NY日系人会 華やかに晩餐会

創設118周年記念しハーバードクラブで

地域指導者賞に鈴木、伊藤両氏

 ニューヨーク日系人会(JAA、佐藤貢司会長)は5日、ハーバードクラブで創設118周年記念晩餐会を開催した。当日は、ニューヨーク総領事の片平聡大使夫妻を始め、河手哲雄北米三菱商事社長夫妻、米州MUFGホールディングスコーポレーション川野浩史取締会会長夫妻、受賞者の鈴木喜輝オリックス・コーポレーションUSA社長夫妻、リキ・伊藤JAA副会長、JAAの役員理事など190人のゲストが参加し盛大な晩餐会となった。

 大きなクリスマスツリーが会場を華やかに飾るなか、宴はニューヨーク混声コーラスのクリスマスソングで開幕した。ジョージ広瀬実行委員長が開会の辞を述べ、佐藤貢司JAA会長が、この1年を振り返るとともに、支援の企業・個人へ感謝の意を述べた。

 続いてJAA創設118周年を祝して片平聡大使が祝辞、乾杯の音頭を取り、ディナーがスタート。日系ジャズグループのオグラ・バンドの演奏を楽しんた。

 今年は、 オリックス・コーポレーションUSA社に、長年に渡るJAAの活動への支援に対して「コーポレート・コミュニティ・リーダーシップ賞」が鈴木社長に、NY日系ライオンズクラブの創設や、JAAでのボランティア活動に対してリキ・伊藤JAA副会長に個人貢献の「コミュニティ・リーダーシップ賞」がプレゼンターのスーザン大沼名誉会長と佐藤貢司会長からそれぞれ贈呈された。最後は、晩餐会の実行委員 スーザン・ミヤギ・マコーマック副会長が俳句の五七五を使って、野田美知代事務局長が戦後日本にララ物資を送ったJAAの歴史を紹介しながら、賛同企業への感謝の意を述べ、年次晩餐会は閉幕した。

特撮の神様 殿堂入り 円谷英二氏

セットでウルトラマンに演技指導するありし日の円谷監督。後方はバルタン星人

VES功労賞に

 株式会社円谷プロダクションの創業者、円谷英二氏(1901〜1970)年がVES(Visual Effects Society)の生涯功労賞である“Hall of Fame”(殿堂入り)に選出され、11月7日にロサンゼルスのソニー・ピクチャーズ・イメージワークスで表彰式が行われた。

 過去殿堂入りした映画監督には、ウォルト・ディズニー、スタンリー・キューブリック、ジョルジュ・メリエスなどが名を連ねており、日本人としては史上初の殿堂入りとなった。株式会社円谷プロダクション 代表取締役社長 永竹正幸氏が円谷英二氏の遺族の代理として登壇した。表彰式にはウルトラマンとバルタン星人も駆けつけ、会場を盛り上げた。

 「特撮の神様」として知られる円谷英二は、1919年に撮影技師の助手として映画キャリアをスタート。23年にカメラマンに昇進すると、当時最先端の撮影技術を探求し、日本映画界初の鉄製の撮影用クレーンを制作。この頃、映画『キング・コング』(33年)に感化された英二は、特殊撮影技術を最大限に生かした作品作りを志向し始める。 英二は戦後もキャリアを積み重ね、54年に本多猪四郎監督、東宝製作の『ゴジラ』の特撮により、世界的にその名を知られることになる。『ゴジラ』は劇場映画として史上最長となるゴジラシリーズの礎を築き、史上最高の怪獣映画の一つとして認知されている。

 彼は精力的に後進の育成や技術継承に取り組み、63年に自身の会社である円谷特技プロダクション(現:円谷プロダクション)を設立。そこでテレビ番組『ウルトラQ』、『ウルトラマン』、『ウルトラセブン』などのウルトラマンシリーズを立ち上げた。創業者・円谷英二の「空想の力」は、現在も円谷プロダクションの企業活動の源泉、基盤として受け継がれている。

未来への希望伝える

円谷英二氏殿堂入り
永竹正幸社長が来米し登壇

 株式会社円谷プロダクションの創業者、円谷英二氏がVES(Visual Effects Society)の生涯功労賞である“Hall of Fame”(殿堂入り)に選出され、11月7日にロサンゼルスのソニー・ピクチャーズ・イメージワークスで表彰式が行われた。株式会社円谷プロダクション 代表取締役社長 永竹正幸氏が円谷英二氏の遺族の代理として登壇した。 

(写真最上)ウルトラマンと共に登壇し挨拶する永竹円谷プロ社長

 円谷プロダクション代表取締役社長、永竹正幸氏のスピーチは次の通り。

 本日、円谷英二のVES殿堂入りという歴史的な瞬間に立ち会わせていただき、大変光栄に思います。円谷英二が60年以上前に創業した円谷プロダクションを代表し、ご家族の皆様、VESの関係者、そしてこの殿堂入りに関わった全ての方々に、心よりお祝いと感謝を申し上げます。

 「観ている人たちに喜びや驚きを与えたい。その喜びや驚きを糧に、想像する喜び、未来に向かう希望、平和や愛を願う優しさなどを育んでもらいたい」円谷英二は、常に作品を通じてこの想いを伝えようとしていました。

 この想いを形にするために、彼は「空想の力」を駆使し、1954年の『ゴジラ』や、66年に始まり今なお続く『ウルトラマン』シリーズなど、革新的な作品を数多く生み出しました。彼の作品は、世界中の映画制作者に多大な影響を与え続けています。

 今回の殿堂入りは、円谷英二の功績を、単に技術的な面にとどまらず、国境や時代を超えて未来のクリエイターたちに影響を与え続ける普遍的なインスピレーションの源泉として位置づけ、称えるものです。

 改めまして、VES関係者の皆様に感謝申し上げますとともに、この素晴らしい栄誉に心よりお祝い申し上げます。ありがとうございました。  (原文まま)

週刊やさしいにほんご生活 日本のクリスマス、光陰矢の如し

この連載は、日本語を勉強している人を読者対象としたコーナーです。日本文化やマナー、タイムリーな日本に関する話題などを簡単な日本語で毎月第3週号に掲載します。アメリカ人の友人などにご案内ください。また、漢字をまだ習っていないお子様にとっても社会を知り、漢字に接するよい機会になります。



日本のクリスマス


 日本のクリスマスは、海外の人が「ちょっとふしぎ」と感じる行事のひとつです。12月になると、街はツリーやイルミネーションで華やぐのは同じですが、家族で静かにすごすよりも友だちやパートナーと出かける人も多くいます。そのため街はとても賑やか。また、クリスマスにはチキンやケーキが定番で、特にケンタッキーフライドチキンは毎年行列が出来るほどの人気です。お店や街中にケーキが沢山並ぶのも日本らしい光景です。日本のクリスマスは、楽しいイベントとして独自の文化となりました。ミサや礼拝に行く方もいますが、宗教にとらわれず、だれもが楽しめる季節の風習として定着しています。(長久保美奈、マナー講師)

わくわくことわざ(16)
文とイラスト 平田恵子


光陰矢の如し


 月日が過ぎていくのは弓矢のように早く、しかも二度と戻らないという真理を語っています。同時に「時間は大切にすべきである」との教えになっています。中国13世紀の禅書集にある言葉が伝わり、光陰の光は「日」、陰は「月」で、月日や歳月のこと。勘違いしそうですが光の速度は速いという物理の話ではありません。如しは、「〜のようだ」を表す古語です。「今年もあと2週間で終わりだ。光陰矢の如しだな…。来年はもっと漢字を覚えるぞ!」などと使えます。


《言葉の意味(ことばのいみ)》

・華やぐ to become bright and festive

・独自 unique / original

・ミサ Mass (Christian worship service)

・季節の風習 seasonal custom

・真理 truth

・早い early(early in time)

・速い fast,quick (fast in speed)

・速度 speed

・如し like

・禅書 Zen book  

・「光陰矢の如し」と同じ意味の英語  Time flies like an arrow

年越しそば予約開始 イーストビレッジの蕎麦屋

本格手打ちそばセット 2人前35ドルで


 イーストビレッジにある蕎麦屋(東9丁目229番地)は、年越しそばの予約受付を開始した。 「本格手打ちそばセット」は生麺2人分、オリジナル蕎麦つゆ、薬味(海苔、ネギ、わさび)入り35ドル。追加で海老天、天かす、なめこ、とろろ、ワカメなどもつけられる。最初の注文者30人には無料で新潟・青木酒造の純米酒「雪男」(180ミリリットル)が進呈される。注文の締め切りは 29日(月)まで。手打ちそばセットは大晦日の 31日(水)正午から午後7時までの間に蕎麦屋にてピックアップする。オーダーは電話212・533・6966、Eメール [email protected]、またはウェブサイト https://sobaya-nyc.com から。

運動を通してNY地域女性の健康サポート  吉岡真理子さん

フィットネスインストラクター

 吉岡真理子さん(53)は、ニューヨーク地域で産後ケア、更年期障害予防、骨粗相症予防、肩こり、腰痛予防、ストレス解消を目的としたエクササイズ教室を開催している。東京で短大を卒業後、株式会社丸井に就職、2001年に転職して東京の住友不動産系のジムに5年勤務しており、その時は健康運動指導士として一般ジム、シニアケアの運動指導をしていたが、2007年に韓国系アメリカ人と結婚し、ニューヨークに移住、出産、落ち着いた頃に運動指導を米国で再開し、現在11年目を迎える。2018年、日本親子体操協会指導者資格修得。

 女性を中心とし子供からシニアまでの健康に自分の生涯を賭けようと思ったのは、27歳の時に札幌の祖母が倒れたが、病院での運動や音楽治療で元気になる祖母の姿を見て、健康運動指導士になり、人々をこのように健康にしたいと思ったのがきっかけだ。  

 永住者はもとより、駐在員の奥さんたちや、日本人以外の人々にパーソナル、セミパーソナル、グループエクササイズ、ズームレッスンをウエストチェスターを中心に週15回ほど実施している。日本人のお母さんたちのサポートグループ「ニューヨークすくすくお茶会」(米国日本人医師会会長の加納麻紀医師が創設)のボランティア活動を通じ、イベント企画、開催に携わっている。 

 運動内容は基本的に「その方の目的に基本合わせます」としている。その人のライフステージにより、必要な運動、頻度、そして子供、家庭のスケジュールによっても異なるので、そこを考慮に入れることが大事だという。

 コミュニティーを広げる、など参加する人の目的に応じてその求めている身体的なサポートを提供している。場所はスタジオ、クライアントの自宅(庭やアパートのジム、プール)、各公園など屋外。遠方の人や日本、他州の生徒のためにはズームレッスンも実施している。レッスンの時間は基本的に1時間。運動の内容はストレッチ、有酸素運動(エアロビクスなど)、ウェイトトレーニング(自重、ダンベル、ウェイトバー、ストレッチバンド、スイスボールピラテスボールなど使用)マシンエクササイズ指導など多岐にわたる。

 将来的な夢は、現実的な計画としては、アメリカのシニアエクササイズのライセンスを取得し、コミニュティーでグループ、パーソナルエクササイズ指導(認知症、転倒防止予防エクササイズ)をして、自分のスタジオを持ちいつでも、誰でも指導が出来るような環境を作ることが目標だ。日々の指導で心掛けているのは、クライアントさんの生活、声を聞き、ライフステージにあったエクササイズを提供すること、運動はフィジカルだけでなくメンタル、ホルモンのバランスとの繋がりも大きく影響するため、ストレスにならないようなスケジュールにし、友達との繋がりやコミュニティー活動に参加することも大切だと思っている。自分的には「家族にしっかりとした栄養バランスのとれた食事を作り、清掃の行き届いた無駄の無い、生活を維持することだ」という。北海道札幌市出身。

 (三浦良一記者、写真も)

DEEPなQUEENS  アストリア リトル・エジプト

 アストリアのスタインウェイ通りに「リトル・エジプト」と呼ばれる区域があります。エジプトに加えイエメン、モロッコ、チュニジア、アルジェリアなど中東・北アフリカ系の人々のコミュニティー。アストリア・ブールバードと28アベニュー近辺の区間で多様な文化や料理が楽しめます。 

 まず、この通りで目を引くのは、アストリア・ブールバードのほど近くにあるモスク、マスジッド・ アルイマン。街並みに沿うようにか落ち着いたピンク色の建物です。このモスクから南、主に28アベニューまでの通りの両側にはシーフード、エジプト、モロッコ等数々のレストランやカフェ、そして水タバコが吸えるラウンジが立ち並びます。

 シーフード・レストランでは、好みの魚を選び好きな方法で料理してくれます。全てのレストランがそうかわかりませんが、訪れたレストランではアルコールの提供はなく、ビールはノンアルコールのみでした。シーフード・レストランはほんの一例ですが、Abuqir SeafoodやSabry’s Seafoodなどがあります。

 また、スイーツは、ドバイチョコレート、ピスタチオ・ラテやスパイス香るミルクティーのアデニ・チャイなど、最近人気のイエメン系カフェで楽しめます。アデニ・チャイは甘く濃厚で「午後の紅茶」のような味でした。25〜30アベニューの間(2ブロック)に、Haraz Coffee House 、Ostro Cafe Astoria、そして他地区にも支店舗のあるMOKAFÉ、Moka & Co、Laza Dessert Caféなどもあります。ぶらぶら歩きながら、レストランやカフェを決めるのも楽しいと思います。

 また、いくつかある水タバコのフーカが吸えるバーやラウンジは男性の社交場のようで、通りでもぷかぷか吸っている人達を見かけました。季節の良い時は、肉を焼いているフードトラックからの煙、水たばこの煙が通りのあちこちから舞い上がり、夜の帳が下りると一層賑わう印象でした。ひと時の異国情緒を味わえるかと思います。

明石鯛プロフィール

兵庫県明石市出身、ウエストチェスター在住。週末の街歩きグループと共に、未知なるNY市内を元気に探索中。

編集後記

編集後記

 みなさん、こんにちは。いま、本紙編集部の窓の外の上空に何機かヘリがホバリングしていて爆音が聞こえます。まもなくロックフェラーセンターのクリスマスツリーが点灯されます。会社のある47丁目5番街と6番街の間は、まさに点灯式のその瞬間を見に集まる数万人の群衆で道路が塞がります。

   ただ、警察の規制線に囲まれた中に弊社の地下鉄の駅出口があるため、日本クラブに刷り上がった新聞を届けた夕方の帰りは、57丁目の駅から地下鉄Fに乗って点灯式の行われる49丁目の真下を潜り抜けて47丁目の会社の前に出るのでブロックされずに戻って来れます。まもなく大きな歓声がロックフェラーのビルの壁にこだまして響いてきたらツリーが点灯した証です。その瞬間はツリーを見ることはできませんが、ライブで進んでいる式典を感じながらの作業です。会社の帰りにまだ点灯していたら見て帰ろうと思います。

 そういうわけで年末まで会社の前は、夕方から満員電車のような大混雑の群衆が押し寄せます。あと1回、来週号を出したら新年号です。これもまた毎年のことですがクリスマス返上での締め切り作業に追われます。のんびりできるのは、刷り上がった新年号を自宅に持って帰って、年末と年明けの数日でしょうか。新聞社も忙しくなるホリデーシーズンの幕開けです。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2025年12月6日号)

(1)安全ピンで平和と静寂

(2)感謝祭パレード 

(3)大高翔さん俳句講演会 オンラインで12月16日開催

(4)トランプ政治の影響は日本に飛び火しているのか

(5)被爆証言を米国で 長崎から10人来米

(6)ブラックフライデーに異変 オンラインが史上最高

(7)小学生記者がナガサキを記事にする

(8)再び歌う喜びをNYで実感中 Yoshiko”yoppi”さん

(9)サムライ・ソード・ソウルが20周年記念公演

(10)植山慎太郎カレンダー読者プレゼント

安全ピンで平和と静寂

トゥギャザーII:滝
河田多美子が個展

 ニューヨークを拠点に活動する芸術家・河田多美子(89)の個展「トゥギャザーⅡ:ウォーターホール」が11月20日、チェルシーのアリソン・ブラッドリー・プロジェクト画廊(西26丁目126番地814号室)で始まった。

 安全ピン約21万6600個を使った「滝」は、壁の高さ約3メートル の四角いスペースを使った大型インスタレーションで、河田によると「平和と静寂」を表現している。同画廊との共同制作として公開講習会を実施、130人を超える参加者が河田の連結技法を学び、約3メートルの鎖を組み立てた。同画廊ディレクターのクレア・フォウサッドさんは「このささやかな日常の物は、集団の回復力と相互依存のメタファーとなっている。多くのものが私たちを引き裂こうとする時、何が私たちを支え結びつけるのかをも再考させる」と評価する。

 また、このインスタレーションから発想された音楽を若手作曲家のサミュエル・クレイ・バーマバーが構成、来年1月6日(火)から11日(日)まで画廊内で定期的に流す予定。

 1961年に来米した河田は、安全ピンに美しさや輝きの優雅さを、そしてピンで留めるという行為にメタファーを見い出し、制作を続けてきた。2026年1月24日(土)まで。開廊日時は水曜から土曜午前11時から6時まで。月・火曜は予約制。問い合わせは電話646・476・8409まで。展示に関する詳細はウェブサイトwww.alisonbradleyprojects.comを参照。 (小味かおる、写真も)

感謝祭パレード

 恒例の感謝祭パレードが11月27日マンハッタンで開催された。アッパーウエストサイドから最終目的地の34丁目へラルドスクエアまでバルーンだけで合計34体、さらに中型バルーン、フロート29台、マーチングバンド11団体、演技・パフォーマンスグループも多数参加し寒さと風にもかかわらず、多くの人々が沿道に詰めかけ、写真を撮ったり声援を送ったりして熱気に包まれた。パレードがホリデーシーズンの幕開けとして街全体を「お祭りムード」に染めた1日となった。

大高翔さん俳句講演会 オンラインで12月16日開催

 本紙主催、北米伊藤園後援による新俳句グランプリ新春号特別企画として12月16日(火)午前9時(米東部時間)から同グランプリコンテスト審査員で俳人の大高翔さんによるオンライン講演会を行う。

 俳句初心者への俳句の楽しみ方、最近の俳句のトレンドや日常生活の中に取り入れる俳句の心などについて日本語で語る。参加は無料だが事前の申し込みが必要。氏名、メールアドレスを添えて本紙編集部まで「大高さん俳句講演会視聴希望」とタイトルをつけて応募。締め切りは12月13日(土)正午。講演は25分間を予定。登録者に開催2日前までに視聴リンクを送付。講演内容は本紙新年号の新俳句グランプリ年間入賞者発表ページで掲載する。オンライン俳句講演会申し込みはEメール [email protected]

トランプ政治の影響は日本に飛び火しているのか

 高市早苗内閣は、支持率75%前後という高い数字を維持している。その中で、アメリカで進行しているトランプ流の政治手法が、様々な局面で取り入れられて来ているようだ。何よりも、対中国をはじめとした外交における一種の強硬姿勢は、トランプ時代の影響を強く受けたものと言える。

 また、外国人に対する厳しい姿勢については、7月の参院選における参政党の躍進が後押ししているわけだが、その参政党ブームそのものにしても、トランプ流の政治手法のコピーという色彩が強い。参政党に関して言えば、ワクチン陰謀論者を取り込もうという姿勢や、専業主婦願望やハラスメント規制反対など、古い価値観の復権を狙っている姿勢なども、トランプ現象を、日本という別の環境で実験していると言えるだろう。

 そんな中で、自民党はトランプ陣営のマネをして、赤い野球帽に “JAPAN IS BACK” と刺繍したものを販売したり、高市首相個人のキャラクターを前面に出して「サナエイズム」を支持する「サナエスト」を作ろうというキャンペーンも展開している。

 元祖であるトランプ氏への一定の人気もある。例えば、トランプ政権が麻薬取引を疑われるベネズエラ船舶を攻撃したとか、ワシントンDCの銃撃事件を契機に途上国出身者への永住権を締め付けたりしたニュースに関しては、日本のネット民からは「さすがトランプ氏、日本もそのぐらい強硬にすべきだ」というポジティブな評価のコメントが湧いて出てくる。

 高市政権の中枢もこうした傾向を活用しようと躍起であり、例えば税制や補助金行政にメスを入れる一種の行革プロジェクトが「日本版DOGE」などという俗称をつけられたのを、そのままにしている。ただ、興味深いのは “JAPAN IS BACK” とは言っても、”MAKE JAPAN GREAT AGAIN” というスローガンは使われていないということだ。アメリカの場合は、グローバリズムに適応して経済的繁栄を謳歌している中で、知的労働だけに名誉とカネが与えられる社会を壊して製造業などを復権させよう、MAGAとはそのようなメッセージである。従って今はGREATでは「ない」という指摘はグローバリズムとエリートによる富と名誉の独占への異議申し立てという「だけ」と言える。日本の場合は35年にわたる経済衰退が止まらない中であるし、またその衰退に責任のある自民党としては “GREAT AGAIN” というスローガンは恥ずかしくて使えないのかもしれない。

 それはともかく、一連のトランプ氏の政治姿勢に対して、日本の一定程度の世論が賛同したり、高市政権がトランプ氏の手法「もどき」を展開するというのには、どう考えても違和感がある。何よりも、日本経済は世界の市場を相手にすることで成立しており、人口減のジェットコースターがいよいよ急降下に突入しつつある現在は、その傾向は加速している。そんな中では、自由貿易によってグローバル経済にアクセスしなければ生きてゆくことはできない。そもそも、日本の国の成り立ち自体がトランプ主義とは正反対の存在である。

 さらに言えば、外国人排斥というのも、現在の日本では全く成立しない考え方だ。グローバリズムに適応できているのは製造業の製品=モノだけであり、ソフトウェアであるとか、言語の部分では適応できていない。だからこそ経済が衰退している。今は、まるで尊王攘夷の志士たちが叫んだのと同じように、外国人排斥を口にする層が登場しているが、彼らが維新開国へと発想を180度転換することは、現時点では期待できないようで困ったことである。

 最大の問題は、トランプ政治にある「AI時代だからこそ、ブルーカラーが浮上してゆく」という中核の思想が日本には全く当てはまらないということだ。AIによる失業を不安視するZ世代に対して、製造業回帰による雇用創出という政策は、強引かもしれないが一定の説得力を持つ。けれども日本はAIどころかDX(デジタル化)すらまだ十分ではない。旧弊に回帰など冗談ではなく、現時点ではデジタルに適応できない部分をどんどん捨てて標準化を進め、民間も行政も生産性を上げるための改革が避けられない。言語について言えば、台湾韓国と同等のレベルぐらいには準英語圏入りができなければ衰退は救えない。

 日本におけるトランプ主義への共鳴は、こうした改革の痛みを忘れるための鎮痛剤として起きているのかもしれない。最も恐ろしいのはその点だと考える。

(れいぜい・あきひこ/作家・プリンストン在住)