編集後記

編集後記

 みなさん、こんにちは。関税が、恐れていた25%ではなくて15%で良かったなあなどと胸を撫で下ろす人の心理は、毎年家賃が5%ずつ上がっていたアパートの家主が、今回の更新で家賃を25%引き上げると通告してきて「払えないなら出て行っていいよ、すぐ借りては見つかるから」と足下を見られた借家人の心境に近い。なんとか交渉して、「では25%ではなく今年と来年は15%に引き下げる」と言われて、なんとかなったかとホッとするようなもの。結局今までより10%、例年の倍の値上げをされてしまった現実が残るわけです。若き日から不動産王と言われていたトランプ大統領のディールはそんな手法に似ています。なんだかまんまとやられた感はありますが、しかし、関税引き下げの条件の中にはボーイングの旅客機を100機購入することも含まれています。まあ、買えるんなら機材が新しくなってこれはいいことです。日本は大型旅客機をもはや作ってはいないのですし。日本航空や全日空の機体がどんど新機種になってくのはいいことです。それにアメリカの車は日本車に比べてデカすぎて日本の小さい路地を走れない、駐車できないなどの理由で日本市場の閉鎖性に対する弁明をあれこれしてきましたが、米国自動車メーカーにも、ちゃんとコンパクカーというサイズの車種も各社揃っているので、今回の関税交渉の結果として、小型のアメ車が日本の道路をいっぱい走っていけばそれはそれでいいのではないでしょうか。部品がない、修理代が高いと言っても、ベンツやBMWやポルシェほどではないでしょうし。日米政府間で「合意」ができたことは、決裂して25%の煮湯を飲まされるよりはマシかと思うのは、やはり借家人の弱いところに相通じるものがあります。こんな比較でしか捉えられないところが一介の庶民なのだと思いますが、等身大の生活者の目線で世の中を見るのはあながち悪いことではないようにも思います。いろいろ大きなニュースもあって大変な1週間でしたが、通信社や他社から記事を買わないでオリジナルの新聞を出し続けるのには限界があります。でも、限界があるからこそ、そこまでベストを尽くせれば及第点でOKとも言えます。今週号もそんな紙面のオンパレードです。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2025年7月19日号)

(1)米入国に手数料 旅行者に250ドル課金

(2)参院選在外選挙 NY845人が投票

(3)浅野忠信主演  NYAFFで「レイブンズ」上映

(4)Jオーケストラ カーネギーの聴衆魅了

(5)大江千里 バードランドで9月19,20日ライブ

(6)MENS COLUMN ブルックリンで酒造り 加藤忍さん

(7)ささっと作れるプロの味 生き生きEATS

(8)ダンスで夢実現のNYに生きる  ダンサー石原初音さん

(9) 佐藤涼の即興芸術 JAPANISM 2025       13面

(10) 夏の音楽祭での裁判 カーテンコール16   13面

米入国に手数料 旅行者に250ドル課金

「ビザ整合性手数料」名目で

 トランプ政権が最近制定した「One Big Beautiful Bill Act」の規定によると、米国への訪問者は「ビザ整合性手数料」を支払う必要がある。この料金は、入国に非移民ビザを必要とするすべての旅行者に適用される。この新しい法律により、米国への訪問者は少なくとも250ドルを払う必要があり、他のビザ料金に上乗せされるというが、この手数料がいつから発生するのか等は、まだ明らかになっていない。

 米国旅行協会の広報担当者がCNBCトラベルに語ったところによると、この新要件の詳細は乏しく、そのため「実施に関して大きな課題と答えのない疑問」が生じているという。これまでに分かっていることは次の通り。

・同料金は、2024年10月1日から25年9月30日までの会計年度中は少なくとも250ドルとなる。しかし国土安全保障省長官は、この規定に従って料金をより高く設定する自由がある。それ以後はインフレ調整される。

・ビザ整合性手数料は、観光客、ビジネス旅行者、留学生など、非移民ビザを必要とするすべての訪問者に適用される。料金はビザ発給時に支払われ、ビザ申請が却下された場合は請求されない。

・この料金は他のビザ料金に代わるものではなく、通常のビザ料金を含む他の料金に「追加」される。

・さらに、この手数料は、One Big Beautiful Bill Actによって6ドルから24ドルに値上げされた「フォームIー94手数料」に上乗せして支払わなければならない。 この手数料は、ほとんどの旅行者に適用されるフォームIー94の出入国記録を提出する必要がある人が支払わなければならない。

・旅行者が払い戻しを受けるには、ビザ保持者は「無許可の就労を認めない」、「ビザの有効期限を5日以上超過しない」などの条件を守らなければならない、と規定されている。払い戻しは旅行ビザの有効期限が切れた後に行われる。

参院選在外選挙 NY845人が投票

 総務省によると第27回参議院議員通常選挙に伴い前倒しで実施された在外投票の投票者数は、選挙区選挙が2万7011人、比例代表選挙が2万7160人だった。7月20日時点の在外選挙人名簿の登録者数は10万431人で、投票率は選挙区選挙が26・9%、比例代表選挙が27%となった。各在外公館調べの投票者数では、ニューヨーク総領事館が845人と全米の在外公館ではトップで、内訳は小選挙区が832人、比例代表が844人。ニューヨークでの在外選挙人登録者数は4760人で投票率は17・75%だった。

 全世界で見るとタイが1406人と最も多く、2位が英国で1224人、フランスが1019人で3番目、シンガポールが884人で4番目、ニューヨークは世界の在外公館で5番目に投票者が多かった。米国内ではロサンゼルスが610人と全世界で7番目、米国内では2番目に多かった。日本国内集計の投票率は郵便投票と一時帰国時における投票者数が含まれている。

 昨年第50回衆院選での在外選挙人名簿登録者総数は9万5472人で投票したのは約1万7403で投票率は18・23%だったことをみると、昨年10月から、選挙人登録者数が4959人増え、世界的に在外選挙投票率が上昇し、今回の参議院議員選挙が海外からも高い関心を持って在外投票されたことが分かり「在外選挙は投票率が低い」という認識を翻す結果となった。    

参院選、米国主要メディアの論調

右傾化で自民敗北

 自民党が過半数割れの惨敗となった参院選挙(7月20日投開票)の結果を受けて、米国の主要メディアが日本の政治状況を伝えた(以下20日付電子版)。

 ニューヨーク・タイムズは「日本の長年の支配政党、有権者の右傾化で選挙に敗北」との見出しで報じた。石破首相と自民党は「米など食料品価格の高騰、米国との関税交渉、高齢化社会を支える負担など諸課題を解決できることを多くの有権者に納得させることができなかった」と分析。

 参政党の躍進に注目

 最も大きな躍進を遂げたのは伝統的なリベラル野党ではなく、「強烈な国家主義的なメッセージを掲げて若い有権者を引きつけた一連の新政党」であり、特にトランプ大統領に影響を受けた党首が率いる参政党が躍進したと報じている。国民民主党と参政党という「新たな右派ポピュリスト集団」が勢力を伸ばし、「日本に地殻変動をもたらすかもしれない」としている。

 ロイターも「消費税減税を訴える野党や右派勢力が存在感を強めた」として、日本の社会構造の変化を示唆する記事を掲載した。「極右」の参政党が14議席を獲得、「ポピュリスト政党が日本第一主義を掲げ、外国人による『静かな侵略』への警告を訴えることで、より幅広い支持を集めた」と報じている。ただし、ドイツのAfD(ドイツのための選択肢)やリフォームUKなどのような「極右政党の道をたどるかどうかはまだ分からない」とした。  

 ワシントン・ポストは「政治的混乱期の始まり」とし、自動車や農産品の対米関税交渉にとって重大な打撃になると指摘、政権の弱体化が日米交渉をさらに困難にすると報じた。石破首相は政権の継続を強調しているが、石破首相の政権基盤が危機に瀕しており、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)は内部からの辞任要求や支持率低下圧力が高まる可能性について触れている。

浅野忠信主演  NYAFFで「レイブンズ」上映

北米最大アジア映画祭
第24回NYAFF開催

 北米最大のアジア系映画祭である第24回ニューヨーク・アジアン映画祭(NYAFF)は今年で24回を数え、11日からリンカーン・センターをメイン会場に開催されている。閉幕は27日。

 毎年、アジア各国から人気俳優や映画監督などがゲストとして招かれ、映画祭を華やかに盛り上げている。今年は、マーク・ギル監督の「Ravens レイブンズ」で伝説の写真家・深瀬昌久を演じた浅野忠信氏(51)が、ゲストとして招待された。

 浅野氏は、今年開催された第82回ゴールデン・グローブ賞で、話題のドラマ『SHOGUN 将軍』における演技が評価され、テレビドラマ部門・助演男優賞を受賞した。言うまでもなく、世界的な人気を誇る日本人俳優のひとりだ。(菊楽めぐみ、写真 ©Jeremy Li)

写真:NYFAAの記者会見でマーク・ギル監督(左)と俳優・浅野忠信(20日、リンカーンセンターで)

伝説の写真家演じた浅野

「待ち時間は絵を描いた」

 ニューヨーク・アジアン映画祭(NYAFF)では、浅野氏が伝説の写真家・深瀬昌久を演じた、マーク・ギル監督の「Ravens レイブンズ」が上映された。被写体でもあった妻・洋子との50年にわたる愛憎の関係を、実話とフィクションを交えて描いている。上映前には、RAVENS: IN CONVERSATION WITH TADANOBU ASANO AND MARK GILLが開催され、マーク・ギル監督、浅野氏、撮影監督のフェルナンド・ルイスが登場し、ネタバレしないように撮影秘話を語り、しかも観客からの直接の質問に答えた。また本編上映後、監督と浅野氏がステージに登場すると、大きな歓声が上がった。観客の興奮冷めやらぬなか、Q&Aセッションが行われ、2人は観客からの質問にも丁寧に答えた。

© Vestapol Films, Ark Entertainment, Minded Factory, Y house, Katsize Films

 ギル監督と浅野氏の両氏は上映前に本紙のインタビューに応じた。浅野忠信氏をキャスティングした理由を問うと、監督は一作の映画の名を挙げた。

 「三池崇史監督の「殺し屋1」(01年)で、浅野さん演じる垣原雅雄に出会った瞬間、恋に落ちました。言葉を話さなくても内面から発する表情や姿にです。それは私だけでなく皆さんも同じはず。ずっとキャリアを追いかけていまして、このプロジェクトが立ち上がった時、浅野さんしか浮かばなかった」。

 俳優として知られる一方で、個展を開いたり画集を出版したりと、絵描きとしての顔も持つ浅野忠信氏。過去のインタビューで、撮影の待ち時間で描いていると語っていたが、「『レイブンズ』の撮影中は何を描いたのか」と聞くと「鴉を描いた覚えがあるが、描いた絵はインスタにアップしているので見てください」。

 ギル監督は15年イギリスの新聞記事で深瀬昌久を知り「鴉」に衝撃を受け、脚本を書き、9年かけて映画化。同世代の荒木経惟や森山大道は有名だが、日本ではほぼ知られていない写真家だった。

 深瀬(昭和9年生まれ)は、1974年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された、日本の写真家を世界に初めて紹介した写真展『New Japanese Photography』に、土門拳や東松照明、奈良原一高、森山大道と共に参加した。身近なモチーフである妻・洋子の写真を展示したことで話題を呼んだ。たびたび酒に溺れ、1992年転落事故で脳障害を負い20年の闘病の末、2012年亡くなった。代表作「鴉」は世界的評価を受け、セルフィーの先駆者とも称される。

 本作では妻の洋子を瀧内公美が演じた。今年3月日本全国劇場公開された。キャンセル待ちの列ができるほど大人気だった。(菊楽めぐみ、写真・ ©Jeremy Li)

Jオーケストラ カーネギーの聴衆魅了

入場者2751人でほぼ満席

 日本の医療従事者を中心に構成された交響楽団「Jオーケストラ」のコンサートが18日夜、カーネギーホール大ホール(定員2790)で行われ、5階バルコニー席まで2751席以上を埋めるほぼ満席の観客を魅了した。医学のバックグラウンドを活かし、音楽を通して社会に良い影響を与えるための地域社会へのアウトリーチ活動としての初の海外公演は大成功を収めた。

 Jオーケストラ総勢101人によるエルガー作曲の行進曲「威風堂々」第1番で始まった演奏は、前半ベートーベン作曲 ピアノ協奏曲第5番「皇帝」、ピアノ仲道郁代、後半はドボルザーク作曲 交響曲第9番「新世界より」、アンコールとしてシベリウス作曲交響詩「フィンランディア」が披露され、フィンランディアの合唱は、ニューヨーク在住日系合唱団有志メンバー60人が担当した。指揮は柳澤寿男。コンサートマスターは、桐朋学園芸術短期大学特任教授のバイオリン奏者、志村寿一。司会は元フジテレビアナウンサーの坂本祐祈さんが務めた。

演奏終了後に山 国連大使夫妻、NY総領事の森大使から
慰労の言葉をかけられる演奏者たち

 実行委員長の宮坂厚弘氏は「こんなに大勢の皆さんが来ていただけるとは想像もしていませんでした。準備は大変でしたけど自分たちでできるだけのことをやり遂げたという気持ちでいっぱいです」と感無量の面持ち。

 指揮した柳澤氏は「カーネギーホールでやれたことは音楽家として光栄なこと。医療従事者の演奏家の皆さんもお医者様なので急患が入ったりして大変でしたが、社会的な意味のあるオーケストラだと思います」と公演後に感想を述べた。ピアニストの仲道さんは「医療と共に音楽に携わる方々の想いが音になりコンサートでご一緒でき本当によかったと思います。カーネギーホールの伝統と歴史に特別な思いを持った」と語る。ピアノはNY五番街のヤマハからグランドピアノが特別にカーネギーホールに運び込まれた。

 ニューヨーク総領事の森大使は「音楽としての素晴らしさはもちろんだが、皆さんがニューヨークに来て、ニューヨークで心を一つにするために楽しい音楽を奏でていただいたということを私自身とても感激し、ステージで演奏している人たちと共に楽しむことができた。本当に素晴らしい夜だった」と感想を語った。

 山﨑国連大使は「感激しました。人間の美しい面が全開という感じでした。本当に国境を超えて素晴らしい芸術を聞けて、見せていただいた。国境を超えて美しいものに触れたと同時に、日本文化の底深さというものも感じられたのではないかと思う」と話していた。一般観客からは「迫力があって、楽しいひと時を過ごしました。ものすごく練習したのだと思います。出演者も聴衆も一つになって、日米の文化交流に尽くしました」「指揮者と演奏家の音楽に対する真剣な取り組みが胸を打つものでした」と言う声が聞かれた。コンサートは無料公演で行われた。(写真・三浦良一)

大江千里 バードランドで9月19、20日ライブ

「彩色豊かな世界に浸りに来て下さい」
ゲストにローレン・キンハン

 ジャズピアニストの大江千里は、9月19日(金)と20日(土)の各日ともに午後7時と9時30分からの2セットで、恒例のバードランド(西44丁目315番地)でのスペシャルライブを開催する。5年目の今年はさらなる進化を遂げた演奏で魅せる。共演は、マット・クロヘシー(ベース)とロス・ペダーソン(ドラム)。スペシャルゲストとして、歌姫ローレン・キンハンを迎える。ローレンは、大江が唯一歌詞をつけたジャズアルバム『Answer July』で歌声を披露し、ファンに衝撃を与えた。今回のライブは、Answer July その後の千里ジャズを描く。

 大江は「週刊NY生活読者の皆様。アニュアルコンサートとなった9月のバードランド。今年は素晴らしいジャズシンガー、ローレン・キンハンを迎えて、トリオと共にお送りします。色彩豊かなSenri Jazzの世界にぜひ、浸りにいらしてください。心よりお待ちしています」とコメントしている。

 入場料は35ドル46セント

(バー席)、45ドル76セント(テーブル席)。チケット・詳細はバードランドのウェブサイトhttps://www.birdlandjazz.comを参照。

MENS COLUMN ブルックリンで酒造り 加藤忍さん

Kato Sake Works社長

 ブルックリンのブッシュウィックでクラフトSAKE造りをしているオーナーで杜氏の加藤忍さん。加藤さんは東京都出身、日本でソフトバンクに勤務した後、メリーランド州のメリーランド大学ロバード・スミス・ビジネススクール大学院に留学。卒業後はテネシー州ナッシュビルの北米日産会社に就職した。ナッシュビルはクラフト・ビールが有名な街、さまざまなビールを試した。自宅でビールを造る友人もいて醸造に興味を持った。

 ナッシュビル時代、ホームパーティで米国人の友人たちに日本酒を振舞いたかったがナッシュビルでは手ごろな価格の日本酒が手に入らなかった。ならば自分で造ってみようと酒自家醸造キットをインターネットで購入して自宅で酒を造ってみた。友人たちが忍の酒は美味しいと喜んで飲んでくれ、忍の酒を売って欲しいという友人もいた。酒造りは楽しい、ならばこれをビジネスにしようと起業を決意。

 ナッシュビルに住んで肌でいいと感じたのは、住人たちの地元愛だ。「メイド・イン・ローカル」が通じる街で酒造りをしたい。どうせやるなら、マーケットの大きいニューヨークでと会社を辞めてNYへ。

 その名も加藤が造る酒「Kato Sake Works」をオープンしたのが2020年3月。コロナ禍でNYがロックダウンする僅か3日前のことだった。ブルワリーの前を通る人に「飲んでみて」と試飲を勧めた。美味しいと買ってくれる人もいて地元のリピーターもできた。インターネットで注文しブルワリーまで取りに来てくれる地元の人や、酒を造っているのかい?と散歩の途中で立ち寄り買ってくれる人もいた。地元ブルックリンの人々に支えられ、コロナ禍も乗り切ることができた。

 開業当初はスタジオサイズのわずか500平方フィートの場所で一人で酒造りをしていたが、注文が追いつかなくなり、広いブルワリーが必要になった。クラウド・ファンディングで資金を募り、23年には移転しブルワリーの広さも5倍になり従業員も増えた。日本の酒蔵の入り口に必ずある杉玉だが、加藤さんのブルワリーの入り口にはキラキラと光るミラーボールが吊るされている。神棚に飾る鳥居は友人がベッドのフレームで作ってくれた。米国ならではのアイディアだ。以前の場所では年間約5000リットルを生産していたが、新ブルワリーではその約10倍の生産を目指す。ブルワリーには酒を試飲できる10人が座れるカウンター席のタップルームもあり、バーテンダーも雇った。新ラベルは常連客のグラフィック・デザイナーが

作成してくれた。タップルームではジャズのライブ・コンサートや読書会、寿司シェフを招いて酒とのペアリング・メニューを提供するなどのイベントも行っている。酒製造工程の説明とテイスティング&ツアーも始めた。

 加藤さんは日本の酒蔵で修業したことはない。すべて独学で酒造りを学んだ。現在はカリフォルニアのカルローズ米を使い、約7銘柄の酒を造っている。酒のラインナップも増えた。昨年末、初めて新潟県から送ってもらった食用米の「こしひかり」で醸造を行った。NY州ウエストチェスター郡にある精米所ザ・ライス・ファクトリーで精米し、純米酒「KOME」という銘柄で200本を造った。今年1月に販売、すぐに完売した。「しずく酒」と「どぶろく」も新しいラインナップ。「どぶろく」は評判が良く、タップルームでは「どぶろく」ばかりを飲む常連客もいる。

 「自分が思っていた地元愛の『メイド・イン・ローカル』に見事にはまった。NYは無機質な大都会だと思っていたが、ブッシュウィックは日本の昔の長屋のような近所付き合いがある」と加藤さん。地元のお客さんが魚を釣ったけど、食べるかいと持って来てくれることもある。「ナッシュビルで友人たちに与えた酒との出会いの感動を、ブルックリンの人たちにも与えることができた。大変なこともあったが、やってよかった」。

 加藤さんの東京の実家の部屋には高校生の時に渋谷で買ったブルックリン橋の白黒写真が今でも壁に飾ってある。ハードロックや米国のファッションにあこがれ、なんとなく気に入って買った写真だった。その橋が東京の実家の部屋からNYのブルックリンでの酒ビジネスへ繋ぐ橋となった。そして、今年の夏からKato Sake Worksの酒を日本でも販売する。メイド・イン・ブルックリンの酒を目指し日々、奮闘する。(石黒かおる、写真も)

ささっと作れるプロの味 生き生きEATS

プロに聞く、生き生きEATS(イーツ)

元気と美味しいを求めて料理の達人が腕を振るう (56)

 今月の生き生きEATSは、マンハッタンのミッドタウンにある鮨AMANE のシェフ、森田悠介さんに、ササッと作れる夏の小皿を紹介していただきました。森田さんは、高校を卒業後サラリーマンを経て主に松栄六本木、鮨銀座おのでらなどで仕事をされてきました。今回はそんな森田さんにまぐろのステーキ、太刀魚の南蛮漬け、うざくの作り方、盛り付け方などを教えていただきます。工夫一つ、食器一つで家庭料理がプロの味になりますよ。

sushi  AMANE

245 E 44th St, New York, NY 10017

Tel:212-986-5300


◾︎まぐろステーキリンゴドレッシング

材料

青じそノンオイルドレッシング

100ml

すりおろし玉ねぎ 20g

すりおろしニンニク 3g

すりおろししょうが 6g

すりおろしリンゴ 30g

薄口醤油 15g

【作り方】 

 分量の材料を全て合わせて良く混ぜる。

 マグロは一口大に切り軽く塩を振る

 フライパンもしくは網を使って直火でレアに焼く

 おこのみで大根おろし、チャイブ、レモンを添える。

ニューヨークっぽくリンゴを使ったドレッシング。合わせるだけなので忙しい方にも時短でできる。


◾︎太刀魚南蛮漬け

材料

太刀魚

赤パプリカ

ニンジン

玉ねぎ

出汁 120g

酒 20g

みりん 20g

お酢 40g

醤油 20

さとう大さじ 2

おいかつお

おこのみで赤唐辛子 1本

【作り方】 

 お酢以外の分量を鍋に入れて沸かす。沸いたらお酢を入れおいかつお。

 太刀魚は好みの大きさに切り塩を振る。

太刀魚は片栗粉を付けて揚げる。

 熱い合地の中に揚げて太刀魚、野菜を入れる。

旬の太刀魚とお野菜でお酢を効かせて夏でもさっぱりと頂けます。冷めても、温めても大丈夫なので作り置きにも最適。


◾︎うざく

材料

土佐酢

出汁 140g

みりん 30g

薄口醤油 30g

お酢 30g

おいかつお

うなぎ

きゅうり

みょうが

おこのみでわかめ

【作り方】 

 土佐酢、分量お酢以外を合わせて沸かす。沸いたらおいかつお、お酢を入れて冷す。

 きゅうりは種をとる。きゅうり、みょうがは細切りに。細切りにしたきゅうりは3%の塩水を作り10分つける。10分経ったら水気を良く切る。市販のうなぎはタレを洗い流しさっとお湯に通す。

 きゅうり、みょうが、うなぎ、土佐酢を合わせて盛り付ける。

ダンスで夢実現のNYに生きる ダンサー石原初音さん

 ニューヨークの名門ダンススクール、アルビン・エイリーを昨年卒業し、今年はワシントンDCの桜祭りやプライドパレード、ジャパンパレード、ダンスパレードなど目白押しの米国東海岸のイベントに出演している。兵庫県出身の22歳。

 4歳から地元のティーズボックスダンススクールに高校まで所属し、2013年にTRF20周年ツアー大阪公演にバックダンサーとして出演、2014年セブン&アイ・キッズダンスフェスティバル近畿大会・全国大会優勝、2014、15、17年朝日新聞社主催全日本小中学生ダンスコンクール西日本大会及び全国大会金賞受賞など輝かしい成績を残し、18年には、矢沢永吉69周年ツアー大阪公演にバックダンサーとして出演した。

 小さい時から漠然と抱いていたアメリカへの憧れから高校卒業後、留学制度のある神戸甲陽音楽・ダンス専門学校ダンス科に2021年に入学。しかし新型コロナウイルスの蔓延で在学中の留学は叶わなかった。だが23年に同校ダンス科を成績トップで卒業した後、学校側が全面支援してくれたこともあり、全世界からの応募でわずか20人たらずのアルビン・エイリーのクラス合格者に見事選ばれた。バレエとモダンの課題ビデオ願書を提出するため連日猛特訓しての合格だった。無事に来米し、入学初日にそこで目にしたのは、周りの生徒たちの水準の高さだった。

 授業に向けた心構えと準備、そしてその恵まれた体型と手入れのされた顔などを見て「この人たちはプロではないのか」と愕然とした。日本では若くしてダンス界で数々の栄冠を手にしてきた石原さんだったが「ついて行くのに必死で、自分は何者でもないなと、今までこれだけ頑張ってきたけど、世界のレベルはこんなに高いのか」と愕然としたという。

 それだけにダンスの世界でアルビン・エイリーの卒業生であるということが圧倒的な信頼度の高さと大きなクレジットになっていることも実感している。

 ダンサーにとって一番必要なものは何かと聞くと「心です」と即返ってきた。「自分は運良くここまで来れたけど、それは自分だけの力ではなく、周りとのコミュニケーションを大切にしたことで多くの人の助けがあったから」と言う。

 「これからも特定のジャンルにとらわれることなく、自分の体で自由に表現し続けたい。常に新しい挑戦を楽しみながら、踊りを通して誰かの力になれるダンサーでありたいと思っています。いつかこのラジオシティーのロケッツダンサーになれるよう頑張ります」と笑顔を見せた。 (三浦良一記者、写真も)

佐藤涼の即興芸術 JAPANISM 2025 

ピアノとのコラボ

 アートで世界平和を実現するニューヨークの団体JCAT主催によるグループ展JAPANISM 2025がチェルシーの「ノーホーM 55」ギャラリー(西28丁目548番地634号室)で開催中だ。気鋭の日本人アーティスト73人による120点が出展。3期に分けて8月2日まで展示が続くが、7月17日に開かれた第1期のオープニングには観客200人近くが詰めかけ創造力の競演にため息を漏らした。イベントには、国内外から駆け付けた作家の姿もあり、祝宴をさらに盛り上げた。

 JCAT会員で青森県在住のアーティスト佐藤涼さんもその一人。重度の脳性まひで四肢の自由が全くきかず、発声にも苦労するが、筆を唇にくわえる独特な手法で、人間味あふれるドローイングを手がけている。昨年末には青森県立美術館で個展も披露した。

 NYにおける展示は3回目。今回は、ニュージャージー在住のピアニスト、アリアナ・デローサさんとのコラボレーションによる公開制作を披露した。2人の出会いは昨年のNY訪問時。米国行きの飛行機内でサービスを受けられずに困っていた佐藤さんに同乗していたアリアナさんが救いの手を差し伸べたところから友情が芽生えた。芸術家同士で意気投合した2人は、インターネットでさらに交流を深め、昨春にはアリアナさんが教鞭をとる小学校の生徒に向けての配信授業も実現した。そのために、血の出るような英会話の特訓もしたという。

 JAPANISM展では、持ち時間15分でアリアナさんが流麗なピアノ曲を演奏する間、佐藤さんが口にくわえた筆ペンを一心不乱に走らせた。何が起こるかわからない緊張した空気の中、観客は2人の芸術に目と耳をとがらせた。「私たちは一緒にリハーサルをしていません。涼は絵の内容を私にも秘密にしていました。私は演奏の練習こそしていましたが、私たちがリアルタイムでシンクロできたのはまさしく2人の即興的な直感に負うものです」とアリアナさん。実演開始から約13分後。スケッチブックに絵の全貌が浮かび上がってくると、それに合わせてピアノ演奏も頂点に向かう。「涼がピアノを弾く私を描いていることに気づいた時、私は涙を禁じ得ませんでした。私たちは途方もないエネルギーと信頼関係でコミュニケーションを取っていたと思います。観客の方々にもきっと、2人の親愛と尊敬を、目に見えるもの、耳に聞こえるものとして感じていただけたのではないでしょうか」

 終演後、割れんばかりの拍手に満面の笑顔で応えた佐藤さん。観客からの「クールだよ!」の掛け声に「そりゃそうだ、僕の名前はクール(涼)だからね!」と英語のジョークで切り返し、堂々としたNYアーティストぶりをみせた。(中村英雄)

夏の音楽祭での裁判 カーテンコール16 

 夏真っ盛り、いかがお過ごしでしょうか? 音楽家にとって夏は、各地での夏季講習会、音楽祭、野外コンサートなど普段と違う演奏の機会も多く、私もこれまで生徒として講師として、色々と参加してきました。それぞれに甲乙つけ難く、愛おしくも大切な思い出ですが、一つ群を抜いて忘れ難い思い出があり、今回はそれをシェアしたいと思います。

 コロラド州アスペンは上質なスキーリゾート地として有名ですが、夏には全米一、ニを争う規模の音楽祭が行われます。私はその夏、講習生としてオペラ出演の他、個人レッスンや公開レッスン、声楽アンサンブルにオーケストラとのコンサート等、音楽漬けの充実したプログラムに参加できる事を心底楽しみにしていました。が反面、飛行機の手配や滞在場所探し、夏の間留守にする自分の部屋のサブレット探しなど、練習の他の準備も沢山あった上、現地の滞在先もなかなか見つからず不安になっていた所、出発間近に良さそうな部屋が見つかり、一緒にシェアする事になっていた声楽科の友人と、漸く準備が整ったと喜び合いました。

 講習会場にも近く素敵な部屋の女性オーナーはフレンドリーで、当日もわざわざ空港に迎えに来てくれ、私達は期待で胸一杯でしたが、現地で待っていたのはなんと、トレーラーハウス。鍵がついていない玄関(治安が良いから鍵は不要との事)、窓が取り付けられていない窓用の穴(動物も人も出入りし放題)、お湯がほぼ出ないシャワー(暑いのでお湯は必要なしとの事)、天井も低くエアコンもテレビもラジオもないリビング。拙い英語で必死に私達は家主に抗議したものの、自分は問題もなくここで暮らしているし、何かあったらここに電話してと早口でまくしたて、サッサと退散。

 ナイーブな私達は、彼女に言われるまま家賃全額を既に払った後だった事もあり、全てがあとの祭り。その日はただただ茫然として、二人泣きじゃくるばかりでしたが、その後周りの人々の助けと協力のお陰で、まともな場所に移動し、更にそのオーナーを訴える事にし裁判する事にしました。従って講習会中は、音楽の勉強と裁判の準備でそれはそれは大変でしたが、音楽に没頭し大いに勉強しようとしていた生活を台無しにされた私達の憤りは凄まじく、何とか裁判までこぎつけ、そして勝訴したのです。

 と、こうして書くと短い話なのですが、当然その期間中は山あり谷ありで、何度も挫けそうになり、訴えを取り下げようと思いました。が、その度に助けてくれる人が現れ、何とか2か月間を乗り切り、結果としてかけがえのないライフレッスンを得た夏となったのです。と言うわけで、どんなに大変な時間でも、後になってみれば話のネタの一つであり、自分を強くしてくれる経験であり、ある程度どんな事でも、若いうちは成長の糧になるものだなと月並みながらそう思います。現在我が娘も、何週間も親元を離れキャンプに参加中ですが、一体どんな経験を携えて帰ってくるでしょうか・・・?

田村麻子=ニューヨークタイムズからも「輝くソプラノ」として高い評価を受ける声楽家。NYを拠点にカーネギーホール、リンカーンセンター、ロイヤルアルバートホールなど世界一流のオペラ舞台で主役を歌う。W杯決勝戦前夜コンサートにて3大テノールと共演、ヤンキース試合前に国歌斉唱など活躍は多岐に渡る。2021年に公共放送網(PBS)にて全米放映デビュー。国立音楽大学、東京藝術大学修士、マネス音楽院ディプロマ取得。京都城陽大使。