ニューヨークの魔法 29岡田光世 その夏、私はバッテリーパークシティの友人宅にひとりで泊まっていた。友人夫婦のサラとビルがコネティカット州の避暑地で一か月ほど過ごす間、二匹の猫の世話を頼まれたのだ。 ここ […]
カテゴリー: ニューヨークの魔法
異国の母、マンハッタンをゆく
ニューヨークの魔法 28岡田光世 母の日おめでとう、と先生の祖国の言葉で今日は花束を手渡したくて、朝から何度も練習していたのに、会う頃にはすっかり忘れてしまった。先生との待ち合わせはいつも、 メイシーズ前の小さな広場。 […]
花束を抱えた者同士
ニューヨークの魔法 27岡田光世 真紅のバラの花束を抱えて、友人のアパートメントのエレベーターに乗る。中には男の人が三人いて、ひとりがリボンの付いた色とりどりの花束を抱えて立っていた。 まあ、偶然ね。なんてきれいな花 […]
忘れがたき故郷
ニューヨークの魔法 ㉖岡田光世 三月二十五日、ギリシャの独立を記念し、パレードが行われる。五番街は国旗の色、青と白で鮮やかだ。アイルランド系移民のセント・パトリック・デー・パレードに圧倒され、それほど目立たない存在だが […]
キスとハグのおすそ分け
ニューヨークの魔法 ㉕岡田光世 その年のバレンタインデーの朝を、さみしい思いで迎えた。アメリカでは、男性が女性に贈り物をする。夫は日本にいる。何も贈ってくる気配はない。仕事以外の予定は、何もない。 もらえ […]
恐竜のお守り
ニューヨークの魔法 ㉔岡田光世 向こうの大きなテーブルは、障害を抱えた子どもたちのグループでにぎやかだった。何かを楽しそうに作っている。 私は、アメリカ南東部、ジョージア州のコロンバスという町にしばらく滞在していた。 […]
ハレルヤ!
ニューヨークの魔法 ㉓岡田光世 サンクスギビングに、サウス・ブロンクスの教会に行った。この辺りは犯罪多発地帯として悪名高い。午前九時半、礼拝堂にはすでに二十人ほどが集まり、静かに祈っている。祭壇の前の床にも数人がひざま […]
スープをすするドラキュラ
ニューヨークの魔法 ㉒岡田光世 頭から足の先まで、体中を包帯でぐるぐる巻きにされた女の子が、両親に手を引かれて歩いてくる。アッパー・ウエストサイドの閑静な住宅地だ。 That’s spooky! 人々は思わず、振り […]
ダディの星条旗
ニューヨークの魔法 ㉑岡田光世 同時多発テロ事件から七年目の九月十一日、式典が終わり、グラウンドゼロの脇にある通路を歩いていた。金網の向こうに、グラウンドゼロが見える。この巨大な空虚な穴を見つめていると、心臓をえぐられ […]
ランチのおかずは、街ゆく人たち
ニューヨークの魔法 ⑳岡田光世 先生はもうすぐ、九十歳になろうとしていた。元気な声で出てくれますように。祈る思いで、数年ぶりに電話する。 岡田さん? ああ、うれしい。どこにいるの? 今日、お会いできる? 先生はいつ […]
子どものリュックを背負った男
ニューヨークの魔法 ⑲岡田光世 通りを歩いていると、信号の手前で体格のいい白人の中年男性が、両腕をバタバタさせて、何やら情けない顔であわてている。身動きできないようだ。よく見ると、キャラクターが描かれた、小さなピンクの […]
あなた、それでも日本人?
ニューヨークの魔法 ⑱岡田光世 My bonsai is dead! 私のボンサイが、死んでしまったじゃないの! 突然、サラに激しい口調で責め立てられ、私は言葉を失った。 ミッツィ(私の […]