名画を守るMoMAのヒーロー

ニューヨークのとけない魔法 ⑨
岡田光世

 日本の人気特別展の比ではないものの、その日のニューヨーク近代美術館(MoMA=Museum of Modern Art)は、かなり混雑していた。この日は閉館時間がいつもより三時間遅く、午後四時から八時まで無料で入館できるからだ。

 一番人気のゴッホの「星月夜」はガラス板に覆われている。が、他のほとんどの絵画や彫刻などはむき出しで、その前にロープも張られていない。ピカソやルソー、ダリ、ミロ、モネ、セザンヌなどの珠玉の名画を、悪意があれば瞬時で傷つけることができるわけだから、警備員は目が離せない。

 カメラのフラッシュがたかれると、四十代ほどの小太りの白人の男性警備員が、すぐに反応して辺りを見回した。が、そのまま留まった。

 ここはフラッシュをたいてはいけないんでしょう、と私がその警備員に声をかける。

 そうです。でも、すぐに手を下ろしたから、見失いました。僕は怒鳴るわけにはいかないんです。わざわざ、ありがとう。楽しんで観ていってください。

 彼は手を挙げて、私にそう言葉をかけた。

 部屋を出るとき、再び彼の姿を見かけた。

 警備員はいつも同じ部屋を担当しているのだろうか。それとも、日によって違うのだろうか。人の波が引いた隙に、彼に聞いてみる。

 彼は突然、右手を挙げて敬礼し、それは機密事項でお答えするわけにはまいりません、と真剣な顔で言い、笑った。

 僕が答えていいかどうか、わからないなあ。そんな質問されたこと、今までないもの。

 別にいいの。ふと思っただけだから。同じ絵ばかり見ていたら、飽きないのかなって。

 I never get bored. I’m always on my toes.

 僕が退屈するなんて、あり得ませんよ。いつも気を抜いていませんから。

 on my toes というのは、かかとを浮かせてつま先立ちをし、いつでも素早く動けるような姿勢でいる、ということだ。

 それから、ボクシングでもするように、両方の拳を前に突き出して、こう付け加えた。

 I’m eager to protect the artwork.

 芸術作品を守ることに、燃えているんですから。

 無表情で観客と作品を凝視している警備員が多いなかで、たしかに彼の姿はひときわ目を引いた。使命を果たそうと、まさにつま先立ちでスタンバイし、気になる人を見かけると、すぐに足早に近づいていく。フットワークが驚くほど軽い。

 そして、観客に対する物腰が柔らかい。リュックを背負った人には、前に掛けるように。ペットボトルの水を手にしている人には、しまうように。作品に近寄り過ぎている人には、離れるように。居丈高な物言いをせず、丁寧に説明する。

 指示に従った相手には、

I appreciate it.(感謝します)、Thank you.(ありがとうございます)と感謝の意を伝える。英語が通じないフランス人らしき相手には、フランス語で礼を言っている。

 彼の一挙手一投足に私は釘づけになり、美術館が誇る数々の名品は、しばし彼の背景と化してしまった。

 このエッセイは、シリーズ第5弾『ニューヨークの魔法のじかん』に収録されています。

https://books.bunshun.jp/list/search-g?q=岡田光世

飯塚国雄さんの作品を常設展示

本紙オンラインギャラリーで

 7月に81歳で亡くなったニューヨーク日本人美術家協会(JAANY)会長で創設者でもあるアーティストの飯塚国雄さんの作品が、オンラインの「週刊NY生活ギャラリー」(https://nyseikatsu.com/gallery)に今月から展示されている。初期の作品から近作まで10点が展示されている。無料で世界中から見ることができ、作品を購入することもできる。

 飯塚さんは、4月初旬に新型コロナウイルスに感染して入院、約1か月間の治療を経て退院、リハビリセンターに移ったが、その後後遺症や心臓の病気で再入院、亡くなる数日前から心臓疾患が悪化していた。飯塚さんは1939年東京生まれ。逗子開成高校、お茶の水美術学院卒業後61年渡米。その後永住権を取得し、ニューヨークの「アート・スチューデント・リーグ」彫刻スクールで教鞭を執った。73年ニューヨーク日本人美術家協会を創立し、初代会長となる。週刊NY生活ギャラリーでは展示作家を随時募集している。問い合わせはEメールで [email protected] 担当・三浦まで。

(作品)Purple Lady with Cat, circa 2000s, Oil and acrylic on canvas, 28 x 22 in.

試験日程と受験作戦

コロナ時代の帰国受験 第2回 田畑康 

 受験生とご家族にとって今年のコロナ禍は、コロナに罹ってしまわないかという不安が一番大きいのはもちろんですが、罹患しなくても大きな問題が立ちはだかっています。そう、帰国した後の「2週間の自主隔離期間」です。  

 帰国生入試の一般入試との大きな違いは、海外生・帰国生のためにアレンジされた入試内容のほかに、前倒しされた試験日程が挙げられます。首都圏の一般入試に関しては、東京都・神奈川県の私立中学は2月1日に、私立高校は2月10日に解禁されます。この日程は各都県の私学協会が定めたルールであり、名だたる人気校の受験日がこの解禁日からの数日間に集中するのはこういうわけです。ですので、帰国生入試に関係のない一般の受験生にとって「事前受験」ができるのは1月に解禁される千葉県・埼玉県の中学と高校となります。

 しかし、帰国生入試はその限りではありません。帰国生を受け入れたい各私立中学・高校は、他校と競合しない前倒しの日程を自由に設定することができます。しかもその学校数は増える一方で、結果的に日程の前倒しがどんどん進み、とうとうここ数年間で「帰国生受験は10月開始」が合言葉になってしまいました。海外生・帰国生にとっては受験できるチャンスが増えるわけで、とてもありがたい状況なのです。私が帰国生の指導を始めた15年前、12月に帰国生入試を実施する学校があることを知って驚いた時とは隔世の感があります。

 さて、「自主隔離期間」です。例年ですと、北米在住の受験生が帰国生入試を受験するために12月中に一時帰国し、受験して帰米し、本命の1月下旬~2月上旬の受験のために再び一時帰国をする、という「作戦」を取る受験生がいらっしゃいます。時差ボケの問題さえクリアすれば、日本滞在費の節約や、小さなきょうだいの面倒を見る手間も軽減できるわけです。

 しかし今年の受験生はそれができなくなりました。オンライン入試でない限り、試験会場に行く日には「自主隔離期間」を終えていなければならないからです。年内の受験校を志望校から外す、または受験機会を逃したくないのでお父様をアメリカに残して母子で本帰国をする、という「作戦」が立てられているのが今年の特徴と言えます。「学力さえつけておけば受験は大丈夫」という考えは間違いありませんが、今年に限っては、試験日程に「自主隔離期間」を考慮に入れた「作戦」も必要になっているのです。

 次回は、受験生を受け入れる学校側の試行錯誤について情報提供をさせていただきます。

田畑康(たばたやすし)=早稲田アカデミーニューヨーク校校長。海外生・帰国生指導歴15年。自らも帰国生(オーストラリア、マレーシア)であった経験を生かし、「合格のその先」を見据えた指導を心掛けている

絶景のアウトドアダイニング「Y’s Garden 」

Mt. Fujiレストランプロデュース

秋の行楽帰り、紅葉のベストシーズン

野外結婚式会場で月夜の食事

 昨年、創業50周年を迎えたMt.Fuji レストラン本店(オーナー 多田貴将・ナンシー藤田夫妻) にて、昨年5月にグランドオープンした「Y’s Lounge 」が「Y’s Garden 」として、アウトドアダイニングをオープンさせている。

 「このスペースは、普段は結婚式のセレモニーで使用している場所ですが、コロナの影響ですべての結婚式が延期になり、インサイドダイニングも50%のキャパシティーのみが使用可能と言う制限付きの為、従業員の雇用をどの様に確保するかと言う思いから、このアウトドアダイニング『Y’s Garden 』を企画しました。全ての設営作業を従業員との共同作業で行いましたので、手作り感満載ですが心のこもったプロジェクトになっていると思います。またコロナ禍で、ストレスを感じているお客様が、弊社の素晴らしい景色と食事や飲み物を楽しんで頂き、少しでも気晴らしになれば、我々もとても嬉しく思います」とオーナーの多田貴将(よしまさ)さんは語る。

アメリカでは珍しいメニューでお客様をおもてなし

 「Y’s Garden 」では、篠原芳男料理長のもと、柿の種煎餅をアスパラガスにまぶして天ぷらにした、クリスピーおかきアスパラガス、自家製源平味噌をペーストしたラムチョップ、柚子風味の稲庭うどんなど、アメリカでは珍しいメニューでお客様をもてなしている。

氷彫刻のアイスマグカップ有名人シェフも腕披露

 氷彫刻家の岡本慎太郎さん(オカモトスタジオ)制作の全て氷でできたアイスビアマグカップでお客様へのスペシャルエクスペリエンスを演出したり、週末にはオーナーの友人シェフであり、マンハッタンで活躍する阿部弘樹シェフ(Abe’s キッチン)や中村栄利シェフ(ラーメン中村)のポップアップイベントを開催するなど、Mt.Fujiレストランならではの企画も目白押しだ。

 「お客様と従業員、そしてイベントに協力してくれるシェフ、みんながハッピーに前向きになれることを、こういった状況であるからこそ、一つ一つやっていければと思います。50%キャパシティ制限付きのレストラン再開後、この2か月で2万人程のお客様にご来店頂き、お客様からのサポートと従業員のハードワークには、心から感謝しております」と多田さんは語る。

 現在はディナータイムのみの営業だが、これからの紅葉シーズンに合わせて「Y’s Garden 」では、ランチタイムからの営業で、お客様に紅葉の絶景を楽しみながらの食事を企画している。もちろんインサイドダイニングでは、エンターテイナーなヒバチシェフによる、大人から子供までが楽しめる食事も提供している。

詳細はレストラン レセプションデスクまで。電話845・357・4270。

 そして、コロナ対策では館内すべてのエアコン・ヒーターシステムに除菌作用のあるUVシステムを設置し、毎日お客様が帰られた後には、ダイニングエリア、キッチン、バスルームをフォガーマシンを使用して徹底的に消毒作業を行うという、お客様と従業員への安全対策にも抜かりが無い。

 このコロナ禍の中でも、これまでに増して、お客様の笑顔と「晴れの日」をMt.Fujiレストランは引き続き演出していく。


Mt. Fuji Japanese Steakhouse

296 Old Route 17, Hillburn, NY 10931
TEL: 845-357-4270
www.mtfujirestaurants.com

その19:Zoomで魅力を解説・リモート妄想ツアー

魅惑のアメリカ旧国道「ルート66」 をフォーカス

 ルート66ファンの皆さん、こんにちは!先月中旬より日本全国すっかり過ごしやすい天気に移り変わり、ここ東京でも最高気温が摂氏23度~26度あたりに落ち着くようになりました。日本のメディアでも連日報道されていますGo To トラベルに東京都が含まれるようになり、またGo To イートという飲食店で利用できるキャンペーンも徐々に浸透してきました。全国各地で制度の不具合や格差等、問題点がないわけではありませんが、日本政府は経済再生に真剣に舵取りを始めています。ルート66関連では今年は予定されていた各州各地域でのイベントは軒並みキャンセルになってしまいましたが、10月第1週にはオクラホマ州アーケディアという街で「ネオン・フェスティバル」が行われました。このイベントは一般に開放している街の公式イベントではなく、私有地を利用してのいわば仲間内のイベントのため、大きくニュースにはなりませんが、私達ルート66の仲間たちが毎回100人以上集まる「一大家族のリユニオン」的な位置づけで、私も毎回参加しますが、今年はコロナ禍の影響で集まれたのはアメリカ国内にいる友人知人ばかりでした。とはいえ、SNS上で皆の元気な笑顔や姿が確認できたことは大きな喜びです。

 そんなさまざまな壁に制限され、旅行も中々ままならない時期ですが、実はある取り組みを始めました。今月の「魅惑の旧街道を行くシリーズ」シーズン③ 第18話は、筆者がこの夏から「インストラクター」(響きがカッコいい!笑)を始めましたZoom配信による「行ってみた~い!憧れのアメリカ・ルート66横断リモート妄想ツアー」、の話しをしたいと思います。

 今年の夏、アメリカ国内に幾つかの支社を持つ日系大手旅行代理店より一通のメールを頂きました。それによると「今のコロナ禍の下お客様はどこへも行けずお困りになっていることもあり、私達旅行業界は瀕死の状況。新たなコンテンツを拡充することで、何とか業界を元気にしたいという思いでZoomによるオンライン体験ツアーを提供している」とのことでした。さらにはそのコンテンツの一つとして「ルート66」にテーマを絞った番組の展開を考えているので出演して欲しい、と。筆者はもともとそれほど「人前に出たい!」という性格ではないのですが、とても興味深いこのお誘いに二つ返事で詳細のミーティングを代理店の担当者にお願いしました。

 結果から言えば、是非筆者の方からお願いしたいぐらい面白い企画になりそうな内容であり、担当者曰く「コロナ禍において『現地からの情報を体感してもらう』ことでお客様へ元気を与えるのが目先の目標であり、OO社の旅行という枠組みを超えて、今後の筆者の活動内容にプラスになり、且つルート66沿道の皆さんに何か還元できるような企画を目指しています」とのことでした。その目先の利益や穴埋めという考え方ではなく、将来どころかルート66の関係者にまで配慮してくださる姿勢がとても嬉しかったです。

 担当者と話し合った結果、先ずは、ルート66を知らない人、または知っていても(興味はあるが)行ったことがない人、というマーケットが一番大きいのではないだろうかとの結論に達し、ルート66を毎月1回、全7回に分けて筆者の視点から見た「おススメポイント」を交えながら、州ごとに紹介して行くことになりました。ん?なぜ7回?ルート66は全部で8州にストレッチしているのではないの?と思った方、優秀です。ありがとうございます(笑)。ご存知の通りカンザス州とテキサス州は他の州と比較して州道距離が短いため、1回で2州一緒に紹介することにしました。本当はこの配信が始まる前に伝え(宣伝?)したかったのですが、寄稿のタイミングが合わず失礼しました。8月に第1回イリノイ州編、第2回は先日ミズーリ州編を配信しました。過去2回では、筆者の伝えたいことが多すぎることと、未だタイムマネージメントが上手く行っていなくて配信時間枠を過ぎる「延長戦」になってしまい、予定を組んでいらっしゃる視聴者にはご迷惑をおかけしてしまっています。が、回を重ねるに従って問題点を少しずつでも解決して行き、楽しい時間にすることを心がけていますので、興味のある人は、(ごめんなさい!有料番組なのですが)是非お時間を取ってご参加して頂けますと幸いです。

 余談ですが、今回のこの企画、結構自分自身としては気合の入った資料をパワーポイントで準備しています。決して「その道のプロ」ではないのですが、少しでも参加して頂いているお客様の「妄想」を手助けすべく、イメージが広がればいいなと思っているのですが、やってみるとまあ難しいですよね(笑)1回1州、基本1時間という持ち時間なので、言ってしまえばお伝えしたいことの10%もカバーできないのが現状なのですが、それでも選りすぐりのネタを現地や現状を知っている立場からお話しています。ガイド本を手に取って頂ければわかるような話しはほとんどしません。「真のアメリカ、ルート66」を皆さんと一緒に探していきたいと思います。興味ある人は「ふたたび美しい世界へ ルート66」で検索して下さい。次回はオクラホマ州編、アメリカ東部時間11月7日(土)夜8時出発です。それではまた来月お目にかかります!

(後藤敏之/ルート66協会ジャパン・代表)

クイックUSAアメリカの人事部(21)

従業員の採用をリモートで行うときの注意点(その2)

 前回は、リモートでの面接でテクノロジー上の問題があったときのお話をさせていただきましたが、必ずしもそのような問題がいつも起こるというわけでは決してありませんので、そのような状況を設定した質問などを事前に作っておいて面接時に投げかけてみられるのがよいのではないでしょうか。それ以外としては、いまさら言うまでもないことですが、対面であってもリモートであっても面接で尋ねる質問内容に差別的な要素が入っていないかどうかに対して十分に注意を喚起することが必要となります。    

 特に日系企業様で気をつけたいところは、性別、年齢、国籍、人種、言語(母国語)、出身国、結婚、家族、障害、健康などについてです。恐らくこれらに関する質問は日本にいて日本の会社で採用面接をする際に普通にお尋ねになっている内容ではないかと察せられるからです。一例ですが、IT関連のポジションで新規採用をかける際、できるだけ若い人を採用したいという意識(あるいは無意識でも)が働いて、募集段階でIT業務経験最低2年以上との条件を記載した場合、仮に経験が20年以上ある人が応募してきた場合であっても、その人をはなから ”Over-Qualified” だとして不採用とすると、あとから年齢差別があったとしてクレームされる可能性があります。    

 最後にリモートでの面接を録画したり録音したりしてもよいかということが最近ご質問として尋ねられることがあります。社内で他の管理職の人にも面接の内容をシェアしたいということで、録画を行うことはできるのですが、その許可を応募者の人にも事前に得ておくことが望まれるところです。また応募者が面接を録音することを禁止することは会社側の守秘義務上の理由から正当化できますので、そのことについては最初に応募者に書いてもらうJob Application Form の中にその録音禁止事項を記載しておいて、本人から承諾した旨のサインと日付とをとっておいてください。また実際に面接を始める前にも面接でのリマインダーとして録音は禁止されていることをお伝えになってください。    

 コロナ禍によってもたらされた雇用における新常態のひとつに間違いなくリモートワークがあり、これはトレンドとして今後ともますます浸透していくことが予想されますので、皆様の会社でも今からリモートでの面接に対する様々な備えや情報の収集を怠らぬようにしていただけましたら幸甚です。  

(酒井 謙吉 パシフィックドリームズ社長)

www.919usa.com

編集後記 10月10日号

ニューヨーク在住の日本人ジャズピアニスト、海野雅威 (うんの・ただたか)さんが、9月27日午後7時半ごろ、ハーレム135丁目地下鉄駅(B・C線)構内で突然8人の男女に襲われ、鎖骨骨折、頭を含む全身にアザを受ける怪我を負いました。海野さんが地下鉄を降り、誰もいない改札を抜けた後、男4人、女4人の8人が出口をふさぐ様な形で通行を妨害したため、通り抜けようとしたところ、その中の一人の女性が「ぶつかった」と言いがかりをつけ、同グループの複数人が殴りかかったそうです。他に地下鉄を利用している人はいない状況で、逃げようとしたところ、同グループに後を追いかけられ更に殴られて負傷したものです。暴行を受けた後、海野さんは、救急車で運ばれ病院で数日を過ごし退院しましたが、手術が必要である可能性が残っているという。友人らがクラウドファンディングを立ち上げましたたが、目標額に達したため現在は終了しています。海野さんは「今回は、たまたま地下鉄駅でしたが、ある一つの駅だけが危なくてあとは安全かといったらそういうことではない社会情勢だと思いますので、とにかくどこを歩くにも人気(ひとけ)のない場所を避けて欲しいです」と本紙の取材に答えてくれました(本紙今週号4面で記事掲載)。ニューヨーク市警察(NYPD)によると、今年9月の拳銃発砲事件逮捕者数は607人で、前年同期の307人と比較して98%増加。9月中の逮捕者数としては1994年以降最多の人数とのこと。ニューヨーク日本総領事館でも、在留法人に対して7日、事件現場付近には近づかないようにする、夜間の外出や人通りの少ない道は避ける、不審な人物には近づかないなど安全を確保するようメールで注意を促しています。私も実際に治安が悪くなっているのを最近感じます。先日も風景写真を公園で撮影していたら後ろから「さっきアンタ、アタシの写真撮ったわよねっ。お金ちょうだい!」と浮浪者風の女性からいきなりすごい剣幕で詰め寄られました。今まであまりそういうことはなかったのですけどね。あと今まで深夜帰宅時に会社近くの銀行ATMでやっていた入金なんかも最近は夕方までには終わるようにしています。街を歩く時はしばらく警戒が必要ですね。(三浦良一 週刊NY生活発行人)

【今週の紙面の主なニュース】(2020年10月11日号)

(1)抽選で米国永住権
(2)常盤新平さんからの手紙
(3)エミー賞をダブル受賞
(4)日本人ピアニスト襲われる
(5)冷泉彰彦あめりか時評
(6)トランプ大統領の感染
(7)義理妹を殺された
(8)感染爆発地区を重点規制
(9)OFUKU5 チェルシー映画祭
(10)超ハイカロリードーナツ

感染爆発地域を重点規制

8日から市内特定感染爆発地域で施行

 クオモNY州知事は6日の記者会見で州内で発生中のクラスターへの処置として以下の新しい処置を発表した。これは「Cluster Action Initiative」と名称されている。詳細は以下の通り。

■レッドゾーン(クラスターから1マイル以内)

礼拝所:定員の25%以内のキャパシティ。最大10人まで

集会:禁止

ビジネス:エッセンシャルビジネス以外のビジネスは閉鎖

ダイニング:テイクアウトのみ

学校:閉鎖。リモートクラスのみ

■オレンジゾーン(クラスターから1〜1.5マイル内)

礼拝所:定員の33%以内のキャパシティ。最大25人まで

集会:室内、屋内で最大10人まで

ビジネス:エッセンシャルビジネス以外で危険を伴うビジネスは閉鎖(ジムやパーソナルケアなど)

ダイニング:アウトドア・ダイニングのみ。一つのテーブルに最大4人まで

学校:閉鎖。リモートクラスのみ

■イエローゾーン(クラスターから1.5〜2マイル内)

礼拝所:定員の50%以内のキャパシティ。

集会:室内、屋内で最大25人まで

ビジネス:通常営業

ダイニング:インドア&アウトドア・ダイニング。一つのテーブルに最大4人まで

学校:生徒、教師、職員に週ごとのウイルス検査を実施、DOHは毎週金曜までに感染率の集計を行う。最初のウイルス検査は来週の金曜(16日)までに行う

*集会のルールを破ったものには最大1万5000ドルの罰金を課す。

 7日のデブラシオ市長の会見でNY市内は8日より実施されることが発表された。期間は最低2週間。その後は状況を見て判断されるとのこと。NY市教育局では3月以来35万台のiPadを含む95万台のリモートラーニングに使用するデバイスが用意されている。さらに11月中には10万台のiPadが追加で使用可能になる。レッド&オレンジゾーンはリモートのみになるので今現在必要なデバイス(機器)が手元にない、もしくは故障で交換が必要などの場合は、schools.nyc.gov/devicesで入手方法が確認できる。

コロナ規制強化地域をZIPコード表示

 デブラシオNY市長は7日午前、記者会見し、ブルックリン区とクイーンズ区(フラッシング地域とファーロッカウエー地域)の感染爆発(クラスター)地区レッドゾーンとオレンジゾーン(詳細7面に)の規制強化地域の郵便番号(ジップコード)別エリアを発表した。

■ブルックリン

ボローパーク 11219
ケンジントン 11218
ベンソンハースト 11204
ミッドウッド 11230
フラットランド 11210
グレイブセンド 11223
ゲリセンビーチ 11229
ブライトンビーチ 11224
コニーアイランド 11235
サンセットパーク 11220
バーゲンビーチ 11234

■クイーンズ(フラッシング地域)

キューガーデンズ 11367 & 11415
ブレアウッド/ジャマイカ 11435
ジャクソンハイツ 11371
エルムハースト 11373
コロナ    11368
レゴパーク  11374 & 11375
フォレストヒルズ  11375

■クイーンズ(ファーロッカウエー地域)

エッジメア・ファーロッカウエー  11692
アーバーン 11692

抽選で米国永住権

応募受け付けをスタート

 米国務省は9月30日、永住権抽選プログラムDV2022を発表した。移民数が年5万人以下の少ない国からの移民を増やす目的で毎年行われているもの。正式名称はDiversity Immigrant Visa Program(移民多様化ビザプログラム)で、今回は抽選で5万5000人に永住権(グリーンカード)を与える。2019年は約1470万人が応募し、約10万人が当選した。辞退する人や不適格者、写真や提出書類の不備も多いため倍近い当選者数にしていると見られる。日本も対象国に入っており、2018年は日本人2万8595人が応募し、263人が当選した。

 応募期間は、10月7日(水)正午(東部夏時間)から11月10日(火)の正午まで(東部標準時間)。応募は一つのみで、2つ以上応募した場合はすべて無効となる。応募資格は本人または配偶者が対象国で生まれた人。対象国生まれでなくても両親のいずれかが対象国生まれであれば応募できる。学歴は高校卒業か、中学卒業後、過去5年以内に国務省が定めた職業の経験が2年以上ある人。また犯罪歴がないことなどが条件となる。

 応募方法はオンラインhttps://dvprogram.state.gov/にある応募サイトからのみ。写真が必要で、カラーで顔部分が22ミリから35ミリの間、もしくは写真全体の高さに対し50%から69%の間に収まるようにしなければならないなど細かい規定がある。またファイル形式はJPEGで600×600ピクセル、240キロバイト以下などの決まりがある。毎年、写真が不適切で失格となるケースが相当数あると言われているので注意が必要だ。

 世界の大多数の国が移民数年間5万人以下であり、ほとんどが永住権抽選プログラム対象国となっている。対象でないのはバングラデッシュ、ブラジル、カナダ、中国(香港含む)、コロンビア、ドミニカ共和国、エルサルバドル、グアテマラ、ハイチ、ホンジュラス、インド、ジャマイカ、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、韓国、英国(北アイルランドを除く)とその属領地域およびベトナム。

常盤新平さんからの手紙

 オフィスの引越し荷物を片付けていたら、机の引き出しの中から常盤新平さんからのエアメールが出てきた。綺麗にしまってあった。日付は2007年7月8日になっている。本紙、週刊NY生活で、連載「ニューヨーカー三昧、I LOVE NEW YORKER」というコラムをお願いして、快諾いただいた時のお手紙だ。連載はその年の9月8日号から2010年11月13日号まで、3年余り、30篇ほどのコラムを連載していただいた。毎月ファックスで手書きの原稿が送られてきた。彼の大好きな雑誌『ニューヨーカー』への思い入れから、老舗のバーや書店など、原稿に記載されている実在の場所へ出かけて行って原稿に合った写真を撮るのが楽しみだった。ニューヨークはコロナで一変してしまったが、またいつか常盤さんが愛して止まなかったマンハッタンの景色が戻ってくるのに違いない。新オフィスのテラスは、そんな古き良き時代のマンハッタンのビルの谷間にある。天国の常盤さんが見たならなんと言うだろうか。

(写真)常盤さんが愛した古き良き時代のマンハッタン(3日午前、本社新オフィスのテラスから、写真・三浦良一)

ニュース映像でエミー賞ダブル受賞

NBCニュース映像編集者

池神 亮さん(49)

 今年度のエミー賞ニュースドキュメンタリー部門のベストストーリー賞を受賞した、イスラム国に関連したドキュメンタリー作品「テイクン・バイ・アイシス(Taken by ISIS)」に3人の編集担当の一人として編集に携わった。この作品のほか別枠のニュースシリーズでもエミー賞を獲得し、ダブル受賞となった。

今年は、エミー賞のほかに、全米の編集賞として権威あるアメリカン・シネマ・エディターズ(A・C・E)のエディー賞を、アマゾン川周辺の火災を題材とした作品「Amazon on fire」で受賞。A.C.E.会員の招待を受けた。新型コロナウイルス感染拡大の中にもかかわらず、海外を中心にニュース映像を手がけた22年の中でも当たり年となった。

 池神さんは、東京都小平市出身。英国でメディア論を学び、ブルームバーグ社の東京、ニューヨークでニュースの取材編集に携わった。さらに、2016年にHBOで初めての報道番組を制作する「バイス・メディア(Vice Media)」に転職。今年から米3大ネットワークのNBCニュースの編集者として勤務している。社会問題を深く掘り下げた題材を体当たりで取材するジャーナリスト、技術と知識を兼ね備えた編集者たちと、日々議論を重ねながら社会に問いかける作品を作り上げてきた。 

 日本人が一人もいない環境、言葉の壁を感じる時もあるが、それが編集面で独特のテンポを生み出していると評価を受けている。

「アメリカのニュース報道の現場で学んできたことを日本から海外を目指す若い人たちにいつか還元したいですね。まだ、5年、10年はフロントランナーとして走り続けるつもりですけど」。電話口の向こうで元気に応えてくれた。

(三浦良一記者、写真は本人提供)