大統領権限に勝る 首相解散権

 衆議院総選挙が2月8日に行われる。60年ぶりの通常国会冒頭での解散、1年

3か月ぶりの解散、国民生活に必要な予算後回しの解散など、異例尽くしである。日本の首相の解散権は世界最強と言える。国民に選ばれた国会議員の地位を、首相の都合で突如奪えるからだ。

 「英国の首相は自由な解散権を持つ」という学説は妥当でない。英国首相の解散権にはさまざまな制約がある。英国やカナダなど議会制民主主義国の大多数が任期満了に近い選挙である。

 首相解散権が強い最大の理由は、国会の権限が弱いからである。国会は解散を制約できない。法案の8割を政府が提出する。条約の承認権がない。閣僚、日本銀行総裁などの人事拒否例がほとんどない。英国議会よりもはるかに弱く、国民主権の軽視と言える。

 英国以上に、米国議会は予算編成、法案提出、閣僚や大使の人事や条約の承認権を持ち、GAO(行政監察院)や議会予算局などの独立組織も含めて強大な権限を持つ。

 その議会以上の権限を誇示しているのがトランプ大統領である。大統領令230件以上。関税威圧外交、ベネズエラ介入、グリーンランド奪取宣言、政府

高官の解任、デモ鎮圧のための軍や警察派遣、メディア検閲などである。

 しかし、その大統領でも議会の解散権はなく、議員は2年と4年の任期を全う

する。つまり、米国大統領の強大な権限に勝る権限を日本の首相が持つ。この解散権が首相の平均在任期間を世界最短クラスの約2年としている。これでは各国首脳からの深い信頼は得られない。比類ない自由な解散権が国益に反することが今回明確になったと言える。

 首相が国会に長時間拘束されるのも国益に反する。首脳外交や政策立案を担う時間を国会は与えるべきだ。紛争の同時多発や関税戦争が拡大し、各国は合従連衡を競っている。議会やNPO等も駆使した多層外交も強化している。国会が弱く、外務省オンリーの日本ではしたたかな外交ができない。

 外交・安保に限らず、経済、社会保障などの国家戦略立案や危機管理を担う体制の不在が「失われた30年」の原因でもある。

 大統領権限に勝る首相解散権を改革し、長期的な国家のかじ取り体制を整える時である。これは日本の存亡に関わることであり、憲法改正ではなく超党派による国会法などの改正で早期実現をはかる時である。

ふじた・ゆきひさ=オックスフォード大政治国際問題学部客員研究フェロー(英国在)。慶大卒。国際MRA(現IC)や難民を助ける会等の和解・人道援助活動を経て国会議員、財務副大臣、民主党国際局長、等を歴任。現在、国際IC日本協会長、岐阜女子大特別客員教授も兼任。

NY NOW DECO BOKO 和歌山の物産

 ニューヨーク・ジャビッツ展示会場で2026年2月1日から3日、ライフスタイル展示会「NY NOW 冬展」が開催された。北米最大級のギフト・雑貨見本市として知られる同展には、世界各国からバイヤーが集まる。日本出展ブースも存在感を示していた。

 ジャパンブースのオーガナイザーはDECO BOKO。日本のカルチャー、ファッション、ライフスタイル商材に特化し、米国バイヤーにとって買いやすく、日本企業にとって売りやすい展示構成を行うことを特徴とする。日本ブランドと米国市場の間にある商習慣や情報の隔たりを埋め、透明性の高いビジネス関係を築くプラットフォームとして機能している。

 今回は、ジェトロ和歌山事務所が地元企業10社の商品を出品し、地域色豊かなブランドを紹介した。会場では、サステナビリティ製品を打ち出す商品もあり、環境配慮型の素材や循環型の製品設計が来場者の関心を集めていた。

 印象的だったのが、株式会社坂本が手がける「ZENCOCORO」シリーズだ。食用には適さない間引きみかんを活用し、安眠をテーマにしたお香の香りを開発。坂本社長は、納得のいく製品に仕上げるまでに100回以上の試作を重ねたという。廃棄されがちな資源に新たな価値を与える姿勢が、バイヤーから高い評価を受けていた。

 ジェトロ和歌山の土屋智洋所長は「地域の素材や背景にある物語が、海外市場では大きな強みになる。今後も和歌山発の価値を世界へ発信していきたい」と話している。

■古市裕子

ニューヨーク・マーケティング・ビジネス・アクション代表取締役。SDGsジャーナリスト。国連サステナビリティ (ABD: Ph.D.) 。元ジェトロ17年勤務。著書・新潮社『欧米企業に学 ぶ・SDGs 転換戦略:サステナブル×これからの企業価値』。『パーパス: 何のために存在しどんな価値を提供するのか』

公民権活動家称える フレッド・コレマツ・デー

NJ州フォートリーで記念式典

 第二次世界大戦時、日系米国人は敵国のスパイと疑われ、当時のルーズベルト大統領が発した大統領令によって、全ての財産を奪われ強制収容所での生活を余儀なくされた。「当時の米国の判断は違憲である」と、戦後数十年にわたって国と戦い、最終的に大統領からの謝罪と日系人の人権回復を勝ち取った日系人の公民権活動家が、故フレッド・コレマツ氏。同氏の偉業を讃え、彼の誕生日である1月30日を「フレッド・コレマツ・デー」として、「全ての移民の人権を守る」記念日にしようという動きが全米各地で起きている。

(写真上)オンラインでスピーチするカレン・コレマツさん

 東海岸では2017年にNY市が認定したのをきっかけに、2020年にはNJ州のフォートリーが自治体単独で、2023年にはNJ州全体で同日を正式に州の記念日に認定した。現在は次のステップとしてNY州全体で認定してもらえるよう議会に働きかけており、今年中に認定されそうな段階にきているという。

 東海岸で、自治体や州での認定に向けて議会への調整や市民への教育に尽力している中心人物は、自身も強制収容所で生まれた、日系米国人実業家の古本武司さん。同氏は、2020年以降毎年1月30日にフレッド・コレマツ・デー記念式典を地元のフォートリーで主催しており、今年も同日の午後に第7回記念式典が同区役所のホールで開催された。

 祖父が強制収容所に入れられていたという古本不動産社長エリザベス・タミコ・オオオカさんの司会で始まった式典は、フォートリーのマーク・ソコリッチ区長、NJ州アジア・環太平洋諸島系米国人評議会の役員アンバー・リードさん、日本国NY総領事の片平聡大使、NY日系人会の佐藤貢司会長らが次々とスピーチ。次に、古本氏の活動を支えるキャロル夫人からの紹介で、カリフォルニアからオンラインで参加したコレマツ氏の長女で父の遺志を継いで公民権活動家になったカレン・コレマツさんが、同記念日を全米の国民に地道に伝え続けることの重要性などを話した。また、著書「ゴースト・オブ・ヒロシマ」がジェームス・キャメロン監督による映画化が決定したベストセラー作家、チャールズ・ペレグリーノさんがキーノートスピーカーとして登壇。自身の取材に基づいた戦時中の話を語った。最後に古本さんがスピーチをして式典を締め括った。

 現政権の指揮下で移民が不安になるような出来事が立て続けに起きている現在、アメリカが80数年前と同じ過ちを起こさないためにも、「フレッド・コレマツ・デーをアメリカで暮らす人々に広める意義は大きい」と、古本さんや参加者は口々に話していた。 (本紙・久松茂、写真も)

小豆島からオリーブ日本酒 マンハッタンで好評

小豆島酒造が紹介

 ニューヨークのミシュラン星レストラン「Odo」の姉妹店「ザ・ギャラリー」で1月26日、香川県・小豆島にある島で唯一の酒蔵「小豆島酒造」が業者向けに試飲会を行った。前日の25日にはマンハッタンに大雪が降り、開催が心配されたが、レストランやリカー・ショップの関係者ら約30人が参加して賑わった。

 小豆島は、400年の伝統を誇る木桶の醤油造りが有名。また、1908年に米国からオリーブの苗木が輸入され、日本で最初にオリーブの栽培に成功した島でもある。この日、小豆島酒造は島の特産品であるオリーブの実から抽出した「さぬきオリーブ酵母」で造った日本酒「小豆島にオリーブの実のなるころ」「ホシガジョウノソラ」「はちはち」を紹介した。

 最初に小豆島酒造の池田亜紀さんが小豆島の地理、気候、オリーブの栽培の歴史、さぬきオリーブ酵母、酒造りについてスライド写真を交えて紹介。その後、オリーブオイルを使った料理と合わせて日本酒を試飲した。来場者の一人、クイーンズの和酒専門店Bin Bin Sakeのジョージ・パディアさんは「オリーブ酵母の日本酒には大変興味がある。特に小豆島の棚田で栽培した酒米「オオセト」で造った「はちはち」が気に入った。すべてが小豆島で造られた酒というところがいい」と話した。同酒造の池田亜紀さんは「雪の中、たくさんの人に来ていただいて良かった。小豆島の小さな酒蔵がマンハッタンのミシュラン星のレストランでオリーブ酵母の日本酒を紹介できるチャンスをいただいた。これをきっかけに米国で頑張っていかなければと決意を新たにした」と話した。

 小豆島を含む瀬戸内海の島々では、2010年より3年ごとに現代アートの祭典、瀬戸内国際芸術祭も開かれており、アートの島として海外からの観光客も多い。 (石黒かおる・写真も)

女性起業家 10人が来米 東京都がNYに短期研修派遣

事業内容などを発表

 東京都の女性ベンチャー支援プログラム「APT Women」(小池都知事支援)で10人の女性起業家が1月20日から31日までニューヨークで研修し、そのピッチイベントが29日、SGR法律事務所NYオフィスで開催された。10日間の研修成果やベンチャー事業の紹介を米国側関係者たちを招いて行い、イベント後は交流会も開催された。ニューヨーク総領事の片平聡大使も来場し、10人のプレゼンテーションを最初から最後まで聞いた。

 堀汐里さんは、AIを活用した営業メッセージ支援システム「SalesTailor」 の開発・提供を紹介した。菅原沙耶さんは、訪日観光客ファミリー向けに日本文化を伝えるチャイルドコンシェルジュサービス「Parent Time」を運営している活動を発表した。

 森本彩加さんは、コーチングをベースにした20〜30代女性向けライフキャリアデザインプログラムを提供。中村瞳さんは、最短30分から30分単位で利用できる家事代行サービスの米国での将来的進出に意欲を見せた。稲本彩さんは、革新的なスマートジュエリー 「RIVETRING」で「美とテクノロジーの融合」というビジョンと新しい価値をモアサナイトを通じて提供していることをアピール。仲琴舞貴さんは、ヒマラヤ生まれのプレミアムピーナッツバターを世界中の食卓へと届けたいとPRした。

 三嘴香澄さんは自らの肌のトラブルの克服ストーリーを披露しながら敏感年齢肌をサポートするスキンケアD2Cブランド『klarm(クラーム)』を紹介した。山脇有紗さんは、着物の技術と芸術を活かした、伝統を再定義する職人発ラグジュアリーアパレルブランド『ALISA有紗』の米国展開への期待感を語った。

 山口奈々さんは、世界初の連続式水熱反応プラントにより、未利用資源から機能性物質等の抽出、アップサイクルする技術の商用化を目指す取り組みを解説した。小島幸代さんは、暮らしに循環を根づかせる体験型アップサイクルサービス『Rinne.bar』を展開。使い捨ての価値観や孤立しがちな日常を楽しく前向きに変化させる提案をした。

 プレゼンテーションを聞いたアントレプレナーら米国人審査員たちからは「もっと詳しく知りたい、米国でぜひ展開して欲しい」など激励のコメントが相次いだ。片平大使は「非常にどれも面白かったです。特に子育てに関心があったので、いくつかのテーマは本当に自分にとってはストライクゾーンでした」と感想を語った。また今回10人は1月27日夕には、インフルエンサーのセレブ、青木恵子さんの五番街の自宅に招かれ、世界で活躍する女性実業家になるための心得などアドバイスを受けた。 (三浦良一記者、写真も)

編集後記

編集後記

 みなさん、こんにちは。ジャパン・ソサエティー理事長のジョシュア・W・ウォーカーさんがこのほど『同盟の転機』、「アメリカの変貌と日本の戦略」(日本経済新聞出版)と題した本を執筆しました。トランプ再選から1年。アメリカ・ファーストを推し進める大国のもと、第二次世界大戦後から長らく続く日米関係はいま新たなフェーズに入っているとして、日本とアメリカの関係を再構築し、国際社会でのプレゼンスを高めるためにはどうすればいいのかを、新時代のリーダーに向けて、知日派の著者が提言しています。

 著者のウォーカーさん(44)は、1歳の時に宣教師の親と共に訪日し、18歳まで北海道の札幌市で育った自称「道産子」です。米国で世界的に知られる政治分析会社ユーラシア・グループにおいてイアン・ブレマー社長直属の戦略イニシアティブ担当として日本での事業を担当し、民間に移る前には米国務省、国防総省といった米連邦政府のさまざまな部署で勤務、2019年に100年以上の歴史を持つジャパン・ソサエティーの理事長に歴代最年少で就任しました。

 同書執筆の動機として彼は、「日本が自ら日米同盟を変えろということではなく、日米同盟そのものがいまターニングポイント、転換点に差し掛かっているという現実を認識しなくてはならない」と述べ、「残りの3年は、大統領のエゴとファミリーのために使われるかもしれないが、日本はなんとしても生き延びなくてはならない。日本は米国との戦いを極力回避し、静かにそして熟考してアメリカ人が納得する方法でアメリカをサポートすることを考える方が得策だ。日本企業のプライベートセクターがアメリカ社会で活躍して成功しているのを見習って、もっと積極的に世界の表舞台で発言し、アピールして顔の見える日本になってプレゼンス、存在感を高めてほしい」と話しました。

 2月の出版を前に執筆の動機と意図について今週号の1面にインタビュー記事、19面に書評を掲載しています。同書は2月2日に日本で出版されます。NYの紀伊國屋書店にも近く店頭に並び、キンドル、電子書籍はアマゾンですでに予約が始まっているようです。3月に来米する高市首相にはぜひ来米前に読んでいただきたい本です。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2026年1月31日号)

(1)日米同盟の転機語る 出版インタビュー J.W.ウォーカー氏

(2)北陸3県フェア おにぎり作り人気

(3)NJ日本人会新年名刺交換会 「150年続く会に」

(4)移民法の新規則と永住権発行の制限  加藤弁護士

(5)在外投票始まる 2月1日まで実施 

(6)日米企業の協創と投資 スタートアップ支援

(7)米国で結婚への出会い応援  松本直子さん

(8)米東部に寒波と大雪直撃

(9)時代と国を超えて歌う 東京ダウンタウン

(10) 同盟の危機  BOOKS  

日米同盟の転機語る 出版インタビュー J.W.ウォーカー氏

米国の変貌と日本の戦略

ジャパン・ソサエティー理事長・プレジデント
ジョシュア・W・ウォーカー氏に聞く

 ジャパン・ソサエティー理事長のジョシュア・W・ウォーカー氏が執筆した『同盟の転機』、「アメリカの変貌と日本の戦略」と題した新著が、日本経済新聞出版から2月2日に出版される。出版の動機と意図を聞いた。  (聞き手・本紙・三浦良一、写真も。書評19面に)

 ウォーカー氏の発言内容は次の通り。

 この本の出版時期がタイミング的に良かったかどうか予断はできないが、本書に書かれたことについてはその予断は確信と自信がある。大統領一期だけで予測することはできないが、私は最初の彼の第一期で過去80年間の戦後の枠組みが大きく変わったことを感じた。そして日本人はそれに大きな関心を払わなかったことにも気がついた。日本は米国を信用し過ぎたのだ。本のタイトル『同盟の転機』は、何かが変わったことを示唆している。2026年を予測したものではないが、ベネズエラ、グリーンランド、日本の解散衆議院選挙をレッスンとして日本は今学ぶべきことがある。私が言いたいのは日本が自ら日米同盟を変えろということではなく、日米同盟そのものがいまターニングポイント、転換点に差し掛かっているという現実を認識しなくてはならないということだ。

 日本はこれまでのように米国に依存しっぱなしではいけない。なぜなら、日米同盟を築いた時のアメリカと今のアメリカとでは明らかに違うからだ。私たちが生きている世界は常に強い力(ハードパワー)によって形成されている。アメリカがベネズエラの大統領を拘束した時、アメリカでは誰も問題視しなかった。トランプ大統領がグリーンランドの割譲を口にした時、ヨーロッパは一斉に反発して欧米は分断された。日本はその中間にいる。転換期を迎えている世界の中で日本には今、役割がある。

 日本は変化を望まない。現状維持が居心地がいいからだ。アメリカが中国を監視する警察官であると日本がまだ見ているならそれは現実的ではない。日本育ちのアメリカ人の私の目から見て、今の日米同盟に欠如しているのは「社会と人間」だ。今年は大きく変貌する1年になるだろう。新年を迎えてまだ21日しか経っていない今日、昨日や明日の変化を誰が昨年末に予想できただろうか。高市首相は3月に来米する前にこの本を読むべきだ。私のような日米マフィアは、日本に心地のよい耳障りのよいうまいことを普段言うが、建前でなく本音をここに書いている。日本語で書いたのには意味がある。私が見たものをそのまま書いているから英語で読めば怒り心頭に発するアメリカ人が多くいるし、おそらくトランプ大統領は賛同はしてくれないだろう。だが、私はこの本で政治論を展開しているのでなく、アメリカに生きる愛すべき人間を書いている。日米関係はもっと大きく拡大すべきで、そうでなければ私や私の子供の世代は、第二次世界大戦で日本と戦った祖父たちの世代が戦後築いた80年の日米関係を理解することが難しくなるからだ。本書執筆の動機はまさにここにある。

 私は1歳から18歳まで日本で育ったが、日本に居たときは、常に自分がアメリカ人であることを意識していた。だが今、ジャパン・ソサエティーの理事長として自分の中に日本人的なるものを感じることがあるだけでなく、このアメリカの地で日本人が尊敬され、日本文化と伝統に対する憧憬と畏敬の念を多くのアメリカ人が抱いていることを痛切に感じている。

 日本人は他の人の気持ちを考えて発言する「おもてなしの心」があるが、アメリカ人は全く相手のことは考えないでストレートに主張して説得して要求する。昔の日米関係は、中曽根とレーガンのロンヤス関係や、安倍晋三首相のシンゾウアベがうまくできたのも相手とのバランスをうまく取れたからだが、もし、安倍首相が生きていても今のドナルド・トランプを止めることはできない。日本がアメリカとうまくやるためには、アメリカ人と一緒に何かやらないとだめだ。トランプの考え方はNYリアルエステートエージェント(不動産業者)だから、どうやってアメリカとうまく与(くみ)するかは、安全保障だけでなく、経済、文化、食などのソフトパワーでアメリカの悪夢と立ち向かわなくてはならない。 

 私は合気道を長い期間習っている。相手の力を利用して反撃することができる技だ。日本がアメリカにパンチを喰らわしてもアメリカを怒らせるだけなので、日本は米国との戦いを極力回避し、静かにそして熟考してアメリカ人が納得する方法でサポートすることを考える方が得策だ。

 そこでアメリカとの関係で日本の立ち振る舞い方が大切だ。今の日米関係をアメリカが兄で日本が弟の兄弟に例えると、兄の言動をハラハラと見守っている弟の状況に近い。それでも自分は兄弟だからたとえ兄が周りから責められても兄のことをちゃんと守ってやらなくてはならない。お兄ちゃんの言動を真正面から攻撃したり非難するのではなく「柔よく剛を制する」合気道のような柔軟なしなやかさが必要だ。

 アメリカ人として私はアメリカファーストが日本人の関心を呼ぶとは思わない。どの国も自国のことを第一と思うのは当たり前のことだからだ。「アメリカ・ファースト」は「アメリカ・アローン」だ。米国の大統領は日本の犠牲に感謝はしないだろう。米国が国際機関から脱退している中で、もし米国が国際秩序を大きく壊したら、その時は日本は真剣に考えなくてはならない。日本は中国のようなスーパーパワーの国ではない。日本は国際的な安定秩序のシステムの上に成り立っている国だからだ。もし米国が力まかせで国際秩序を破壊したら日本は大きな不利益と逆境に陥ることになる。多くのアメリカ人はトランプ大統領を支持していない。残りの3年は、大統領のエゴとファミリーのために使われるかもしれないが、日本はなんとしても生き延びなくてはならない。新しい日本の首相はうまくマネージしてサバイブしなくてはならない。外務省ではなく、官邸ではなく、首相本人だ。石破前首相は安倍晋三のように対峙せずに失敗した。インパーソンのワン・オン・ワンが大切だ。転機を迎えた日米同盟のキーワードは人だ。トランプ大統領にいかに日本が米国に多大なる投資をしているか、していくかを力説すること、日本と米国は親友であることを訴えることだ。日本は国際社会でリーダーシップをとることに消極的すぎる。日本企業のプライベートセクターがアメリカ社会で活躍して成功しているのを見習って、もっと積極的に世界の表舞台で発言し、アピールして顔の見える日本になってプレゼンス、存在感を高めてほしい。それがこの本を書いた最大の動機であり、愛する日本への私からの「お願い」でもある。

(写真左)2月2日に日本で発売になる『同盟の転機』
(写真右)出版の動機を語るウォーカー氏(1月22日)

日本の立ち位置を示唆

ジョシュア・W・ウォーカー・著
日本経済新聞出版・刊

 トランプ再選から1年。アメリカ・ファーストを推し進める大国のもと、第二次世界大戦後から長らく続く日米関係はいま新たなフェーズに入っている。

 日本とアメリカの関係を再構築し、国際社会でのプレゼンスを高めるためにはどうすればいいのか。新時代のリーダーに向けて、知日派の著者が提言する。

 著者でジャパン・ソサエティー理事長・プレジデントのジョシュア・W・ウォーカーさん(44)は、1歳の時に宣教師の親と共に訪日し、18歳まで北海道の札幌市で育った自称「道産子」だ。米国で世界的に知られる政治分析会社ユーラシア・グループにおいてイアン・ブレマー社長直属の戦略イニシアティブ担当として日本での事業を担当し、民間に移る前には米国務省、国防総省といった米連邦政府のさまざまな部署で勤務、2019年に100年以上の歴史を持つジャパン・ソサエティーの理事長に歴代最年少で就任した。  

 「日本が今日の分裂と不確実性に満ちた世界において、より大きな役割を担うためにも、私は日本のソフトパワーや強固な経済力、そして明確な目的意識が、これまで以上に重要になると感じている。本書を通じて、日本の幅広い読者が、これまで自分たちがアメリカや日本に対して抱いていたイメージを考え直し、日米のパートナーシップについて、より大胆な発想で考えるきっかけとなればと願っている」と語る。

 さらに本書を執筆したのは、「日米同盟が重大な岐路に立っていると確信したからだ。当初は英語で世界に向けて日本の強み、教訓、豊かさを説明するために書き始めたが、すぐに自分の中に別の本が生まれたことに気づいた。それは、家族の歴史が直近80年の日米関係と直接結びつく私自身の体験と視点に基づき、歴史の転換点に立つ故郷・日本への想いを綴り、日本の友人たちのために特別に執筆したものだ」と執筆の動機を同書で綴っている。

 「周囲の地政学や政治情勢にもかかわらず、私はこの分岐点を明確な視座と、日本および日米関係に対する真摯な楽観をもって迎えている。本書は愛を込めて執筆した労作であり、翻訳者である石垣友明氏の尽力により、言語的にも確実に伝わるものになったと確信している」と話している。

 序章でトランプ大統領の昨年秋の訪日で、高市首相が最大のおもてなしの心で接遇したソフトパワーこそ、日米関係の黄金時代をこの不確実な世界情勢の中で築くことができ得た源泉であると著者は説く。

 年が明けてわずか1か月、トランプ第二期政権発足から1年でこれほどまでに世界が不確実性の様相を色濃く呈するとは誰もが思っていなかった中でも、日本にとって、確固たる日米同盟の枠組みは日本の現在そして未来にとっての必須項目であることに変わりはないだろう。

 では「転機」とは、その中身について今、日本は自分たちが持っているソフトパワーを自覚し、それに自信を持てと日本育ちの米国人である著者が日本人の目と心で「愛の外圧」をかけているとも読める。
(三浦、インタビュー記事本紙1面に)

北陸3県フェア おにぎり作り人気

ジャパンビレッジで2月1日まで開催中

   北陸3県(石川県、福井県、富山県)の連携による、県産品の輸出拡大に向けたフェアが、ブルックリンのジャパンビレッジ(934 3rd Ave.)で、2月1日まで行われている。

 24、25日の2日間、2階の特設会場ではイベントが開催された。おにぎり作りの体験イベント、越前味噌作り、水引作りのワークショップ、茶や菓子などの試食販売、PRブースでの観光相談会や抽選会があり、多くの人が来場した。おにぎり体験イベントには行列ができ、初めておにぎりを握ったジャックさんは「楽しかった。自分で作ったおにぎりのおいしさは格別」と話した。

 石川県商工労働部産業政策課国際展開グループリーダーの濱家大士さんは「新幹線も繋がっている北陸3県が一体となって進めているPRイベントです。おにぎり体験イベントでは『3県の具材を自分で選んで作ったおにぎりは美味しかった』『鍋で炊いた普段食べているお米と、炊飯器でふっくら炊いた日本のブランド米の味がこれほど違うと思わなかった』などと喜びの感想が寄せられた。地元の人々の意見を取り入れながら、今後もさらなる輸出増に繋がればと思います」と語った。

 このフェアは、ニューヨークにおける北陸三県連携による農林水産物および食品の輸出拡大に向けた共同プロモーションで、期間中はこのような体験イベントをはじめ、日系スーパーマーケット「サンライズマート」、居酒屋、リカーショップなども含んで、3県38社の83商品を出品・販売している。この北陸3県は令和6年度から共同プロモーションに取り組み、翌令和7年度に北陸三県輸出促進協議会を設置し、輸出拡大に向けた取り組みを一層邁進させている。(安部かすみ、写真も)

NJ日本人会新年名刺交換会 「150年続く会に」

実力派マジシャン鈴木氏に喝采
中尾さん「老後人生プラン」講演
近藤会長「若手行事にも力入れる」

 NJ日本人会(近藤三奈会長)は20日夜、バーゲン郡エッジウォーターにある多目的ホール「アメリカン・リージョン」を会場に、今年も新年名刺交換会を開催した。NJ州在住の日本人たちに加え、NYからもNJ州民にサービスを提供している大勢のビジネスパーソンが参加し、ネットワーキングを楽しんだ。

 当日はスペシャル・ショータイムとして、日米で数々の賞を受賞した実力派マジシャン鈴木駿氏が、すぐ目の前で見ていてもトリックが一切分からないハイクオリティなマジックの数々を披露し喝采を浴びたほか、アメリカの金融業界で50年以上の豊富な経験を持つ中尾憲二氏が、老後の生活を豊かにする人生プランについてミニ講演を行った。また、近藤会長は挨拶で「NJ日本人会を150年続く会にしていきたい。そのためには、地元コミュニティやNJ州政府とも深い関係を構築し、連携して地域貢献に努めていく必要がある」と語り、同会の内部組織であるビジネス会やシニア会の活動を充実させることや、将来の執行役員発掘も兼ねた若手メンバー中心のイベントや家族向けイベントにも力を入れていくことを発表した。

 最後には、毎年恒例となっている「1分間ビジネス紹介コーナー」も行われ、希望する参加者がマイクの前に列を作っていた。

 (本紙・久松茂、写真も)

移民法の新規則と永住権発行の制限  加藤弁護士

 トランプ政権下で、U.S. Department of Homeland Security(アメリカ合衆国国土安全保障省) からいくつかの新規則が、ほとんど2〜3週間ごとに発表されています。また、現時点ではまだ規則として公表されておりませんが、近い将来施行される規則もお伝えします。

(1)DV1 抽選永住権申請の停止

 1990年の移民法により現在のDV1抽選永住権プログラムが始まりました。毎年、世界中から抽選で選ばれた5万5000人に永住権が発行されていました。しかし、昨年12月にブラウン大学構内で射殺事件があり、2名の学生が射殺され、他の9人が重傷を負いました。容疑者は2017年に抽選永住権によって永住権を取得し、アメリカに入国したポルトガル出身者でした。その事件を踏まえて、今後このように公共に害を及ぼす可能性のある外国人をアメリカに入国させることを防ぐために、一旦この抽選永住権申請を停止すると、国土安全保障省から発表がありました。

 2024年の10月と11月に抽選永住権を申請して、2025年に選ばれた人の分の永住権審査は続けられており、面接は今年の9月まで行われる予定です。ただし、昨年10月から11月にかけて申請した人たちの分の審査は行われないかもしれません。

(2) 永住権者の180日以上の米国外の滞在

 現行移民法では、1年以上アメリカ国外に居住した場合、永住権を放棄したと見做されます。しかしながら、現在181日以上アメリカ外に滞在した場合も、永住権を保持する意志がないと見做されるようです。何らかの事情でアメリカ外に181日以上滞在しアメリカに入国した場合、空港の入国審査官にアメリカでの住所やドライバーズライセンス、税申告書などを示して、審査官に永住権放棄の意志はないと納得してもらわなければなりません。また、一度そのような状況にあった場合、審査官はすべて記録しますので、次にアメリカを離れてたとえそれが3〜4か月であっても、同じように質問される状況になります。そして、次回アメリカを離れる場合は、必ずReentry Permit (再入国許可)を申請をするようにと、指示される可能性は高いです。 

(3) 永住権許可の数を50%まで減らす方針

 結婚や親族を通しての永住権申請の審査では、申請者が永住権取得を希望している外国人を扶養できるだけの給与や貯蓄があるかが、最も重要な点です。扶養証明書では、給与額または貯蓄を記載する箇所があり、 政府が規定したPoverty Guideline(貧困ガイドライン)の額以上の給与額があることを記載し、それを証明するために税申告書を提出する必要があります。これは、アメリカに入国する外国人が、今後アメリカのさまざまな公的な補助を受ける対象になることを防ぐためです。ちなみに2026年度の貧困ガイドラインでは、2人家族では2万1640ドル、3人家族では2万7320ドル、4人家族では3万3000ドル、5人家族では3万8680ドルの年間所得がある必要があります。その額を今後引き上げることを予定しているようです。

 学生ビザに関しても規則が変わる可能性もあります。また次回の記事でお知らせいたします。

(加藤恵子/ニューヨーク州弁護士)