国勢調査から除外 不法移民の人口統計

トランプ大統領商務省に命令

最高裁違憲判断の可能性

 トランプ大統領は8月7日、商務省に不法移民を除外した国勢調査を行うよう命じた。来年の中間選挙を控え、共和党に有利になるよう選挙区再編(ゲリマンダー)と連動して行う意図があると見られている。

 連邦議会では、マージョリー・テイラー・グリーン下院議員(共和党、ジョージア州選出)が7月、来年の中間選挙前に不法移民を除外した新たな国勢調査と選挙区再編を求める法案を提出した。

 投票には市民権の証明を義務付けている。今回の命令はこれに連動した形で、トランプ氏は「我が国に不法滞在している人々は国勢調査に数えられない」とトランプ氏はソーシャルメディアへの投稿で述べた。

 しかし、2020年にも同様の措置を試みたものの連邦裁判所と最高裁の判断で頓挫。憲法は「米国に居住するすべての人」を数えると定めており、法律専門家は今回も違憲の可能性が高いと指摘している。

 通常の国勢調査は10年毎に行われ、移民のステータスに関わらず、すべての米国居住者を数える。これをもとに、連邦議会の議席配分と、州に送られる数十億ドルの連邦政府資金の両方を決定している。国勢調査局は商務省に属する。次回の国勢調査は2030年で、人口統計の準備はすでに始まっており、成り行きが注目される。

気分は「マンハッタンで朝食を」大石育子の暮らしのテーブル

 日本ではお盆休みを迎え、まだまだ暑さの続く残暑の季節。ニューヨークは日本と同じくらいの気温になることはあるものの、少しずつ秋の気配を感じる頃かと思います。少し前、6月中旬にイベントのプロデュースでマンハッタンを訪れました。コロナ渦を越えて活気を取り戻した街をこの目で見て実感できて、私も元気をもらいました。やっぱりエネルギッシュなこの街が私の原動力だと実感。今回のテーマは「和の象徴=畳」をモダンな洋のテーブルに取り入れること。伝統的な素材を新しい視点でアプローチすることで、夏の食卓に新鮮な風を運んでくれます。

◆花重畳◆

 日本の伝統工芸を世界に。今回のお気に入りは、株式会社高橋建築の雑貨部門、花結木(はなゆうき)の「花重畳」をご紹介。6月のイベントではオリジナルの赤い縁がアクセントの「Tatami de IKUKO」を作っていただきました。今回はニューヨークらしくティファニーブルーの縁(翡翠の空)で彩られた爽やかな畳。「花重畳」は日本の伝統素材を使って作られた、小さなアート畳。着物や十二単の重ね襟から着想を得て繊細な色合わせと手仕事の温もりを重ねた一枚。小さくて持ち運べて壁面を飾るアートパネルやランチョンマットとしてテーブルでも。全面撥水加工済みで様々な生活シーンで楽しめます。

この畳は洋の器やカトラリーとも調和し、和と洋が自然に溶け合うモダンなテーブルに。海外でも注目されている“和素材のアレンジ”を暮らしに取り入れるヒントにもなります。どんなシーンにも寄り添う「日常の中の『和』」として、現代の暮らしに合う提案をしてみました。

◆夏のおもてなしメニュー◆

 海老とアスパラガスのショートパスタ、白いんげん豆のマリネサラダ、ガスパチョ、ローズマリーのフォカッチャ、ブルーハワイのモクテル、パンナコッタのマンゴーソース添え、コーヒー、紅茶など

※ショートパスタは時間をおいて少し冷えてもおいしく頂けるものが多いので先に用意しておくことができておもてなしにおすすめ。

◆夏のテーブルのポイント◆

Point1 和の素材にあえて洋を使うことでテーブルに“ひとくせ”ある新鮮な空気感。全体の色味は寒色系で涼しげに。手軽に手に入る小物(カニ、金魚、風船など)で夏を演出♪

Point2 畳×洋食器、木のボード×シャンパングラスなど、異素材のミックスで動きを♪

Point3 和と洋をつなぐテーブルクロスはトワルド・ジュイ柄。色はもちろんブルー系で爽やかに♪

大石育子(Ikuko Oishi)

インテリアコーディネーター、食空間プランナー、日本クラブカルチャー講座講師。東京ドームテーブルウェアフェスティバル2019入選、2020年2部門で入選&奨励賞受賞。2023年2部門で入選&佳作受賞。

atelierdeikukonewyork.themedia.jp

ニューヨークで寿司屋に行く 有名店のお値段メニューで比較

 卵に野菜や果物、魚やお肉、ランチのサンドウィッチやサラダに至るまで、昨今のNYの食品価格の高騰には悲鳴を上げる。先日マンハッタンのアッパー・ウエストサイドのベーカリーに立ち寄ったらクロワッサンが1個5ドル95セントだった。この価格にはニューヨーカーの友人もびっくりしていた。日本円にしてクロワッサンが1個900円だ。世の中の物価がどんどん上がる中で、寿司とてもまた例外ではない。いまやマンハッタンの寿司屋は、カウンターに座っておまかせを頼んだら一人数百ドルは当たり前だ。でも、美味しいお寿司は食べたい。そんなわけで最近のNYの寿司屋事情を探ってみた。

 おまかせ以外にも、レギュラーメニューに寿司アラカルトやセットがある場合は、昼、夜を上手に使い分けて食べに行けば、結構美味しいお寿司はまだまだ食べられそうだ。

*すべての価格には税金、チップ、飲み物の代金は含まれていない。*価格は一人前の価格。*料金はすべて、オフィシャルサイトの掲載価格より。*日本人には知られる有名店でもサイトに価格が表示されていない店は、今回の記事では掲載を省いた。

【マンハッタン】

●Sushi Anne ランチ寿司セット52ドル〜 ランチおまかせ(テーブル)105ドル〜、ランチおまかせ(カウンター)125ドル(10貫)〜、ディナー(テーブル)おまかせ90ドル(寿司10貫)〜、ディナー・シェフの夏のおまかせ245ドル〜。

●レストラン日本 寿司ランチセット60ドル〜 寿司ディナーセット75ドル〜 ディナーおまかせ120ドル〜(握り10貫巻物1本)。

●Sushi of Gari(46丁目店)ガリ寿司ランチ60ドル〜、ディナー寿司レギュラー48ドル〜、ディナー寿司おまかせ160ドル〜

●Nobu(ダウンタウン店) ランチBOX(寿司含む68ドル〜、ディナー寿司セレクション66ドル〜、ディナーおまかせ225ドル〜

●MASA(雅)ランチとディナー共におまかせ750ドル(テーブル) 950ドル(カウンター)

●Akimori Omakase Bar ランチとディナー共におまかせ95ドル〜

●Sushi Nakazawaランチとディナー共におまかせ160ドル(テーブル) 190ドル(カウンター)

●Blue Ribbon sushi Bar & Grill ランチとディナー共にレギュラー寿司38ドル〜、おまかせ150ドル〜

●Sushi Yasuda  おまかせ (握り15貫と半巻物)170ドル、おまかせ(12貫)130ドル

●HASAKI 波崎にぎり45ドル 特選にぎり76ドル。おまかせ96ドル (写真上)

●酒蔵 上寿司刺身御膳 45ドル、特上寿司刺身御膳 78ドル、 鮪づくし定食 45ドル。

●ZUMA ランチとディナー共に シェフのセレクション握り寿司48ドル(5個)、82ドル(9個)

●Nakaji ディナーのみ おまかせ365ドル(カウンター)

●Iccaおまかせ495ドル

●Kosaka ディナーのみ おまかせ250ドル(テーブル) 275ドル(カウンター)

●Shuko ディナーのみ おまかせ270ドル

●Sushi AMANE ディナーのみ おまかせ250ドル

●Sendo(鮮度) ディナーのみ寿司セット33ドル〜

●Morimoto ディナーのみ 寿司コンビネーション75ドル&125ドル、おまかせ165ドル〜

●Kanoyama  ディナーのみ寿司レギュラー29ドル〜、おまかせ195ドル。

●TOMO21 SUSHI. 寿司レギュラー(握り8貫と半巻物)38ドル50セント、寿司デラックス(握り10貫と巻物)47ドル

●SUSHI YOU  おまかせ 110ドル おまかせ寿司&刺身 150ドル

●対馬 おまかせ 70ドル 寿司ランチ 25ドル

●つくし おまかせ66ドル

●YASAKA 寿司デラックス(握り9貫と巻物) 29ドル おまかせミニ(握り6貫と巻物)35ドル

【マンハッタン外】

 ●HAJIME(ハリソン) 寿司レギュラー30ドル、寿司デラックス33ドル、スペシャル38ドル(ウニ付きは50ドル)おまかせ85ドル 5コースのおまかせ150ドル。

●さざん(アーズレー) すしさざん 40ドル、 すし上 49ドル おまかせ 95ドル 

●竹寿司(クイーンズ)寿司A34ドル、寿司B(ウニ付き)41ドル、タケスシ(握り10貫)59ドル、おまかせ120〜150ドル。

●有吉 (クイーンズ)寿司レギュラー(握り7貫、カリフォルニア巻)22ドル50セント。

●鈴木食堂 (クイーンズ)おまかせ(握り10貫と巻物)70ドル、 レギュラー寿司(握り7貫と巻物)20ドル

●すし辰(ホワイトプレーンズ/テイクアウトのみ)寿司ミックス6貫17ドル 寿司デラックス(13貫と半巻物) 29ドルほか。

●鳥郷(ロングアイランド・ナッソー郡)握りデラックス 42ドル、デラックス寿司&刺身コンボ2人前 66ドルほか。     

Photo:kaoru Ishiguro

週刊やさしいにほんご生活 謝罪と謙遜、飛んで火に入る夏の虫

この連載は、日本語を勉強している人を読者対象としたコーナーです。日本文化やマナー、タイムリーな日本に関する話題などを簡単な日本語で毎月第3週号に掲載します。アメリカ人の友人などにご案内ください。また、漢字をまだ習っていないお子様にとっても社会を知り、漢字に接するよい機会になります。

〜謝罪と謙遜〜

 日本では、相手との関係を大切にするために、謝罪や謙遜の言葉がよく使われます。たとえば、少しぶつかっただけでも「すみません」と言い、何かをしてもらったときには「申し訳ない」と感謝を込めて伝えることもあります。また、自分の功績を話すときも「たいしたことではありませんが」と控えめに述べるのが一般的です。謝罪や謙遜は、相手への配慮や場の空気を和らげるための大切なマナーとされています。言葉だけでなく、軽く頭を下げるなどの所作にも心が込められています。相手への敬意を表す、日本らしいふるまいのひとつです。

(長久保美奈、マナー講師)

わくわくことわざ(12)
文とイラスト 平田恵子

飛んで火に入る夏の虫 


 自分から危険に飛び込んでいく例えです。「火」は災難や身を亡ぼすようなリスクを指し、「虫」は無謀な行動をとる人間のこと。元になっているのは、蛾などの夏の虫が明るい光に集まってくる習性から。昔は野外で明かりとして松明を燃やしていたのですが、燃え盛る炎に虫が飛び込んで焼けてしまうようすから生まれたことわざです。鎌倉時代(13世紀)の物語にも「愚人は、夏の虫」の表現があります。「詐欺メールに返事を出すなんて、飛んで火に入る夏の虫だよ」など、わざわざ危険に巻き込まれそうなときに使うことができます。


《言葉の意味(ことばのいみ)》

•謝罪:shazai (apology)

•謙遜:kenson (modesty, humility)

•申し訳ない:moushiwakenai (I’m sorry / 

   I feel bad)

•控えめ:hikaeme (reserved, modest)

•所作:shosa (behavior, manner)

•敬意:keii (respect)

•ふるまい:furumai (conduct, behavior)

•夏の虫:Natsuno Mushi (summer insect. In this proverb, it refers to a moth)

•習性:Shusei (habit)

•愚人 :gujin(fool)

•詐欺メール:sagimeiru (on line scam)

• 「飛んで火に入る夏の虫」と同じ意味の

  英語  You are reckless

NY日本人美術家協会 第53回年次展覧会を開催

 ニューヨーク日本人美術家協会(JAANY、松田常葉会長)の第53回年次展覧会が9月2日(火)から13日(土)まで天理文化協会ギャラリー(西13丁目43A番地)で開催される。同団体はニューヨークで設立後現存する日系美術家団体としては最古の歴史を持ち、画家の飯塚国雄(個人)が設立した。

 今展示の出品者は、青柳愛子、藤原未佳子、深谷成子、ヘンデル佳奈、林幸江、平之内美穂、石田純一郎、飯塚国雄、柏木文子、金美貞、キノマホ、越光桂子、鞍井綾音、松田常葉、松村ナツコ、三浦良一、小野田昌子、大槻素子、チエシマムラ、竹下宏、山本章子、山本かりん、由賀子、遊真あつこの24人。展示作品は購入できる。また開催期間中1点 200ドル以下のチャリティ用小作品の展示コーナーも設ける。収益金(作品価格の50%)は、昨年1月に起きた能登半島地震被災者支援の基金に寄付される。優秀作品2点には、「マックス・ブレッチャーJR賞」「末村敬三賞」が贈られる。

 レセプションは5日

 レセプションは9月5日(金)午後6時から8時まで。開催期間中の金曜と日曜休館。平日は正午から午後6時まで、土曜日は午後3時まで。問い合わせは [email protected]

ファー・ロッカウェイ  DEEPなQUEENS

はるか遠い砂浜の街は再開発で再び変貌へ

 ファー・ロッカウェイは、NY市クイーンズ区の最南東、東西に長細いロッカウェイ半島の東部にあり、歴史的建造物があり、ビーチにも近い住宅地です。

 19世紀には富裕層の避暑地「クイーンズのリヴィエラ」として人気を博したそうです。20世紀半ば以降はNY市で最も貧しく孤立した地区の一つとなりますが、近年の再開発で再び変わりつつあるとの事。

 2010年の国勢調査によると、人口約5万人の内訳は、アフリカ系44・7%、白人25・5%、ヒスパニック系24・7%、アジア系1・9%。ジャマイカ、ガイアナ、ガテマラ、そしてロシアやウクライナ、加えて正統派ユダヤ教徒からの移民が多いようです。

 ビーチ近くに1920年代頃から主に労働者階級向けのバンガローが建設され、最盛期には7000棟以上あったそうです。現在はビーチ24〜26丁目辺りに残る程度ですが、ビーチ・バンガロー歴史地区であり米国国家歴史登録財として守られています。

 他に、トリニティ・チャペル、ラッセル・セージ記念教会やファー・ロッカウェイ郵便局などの米国国家歴史登録財もあります。特に、郵便局の正面入口すぐは、トーマス・ジェファーソンの邸宅モンティチェロの影響を受けた美しいドームが印象的です。

 ビーチは、半島西側のロッカウェイは混み合うようですが、ファー・ロッカウェイやビーチ67丁目辺りのアーバーンは比較的静かだそう。アーバーンは近年サーファーズ・コミュニティと人気が出てきており、サーフィンのレッスンも提供されています。

 半島の南北に走る通りの名は、頭にビーチが付いた番号順で、東からビーチ3丁目から西はビーチ169丁目まであります。

 ビーチに沿って遊歩道が果てしなく続きますので、泳がなくてものんびり散歩も楽しめます。ただ、日影がないのでご注意を。

プロフィール

明石鯛 兵庫県明石市出身、ウエストチェスター在住。週末の街歩きグループと共に、未知なるNY市内を元気に探索中。 https://kkykm-m.com/

虎フグとマラソンのニューヨーク喰い物語

日本食ブームの原点

馬越 恭弘・著
本の研究社・刊

 マンハッタンの東52丁目のレキシントン街と3番街の間にある「レストラン日本」は、1963年、今から62年前に当地で初めて本格的総檜造りの寿司バーを開設した店だ。慶應義塾大学剣道部主将だった同店創業者の倉岡伸欣氏が卒業後、米国留学を経てNYで2018年に86歳の生涯を閉じるまで創業社長として活躍した。単に日本食店のオーナーとしてでなく、ニューヨーク地域における日本食の普及と地位向上に骨身を削り、ひいてはアメリカの今の寿司ブームの土台を築いた半世紀といっても過言ではない。

 プラザ、ウォルドルフアストリア、ピエールといった名だたるホテルで1960年代、パーティー会場に初めて日本食を出し、66年には日航の東京〜ニューヨーク路線就航で機内食に初めて和食を搭載、75年には昭和天皇・皇后両陛下ニューヨークご訪問に際して公邸での公式晩餐会の料理を受け持ち、岸首相の時代からNYでのケータリングの日本食番を担当、中曽根首相以後、竹下、海部、橋本、小泉、麻生、安倍、岸田と歴代の現職首相が来店し続けるなど、時代の要にNYで必ず日本食というキーワードを通して日米関係をつないできた。

 故マイケル・ジャクソンは座敷で鉄火巻を食べてサクラサクラを歌った。元ヤンキースの松井秀喜さんも引退の夜に訪れた。「王様と私」のユル・ブリンナー、アンディー・ウォーホルが常連だった。1989年にはアメリカに下関のトラフグを輸入する許可を5年かけて取得、同年カナダ・モントリオールの自家農場でそば栽培を開始するなど挑戦の連続だった。

 本書は、そんな倉岡さんに45年間にわたって仕えたレストラン日本の元総支配人、馬越恭弘さんが書いたレストラン日本とマラソンを通して倉岡さんとの苦楽を共にしたドラマ「虎フグとマラソンのニューヨーク『喰い』物語」だ。

 3年前に帰国するまで35回もNYマラソンを走ったという馬越さんは、日本のビール王と言われた大日本ビールの創業者、馬越恭平(1844年〜1933年)を曽祖父に東京で生まれ、学習院大学経済学部卒業後、ホテル・オークラに就職した。入社まもない研修生としてホテル内のカフェで働いていた時、コーヒーの注文を取りに行った相手が倉岡氏だった。倉岡氏は、その青年の胸の名札に目を止めた。「私ね、君のお母さんに13年前に会ってるかもしれないよ、アメリカから戻る飛行機の中で」それがNYとの縁が生まれたきっかけだった。

 青年馬越さんは当時仕事に悩んでいた。そんな思いを母親に相談すると、NYの倉岡さんに連絡するといいと言う。手紙を書いた。1977年6月18日。ジョン・F・ケネディ国際空港に降り立った。一流ホテルに就職したとはいえ「ご先祖様の大ゴネで入った会社。そこで男子一生を過ごしていいのかい」と倉岡さんに言われて人生が決まった。ニューヨークの寿司ブーム、日本食ブームの最先端で伝統的な江戸前料理を出し続ける倉岡氏に仕えた。誰かが書いておかなくてはならない歴史。今の全米の日本食ブームの陰にある数々のドラマを一番近いところで見ていた男が書いた一冊だ。(三浦)

マイセン流の技術習得して陶磁器に絵付け 菊池優子さん

デザイナー、アーティスト

 リモージョ・ボックスと呼ばれるフランスの貴族たちが昔愛用した陶磁器製の小物入れボックスを手にしたのは学生時代だった。金具がついていてきっちりと閉まる。薬の錠剤やつけぼくろなど、元々は細かなものを入れていた小箱だという。それを使って自分が何かを作り出し、世に送り出して人に喜びを与えるとはその時は夢にも思っていなかった。

 東京都出身で、慶應義塾大学法学部を卒業後、ドイツに本社がある世界規模の大手企業に就職。職場で貴重な経験を積む一方、「自分自身が創造し、人生の事業として捧げられるものを探し、他者に喜びをもたらすこと」を目指し始めた自分がいた。幼少期の記憶をたどり、自分は小さい時から絵を描くのが好きで、繊細で感性豊かな手芸や、装飾、芸術に深い興味を抱いていたことに気づいた。  

 2008年に陶磁器絵付けの芸術と出会った。これが画家としての活動の始まりとなった。絵付けの本の翻訳者が教室を自宅近くで開催していることも幸運だった。磁器絵付けを学び始めた瞬間から、美しい手芸を専門的に学ぶことに熱中し「プロになりたい」という思いは募った。その情熱は、かつてマイセンの画家だった著名な磁器アーティスト兼教師である故ウヴェ・ガイスラー氏が提供する最も厳しい専門コースに挑戦するまでに菊池さんを駆り立てた。Eメールを送った。1年先まで講義の予定が詰まっているが、たまたま1週間後に東京でセミナーがあると知った。ホテルのロビーで絵付けの技術を教えて欲しいと懇願すると、夏休み中の8月にドイツまで来れるならマンツーマンで教えようと言われ、会社に1か月の休暇届を出してドイツに飛んだ。初歩的技術からデザインや詳細な表現方法まで集中的に習得できたが、帰国3か月後にガイスラー氏が急逝、菊池さんは、特別な個人指導を受けることができた最初で最後の修了生となった。 

 現在ドイツに住む菊池さんは、シュツットガルトの工房で絵付けに励む。「女性にとって指輪は大切な思い出のジュエリー。同じ思いの人たちに喜んでもらえたらとても嬉しいです」と話す。(三浦良一記者、写真も)
www.yukokikuchi.com

指輪姫の小さなお城

元マイセンのペインターに師事
ドイツからNYデビューした菊池優子さん

 母親からの大切な思い出だったり、ウエディングリングや自分へのご褒美だったり、女性にとって指輪は特別なラグジュアリーな装飾品だ。元マイセンペインター、故ウヴェ・ガイスラー氏に師事し、現在ドイツのシュツットガルトに住む日本人デザイナーでアーティストの菊池優子さん=写真=が、ニューヨークのピア61で8月3日から5日まで開催されたジュエリー展示会ミリー・ザ・ショー(MELEE)に初出品した。

 菊池さんは、フランスの貴族が愛用した陶磁器の無地の小物入れに伝統工芸の技術を駆使して手描きで絵付けし、世界に一つのリングボックスを作っている。「指輪姫の小さなお城」とも言えるボックスは、まさにアート作品だ。

空手銀メダリスト清水希容選手 NYで演武と体験会

ミキハウス

 子供服のミキハウスUSAは9日、2020年東京五輪女子空手で銀メダルを獲得した清水希容選手を招き、8月9日、フラッシングのタングラムモールで空手の演武と子ども向け体験会を行った。

 清水選手は世界大会2連覇、アジア大会3連覇など輝かしい戦績を誇り、現在は株式会社ミキハウスの営業総務部に勤務。指導者として、また一空手家として世界各地を飛び回っている。

 当日は、NY日米武道館館長の五嶋龍氏がモデレーターを務め、清水選手が空手を始めたきっかけや、ミキハウスでの仕事と並行しながら空手文化を発信する取り組みについて語った。会場には多くの来場者が集まり、迫力ある演武とともに、子どもたちが実際に空手を体験する貴重な機会となった。(写真・植山慎太郎)

(写真)当日はNY在住の空手家、五嶋龍氏(左)がモデレーターを務めた

双子の母のため息 ニューヨークの魔法

 ある夜、いつもよりかなり遅れて、夫が家に戻ってきた。

 バスがなかなか来なくて、ずいぶん待たされたよ、と言いながらも、なんだかうれしそうである。

 待てども、待てども、バスは来ない。本を読むには、もう暗すぎる。ほかにすることもない。

 バス停のベンチには、黒人の女の人と自分しかいなかった。

 I don’t believe this.

 まったく、信じられないよ。

 その女の人はあきれたように首を横に振り、ため息をついている。仕事の帰りなのだろうか。疲れ切った様子だ。

 どちらからともなく、会話が始まった。その人は身の上話を始めた。夫が家を出ていき、離婚。双児をひとりで育てているという。

 毎日、本当に大変なんだよ、私が働いている間、妹が子どもたちの面倒を見ていてくれるんだけどね。

 自分も一卵性の双児である夫は、でも双児もなかなかいいものですよ、と高校の頃のエピソードを話した。男子校に通っていた双児の兄が、一度、男女共学を体験してみたいというので、制服を取り替え、そ知らぬ顔をしてそれぞれ相手の学校に登校した、というこれまで何度もしてきた話だ。

 それを聞くと、女の人はパンと手を打ち、大笑いした。

 そんな取り留めのない話をしながら時間をつぶしていると、予定より三十分以上遅れてバスがやってきた。

 混んでいたので、この女の人と夫は離れた席にすわった。

 終点で夫がバスを降りると、さっきの女の人がドアの前で立っていた。そして夫の腕を軽くつかむと、こうささやいた。

 I really enjoyed talking with you. You made my day.

 話ができて、とても楽しかったよ。おかげで、今日一日がとてもいい日になったよ、ということだ。

 なんとすてきなほめ言葉だろう。

 玄関のドアを開けた夫の顔にも書いてあった。

 She made my day.

 このエッセイは、シリーズ第1弾『ニューヨークのとけない魔法』に収録されています。https://books.bunshun.jp/list/search-g?q=岡田光世

編集後記

編集後記

  みなさん、こんにちは。新潟県南魚沼市の中学生と高校生を合わせた16人がワシントンDCとニューヨークを訪問し、ホームステイなども含め7月29日から8月4日まで来米しました。同市が主催する「南魚沼市中学生海外派遣事業」の一環で来米したもので今年で3回目。ニューヨークでは、日本政府国連代表部とニューヨーク日本総領事公邸を表敬訪問。国連代表部では、山﨑和之国連大使と面会し、代表部の仕事の説明を受けた後、生後たちからの質問に答えました。山﨑大使は「戦後1945年に加盟55か国でスタートした国連は、現在加盟国が193か国あり、そのほとんどが戦後、植民地から独立した国で、エネルギーの99%を海外から輸入している日本は世界とコミットしていかないと生きていけない国である」などと日本の立場を語りました。ニューヨーク日本総領事公邸では総領事館職員が「ワシントンDCが政治の中心ならニューヨークは、経済、メディア、文化の中心である」と述べ、「在留邦人が安全に生活できるよう支援する」という総領事館の仕事を説明しました。ニューヨーク滞在中は、同時多発テロの現場に作られた9・11メモリアル博物館も見学したほか、最終日はニューヨーク新潟県人会が迎えるホストファミリー宅に宿泊し、海外で生活する同郷の先輩たち家族とも交流しました。ホームステイ中には、シティーフィールドでの大リーグ野球観戦やメトロポリタン美術館見学、遊覧船乗船などに連れて行ってもらうなど楽しい時間を過せたようです。中学、高校時代に海外を見ることは大きな刺激です。人口5万1000人余りの都市でこの3年間で48人の10代の若者たちを海外に派遣した南魚沼市。ニューヨークで不動産業を営む同市出身の大坪賢次さんはNY新潟県人会名誉会長で、この事業の発案者です。「小さな田舎が嫌で東京に出た自分が今、故郷のために何かしたいと思っている。不思議なもんですね。上京して日大、シアトルの大学に留学と、その道のトップに行かなかったからこそ多くの大切な友人を米国で得た」とも言う。若き日のトランプ氏とゴルフをしている写真を見せてくれたこともある。来米した生徒たちは、日米の架け橋になるスイッチを手にすることはできた。そのスイッチを入れるかどうかは、1人1人のこれからの人生次第。いい思い出は一生の宝だろう。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2025年8月9日号)

(1)NY市長選挙中間報告 マムダニ氏優勢なお不透明

(2)桃狩りの季節早くも到来!

(3)新潟県南魚沼市から中高生16人来米

(4)三島由紀夫を大特集 ジャパン・ソサエティー舞台公演部

(5)戦後80年にあたって「謝罪外交」からの「卒業」は可能か?

(6)日本ブランドを米国市場に DECO BOKO

(7)NYタクシーに監視カメラ  保険金詐欺防止策

(8)青森ねぶた 春夏秋冬 久保修ワールド

(9)夢の続きは舞台表現者としてNYで  黒木 璃七さん

(10)好きなことを仕事に生きる  全日本趣味起業協会がNY展