年金電子振込み迅速化 大統領令署名

 米国の社会保障制度(ソーシャル・セキュリティー)が創設90周年を迎え、トランプ大統領は14日、大統領宣言に署名し、この制度の歴史的意義と将来への強い関与を改めて確認した。

 ソーシャル・セキュリティーは1935年にルーズベルト大統領が署名した社会保障法に基づき創設された。これまで高齢者、障害者、遺族など数千万の国民に経済的安定を提供し、米国史上最も信頼される制度の一つとなっている。今年は約7200万人に総額1・6兆ドル超の給付が行われた。

誕生年による満額受給年齢

 今年5月に就任したフランク・ビジニャーノ社会保障庁(SSA)長官は「デジタル・ファースト」を掲げ、100日間で顧客サービス改革を大きく前進させたと発表した。主な成果は以下の通りとしている。

 ①オンラインサービス拡充:「my Social Security」口座を24時間利用可能にし、3週間で50万件超の取引を実現。従来は週29時間閉鎖されていたシステムが常時稼働に。

 ②電話応答の改善:全国の問い合わせ番号の平均待ち時間を30分から1桁台へ短縮。全事務所で電話システムを刷新し、30%の通話を即時処理可能に。9割の問い合わせは自己解決またはコールバックで対応。

 ③窓口サービス向上:フィールドオフィスの待ち時間を30%削減し、予約件数も過去最高水準に。

 ④障害給付処理の加速:初期申請の滞貨を26%減(120万件→94万件)に縮小。障害審査の待機期間も60日短縮し、過去最短水準へ。

 ⑤前倒し支給の実施:「社会保障公正法」に基づき、310万件(総額170億ドル)を予定より5か月早く給付。

 こうした改革は以下の重点方針に基づいているとしている。

 ①技術の導入による業務効率化とエラー削減。 

 ②過去の情報漏洩を踏まえたデータ保護の強化。

 ③詐欺・浪費の撲滅による制度の健全化。

 ④人員配置の最適化による現場の対応力強化。

 ビジニャーノ氏は声明で、「顧客がどのように連絡しても迅速かつ完全に対応することが社会保障庁の使命」とし、職員とテクノロジーを一体化した運営を推進していることを強調した。「90周年の記念は、過去の遺産を称えるだけでなく、次の90年を見据えた制度改革の出発点でもある。社会保障庁は議会、市民団体、国民と協力し、制度を正確かつ効率的に運営し続けることで、トランプ大統領の掲げる『世代を超えた制度保護』の方針を実現しようとしている」としている。米国年金の受給年齢は62歳から70歳の間で受給を開始できる。

「年金は国民との約束」大統領強調

民主党は「見せかけだけの改善」と批判

 国民生活の基盤であるこの社会保障制度は政治の争点ともなっている。トランプ大統領は90周年を祝う大統領宣言に署名し、制度の「保護」と「近代化」への強い姿勢を示した。社会保障を「国民との約束」と位置付けたが、特に高齢者層は最大の票田の一つであり、制度の存続を確約することは選挙戦略上も重要である。これは対立する民主党からの「制度切り崩し」批判に先手を打つ狙いがあるとみられる。トランプ大統領は、5月に就任したばかりのビジニャーノ社会保障庁長官の下で短期間に達成した改革を「成果」として強調した。これに対し、民主党議員や議会指導部は、社会保障信託基金が2030年代に枯渇する可能性がある中で、トランプ政権が根本的な財源改革に手を付けず「見かけだけの改善」を強調していると批判している。特に進歩派(プログレッシブ)からは「トランプは高齢者票を守るために一時的な改革を誇示しているが、制度の持続可能性には責任を持っていない」と強い批判を受けている。民主党は富裕層への課税強化や給与税課税上限の引き上げを通じて制度を強化すべきだと主張、「財政赤字削減」を優先する共和党が最終的に給付削減に踏み込む恐れがあると訴えている。

 社会保障制度はトランプ大統領にとっては「選挙に向けた政治的資産」となっている。民主党が「社会保障強化」を掲げる一方で、トランプ陣営は「改革による改善実績」と「財政健全化」で世論を固めようとしている。

 米国年金の受給年齢は62歳から70歳の間で受給を開始できる。満額受給年齢66歳で個人の出生年によって月数が異なるが、1960年以降に生まれた者は、67歳がフル・リタイアメント・エイジとされている。早期に受給(繰上げ)すると受給月額の減額を受ける。例えば満額受給年齢67歳の人が62歳で繰上げ受給した場合、受給額は30%減額される。逆に満額受給年齢から受給開始を繰り下げた場合、年間で8%増額される。現役時代の納税額により個人差があるが、損益分岐年齢は一般的に85歳と言われる。最初の配偶者は、婚姻関係が10年以上あれば、婚姻継続、離婚に関わらず配偶者年金として半額の米国年金を受け取ることが同時にできるほか、年金受給者が死亡した場合は、配偶者の受け取る米国年金は倍額となる。