先月の参院選で躍進となった参政党のことはアメリカでも話題になったことでしょう。でもこの政党、いったい何を言っているんだろうと思うことが多すぎます。間違いや矛盾や、あるいは意図的なのかデッチ上げがあまりにも多い。
すっかり党是みたいになった「日本人ファースト」にしてもそうです。代表の神谷宗幣は「日本は移民受け入れの条件が甘すぎる」として、アメリカのように試験や宣誓を導入せよと勇ましいですが、日本の移民システム(政府の公式用語は「移民」ではなく「在留外国人」)下では、昨年24年での移民新規受け入れは約36万人でした。ベトナム、中国、インドネシア、ネパールなどからが多く、少子高齢化による日本の労働力不足を大いに補ってくれています。在留資格取得の難しさや難民受け入れの厳しさに関しては亡くなったウィシュマさんの例を引くまでもなく「何をか言わんや」です。
これは人口比で言うとアメリカ、カナダ、オーストラリア、ドイツ、アメリカなどの移民・難民受け入れ比率の10分の1から5分の1の少なさ。もちろんアメリカはトランプ政権によって今年からの移民受け入れは激減するでしょうし、欧州ではロシアによるウクライナ侵攻の移民・難民の増加も影響しています。それにしても「移民受け入れ条件が甘すぎる」と代表が公言するその根拠は実態と大きくズレている。裏取りもしない単なる思いつき発言だったんでしょうか?
だってアメリカに倣って「日本語能力」や「文化的理解」を測り、はたまた「日本への忠誠心」を義務付ける、とも言っているんですが、それだってアメリカの市民権試験や宣誓の実態はそんなに厳しいものではないのはアメリカに住んでいる人ならほぼ知っていること。
アメリカで市民権を取得するために受ける試験はご存知のように2種類あります。1つは国語(英語)テスト。面接官と帰化申請に関する簡単な受け答えをし、用意された1文(センテンス)を読むのと、音声の1文を書き取るもので、いずれもだいたい単語が10個以下の短い文で、日本の中高生レベルの英語です。
もう一つは公民権テストで、アメリカの歴史や政治について口頭で10問質問されます。例えば「米国下院議員の任期は何年か?(2年)」「独立宣言は誰が書いたか?(トーマス・ジェファーソン)」「アメリカ人が持つ権利を3つ挙げよ(表現の自由、言論の自由、集会の自由、信教の自由、武器を保有する権利など)」
あら結構難しいかも、と思うかもしれませんが、でもこの質問は事前に移民局が100問を全面公開していて、そこから10問が任意で聞かれるわけです(一時200問中20問になったこともありましたが、不評ですぐに元に戻りました)。10問中6問の正解で合格ですから、これはむしろ100問の事前勉強が主目的でしょうね。
ということで合格率は91%です。よほどじゃないと落ちません。そしてその合格後に「忠誠の誓い(Oath of Allegiance)」の宣誓式でめでたく正式にアメリカ市民になるのです。
それで、ですね、この「忠誠の誓い」というのはアメリカ以外の国(つまり元の自分の母国)への忠誠は捨てて、アメリカに忠誠を尽くすという誓い(戦争が起きた時に「敵性外国人=スパイ」にならないための宣誓)なんですが、その忠誠の対象は何かというと、アメリカ合衆国憲法なんです。自由と平等と民主主義を守るために強固に書き連ねられた憲法です。
さて日本でもアメリカと同様に市民権獲得のための移民宣誓を導入したとすると、国民主権すら無記載の「反・日本国憲法」とでも称すべきあのスカスカな新憲法草案をまとめている参政党の人たちは、真っ先に市民権剥奪か排除されてしまう運命なんです。
それとも矛盾を突かれるといつも「いやまだそれは検討段階で誤りは正していきます」と逃げる神谷代表、この「排外主義=日本人ファースト」も考えが足りなかったとしてシレッと撤回するんでしょうかね。
(武藤芳治/ジャーナリスト)

