ニューヨーク中心部にあるグランド・セントラル駅で11日午前9時15分ごろ、刃物を持った男が通行人3人を襲撃する事件が発生し、警察官に射殺された。負傷した3人はいずれも命に別条はないという。
警察によると、容疑者は44歳の男で、マチェット(山刀)を用い、65歳の男性、70歳の女性、84歳の男性の計3人を相次いで刺した。最初の襲撃は地下鉄7番線のホームで起き、84歳の男性は頭部や顔に深い切り傷を負った。その後、4・5・6番(レキシントンアベニュー)線のホームに移動し、さらに2人を襲撃。65歳の男性は頭蓋骨骨折を伴う重傷、女性も肩を切りつけられた。
ジェシカ・ティッシュ市警察本部長によれば、通報を受けて4・5・6番ホームに急行した警察官が男に対し、少なくとも20回にわたり武器を捨てるよう約10分にわたり説得を試みた。しかし男は従わず刃物を構えて接近したため、警察官が2発発砲した。容疑者はアンソニー・グリフィン(44)で、搬送されたベルビュー病院で死亡が確認された。
事件発生後、駅構内は一時封鎖され、地下鉄4・5・6番線系統は運行を見合わせるなど交通にも大きな影響が出た。警察は、被害者と容疑者に面識はなく、無差別的な犯行とみている。現場で「自分はルシファー(悪魔・堕天使)だ」と発言するなど、異常な言動があったとされる。重罪歴はないものの、過去に少なくとも3回の暴力・脅迫に関連する逮捕歴があった。知人の証言では精神的な問題を抱えていた可能性が指摘されているが、警察が持つ「情緒不安定者(EDP)」のデータに記録はないという。
グリフィン容疑者のパートナーの母親であるデボラ・ブラウンさんによれば、容疑者は「フォックス5」という名前で活動していた地元のラッパーで、精神的問題を抱えていたことは認めつつ「マチェットは護身用に携帯していただけ」と話した。そのうえで「警官はテーザー銃で撃って武器を落とせばよかった。殺す必要はなかった」と語った。
ニューヨーク市のゾーラン・マムダニ市長は、迅速に対応した警察を称賛し、さらなる被害を防いだと評価した。再発防止に向け、捜査継続とさらなる情報公開(ボディカメラ映像など)も行う準備があるとしている。キャシー・ホウクル州知事も警察の「迅速な対応」に対して感謝の意を表明した。近年、市内の凶悪犯罪は減少傾向にあるものの、「無差別の暴力は誰にでも起こり得る」と警告している。
(写真)犯人は7番線ホーム=写真上=で人を切りつけたあと階段で5、6番線ホームへ上がり2人に山刀=写真下(NYPD提供)=で切りかかった。
地下鉄駅ホームの危険
日本人も日常で利用する駅で刺傷事件

日常的に日本人もよく使うニューヨーク市内中心部にあるグランドセントラル駅。そこで起きた刺傷事件(1面に記事)は、在留邦人にも衝撃と不安を与えた。いきなり何者かから刃物で切り付けられた時に防御の方法はあるのか。
ニューヨーク日本総領事館では在留邦人に対して「地下鉄内ではさまざまな犯罪が報告されているので、日頃から防犯対策に留意し犯罪に巻き込まれないよう、不審な人物やトラブルが起きそうな雰囲気を感じたときには別の車両に素早く移動するなど、十分注意する」よう呼びかけている。また、ホームで電車を待っている間も、周囲の状況に注意し、駅職員から見える場所や背後からの攻撃を受けない壁際での待機、携帯電話等の操作に集中しないなど、防犯対策に努めるよう注意喚起している。確かにニューヨーク暮らしが長い人にとっては、治安が悪かった80年代には、ホームに立つ際は柱や壁を背中に線路から離れて立つのが常識だった。最近ではイヤホンを外す。携帯電話で必要な連絡をする場合は、常に背後の安全を意識する。切符を買う場合は周囲に注意する。乗車する際の注意は人の少ない車両を避ける。できる限り単独での利用は避けるなど。

