申請システムはまだ改修の余地があるので、改修できるところは改修するよう指示した」

 このオンライン申請で以下が順次可能になります。   

1パスポート更新(切替申請)。2クレジットカードで手数料納付。3紛失届提出(手数料も不要)。4新規発行(2024年度中。戸籍謄本の提示が、戸籍の電子化によって可能に)。5郵送での交付(2024年以降にマイナンバーカードの活用、オンライン申請の普及率も考慮して検討。これが実現すれば、パスポートセンターなどに行かずに受け取れる)。

 今年を「領事手続のデジタル化元年」と位置づける林芳正外務大臣もデジタル化のハブとして、4月1日の領事デジタル化推進室の新設を発表しました。

 実は、外務省は2004年にもパスポートのオンライン申請を導入しましたが、利用者数が少なく、また「1件当たりのコストが1600万円に上る」との指摘を受けて2006年に廃止した経緯があります。今では在留届のオンライン申請も可能になっています。在外日本人の皆さんがさまざまなオンラインを活用することによって、在外公館に行く数を減らして皆さんの利便性を高めて経費を削減できることが明らかになりました。

 河野デジタル大臣はさらに、在外選挙人登録のオンライン化についても以下のように述べました。「総務省はヤル気のようですし、法改正も必要ないとのこと。選挙人登録をまずオンライン化しないと在外ネット投票も実現しないので、ぜひ進めてほしいです」

 「パスポート申請のオンライン化、在外選挙人登録のオンライン化、そして在外ネット投票」という三段跳びの流れを加速したいものです。そのためにも、在外日本人の皆様の熱意とご支援が必要不可欠です。

 「海外日本人サポート」で1年間寄稿させて頂いてきました。この間「在外公館が在外邦人への役場機能を持って欲しい。国民年金の納入その他のサービスなどもお願いしたい」との意見も目にしました。「お役人」として海外日本人のお役に立つ在外公館の姿を見たいものです。それには東京の政治と行政が変わることが必要です。

 ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。

園さんに在外公館長表彰

日本食の地位向上に貢献

 ニューヨーク日本総領事館は3月27日、総領事・大使公邸で園力氏(割烹園・料理長、60)に対する在外公館長表彰を行った。園氏は、競争の激しいニューヨークの日本食業界において、シェフとして永年にわたり第一線で活躍し、質の高い料理を提供し続けることにより、日本食・食文化の普及に貢献してきた。 

 また、2017年の国連総会ハイレベルウィークの際に開催された日本政府主催の食レセプションにおいて料理長を務め、当時の安倍総理と共に、当地の政財界要人や外交団に向けて日本食のトップセールスを実施したほか、2020年4月のニューヨーク日本食レストラン協会設立時から理事に就任しているなど、公的な面でも当地の日本食業界の発展に尽力している。 

 表彰式で森美樹夫大使から賞状と記念品を受け取った園氏は「どのお客様も一期一会だと思っています。大切にしているのは、お客さんが最初から最後にお店を出て行かれるまで笑顔で、という空間で、それにふさわしい料理であり雰囲気でありサービスだと常々思っています」と語っていた。北海道札幌市出身。

(写真)森大使(右)から表彰を受ける園さん(3月27日、NY総領事公邸で)

ジャパンパレード出るよ!

森大使と会食でNY市長

 アダムスNY市長(右)が3月28日夜、レストラン日本で森大使と会食して日本好きに。「日本にも行ってみたいね。ジャパンパレード出るよ」と笑顔で約束した。