相続対策は「節税」だけではない

 今回から連載を担当する、一般社団法人日米帰国支援センター代表理事、税理士の内藤です。このコラムでは、日米相続を中心に、帰国前後に知っておきたい日本のお金の問題を分かりやすくご案内します。第1回は「日本の相続」です。相続対策というと節税を思い浮かべがちですが、本来は①納税資金対策②分割・承継対策③節税対策の3つで考える必要があります。

 日本の相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。全国でも約10人に1人が課税対象となり、都市部の不動産や株式を保有する方は、想像以上に評価額が高くなることがあります。米国在住でも、日本に住む親に相続が発生すれば、日本の手続きや相続税と無関係ではありません。

 まず重要なのが納税資金です。日本の相続税は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に金銭で一括納付します。財産の多くが自宅、不動産、株式の場合、納税資金が不足することがあります。誰が相続人となり、財産はいくらあり、税額はいくらになるのかを整理した「相続の健康診断」が出発点です。

 次に分割対策です。生前贈与の偏りや兄弟間の不仲があると、相続時に争いが起きやすくなります。遺留分にも配慮し、遺言や受取人指定を整えておくことが大切です。特に米国資産は、プロベートに時間がかかる場合があります。また、ジョイント口座やジョイントテナンシーは、日本の遺言と異なる承継結果になることもあります。

 節税対策は最後です。生活費や教育費など、非課税で贈与できる方法もありますが、老後資金を減らし過ぎては本末転倒です。

 納税できること、円満に分けられること、そのうえで税負担を抑えること。この順番を守ることが、日米相続では特に重要です。


内藤克(ないとう・かつみ)

一般社団法人・日米帰国支援センター代表理事・税理士。東京税理士会麹町支部所属。ハワイ相続プロジェクト代表。ホノルル商工会議所会員。著書に『残念な相続』(日経プレミアシリーズ)累計5万部ベストセラー。問い合わせは「週刊NY生活を見た」と記載し、Eメール:[email protected]まで。

広島、長崎、原爆投下から81年  NYで平和の集い

 広島への原爆投下から81年を迎えた8月5日(日本時間6日)、「NYインターフェイス平和の集い」が、マンハッタンの39丁目にある立正佼成会センターで開催された。NY平和ファンデーション(代表・中垣顕実法師)が主催し、宗教や宗派を超えて広島・長崎への原爆投下を追悼し、平和を祈念する毎年恒例のイベントで、今回で33回目を迎えた。

(写真上)マンハッタンの立正佼成会センターで開催された平和の集い

 集いではヒンズー教からグル・ディリープジ氏(ワールド・ヨガ・コミュニティー創設者)、ユダヤ教からピーター・ロジーナ氏(デジタル投影アート「ピース・ライツ」制作者)、仏教からはジェームス・リンチ教会長と飯村匡由氏(立正佼成会ニューヨーク教会)が、平和のためのメッセージと祈りを捧げた。ネットを通じて広島平和記念式典の様子が上映され、原爆投下時刻の午後7時15分(日本時間8時15分)に参加者全員で黙祷を捧げた。

 続いてニューヨーク広島会の古本武司名誉会長とニューヨーク長崎県人会の木下信義会長の講演が行われた。

 古本さんは太平洋戦争中に強制収容所で生まれ、戦後、原爆で焼け野原となった広島で育った。10歳で米国に戻り、1970年にベトナム戦争に従軍。帰還後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされた経歴を持つ。講演で古本さんは2016年のオバマ米大統領(当時)の広島訪問に触れ、大統領の演説後に多くの人々が笑顔を見せた光景が忘れられないと振り返った。また、小学校で戦争と平和について話した際、子供たちから「友達になることが平和につながる」との答えがあったことを紹介。「戦争は非常に残酷であり、平和がいかに尊いかを知ることが大切だ」と平和教育の必要性を訴え、世界に平和を広げていこうと呼びかけた。

 木下さんは、12歳で長崎原爆を体験した父親の記憶を紹介した。父親は原爆投下直後、学校の窓ガラスが一斉に割れ、近くの校庭に重傷者が並べられる光景を目撃。多くが治療を受けられないまま亡くなり、遺体の臭いを生涯忘れられなかったという。その父親も4年前に89歳で死去。木下さんは、被爆者が減るなか、被爆二世には体験を若い世代へ伝える使命があると強調。核兵器のない世界は待つだけでは実現しないとして、市民一人ひとりが核兵器問題への理解を深め、対話と草の根の行動を通じて核廃絶への社会的合意を広げる必要があると訴えた。 

 集会ではこのほか、核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議の開幕前日の4月26日にマンハッタンで行われた核兵器廃絶を訴える平和行進の様子はじめ、広島出身の若手バイオリニスト安塚かのんさんによる「被爆バイオリン」による演奏、同じく広島出身のミュージシャン原田真二さんのメッセージと歌などがビデオで上映された。

 長崎の日の平和の集いは、原爆が投下された日本時間9日に合わせ、8日にリモートで行われた。

(武末幸繁/文・写真)

同時多発テロから25年 9.11博物館で特別展

15日から劇画展示も

  2001年9月11日の米同時多発テロから25年を迎える今年、国立9・11記念博物館(National September 11 Memorial & Museum)は、節目の年を記念した特別展示や教育プログラムを年間を通じて開催している。事件を知らない世代にも記憶を継承することを目的に、新たな展示や追悼行事を充実させる。

 今年公開された代表的な展示の一つが、2028年2月まで開催される「Our Flag Was Still There(私たちの旗はそこにあった)」。崩壊したサウスタワーの「ラスト・コラム」に掲げられた星条旗や、ウサマ・ビン・ラディン殺害作戦で使用された旗など、9・11に関わる歴史的資料を紹介している。

 9月12日からは、事件後に広がったボランティア活動や慈善団体の取り組みを紹介する「In TheirHonor: 25 Years of 9/11-Inspired Service(彼らをたたえて—9・11が生んだ25年の奉仕活動)」が始まる。悲しみを地域社会への支援へと変えた人々の歩みを振り返る内容となっている。

 このほか、8月15日開幕の「Responding in Ink」では、漫画やグラフィックノベル(劇画)を通して9・11を描いた作品を展示。8月末まで開催される「The World’s Game: Soccer and 9/11」では、サッカーが復興支援や被災者支援に果たした役割を紹介する。

 9月11日の追悼式典では、01年の同時多発テロと1993年世界貿易センタービル爆破事件の犠牲者2983人の名前が読み上げられるほか、今年から9・11関連疾患で亡くなった人々を追悼する「7回目の黙とう」が新たに加えられる。また、毎年恒例の「トリビュート・イン・ライト」に加え、市内各地のビルやランドマークが青色にライトアップされる特別企画も実施される予定で、追悼の光がマンハッタンだけでなくNY市全体へと広がる。博物館では、NY州在住・在勤・在学者を対象とした毎月第1日曜日午後4時から7時までの無料入館を継続するほか、9月11日には学校向けのオンライン学習プログラムも公開する。25年という節目を機に、事件の記憶を次世代へ伝える取り組みが進められている。

(写真上)黒煙を上げる世界貿易センタービル(2001年9月11日、五番街で三浦良一撮影)

お盆 〜ご先祖様を迎える日本の夏〜 旅は道連れ 世は情け 週刊やさしいにほんご生活

この連載は、日本語を勉強している人を読者対象としたコーナーです。日本文化やマナー、タイムリーな日本に関する話題などを簡単な日本語で毎月第3週号に掲載します。アメリカ人の友人などにご案内ください。また、漢字をまだ習っていないお子様にとっても社会を知り、漢字に接するよい機会になります。

お盆 〜ご先祖様を迎える日本の夏〜

 夏の終わりには、日本各地で「盆踊り」が開かれます。輪になって踊る姿を見て、「なぜ日本人は夏に踊るの?」と思う方もいるでしょう。盆踊りは、お盆にあの世から帰ってくるご先祖様をお迎えし、感謝の気持ちを表すために受け継がれてきた伝統行事です。地域の人々が世代を超えて一つの輪になって踊る姿には、人と人とのつながりや、命を大切にする心が表れています。また、お盆にはきゅうりで作った馬や、なすで作った牛を飾ります。馬には「ご先祖様に早く帰ってきてほしい」という気持ちが、牛には「ゆっくり帰ってほしい」という願いが込められています。日本の夏は、家族や地域の絆を感じる季節でもあるのです。

(長久保美奈、マナー講師)

わくわくことわざ(24)
文とイラスト 平田恵子

旅は道連れ 世は情け


 旅には一緒に行く人がいると心強いように、世の中を生きていくには他者への気配りが大切という意味です。昔の旅は情報も少なく危険が伴ったため、同行者の存在は頼りになるものでした。また、日本人にとっての「情け」とは、相手をいたわる道徳的な思いやりの心です。見知らぬ土地での人のやさしさは、とくに身にしみたことでしょう。ポイントは、単に仲よく接するだけでなく、「困った時や不慣れな環境だからこそ、仲間の存在や人の温かさがありがたく感じられる」と伝えたい時に使います。

《言葉の意味(ことばのいみ)》

・盆踊り(ぼんおどり):Bon Odori (traditional Bon dance)

・ご先祖様(ごせんぞさま):ancestors

・感謝(かんしゃ):gratitude・あの世(あのよ):(afterlife)

・きゅうり:cucumber ・なす:eggplant

・心強い(こころづよい):reassuring、encouraging

・気配り(きくばり): consideration, thoughtfulness

・「旅は道連れ 世は情け」に似た英語:On the road you need a companion, in life you need consideration 

矢野顕子が特別公演 JSで上妻宏光らと9月18日

日米フォークの起源探る

 ピアニストでシンガー・ソングライターの矢野顕子による特別公演が9月18日(金)午後7時30分から、ジャパン・ソサエティー(JS・東47丁目333番地)で開催される。

 ニューヨーク・タイムズ紙から「広範な声域を持つ世界クラスのソングライター」「キャロル・キングの日本における同僚」と絶賛された矢野は今回、自身が拠点とする日本と米国のフォーク音楽(民謡)のルーツを深く掘り下げる。

 ステージには2組の豪華な共演者を迎える。10年以上前に同劇場で民謡プロジェクトを始動させた、津軽三味線の第一人者・上妻宏光との伝説的デュオ「やのとあがつま」が復活。さらに、米フォーク界の異才サム・アミドンと初の共演を果たし、アパラチア民謡などの伝統歌に新たな息吹を吹き込む。終演後には出演アーティストたちと直接交流できるレセプションも予定されている。

 入場料は一般63ドル、障害者割引・コーポレート会員は48ドル。JS会員は通年で各種イベントが20%以上割引となる。チケット・詳細はウェブサイトhttps://boxoffice.japansociety.org/eventsを参照する。

地下鉄で、アケマシテ、オメデトーゴザイマス ニューヨークの魔法

 黒人の女の人が地下鉄に乗り込んでくるなり、床に携帯電話を落とした。私の隣にすわっている白人の男の人が、それに気づくと、突然、その女の人に向かって、まるで攻撃するような口調でまくし立てた。

 そんなものを持ち歩いているから、本当の意味でのコミュニケーションを、みんな忘れてしまっているんだよ。前はちゃんと相手の目を見て会話していた夫婦だって、今じゃ一緒にいても、ふたりとも手には携帯電話を持っているんだ。

 八月の土曜日の昼頃だったので、乗り合わせた人たちは皆、半袖のTシャツかポロシャツだが、彼だけ、よれよれではあるけれど、スーツにネクタイ姿だ。女の人は別に不愉快そうな顔をするでもなく、ときにほほ笑み、私の場合、そういう心配はないわよ、などと返事をしながら、言葉を交わしている。

 用があって、私が携帯電話を取り出した。隣の男の人の視線を感じる。今度は私に説教するのだろう。

 少し緊張していると、案の定、男性が私に向かって話しかけた。

 Big smile! Big smile! アケマシテ、オメデトーゴザイマス。

 お盆の時期に、なぜか日本語でこの挨拶。私は仏頂面づらだったのか。思い切り、作り笑いしてみるが、その人は何も言わない。

 少し間を置いてから、君は東京の出身か、と尋ねてきたので、そうです、と答える。

 イサム・ノグチを知ってるかい。

 イサム・ノグチはアメリカ生まれの著名な彫刻家だ。彼の美術館が、マンハッタンの川向こうのクイーンズ区にある。

 はい、知ってますよ。

 彼は素晴らしい男だよ。

 友だちだったんですか。

 友だちじゃないが、何度か会ったことがある。彼の美術館は行ったかい。素晴らしいよ。彼は重要な男だ。

 あなたも芸術家なんですか。

 そうだよ。絵も描くし、彫刻もやるし、作曲もする。イサム・ノグチについて詩を書いたこともあるんだ。

 彼はイサム・ノグチについて話し終えると、バッグの中からスケッチブックのような厚手のノートとペンを取り出し、車両の向こうをじっと見つめている。

 地下鉄で絵を描くんですか。

 Yes. I’m trying to concentrate. Thank you. Nice to meet you.

 そうだよ。今、集中しようとしているところなんだ。ありがとう。会えてうれしいよ。

 つまり、私はこれから絵を描くから、邪魔しないでくれ、というわけだ。

 絵のモデルを見つけたようで、スケッチブックにペンを滑らせ始めた。私は気づかれないように、そっと横目でのぞいてみる。

 少し太めの女の人の絵を、さらさらと描いている。見かけによらず、漫画チックなかわいらしい絵だ。彼の視線の先に、それらしきヒスパニック系の体格のいい中年女性がすわっている。

 モデル選びのポイントは、何なのだろう。聞いてみたかったが、邪魔するなと言われているので、黙っている。

 と、突然、手を止め、私たちの前にすわっている若い黒人の女性グループに声をかける。

 違うよ、次の駅はロックフェラーセンターじゃない。五番街だ。で、その次がロックフェラーセンターだよ。

 スケッチに集中しているのかと思ったら、他人の話に耳をそばだてていたのだ。

 彼が話していた“本当の意味でのコミュニケーション”を、実践しているというわけか。

 おかげで、私も乗り過ごさずに済みそうだ。

 五番街の駅に地下鉄が到着する。

 It was nice meeting you.

 お会いできて、うれしかったです。

 文字どおりの気持ちを込めて、そう絵描きに声をかける。

 彼はスケッチブックから一瞬だけ顔を上げ、笑顔で同じ言葉を私に返した。

 このエッセイは、「ニューヨークの魔法」シリーズ第7弾『ニューヨークの魔法の約束』に収録されています。

https://www.amazon.co.jp/dp/4167717220

42歳で来米して振付師として活躍  戸塚 慎さん

ダンサー、振付師

 戸塚慎さん(44)は、日本を代表するストリートダンス界のトップパフォーマーとして広く知られ、これまで、ダンサー、振付師、ダンスインストラクター、シンガー、ソングライターとして幅広く活躍しきた。日本国内のみならず韓国のトップアーティストの音楽制作や振付も手がけている。また、台湾でダンスワークショップを開催するなど、アジア各国へ活動の場を広げている。

 ダンス歴は長く、26年に及び、数多くの国内外のアーティストをサポートしてきた。BTSのワールドツアー日本公演への参加をはじめ、マドンナの来日時の「Smap×Smap」のテレビ出演、さらにNHK「紅白歌合戦」、日本レコード大賞、MTV Video Music Awards Japan(VMAJ)で日本のトップアーティストのバックダンサーを務めている。

 また、日本で上演された「ロミオ&ジュリエット」、ブロードウエーミュージカル「イン・ザ・ハイツ」、「ロッキー・ホラー・ショー」、「黒執事」など、数々のミュージカルにも出演し、さらに映画「モテキ」、きゃりーぱみゅぱみゅの「つけまつける」、「インベーダーインベーダー」のMVに出演し、世界6か国を回ったワールドツアーにも出演した。

 2024年6月末にO1Bビザを取得し来米、現在、カリフォルニア州アーバイン在住。「40歳になって、世界に挑戦せずに自分の人生を終わらせるのは絶対に悔いが残ると思った」。日本にいれば仕事はあった。でも、日本にいたからこそ通用した自分なのではないか、そんな思いが常にあった。

 アメリカではコーチとして担当したダンスチームが世界的に有名なダンスコンテスト「World of Dance」に出場。先日行われた「World of Dance Summit 2026」でトップ10入りを果たす。そのほか「Showstopper」にも出場してOverallの優勝やトップ3へ導く。

 今後の目標としては、ダンスエージェンシーに所属してダンサーとしてのキャリアを積み、ゆくゆくは振付師として活動の場を広げていき、何かしらの賞を獲れたらと思っている。

 今後の課題を聞くと「単純な事かもしれませんが、根本的な所で言うともっと自分自身をアピールする事。アメリカに戻ってきて感じたのは、自分自身に「日本人らしい謙虚さ」がある事。うしろの方でひっそり誰かが見つけてくれる事を期待する事ではなく、自分自身で自分をアピールする気持ちが大事だなと。ダンスの部分で言えば、頂いた振付を元の振付を崩さずいかに自分のテイストを加えてアウトプットするか。それがオリジナリティとなり、プラスアルファで評価される。料理で言えば、同じ素材の食材でも味付けが違えばまったく違う料理になるじゃないですか? その調味料を選ぶのも自分、量を調整するのも自分。調整料がセンスだとしたら、そのセンスを磨く事も課題と捉えています」。

 アメリカでこれから活躍することを目指す、若手にアドバイスを聞くと「まずビザ的な事で言えば、日本でまずキャリアを積む事。人それぞれいろんなやり方があると思いますが、自分の場合は日本でのキャリアがかなりビザの助けになりました。頑張って欲しいです」と話す。東京都出身。

 (三浦良一記者、写真も)

編集後記

編集後記


 みなさん、こんにちは。ニューヨーク市のマムダニ市長は7月27日、市が新設する公営食料品店「NYCグローサリーズ(N.Y.C. Groceries)」で、生鮮食品や肉類など主要食料品を一般的な小売価格より30%安く販売すると発表しました。物価高で増大する市民の食費負担を軽減する狙いで、所得にかかわらず全利用者が割引の対象となるという画期的なものです。


 割り引きされるのは、野菜と果物の全品、肉、魚介類のほか、牛乳、卵、チーズ、パンなど約20種類の主要な保存食品や冷蔵食品。これで市は、利用世帯の食費全体を平均15%削減し、月約90ドル、年間約1000ドルの節約につながると試算しています。


 一方、既存のスーパーや小規模小売店からは、税金で支えられる店舗との価格競争は不公平で利益が侵害されるとの懸念の声が出ています。また、記者会見では、大量買い占めによる転売にどう対応するのかという質問も出ました。

 一律公平に富を分配するという一見公平に見える共産主義的施策ですが、消費者を優先するあまり、業者をないがしろにする組み立てに実施までに歪みが出ないか心配です。世の中得する人がいれば、損する人が必ず反対側の天秤の皿に乗っかっています。あちらを立てれば、こちらが立たず、世の中ゼロサム社会で連通管の水みたいなものです。資本主義の骨組みを無視した発想に、旧ソ連時代のコルホーズ、ソフホーズという社会科で教わった言葉を連想しました。トランプ大統領がマムダニ市長を共産主義者呼ばわりした理由がなんとなくコレかと思った次第。

 日本で仮に東京都が経営する公営スーパーが池袋や新宿にダイエーやイトーヨーカドーより3割安く売る食料品店を出店したらどうなるでしょう。なんとなく複雑な混乱が起こるのは、議員でなくとも小学生でも想像できます。国が生協を経営するようなものです。やってみてダメだったらなかったことにしてもらうという簡単なものではないですが、マムダニ市長は張り切っています。こういうのをAIは、活力とでも訳すのでしょうか。まあ、蓋を開けてみないと分からないこともあるので、一消費者としてはまずはお手並み拝見といったところです。それではみなさん良い週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2026年8月8日号)

(1)NY市営食料品店  主要食品3割引き  

(2)悪霊追い払う  アイヌの刺繍

(3)新潟県南魚沼から海外派遣  ワシントンDCとNY 

(4)八神純子が旅する ルート66  (第5回)

(5)国家的悲劇としての熊本地震

(6)スマホで旅券 申請可能に

(7)日本の職人技を売る 地方の物産にも特色

(8)海外結婚相談室 行動が変わると、景色が変わる

(9)NYで夢に挑む 日本人女性たち


(10)「AI時代の今、NYで生きる」  Polyphony展覧会

NY市営食料品店 主要食品3割引き

来年末に1号店

物価高対策で食費負担軽減

 ニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長は7月27日、市が新設する公営食料品店「NYCグローサリーズ(N.Y.C. Groceries)」で、生鮮食品や肉類など主要食料品を一般的な小売価格より30%安く販売すると発表した。物価高で増大する市民の食費負担を軽減する狙いで、所得にかかわらず全利用者が割引の対象となる。

 割引されるのは、野菜と果物の全品、肉、魚介類のほか、牛乳、卵、チーズ、パンなど約20種類の主要な保存食品や冷蔵食品。対象商品の価格は月ごとに決め、1か月間固定する。市は、利用世帯の食費全体を平均15%削減し、月約90ドル、年間約1000ドルの節約につながると試算している。

 市は5行政区に1店舗ずつ設置する計画で、第1号店は2027年末までにブロンクス区ハンツポイントで開店する。マンハッタン区では、イーストハーレムにある市営市場「ラ・マルケタ」の敷地内に、新たな店舗を建設する。全5店舗を2029年末までに開く予定で、整備費として市の資本予算から7000万ドルを充てる。

 店舗や土地は市が所有し、家賃や建設費などの負担を抑える一方、日常の店舗運営は公募で選ぶ民間事業者に委ねる。たばこ、酒類、宝くじ、温かい調理済み食品は販売せず、地域の小規模食料品店との競合を抑えるとしている。同市営食料品店は身分証明書の提示は求めず、同市民でなくても割安の商品を購入できるとしている。無料のメンバーシップ・カードも提供するが任意のため義務ではなく、在住する住所を記入する必要もないという。

 一方、既存のスーパーやボデガからは、税金で支えられる店舗との価格競争は不公平で利益が侵害されるとの懸念も出ている。市内全体に対して5店舗にとどまるため、食料品価格の抑制効果や、継続的な運営費をどう確保するか、大量買い占めによる転売にどう対応するのかも課題となる。5区に1店舗だが、その店に行きさえすれば、誰でも隔てなく平等に生鮮食品や肉類など主要食料品を一般的な小売価格より30%安く買えるだけに、地下鉄などの交通費をかけてでも元が取れるほどの割安となるため、多くの市民が殺到することが予想される。徒歩圏内にある食料品店だけでなく市外の食料品店でも客足が遠のく可能性もあり、既存商店の不安をどう払拭するかが今後の懸案事項だ。

悪霊追い払う アイヌの刺繍

ジャパン・ソサエティーで
第二弾! 12日と13日開催

 ジャパン・ソサエティー(東47丁目333番地)は7月に続き、8月12日(水)と13日(木)の両日、「アイヌ・サマー・フェスティバル—アイヌの物語、文化、そして伝統」の第二弾を開催する。

 アイヌの人々は、工芸の伝統で知られており、刺繍やアップリケによって生み出される精巧な模様や、世代を超えて家族に受け継がれてきた独自のデザインが特徴だ。アイヌの伝統的な衣装の背中、襟、裾によく見られるこれらの模様は、単に美的な目的だけでなく、悪霊を追い払うお守りとしての精神的な意味も持っている。

 アイヌの工芸伝統の保存に積極的に取り組んでいる北海道の「ニブタニ工芸協同組合」が来米し、12日 午後4時から午後5時30分までアイヌの刺繍の風習を紹介し、少人数制のワークショップ「イカルカル=アン・ロ!」を開催する。参加者全員が自分で制作したアイヌ刺繍を持ち帰ることができる。参加費は一般20ドル、学生・シニア17ドル、ジャパン・ソサエティー会員15ドル。

 またその後アイヌ語ワークショップや「Sinot 沙流川流域の踊り」公演(レセプション有り)を開催。13日は午後4時から5時30分「Sinot=an ro!」アイヌ古式舞踊ワークショップ、午後5時30分〜6時45分・映画「Ainuー ひと」無料上映会・溝口尚美監督の質疑応答、午後7時〜8時30分「Ikarkar & Itak: アイヌの刺繍と言語」(レセプション有り)を開催する。チケットの申し込みはウェブサイトhttps://japansociety.org/ainufestival/

新潟県南魚沼から海外派遣  ワシントンDCとNY


 新潟県南魚沼市の中学生と高校生を合わせた12人がワシントンDCとニューヨークを訪問し、ホームステイなども含め7月28日から8月3日まで来米した。市が主催する「南魚沼市中学生高校生海外派遣事業」の一環で来米したもので今年で4回目。一行には岡村秀康南魚沼市教育長はじめ、市教育委員会職員が同行した。   

 ニューヨークでは、ニューヨーク日本総領事公邸と日本政府国連代表部を表敬訪問した。一行は、7月31日午前11時にニューヨーク総領事の片平聡大使公邸を訪問した。片平大使は歓迎の挨拶の中で、現在の公邸が2年間の改修工事の移転中の仮公邸であることを紹介した上で、アメリカと新潟との関係について述べた。この中で大使は、ペリー提督が江戸幕府に開国を迫り1858年に日米間で結ばれた日米修好通商条約で、日本は函館、横浜、神戸、長崎、そして日本海側で唯一となる新潟の港を米国の希望で開けたことについて触れた。「アメリカと日本の関係の中で、最初のところから新潟は重要なところだった。みなさんはその歴史を引き継いでいる」と話した。

 続いて、在留邦人が安全に生活できるように当地の日本人を守ること、日本企業のビジネス活動を支援すること、日米関係がさらに進化して良い関係を築けるように草の根レベルの人間関係の構築を大切にしていると述べた。このあと総領事館の職員から在外公館の仕組みや仕事内容について説明を受けた。

  午後に訪問した国連代表部では、山﨑和之国連大使と面会した。山﨑大使は、生徒たちに3つの点について語った。「一つは国連は協力も対立も扱っている場所であり、国と国との関係は人間と人間との関係に似ている、それはすごくもろい関係にある。人と人との関係をどう担保するのかが重要。日本は世界から恵まれたところと見られることが多いが、どうか世界に目を向けてほしい。2番目は、天然資源の限られた日本は世界との結びつきで生存しているということを意識してほしい、3つ目は、現場に行って自分の目で見てその場の状況がどうだったのかを感じてほしい。現場に行って実物を見ることにより、情報を正しくキャッチすることができる、それが成功する秘訣だ」と述べた。

 生徒たちは、NY総領事館公邸、国連代表部訪問という公式行事を終えたあと、NY滞在中は、セントラルパークやNY公立図書館、国連本部、9・11メモリアル博物館を見学したほか、最終日はニューヨーク新潟県人会が迎えるホストファミリー宅に宿泊し、海外で生活する同郷の先輩たち家族とも交流した。

 この海外派遣事業は、大坪賢次ニューヨーク新潟県人会名誉会長が2022年に亡くなった妻の理恵さんの「故郷が発展するには人材の育成が大事。それには進路がまだ決まっていない中学生のうちが良いと思う」との夢を叶えてあげたいと何度も故郷新潟に足を運んで実現に漕ぎ着けたものだ。(三浦)   

南魚沼市の将来担う人材に
南魚沼市長 林 茂男

 今年で4回目となる南魚沼市中学生高校生海外派遣研修事業を無事に実施することができましたことを大変嬉しく思っております。本事業はニューヨーク新潟県人会の大坪賢次名誉会長のご尽力をはじめ、会員の方々の献身的なご協力により実現したものであり、この場をお借りして皆様方に心から感謝を申し上げます。

 在ニューヨーク総領事館公邸や国連本部への訪問、温かく迎えてくださったホストファミリーの皆様との交流など、国際的な価値観や現地の暮らしぶりに触れる極めて貴重な経験を積むことができました。生徒たちは、この経験を糧に、国際感覚を持ち南魚沼市の将来を担う人材に育ってくれるものと心から期待しています。     

世界に挑戦する新たな一歩
南魚沼市教育長 岡村秀康

 派遣生12名は、世界とつながる確かな手応えをニューヨークで感じました。摩天楼が連なる街並み、多様な文化が交差するエネルギー、そして現地で活躍する日本人との出会いによって、新たな視野が広がりました。 

 山﨑和之国連大使、片平聡総領事との面会では、国際社会の最前線で活躍する姿に大きな刺激を受け、さらにホストファミリーとの交流を通して、ニューヨークならではの暮らしや文化、人と人とのつながりの温かさを実感しました。そして、「自分も世界に挑戦したい」という思いを胸に、新たな一歩を踏み出そうとしています。この貴重な研修を支えてくださった大坪賢次様をはじめ、ホストファミリー、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。    

新潟への大きな貢献に

NY新潟県人会名誉会長
大坪賢次

 故郷新潟県南魚沼市が活性化するには、国際的な感覚を持つ人材を育てることが大切だという事から始めたプロジェクトも、今年で4年になります。

 ワシントンDCとニューヨーク市を訪れた今年度の派遣生徒たち12人は市内観光のみならず、山﨑和之国連大使、片平聡ニューヨーク総領事を訪問して、国際社会における日本の活動と立場について講義を受けました。また全員がNY新潟県人会有志のホストファミリー宅に宿泊して、アメリカの家庭生活を体験しました。

 これらの経験が、国際感覚を持つ人間を育て、将来必ずや故郷新潟に大きな貢献をもたらすものと思います。

NY総領事館と国連代表部で山﨑大使と片平総領事から日米関係や勉強の仕方聞く

 新潟県南魚沼市の中学生と高校生を合わせた12人がワシントンDCとニューヨークを訪問し、ホームステイなども含め7月28日から8月3日まで来米した。(2面に関連記事)

 生徒たちは7月31日午前、ニューヨーク総領事の片平聡大使を表敬訪問し、改修工事のため移転中の総領事公邸を訪れた。職員が在外公館についてまず説明した。世界には275か所に在外公館があり、そのうち、大使館は195、総領事館は67、日本政府代表部は13あり、外務省本省に約3000人、海外に3800人の職員がいること、総領事館は、邦人保護、安否確認、政治、経済、広報文化活動の主な4つの仕事をしていると紹介した。

 大使は1858年に日米間で結ばれた日米修好通商条約で、日本は函館、横浜、神戸、長崎、そして日本海側で唯一となる新潟の港を米国の希望で開けたことについて触れ「日米の関係の中で、最初から新潟は重要なところだった。みなさんはその歴史を引き継いでいる」と話した。

 続いて、在留邦人が安全に生活できるように当地の日本人を守ること、日本企業のビジネス活動を支援すること、日米関係がさらに進化して良い関係を築けるように草の根レベルでの人間関係の構築を大切にしていると述べた。生徒たちからは外交官の生活やどのような勉強が必要なのかといった質問が出され、大使が丁寧に答えていた。生徒を代表して阿部蓮希さんがお礼の挨拶をした。

 午後に訪問した国連代表部では、山﨑国連大使が3つのテーマを語り、生徒たちにアドバイスした。一つは、国連に加盟している193か国の中でも、日本と協力し合える国と対立関係にある国があるとした上で「国連は協力も対立も扱っている場所であり、国と国との関係は人間と人間との関係に似ている、それはすごくもろい関係にある。人と人との関係をどう担保するのかが重要。日本の中にいるとあまり感じないが、世界から見ると日本は恵まれているところと見られることが多い。一定水準の教育が国民に浸透し、安全で社会制度が確立している。どうか世界に目を向けてほしい。2番目は、天然資源の限られた日本は世界との結びつきで生存しているということを意識してほしい、3つ目は、現場に行って自分の目で見てその場の状況がどうだったのかを感じてほしい。今回皆さんが米国を訪問されているように現場に行って実物を見ることにより、情報を正しくキャッチできることができる、それが成功する秘訣だ」などと述べた。

 生徒からは世界から見た日本のイメージについて質問が出た。山﨑大使は、「日本は国際法を守る国。長年発展途上国や低所得の世界の開発に、自らの発展の経験をいかし貢献している。今その支援を受けた多く国が国連内での選挙の時に日本に票を入れてくれたり支持してくれている、日本は技術力、文化、文学、和食など世界から文化的にいいイメージを持たれている。ただし、いいことずくめではない。日本はこのところ元気がない、留学生が少ないと思われている。日本人は発想が受け身なところがある。自分は外務省に入った頃、上司から「これどうしましょうかとは言うな」と言われた。妙案でなくとも「自分だったらこうするという提案を持つことが大事だ。自分で考えることで、競争に勝つチャンスが生まれる。能動的に考えてほしい」とアドバイスした。生徒を代表して加藤優学さんがお礼の挨拶をした。