夜間外出禁止令前倒し解除

ニューヨーク日本総領事館によると、ニューヨーク市は6月8日午前5時までとしていた夜間外出禁止令を本日7日朝に解除した。ニューヨーク市内では本日も以下のような抗議活動等が予定されている。一部の抗議活動は市内を移動しながら,他の抗議グループと合流する可能性もあるという。

本日(6月7日、日曜)の抗議デモ予定は次の通り。
(1)ブルックリン
12:00   Herbert Von King Park(RALLY)
13:00   Fulton & Marcy Ave(MARCH)
13:00   Owls Head Park(PROTEST)
14:00   1368 Fulton St.(MARCH)
15:00   Grand Army Plaza(BEAT THE DRUM PROTEST)
16:00   110 W 9th(PROTEST)
16:00   Washington and Water St.(PROTEST)
16:30   Prospect Park(FAMILY MARCH)
17:00   Brooklyn Bridge Park(VIGIL)
18:00   McCarren Park(PROTEST)
(2)マンハッタン
12:00   Union Square(HEALTHCARE PROVIDERS MARCH AGAINST POLICE BRUTALITY)
12:00   Times Square(PROTEST)
13:00   5th Ave Madison Square Park(PROTEST)
13:00   125th & Lexington(PROTEST)
13:00   Duke Ellington Circle W 110th(RALLY & PROTEST)
14:00   Union Square(MARCH & PROTEST)
14:00   42 St-Bryant Park(PROTEST)
14:00   Convent Ave Baptist Church(MARCH)
15:00   120th & Morningside Ave(MARCH)
(3)クィーンズ
11:00   Grover Cleveland Park(PROTEST)
14:00   115-50 Merrick Blvd(PROTEST)
14:30   34th Ave & 72nd St.
15:00   Queens Center Mall(MARCH)
15:30   Main St. Flushing(MARCH)
(4)ブロンクス
13:00   Marble Hill Houses(MARCH)
13:00   E Fordham Rd & Grand Concourse(MARCH & RALLY)
13:30   Truman High School(PROTEST)
17:00   Zimmerman Playground (Olinville Park)(VIGIL)
(5)スタテンアイランド
11:30   P.S. 22 Mosley Place(PROTEST)
15:00   Conference House Park(PROTEST)

クイックUSAアメリカの人事部 コロナウィルス関連(5)

「出社への不安という理由」

 多くの州で一部の経済活動が再開しており、今後も少しずつではあるがニューノーマルと呼ばれる形で経済活動が更に許可がされていくことであろう。
 COVID-19により、在宅勤務を許可している企業も多く在宅勤務に対する考え方が変わったり、不可能と思っていた在宅勤務が実際は可能であること、また可能ではあるものの、運用に困難が 伴うことが分かったのではないだろうか。
先日Twitter社の最高責任者であるジャック・ドーシー氏が、ポストコロナでも在宅勤務を許可すると全従業員に通達したことが話題となった。米調査会社のGallup Data社による調査結果ではCOVID-19によって全米の労働者のうち63%が4月中に在宅勤務を行ったと回答をしており、これは3月の調査結果の31%から2倍強の数値となっている。
また、ビジネス向けコミュミケーションツールを提供するSlack社の実施したアンケート調査によると、現在在宅勤務をしている労働者のうち66%がCOVID-19の影響により在宅勤務を開始しており、専門的知識を要するホワイトカラー労働者(医師、薬剤師、科学者等を含む)であっても約11%は在宅勤務が不可能であると回答している。併せて、調査回答者のうちおよそ半分の48%が在宅勤務では業務遂行がより難しくなるという回答をしている。
 出社拒否をする従業員の対応にはLegal(法的)とReputational(風評)/Morale(モラル)の側面から検討をする必要がある。
1 Legal(法的)
ポスト・コロナでの出社拒否をする従業員には「感染が不安」という理由がまず挙げられる。Legal(法的)な面で、「不安」という要素のみで出社拒否をする権利は従業員にはなく、また雇用主もこの許可をする義務はない。但しThe

Occupational Safety and Health Administration(労働安全衛生庁)及びにAmericans With Disabilities Act (ADA:障がい者法)、各自治体から発表されているガイドラインに即していない場合には企業として従業員からの出社拒否への対応を求められる場合がある。
2 Reputation(風評)/Morale(モラル)

Legal(法的)な部分と同様、今回の出社拒否に対しては会社モラルの観点かも考慮すべきかもしれない。
COVID-19にて多くの従業員がオフィスという閉鎖された室内で複数の人と長時間過ごすことに不安を抱えている点は理解が出来るはずである。特に通常、公共の交通機関を利用して出勤をしている従業員はそのように考えるかもしれない。
出社拒否をする従業員を強制的に出社させることによる企業の風評悪化、従業員のモラル低下を考慮すると、在宅勤務継続も視野に入れた新たな働き方を模索したり、会社の所在地、従業員の就労場所を踏まえて適用可能なベネフィットを調査することで対処の幅が広がりうる。
引き続き出社を求める場合も、①ソーシャル・ディスタンスを保つデスクやオフィス家具の配置、②時間差での出勤スケジュールや、フレックスタイムの導入、③週数日の在宅勤務の許可、④マスクや手袋、オフィス消毒用アイテムの常備等の手配・準備をして、ニューノーマルに準拠した適切な就労環境を提供する必要がある。
HR Linqs, Inc. 社長・CEO 榊原 将
www.919usa.com

編集後記 6月6日号

◼️【編集後記】6月6日

みなさん、こんにちは。ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイドさん(46)が警官に膝で首を押さえつけられた後死亡した事件を受け、5月27日から全米各地で抗議行動が発生しています。31日までに約140の都市にまで広がり、一部は暴徒化し、ニューヨーク市では14丁目のユニオンスクエア周辺からソーホーやイーストビレッジなど広範囲に深夜略奪行為がありました。クオモ州知事は31日の会見で、30日の州内の逮捕者は約350人と発表。抗議行動への理解は示しつつ「暴力では何も解決しない」とし、1日午後11時から翌朝午前5時まで外出禁止令を出しましたが、同日夜に大手百貨店メイシーズが略奪被害に遭ったこともあり、デブラシオNY市長は翌2日、同日午後8時から市としては戦後初の施行となる夜間外出禁止令を7日まで発令しました。小売店は、板張りで防衛策に乗り出していて、マンハッタンの五番街、マジソン街、ソーホー地区のブロードウエーなど板張りシャッター街になっています。NY市の外出禁止令は、午後8時から翌朝5時まで8日(月)午前5時に終了。ヘルスケア、市職員、プレス・メンバーなどのエッシェンシャル・ワーカーは該当せず。24時間営業のグロッサリー・ストアーはエッセンシャルビジネスに含まれるため、営業可能(使用できるのは主にエッセンシャルワーカー)。公共機関やキャブ、個人ハイヤーなどは営業可能。地下鉄、バスはこれまで通り午前1時から5時までは清掃作業のため運休。UberやLyftなどの個人ハイヤーは午後8時から午前0時半まで営業停止。午前0時半以降はエッセンシャルワーカーの帰宅や移動のために営業可能。イエローキャブとグリーン・キャブは終日営業可能(ただし外出禁止時間中に利用できるのはエッセンシャルワーカーのみ)。マンハッタン96丁目以南の一般車両走行禁止。運搬用大型車などはこれに含まれず。メディカルなどに関わる外出は許可。救急隊も通常通りオペレート。犬のトイレのために外に連れ出すことはごく近所に限っては可能だか、運動目的の散歩は禁止。シティバイクの同時間帯の貸し出しは禁止となっています。コロナ収束を見込んで週明け8日(月)からはニューヨーク市の経済再開第1フレーズ(農業、建設業、一部小売店など)がスタートする予定ですが、今回の暴動でビジネス再開ムードの出鼻を挫かれた感じではあります。抗議デモ行動と暴動は全くの別物と、クオモNY州知事も怒っていますが、何しろデモ行進の群衆の中に暴徒が紛れ込んでいるのでなんとも見分けがつかないのが歯がゆいところです。ソーシャル・ディスタンスもあったもんじゃありません。小売店の危機感はしばらく収まりそうにありません。それではみなさん、よい週末を。(「週刊NY生活」発行人兼CEO三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2020年6月6日号)

(1)NYで夜間外出禁止令    1面
(2)ジャパンデー今年は中止   1面
(3)JAAプロジェクト弁当    3面
(4)全米で抗議集会       4面
(5)略奪と暴動はデモと別物   5面
(6)目抜き通り板張り街に    5面
(7)鈴木ファーム・ルポ     10面
(8)自宅でヘルシーハビット   10面
(9)キャンディで世界に笑顔   11面
(10)イケメン・バミューダ・ショーツ 16面

NYで夜間外出禁止令

 ミネアポリスで黒人男性のジョージ・フロイドさん(46)が警官に膝で首を押さえつけられた後死亡した事件を受け、5月27日から全米各地で抗議行動が発生。31日までに約140の都市にまで広がり、一部は暴徒化し、ニューヨーク市では14丁目のユニオンスクエア周辺からソーホーやイーストビレッジなど広範囲に深夜略奪行為があった。クオモ州知事は31日の会見で、30日の州内の逮捕者は約350人と発表。抗議行動への理解は示しつつ「暴力では何も解決しない」とし、1日午後11時から翌朝午前5時まで外出禁止令を出した。しかし同日夜に大手百貨店メイシーズが略奪被害に遭ったこともあり、デブラシオNY市長は翌2日、同日午後8時から市としては戦後初の施行となる夜間外出禁止令を7日まで発令。小売店は、板張りで防衛策に乗り出している。

(関連記事)全米で抗議集会

(関連記事)略奪と暴動

JAAプロジェクト弁当 NY高齢者に無料配送

大使公邸料理人も協力

 ニューヨーク日系人会(JAA)が5月4日から始めたプロジェクト弁当は1週目に95個のデリバリーを行ったが、現在はニューヨーク市内(マンハッタン、クイーンズ、ブルックリン、ブロンクス)の170人以上のシニアに毎週月曜日と木曜日に分けて無料で配達している。

 サンライズマートの弁当はマンハッタン、ブロンクスとブルックリン、BENTONの弁当はクイーンズに伊藤園のお茶とDAIEIからのスナック、ボランティア作成のマスクと一緒にデリバリーしている。

 また、イザベラハウスにはサッポロビールの支援でJUKUレストランの弁当、ニューヨーク総領事館山野内勘二大使の支援で公邸の嶋泰宏公邸料理長と堤昭吾副料理長の弁当とメッセージが添えられて、お茶、スナック、マスクが届けられた。今後も大使公邸とBESSOUから続けられる。

 同プロジェクトの趣旨は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う自宅待機、外出規制のなかで孤立しやすいシニアや障害者に「繋がろうお弁当とコミュニティー!」をテーマにしたもの。当初はサンライズマートと伊藤園の協力を得てスタートしたが、BENTON、NY総領事館、BESSOU&JUKUレストランが加わり、多くの日本企業・団体から総勢60人のボランティアが参加した。

  現在、プロジェクト弁当ではシニアだけでなく生活困窮者支援のための募金活動も行っている。弁当の申し込みや寄付、ボランティア希望者はJAA電話212・840・6899、またはEメール [email protected] まで。

(写真)イザベラに配達する弁当を大使公邸の料理人が25個作った。サンライズマートの好田絵里奈さん(中央)に弁当を手渡す山野内大使とメッセージを持つ大使夫人(左端)

ジャパンデー 今年は中止

パレード来年に延期

 ジャパンデー事務局は5月21日、今年10月に延期しての開催を予定していたジャパンデー@セントラルパークのイベントをコロナ影響事情から今年は中止し、目玉として予定していた日本パレードは来年に延期することを決定した。

 理由として、今後ニューヨークでの大型イベント開催がどの時点で再開できるか、またコロナ禍で安全に実施できる体制のガイドラインが不透明であること、参加者、来場者、関係者全員の安全確保を最優先とすべきこと、来年の夏には東京オリンピック・パラリンピックの開催が予定されており、今年より一層イベントを実施する意義が増すことなどを挙げている。

 同事務局では、本来予定していた今年5月開催の延期を決定した後も、秋のイベント開催に向けて、その是非につき協議を行ってきたという。しかし5月に入ってからも、ニューヨークの感染者数や死者数が依然として多く、今後の再開もニューヨーク市については特に時間がかかる見通しから年内の開催を断念した。

全米で抗議集会

 発端となったミネアポリスの事件は25日午後8時頃に起きた。偽の20ドル札を使おうとしている男がいるとの通報を受けた警察が駆けつけ、デレック・チョービン警官(44、26日に解雇)がフロイドさんを地面にうつぶせにして膝で首を押さえつけた、フロイドさんが「息ができない」と訴えても、通行人から「殺す気か」と言われても、チョービン警官は押さえ続け、他の3人の警官も止めようとしなかった。フロイドさんの反応がなくなってからも2分以上押さえつけ、救急車が来てから膝を離した。押さえつけていた時間は8分46秒で、フロイドさんは病院で死亡が確認された。

 通行人らがこの様子を撮影しソーシャルメディアに投稿。ミネアポリス警察は当初、フロイド容疑者は抵抗していた、また死亡は医療事故と説明していたものの26日にチョービン警官と現場にいた3人の警官を解雇した。しかし夜には最初の抗議集会がミネアポリスはじめミネソタ各地で開かれた。27日に全米の主要都市に広がるとともに放火や略奪も発生した。ミネアポリスでは28日にチョービン元警官が勤務していた警察署が放火された。元警官は29日に第3級殺人罪と過失致死で起訴されたが騒ぎは収まらず、同日夜に州警察と州兵がミネアポリスに投入された。

 全米各地でデモが起きており、警察車両だけでなく商業施設も放火され、店舗から商品が盗み出される略奪行為も発生している。これに対し警察はデモ隊に催涙スプレーや胡椒弾、閃光弾などを使用。混乱のなか29日夜にはカリフォルニア州オークランドとミシガン州デトロイトで銃撃があり、それぞれ1人が死亡した。ミネアポリスでは30日夜、警察が暴徒化した市民に発砲し1人が死亡した。アイオワ州ダベンポートでも2人が銃撃され死亡した。AP通信によれば31日までに全米で4400人以上が逮捕された。1日は午後からニューヨーク市内全域で抗議集会や行進が行われた。

(写真)「黒人の命だって大切だ」を掲げる白人女性(1日午後5時、ユニオン広場で、写真・三浦良一)

略奪と暴動

「デモを悪用」クオモ州知事会見で激怒

 抗議活動が過激化しているのは、新型コロナウイルスによる外出制限や景気が悪化したことへの不満が背景にあるとの指摘がある一方で、暴動を煽っている勢力がいるとの見方がある。

 ニューヨーク市警の情報・テロ対策を担当するジョン・ミラー副本部長は31日、「暴力行為を意図的に起こそうとする無政府主義グループとつながりのある者が多くいる」と述べた。

 クオモ州知事は2日、ニューヨーク市も6月8日(月)に経済再開の第1段階へと移行する見通しを発表した一方、新型コロナウイルスの問題に関してはうまく対処してきたとしながらジョージ・フロイド氏の死によって引き起こされた怒りに基づく抗議活動と犯罪行為・略奪に関する問題について「抗議活動と犯罪行為は分けて考えなくてはいけない。暴徒はデモを悪用している。抗議活動に参加する人は怒って良い。彼らの抗議活動は平和裏に実施されているし、今まで解決されなかった問題の解決を求めているだけである」と述べている。

(写真)略奪された衣料品店内(1日午後、ソーホーで、写真・小味かおる)

日本の美味しい野菜を生産

日本人農家 鈴木ファーム・ルポ

デラウエア州デルマー地区

 ニューヨークから車で5時間、デラウエア州の広大な土地の中、木々の中に現れたのは日本人農家が営む「鈴木ファーム」。畑に植えられたキャベツに白菜、ビニールハウス、まるで日本にタイムスリップしたかのような感覚だ。

 鈴木ファームはデラウエア州デルマー地区で農業を営み今年で31年。東海岸で唯一日本の野菜を生産、作付き面積28エーカーの土地で30種類以上の日本の野菜を育てている日本人農家だ。

 ワシントンDC、NY、NJ、フィラデルフィアなどの日本食スーパーやレストランへ野菜を出荷、コロナの影響で活動が自粛されている中、鈴木ファームへの顧客からの問い合わせは増えているという。4月からは、オンラインサイト、NY農場フレッシュ(www.nynojofresh.com)でも販売を再開。鈴木ファーム野菜5種セットは同オンラインサイトで一番の人気目玉商品だ。

 私が伺ったのは、ちょうど配達前日の昼。「これから野菜取ってきて、洗って梱包始めるんだよ、この前は夜中までかかったよ。明日からはキャベツが入るからね」と、スタッフは収穫に向かい、作業場の中は静まり返っている。5種類の野菜はオーナーの鈴木けんさんが、旬の野菜を選んだ自慢のセット。1つ1つ丁寧に梱包され、NY農場フレッシュの配達日早朝に届けてくれる。NY農場フレッシュの配達スタッフは、鈴木ファームの野菜セットを受け取り、一斉顧客のもとへ配達に向かう。

 今後の野菜の収穫について聞いてみると、今年の5月は霜が降ったりと気温が不安定なこともあり、野菜の収穫が遅れており、現在、収穫中の野菜は、小松菜、水菜、大根、白菜、キャベツ、ほうれん草、大葉。夏物野菜のピーマン、茄子の種が植え終わり、次はシシトウ、ニガウリ、オクラ、里芋、かぼちゃを植えるという。

 6月のNY農場フレッシュの野菜セットには、キャベツ、大根、葉ネギ、シシトウが入る予定。

 「うちの大根は新鮮だから葉っぱがついてる。皆さん、うちの大根を待っているからね」と鈴木さんも出荷を楽しみにしている様子。「毎日忙しいよ。でも、みなさんに期待されているから、頑張ります。みなさんも、コロナに負けないで鈴木農場の野菜を食べて頑張っていただきたい」と笑顔で話す鈴木さん。

 翌日、配達で届いた野菜セットは、キャベツ、小松菜、水菜、ほうれん草、大葉の5種類、鈴木ファームの光景と鈴木さんの言葉を思い出しながら、お客様のもとへと向かう。

 (NY農場フレッシュ/鈴木理恵、写真も)

NY農場フレシュ
ウェブサイト  www.nynojofresh.com/
問い合わせ [email protected]

マンハッタン目抜き通り板張りシャッター街に

 ニューヨーク市内の目抜き通りでは、主要小売店が板張りのバリケードで略奪行為への自衛策に続々と乗り出している。

 五番街の高級デパート、サックスは暴動があった翌日1日午前には早々と板張でショーウインドウを目隠し。高級宝石店のカルチェも、マジソン街の鎌倉シャツも板張りでバリケードを作った。1日深夜にはメイシーズ百貨店が略奪被害を受けており、小売店は戦々恐々だ。クオモ州知事は週明け8日からの市内での経済再開第1段階を予定通り進める方針だ。

その5:ピラミッド

ジャズピアニスト浅井岳史のエジプト旅日記

 毎朝大量の汗をかいて目が覚める。オフ2日目、今日はUberでピラミッドに行く。天気は晴れ、天気予報は毎日ずっと同じなのである。 

 クーラーが効いた車でギザに向かう。途中でナイル川を渡る。壮大だ! 砂漠に流れる唯一の川で、その周りにのみ緑がある。その上流には王家の谷、ルクソールが有り古代の文明が存在していたのだ。アガサクリスティーの「ナイル殺人事件」を思い出す。

 ギザはカイロ市街からは近く、20分ほどでピラミッドが見えてきた。運転手は入り口のチケット売り場に近いところで降ろしてくれた。チケットを買う。何やら複雑なシステムのようだが、全てを網羅した一番高いチケットを買った。それにしても暑い。最初にした乾き対策はコーラの一気飲みであった(笑)。

 さて、ここからが大変である。日陰が一切無い大変な温度の砂漠を歩くのである。悪徳ガイドによれば全部で8キロだそうである。そうやって脅して、やれラクダに乗れ、馬に乗れ、人力車に乗れ、アラビアのロレンスの帽子を買え、水を買えとしつこい限りの押し売りが押し寄せて来る。少し賢いやつは偉そうにチケットを見せろと命令する。一切関わるなと入れ知恵されている。全て振り切って、頑張って歩いてやっと最初のピラミッドに到着。ユネスコ世界遺産だけあって、凄い迫力である。

 さらに歩くと世界一の大きさを誇るクフ王のピラミッドが見えてきた。頂上の方は滑らかな斜面になっているが、途中から崩れている。このピラミッドを撮るために、16ミリの広角レンズを買ったのだ! が、被写体が大きくて構図に苦労する。強烈な太陽でファインダーが超見づらい。それに日陰の全くない灼熱の太陽で、集中力を持続するのが難しいうえに、相変わらず押し売りがうるさい。中には「これはギフトだ」(出た!)と品を手に押し付ける輩もいる。

 クフ王の石室の入り口に来た。入ろうとすると係員が「別のチケットが要る」と言う。最高額のチケットを買ったのに? また詐欺だと思ったが賄賂は要求せずに「チケットオフィスに行け」と言う。この炎天下をもう一度入り口に戻る? 周りにはスペインからきた若者の団体がいて、皆ブーブー文句を言っている。みんながその係員に「お金を渡すから」と申し出たが、彼はエジプト人には珍しく潔癖なのか融通が利かないのか、全く受け取らない。

 仕方ない、とりあえずスフィンクスを先に見て、その後で考えることにした。砂に埋もれた石畳をスフィンクスに向けて歩いた。ある男性が掃除をしている。すると私を見て「こうやって掃除をしているから金をくれ」と言う。え! しばらく歩くと「ラクダに乗れば楽だ」とアラビアのロレンス風の男たちがやってくる。格好良いので写真だけ撮らせてもらった(笑)。

 途中に石の柱が並ぶ神殿を抜けるとスフィンクスの後ろ姿が見えてきた。正面に廻る。確かに体は座っている猫で、顔が人間である。その昔、スフィンクスは通行人に「朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足で歩く動物はなんだ?」というナゾナゾを出して、答えられない者を食べていたという。そこに賢者エディプスが現れ「人間だ。赤ん坊の頃はハイハイして、大人になったら2本の足で歩いて、歳をとったら杖を使う」と見事に解いてしまった。スフィンクスはショックで崖から飛び降りて死んでしまったという。エディプスって、ソポクレスが書いた父親を殺して母親を娶ってしまったあのギリシャ神話の悲劇の主人公?

 子供の頃に親戚縁者がテレビで「ピラミッド」と言う映画を見たことを思い出した。子供の私は途中で寝てしまい、翌日親戚のお姉さんに映画の結末を聞いた。最後は陰謀が失敗し皆ピラミッドの中で流れ落ちる砂の中で殉死するという壮絶な内容であった。ピラミッドを作った奴隷たちも全員秘密を守る為に殺されたという。4500年前にこれを作った高度な文明には、すでに壮絶な権力争いと人の命など厭わない貧富の差があったのだ。

 貧富の差、殺風景な出口を出ると、今度はぼったくられるから絶対に乗るなと聞いているタクシーの運ちゃんたちがぶっ飛んでくる。Uberを呼んだ。待っているとまた、少女が腕にまとわりついてきた。女性が物乞いにきた。

 車窓からは相変わらずの砂漠と砂に覆われたカイロの集落が見える。殺伐とした風景のなかに、銃を持った軍人もかなりいる。高速道路を走っているのにロバや馬という低速車が走り、人も歩き、露店も出ている。そこを車が高速で走り抜ける。

 車がナイル川を越えた時に、私はハッとした。川の周りは豊かに緑が茂っている! ひょっとしたら4500年前は、このピラミッドの辺りにはナイル川の水があり、この川岸のように緑だったのではないか。そういえば、ピラミッドの石は運河を作って積み上げたと言う学者もいる。ということは、何故にこのナイルの水を灌漑してカイロに引かないのだ。そうすれば緑化した素晴らしい街になるのではないか。

 後で現地の友人に聞いてみたら、今上流にエチオピアがダムを造って、水資源の争いが起こっているとのこと。何とも複雑な事情があるようだ。(続く)

浅井岳史(ピアニスト&作曲家)www.takeshiasai.com