ブルックス・ブラザーズ再建の行方

イケメン男子服飾Q&A 83
ケン 青木

  アメリカの企業では稀な創業200年を祝って間もないブルックスブラザーズ社が経営破綻。連邦破産法第11条、いわゆるチャプター11の申請で再建を目指しますが厳しい道のりが予想されます。1990年代以降の30年間、同社は親会社となった外資の方針で急速な店舗数拡大政策を続けて来ました。当時内部にいた僕はNOの意思表示をしましたが、極めて少数派でした。そして投資による店舗数急拡大の目玉がカジュアルウエアの拡充とレディースの強化、そのためにアン・テーラーのトップをスカウトし、レディースのチェーン・ストアの運営ノウハウを紳士服の専門店に導入したのです。この様な手法は、3年間は店舗拡大による売り上げ増による「目眩し効果」が期待出来るのですが、四年、五年と経過するに連れて「筋肉質」の経営をしていないと必ずボロが出て来るのです。そしてその次はアウトレット店増。因みに現在アメリカ国内で正規、アウトレット店合わせて250店舗と言われおりますが、40年前日本でビジネスを始めた際、青山店が20店舗目、つまりアメリカ国内に19店舗しかなかったのでした。創業160年で20店舗だった経営がそれから40年で12倍、世界では25倍の数に増えたということなのです。日本でのビジネスは順調で、たったの一年で黒字化。以降連結決算でアメリカ本国の赤字を補填して余るものがありましたが、その頼みの日本がこの3年間ずっと赤字で急速に数値が悪化しての結果だったのでした。こうした経営のために製品の質も高級でもなく、その割に値段も安価ではないという中途半端なマーケティングとなってしまったのでした。

 ブルックス・ブラザーズ社は1818年、アメリカ建国から40数年を経た状況で、英国からの移民であったヘンリー・サンズ・ブルックスによって、ニューヨークのローワー・イーストサイド、キャサリン・ストリートとチェリー・ストリートが交差する北東の角にH&D.H.Brooks&Coとして開店しました。創業者の息子達が共同経営する様になりブルックス・ブラザーズと改称。19世紀当時のニューヨークではヨーロッパとの交易船は全てイースト・リバーに入って来たので船から荷を下ろし直ぐ店頭に並べられる便利なロケーションだったのだと(笑)。当時の船はまだ現代の様な大きさでなく、川底が浅いイースト・リバーでも大丈夫だったのでした。

 ブルックス・ブラザーズ社は創業当初から英国系移民らを対象に様々な英国製の衣料品・洋品を仕入れて販売すると共に紳士服店としてテーラード・クロージングの開発にも熱心に取り組んだのです。当時からビジネスで人と物の出入りが多いニューヨーク、多忙を極めるビジネスマンのために短い日数で納められる「既製服」のスーツやジャケットを世界で初めて開発したのです。御手本は英国の紳士服でした。当時は英国の紳士服も「スーツの勃興期」、男性のスーツとは実は軍服を「民間用に改造」したものなのです。19世紀半ばから20世紀に至るヴィクトリア女王治世下は大英帝国最盛期、世界中に植民地を持ち、支配するにあたり、円滑なビジネスのため軍服ではなくスーツが求められる様になりました。

 英国の紳士服は男性を立派に魅せてくれます。それは、(1)背筋を伸ばした状態で最もフィットする様仕立て、(2)肩にはパッドを入れ、(3)ウエストを絞り胸部を強調など、男性の身体的、精神的逞しさを表現していることによるのですが、ブルックス・

ブラザーズの紳士服は生地、素材は英国伝統のものを踏襲しつつも、英国紳士服における権威主義的思想の真逆を行ったのです。それは(1)息を吐いてリラックスした状態でフィット、背中の丸みを強調し、(2)ナチュラル・ショルダーと呼ばれるパッドを極力排したソフトな仕立て、さらには(3)ウエストをあまり絞ることなく、全体に穏やかでより親しみが持てる「雰囲気」を心掛けたのでした。資本主義の時代、お互いより信頼感を高め、本音でビジネス・トークをしようという目的のためにです。

 19世紀末当時としては正に画期的だったボタンダウンカラーのシャツについてもそうなのですが、着心地の良さと見映えに細心の配慮をしつつ、常に時代の少し先を行く素材を導入しつつ革新的製品を提供し続けてきたことが同社が長くビジネスを続けられてきた「本当の理由」だったのですが、この数十年、前述した様な状況であったのでした。伝統をただ守るだけでなく、「革新し続ける伝統」に戻れるのか? 適正な会社の規模の模索と共に二つの大きな課題だと思われます。

 けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス.カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。

飯塚国雄さん死去

NY日本人美術家協会会長

 ニューヨーク日本人美術家協会(JAANY)会長で創設者でもあるアーティストの飯塚国雄さんが14日、入院先のマウント・サイナイ・ウエスト(旧ルーズベルト)病院で亡くなった。81歳だった。4月初旬に新型コロナウイルスに感染して入院、約1か月間の治療を経て退院、リハビリセンターに移ったが、その後後遺症や心臓の病気で再入院、数日前より心臓疾患が悪化していた。

 飯塚さんは1939年東京生まれ。逗子開成高校、お茶の水美術学院卒業後61年渡米。その後永住権を取得し、ニューヨークの「アート・スチューデント・リーグ」彫刻スクールで教鞭を執った。73年ニューヨーク日本人美術家協会を創立し、初代会長となる。

 医師だった母親の愛を注がれて母子で育ち、渡米前の結婚後に探し充てたまだ見ぬ父親が被爆者であったことを知り、反核がアート活動の根源となった。95年ニューヨークの国連本部で反核個展「われわれはどこへ向うのか」展を開催。その重いテーマ性から社会派作家とも称されるが、恋人や愛をテーマにした作品も多く残しており、すべてが人間主義に貫かれていた。98年に紺綬褒章を受賞。

(写真)Mother and Child of FUKUSHIMA
acrylic on canvas, 28 x 18”, 2014

ネオワイズ彗星出現

23年ぶり目視
マンハッタン上空で

 2020年3月に発見された新彗星、ネオワイズ彗星(C/2020 F3)が現在見ごろを迎えている。肉眼で彗星が見えるのは1997年以来23年ぶり。

国立天文台の発表によると7月8日現在、明るさは1〜2等級で観測。この後ゆっくりと暗くなっていく。暗い場所での夜明けでしばらくは肉眼でも見える明るさだと予想。但し、マンハッタン上空ではビルの明かりなど光害が多く、写真では撮れるかもしれないが、肉眼ではほぼ見えない状況。実際マンハッタン上空で観測された情報をまとめると、 観測場所は晴れた北東の少し北側上空、時間帯は午前3時30分頃〜午前4時30分頃から夜明け前までの間。

 米航空宇宙局(NASA)より、赤外線データと可視光画像を組み合わせた研究によると、特徴からこの彗星の直径は約5キロメートル、彗星の核がすすけた暗い粒子で覆われていると推測されている。

 撮影場所はニュージャージー州ジャージーシティーの川沿いからミッドタウンに向かって撮影。撮影時刻は午前4時27分。(写真・植山慎太郎)

日本クラブがオンライン美術展

トライステートのアーティスト応援企画

7月31日まで作品を募集

 日本クラブは米東部3州(ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット)在住アーティストの創作活動を支援するため、インターネットで作品を公募し、優れた作品を公開する「日本クラブ・ウェブ公募美術展」を開催する。

 公募作品は31日(金)まで募集している。作品内容は日本文化紹介、日米交流、またはパンデミックのさなかで頑張っている人への応援を目的としたもの。優秀な15作品は9月17日(木)から10月14日(水)まで、日本クラブ・ウェブギャラリー上にて掲載される。また、同15作品にはそれぞれ1000ドルの奨励賞が付与され、優秀作品の中から数点が「大使賞」として在ニューヨーク総領事公邸に展示される予定。

 審査員は山野内勘二氏(在ニューヨーク日本国総領事・大使)、井谷善惠氏(東京藝術大学グローバルサポートセンター特任教授)、村瀬実恵子氏(Takeo and Itsuko Atsumiコロンビア大学名誉教授、元メトロポリタン美術館東洋部特別顧問)、小野山弘子氏(日本クラブ・カルチュラル・アフェアース・アドバイザー、元米国ソニーコーポレーション副社長)、千住博氏(京都芸術大学大学院教授、アーティスト)、高岡英則氏(日本クラブ会長、米国三菱商事会社社長&CEO)、前田正明氏(日本クラブ・ニューヨーク日本商工会議所・JCCファンド事務所長)を予定。詳細はウェブサイトwww.nipponclub.org/を参照する。

そうだ!TKGにしよう〜

生卵かけご飯

イセファームなら安心

 生卵をそのまま食べる習慣がある日本人には、日本に本社があるイセ・ファームの卵は、アメリカで作られる卵で最もサルモネラ菌が低いと言われているので、安心して生卵を食べることができるのでありがたい。

 イセ・ファームは日本と同じ製法をアメリカでも行い、より安全な卵を生産している。食べる前に卵の殻を洗うとさらに菌の付着を落とすことができるとのこと。

 先日、NY農場フレッシュにイセ・ファームの生卵をデリバリーいただいたが、卵の殻が少し割れていた。それを配達の方に伝えると、予備の卵を配達車に持っているのでとすぐに交換してくれた。配達車の中でもちゃんと保冷状態を保っているとのことで、デリバリーでもとても安心だ。

 さらに、専用の卵かけご飯醤油ならより一層美味しさを引き立たせる。

 そもそも普通の醤油と卵かけご飯醤油の違いは何かというと、出汁が入っているかどうかなのだそうだ。卵とご飯は優しい甘みがあるため、普通の醤油では濃厚な卵でない限り醤油に味が消されてしまう。

 人気ナンバーワンは、寺岡家の『たまごにかけるお醤油』。残念ながら、NYでは手に入らないので、出汁を加えていただくか、次の機会の日本からのおみやげに是非!

 さらに驚くなかれ、『たまごかけごはんマシーン』という代物もある。タカラトミーアーツというおもちゃメーカーが生産している商品で、この機械は卵割り機を内蔵しており、さらに黄身と白身を分離させてから白身のみを撹拌させることでふわふわの卵かけご飯をつくることができる。人の手ではできなかった作業を機械にやらせることで、まるでホイップクリームのような食感を味わうことができるのだ。  

筆者

進化をつづけるTKG! ご家庭でどこまでできるかお試しあれ。(等々力雅彦/NY農場フレッシュ)

■今回のことば=TKG(Tamago Kake Gohan)=「卵かけご飯」の略

(写真提供・一般社団法人 日本たまごかけごはん研究所)

トランプ米大統領の姪が暴露本

TOO MUCH AND NEVER ENOUGH

Written by Mary L. Trump, PH.D.
Published by Simon & Schuster

 トランプ大統領の姪で、臨床心理学者のメアリー・トランプさんが14日に発売するトランプ一族の内情を暴露した著書「Too Much and Never Enough」の内容が話題を呼んでいる。今月7日には一部の米主要メディアに配られ、その詳細が明らかになったが、トランプ氏を痛烈に批判していることがわかった。各メディアの報道によると、メアリーさんはトランプ大統領が大学入試のための共通試験(SAT)で不正をしたことや、軍隊に入りたいと言った長男に「陸軍に入隊したら勘当する」と脅したと主張している。

 メアリーさんはトランプ大統領の兄フレッドさん(故人)の娘。6月には大統領の弟であるロバート・トランプさんが本の出版差し止めを求めたが、裁判所は訴えを棄却している。ホワイトハウスはメアリーさんの主張の多くを否定し、ケイリー・マケナニー報道官は7日、本はまだ読んでいないが書かれているのは真っ赤な嘘だと述べた。

帰国生対象の相談会

海外子女教育振興財団主催

今年はオンラインで開催

 今年度、ニューヨークをはじめとした海外や日本国内で開催を予定していた公益財団法人、海外子女教育振興財団主催の「帰国生のための学校説明会・相談会」は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から通常開催が見送りになっていた。しかしながら、日本国内の帰国生受入校への進路を考えている人への情報提供の場が減少している状況にあり、また、帰国生および今後帰国予定の人たちが不利益を被らないよう有益な情報を届けるため、代替案としてオンラインでの開催を行うことになった。実施内容は以下を予定している(※一部変更となる可能性あり)。

(1)動画での学校紹介(8月1日〜予定):参加校の学校の様子や特色を伝える。(2)帰国生のコメント(8月1日〜予定):参加校に在籍する帰国生から、学校選択や受験に向けた準備や、これから学校を選ぶ人へのアドバイスなどを話してもらう。(3)学校相談(8月17日〜21日予定):各校に相談時間枠(各1時間)を設け、事前質問を受け付ける。質問に対しその枠の中で回答する形式を予定。参加希望者は出入り自由で、都合の良い時間に入れる(ズームを使用予定)。(4)学校パンフレット(8月1日〜予定):申し込み者向けのサイト上で、各校のパンフレットを提供できるリンクを掲載する予定。(5)各種講話(8月1日〜予定):財団相談員やゲストスピーカーによる各種講話を行う。

 参加方法などの詳細はウェブサイトwww.joes.or.jp/kojin/kokunai_setsumeikai を参照。

ふたりぼっち

ニューヨークのとけない魔法 ⑥
岡田光世

 What brought you to New York? どうしてニューヨークに来たのですか。どこの出身ですか、と同じくらい、ニューヨークではよく聞かれる質問だ。

 あのときも、それが話のきっかけだった。九十六丁目の角を曲がったところで、地下鉄の轟音が聞こえたので、駆け足で階段を下り、改札を通り抜けたが、すでにホームに電車の姿はなかった。仕方なく向かったホームのベンチには、女の人がひとり、背中を丸め、空を見つめてすわっていた。中南米のスペイン語圏からの移民、ヒスパニック系のようだった。

 今、来た電車はCトレインでしたか、と尋ねると、いいえ。Bよ。私もCを待っているのよ、とその人が答えた。週末は地下鉄のルートがよく変わるから、何が何だかわからなくて、と私がぼやく。この辺に住んでいるの?  とその人が私に聞いた。いいえ。あなたは? もっと北のブロンクスよ。話していると、Cトレインがホームに入ってきた。私たちは隣にすわった。その人はプエルトリコ出身だった。

 What brought you to New York? どうしてニューヨークにやってきたの? 軽い気持ちで、私が尋ねた。

 It’s a long story. 話せば長いのよ。そう言って笑うと、女の人は自分の物語を話し始めた。

 私が生まれる前に、父は母を置いて、家を出ていったの。そして私が八歳のとき、今度は母が私を置いて、家を出ていってしまった。私は母方の祖母に育てられたの。母はひとりでニューヨークに行ったと、あとで知った。十八歳になったとき、母を追い求めて、私もひとりでこの街にやってきたの。で、お母さんには会えたの? その人は首を横に振った。会えるわけがないわよ。この大都会のどこに母がいるか、何の手がかりもなかったんだから。でも、母に会いたい一心で、飛び出してきちゃった。あれからもう二十年もたってしまった。

 そう言うと、みるみるうちに、その人の目から涙があふれ出した。ごめんなさい。聞かなければ、よかったわね。いいえ。聞いてくれて、うれしかった。

 降りるとき、私が声をかけた。You never know. You might run into your mother tomorrow. This is New York. Anything can happen. わからないわよ。明日、お母さんにばったり会うかもしれない。ここはニューヨーク。何だって起こり得るんだから。

 その人が笑った。Thank you for listening. 話を聞いてくれてありがとう。

 地下鉄でそばにすわっていた人たちは、その人と私がたった今、出会ったとは、想像もしないだろう。でも、それがニューヨークという街でもある。そっとしておいてほしければ、群衆のなかでひとりぼっちでいることもできる。でも、誰かと話したければ、ひとりぼっちではなく、ふたりぼっちになれる。それも、地球の反対側からやってきた、見ず知らずの人とでも。

 いつか私がふたりぼっちになりたいときも、きっと耳を傾けてくれる人がいるだろう。ニューヨークはなぜか、そんなふうに思える街なのだ。

 このエッセイは、シリーズ第6弾『ニューヨークの魔法をさがして』に収録されています。40万部突破の「ニューヨークの魔法」シリーズ(全9巻)は文春文庫から刊行されています。

https://books.bunshun.jp/list/search-g?q=岡田光世

その16:今年は断念、アルバカーキの国際気球祭

魅惑のアメリカ旧国道「ルート66」 をフォーカス

 ルート66ファンの皆さん、こんにちは!この記事を書いてる日、こちら東京は梅雨のシーズン真っただ中です。雨が降りしきる日はまだ多少涼しいのですが、その合間で出る太陽は湿気と相まって非常に危険な暑さになっています。筆者は雨が大嫌いですが、気温上昇を多少でも抑えてくれるのであれば、期間中ずっと雨でも仕方ない、と思うほど暑いのです。今年はそこに加え「マスク」という生活のお供が登場しました。先日もエアリズムという響きに踊らされた事案がありましたが、各メーカーさんより夏用の涼しいマスク商戦となるこの夏、ニューヨークを中心としたトライステイトの皆さんはいかがお過ごしでしょうか。聞きたくもないけれど避けては通れない話題、コロナ感染も世界的には一向に落ち着く気配も見せず、ドイツやポルトガル、そして私達アメリカでも多くの方々が病に苦しんでいる状況ですが、一方ワクチン開発に関わる記事も多く、人体投与を始める企業や関連団体もあり、本当に一日も早く世界が前進できる時が待ち遠しいです。

 先月のこのコラムではコロナ禍がルート66のイベントを次から次へと中止または延期に追い込む現状をお伝えし、ニューメキシコ州アルバカーキで毎年秋に開催される世界的な大イベント「バルーン・フィエスタ(Balloon Fiesta)」の行方を懸念したばかりですが、それが悲しくも現実となってしまいました。今月の「魅惑の旧街道を行くシリーズ」シーズン③ 第16話は、先月から話題の延長となりますが、その「バルーン・フィエスタ」について来年を見据えた宣伝も兼ねて、皆さんにご紹介したいと思います。

 先月中旬、アルバカーキ国際バルーン・フィエスタの主催者は、コロナウイルスのパンデミックが理由となり、1972年に開始して以来初めて同イベントの中止を発表しました。もちろんこのキャンセルはニューメキシコ州の観光経済に大きな打撃を与えます。というのは、毎年10月の第1週目より9日間に渡って開催されるこのイベントは約85万人を動員するからです。このようなある意味「旗艦」となるイベントを3か月以上も前にキャンセルを発表することは、今のパンデミックがいかに深刻なのかを端的に表しています。

 フィエスタ理事会のマット・ガスリー会長は同イベントのウェブサイトで、当初は彼ら非営利団体はイベントを開催することを希望していたこと、しかし残された期間を考慮した結果、参加者の健康と福祉に影響を与える可能性があること、取り分けパイロット、ゲスト、スポンサー、スタッフ、そしてボランティアの皆さんの安全は常に最優先事項でありること等を語っています。そして結論として、もし誰かがこのイベントに参加した結果COVID-19に感染してしまった場合、それはイベントが完全に失敗することを意味し、今後の在り方さえ左右しかねないことを考慮し、第49回「アルバカーキー・インターナショナル・バルーン・フィエスタ」の開催を来年2021年10月2日〜10日に託すことを決定しました。これを受けてニューメキシコ州観光局は、「バルーン・フィエスタの延期という極めて困難な決定を支持します」と、すぐに声明を発表しました。バルーン・フィエスタを軸とする観光業はニューメキシコ州の復興に欠かせないものですが、公共の安全を最優先した結論となるわけです。

 ではここからはこのイベントについてご紹介しましょう。アルバカーキ・インターナショナル・バルーン・フィエスタは10月初旬にニューメキシコ州アルバカーキで開催される、毎年恒例の「熱気球飛ばし」のイベントです。第1回目の1972年はわずか13組の参加でしたが、今では500組以上が参加する熱気球関連では世界屈指のイベントになりました。始まりは地元ラジオ局、770 KOB Radioの50歳の誕生日祝いのハイライトでした。同局のマネージャーであった Dick McKee氏は同州で初めて熱気球を所持した Sid Cutter氏に、彼の熱気球を新しいイベントの一環として使用できないかと尋ねます。熱気球では第一人者である Oscar Kratz氏にも相談し、3人は日々議論に明け暮れました。そこでKratz氏からの提案は「史上最大の熱気球イベント(当時は英国で行われた19組参加)を超える催しが出来るなら」というものでした。SidとDavidは挑戦することに同意、その後21人のパイロットからのコミットメントを得たものの、悪天候によってその地に到達できぬ者も多く、結果最初のフィエスタはKOB主催の下、72年4月8日に13組の「風船の集まり」として終わりました。とはいえ、このイベントはアリゾナ州、カリフォルニア州、アイオワ州、ミシガン州、ミネソタ州、ネバダ州、そしてテキサス州からのバルーニストが参加し、総勢2万人を動員する立派なものでした。翌年、アルバカーキでは2月に第1回「世界熱気球選手権」が開催され、フィエスタは国際的なイベントとなりました。75年、KOB主催の熱気球フィエスタはアルバカーキ世界選手権と時期が重なり、さらには気球は寒い2 月よりも秋の方がはるかに飛行に適した時期であったため、この2つのイベントは合併し、現在に至るまで10月初旬に開催されることになったわけです。

 バルーン・フィエスタはその後毎年開催され、今日では世界最大のバルーンコンベンションとなりました。登録されたバルーンの数は2000年に1019のピークに達しましたが「量より質」を重視し、01年から数を750に、そして09年には600に制限しました。かく言う筆者も約10年ほど前、アルバカーキ近郊のリゾートホテルに勤務し、フィエスタのスポンサーの1社として貴重な体験をしました。来年21年の10月は皆でGo West!それではまた来月お目にかかります!(後藤敏之/ルート66協会ジャパン・代表)

【今週の紙面の主なニュース】(2020年7月11日号)

(1)学生ビザを停止     1面
(2)生演奏の感動響く    1面
(3)エレキで米国歌     2面
(4)中村座ライブ公演    3面
(5)ジャパンカッツ開幕   3面
(6)学生ビザに弁護士助言  6面
(7)ホットドック早食い   7面
(8)黒人差別の911で起訴  7面
(9)アトランティックシティー営業再開 8面
(10)プリンストン大元学長除名 16面

学生ビザを停止

オンライン授業のみの学校

 米国の移民・関税執行局(ICE) は6日、学生ビザ(F1、M1)に関する変更を発表した。新型コロナウイルスの世界的流行に伴い、米国における秋以降の新学期に、オンラインでのみクラスが開催される学校に通う学生に対して米国務省がビザの発行を停止するほか、現在学生ビザで米国内に滞在している学生に関しても、自身が通う学校がオンラインでのみの授業が行われることになった場合はそのビザは無効となるとした。

 該当した場合、出国するか対面式クラス(in-person instruction)を開講している学校に転校する必要があるとしており、9月からの新学期を真近に控え、世界中から来米を予定している海外留学生や受け入れる側の大学などでも大きな混乱や影響が出そうだ。

 オンラインと対面式クラスを併用する学校は、留学生に対して新規のI20を発行し、プログラムがすべてオンラインだけで行われるものではないことを証明する必要がある。授業内容を変更した場合は10日以内に学生に通達することを学校に対して求めている。

 ニューヨーク州のクオモ知事は6月18日、秋から大学・カレッジの校舎での「対面」授業を条件付きで許可する考えを表明している。 

 ニューヨーク大学のキャサリン・フレミング教授はすでに、「秋に(州政府の指示に従い)極めて注意深く授業の再開をする」と学生宛てにメールした。コロンビア大学は、1学期の期間を延ばすことでキャンパスの人口密度を下げ、すべての学生が通常とほぼ同じ授業を受けられるようにするとし、6月24日に海外から来米する外国人留学生に対してオンラインと対面式授業を併用して行うとのレターを発送している。

(関連記事)移民弁護士の見解

対面授業併用なら 入国時にレターを

学生ビザ発行停止
弁護士がアドバイス

 米国の移民・関税執行局(ICE) が6日、学生ビザ(F1、M1)に関する変更(1面に記事)を発表したことに対し、移民ビザを専門とするニューヨークの加藤恵子弁護士は「非移民ビザはあくまでもアメリカ国内でなんらかの業務を行うことで発行されるビザです。学生ビザはアメリカ国内で勉学することが目的のものです。オンライン授業はアメリカ国内でなくても受けられます。ICE (移民・関税執行局)の発表はその意味では正しいのです。ただし、留学生はただ授業を受けるだけではなくアメリカの国の文化や社会を知ること、それは現地で実際に目で見て耳で知り、現地の人たちとの交流をその地ですることによって得られるものだと思います。学生ビザが発行されないということはそれができなくなります。オンライン授業だけでなく対面を併用する学校でしたらビザが発行され、アメリカで授業を受けることは許可されますが、入国審査官によっては全ての留学生のアメリカ入国を拒否すると解釈する場合もありますから、学校からの対面での授業もするという内容の手紙を事前に用意していただき、入国時に審査官に見せることをお勧めします」とアドバスする。

 日本企業からの派遣留学予定者たちもこの秋から各国の新学期に合わせて出国準備を進めているが、新型コロナウイルスの世界的流行によって渡航時期がずれたり、ビザ取得に時間がかかったり不安定な状況が続いている。対面併設のハイブリット授業の予定が確認できたら、大学から新規I20、同趣旨を記したレターを取り寄せるなど入国時の準備が必要となりそうだ。

ハーバードとMIT
差し止め連名で提訴

 学生ビザに関してトランプ政権に対してハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)が連名で訴えを起こした。ICEの決定が「大学に対面式クラスを再開することを強制する」ように見え、それによりコロナウイルスにさらされるリスクを増大させる。

 また留学生の生活を混乱させるなどを理由に、ボストンの連邦裁判所に、この政策に対する一時的な禁止命令と永久的な差し止めを求めた。ハーバードの学長は他校に協力を求めるステートメントを出した。今後同じような訴えが起こる可能性がある。

(関連記事)学生ビザを停止