三島由紀夫論 平野啓一郎氏が討論

JSでスーザン・J・ネイピア氏と

 ジャパン・ソサエティー(JS)で6日夕、「三島由紀夫・生誕100周年シリーズ」の関連イベントの第2弾として「三島の残したもの:平野啓一郎とスーザン・J・ネイピアによる対談」が開催された。芥川賞作家の平野氏は、23年に『三島由紀夫論』(新潮社)を出版。23年を費やした672ページの大作は文芸批評として異例のヒットとなった。

(写真上)左:1969年の三島由紀夫と東大全共闘の討論会について語るネイピア教授。右:今年の夏からニューヨーカーになった平野氏

対談するネイピア教授(左)と平野啓一郎氏(右)

 イベント冒頭では、タフツ大学教授のネイピア氏が旭日中綬章を授与されることが発表され、会場から祝福の拍手が起こった。日本文学研究に40年以上携わり、アニメ批評を通じて日米の文化交流に貢献した。ネイピア氏は「三島、記憶と嘆き」と題して講演し、三島作品が色褪せないのは現代社会との共鳴があるためと述べた。平野氏は著書の構成や、三島が高度経済成長期に抱いた違和感やニヒリズムが、バブル後の停滞感と共鳴していると自分は感じたと述べた。三島のファン以外にも現代の日本史を学ぶアメリカ人の大学生もきていた。熱心な質疑応答の後、約1時間半の対談を締めくくった。  (菊楽恵、写真も)

週刊やさしいにほんご生活 日本の自動販売機、ちりも積もれば山となる

この連載は、日本語を勉強している人を読者対象としたコーナーです。日本文化やマナー、タイムリーな日本に関する話題などを簡単な日本語で毎月第3週号に掲載します。アメリカ人の友人などにご案内ください。また、漢字をまだ習っていないお子様にとっても社会を知り、漢字に接するよい機会になります。


日本の自動販売機


 日本を訪れる人が驚くもののひとつに自動販売機(自販機)があります。街角や駅、温泉街、さらには山の上やお寺や神社の境内にもあり、その数は全国で数百万台と言われています。日本の自販機は外置きが中心ですが夜でも安心して使え、とてもきれいに管理されています。治安の良さも日本の文化です。また飲み物だけでなく、傘、お米、おみくじなどを売るものもあり、種類の多さに驚く人も多いです。さらに、日本の自販機には「おもてなしの心」があります。冷たい飲み物と温かい飲み物が並び、季節ごとに商品が入れ替わる工夫がされています。自販機は単なる販売機ではなく、日本人の心配りを感じる文化のひとつです。

(長久保美奈、マナー講師)

わくわくことわざ(15)
文とイラスト 平田恵子

ちりも積もれば山となる

 ほんのわずかなものでも、積もり積もれば山のように大きくなるの例え。転じて、小さな努力の積み重ねが立派な成果につながるという教えになっています。「ちり」は、風に舞い上がるような細かな土埃のことですが、ここではわずかなものの意味。ゴミやつまらないものではありません。「日本語学習は、ちりも積もれば山となるだよ。一日に漢字を三つ覚えて、その漢字を使って日記を書いてみよう。二年後には手紙もスラスラ、小説も読めるようになるはず!」などと使います


《言葉の意味(ことばのいみ)》

・自動販売機 vending machine

・境内 temple/shrine  grounds

・外置き located outdoors

・安心して safely 

・種類 variety 

・おもてなし hospitality

・季節ごとに depending on the season

・心配り thoughtfulness / consideration

・積もる pile up

・転じる meaning change ,move, turn 

・「ちりも積もれば山となる」と同じ意味の英語  Many a little makes a mickle.

「日本の防衛力を抜本的に強化」 米空母で高市首相が決意表明

 10月28日午後3時45分頃から約45分間、高市早苗総理大臣は訪日中のドナルド・J・トランプ米国大統領と共に、横須賀に入港している米空母「ジョージ・ワシントン」を訪問した。高市総理大臣とトランプ大統領は、自衛隊員及び在日米軍人に対して激励の挨拶を行い、高市総理大臣はインド太平洋を自由で開かれたものとし、地域の平和と繁栄の礎とする決意を述べ、トランプ大統領と共に世界で最も偉大な同盟となった日米同盟を更なる高みに引き上げていく覚悟である旨を述べた。首相挨拶は次の通り(外務省発表)。

挨拶をする両首脳(写真提供:内閣広報室)

 本日、米国の海軍創設250周年という記念すべき節目に、トランプ大統領とともに、地域の自由と平和を守る象徴である空母「ジョージ・ワシントン」で、挨拶するチャンスをいただいたことを心から光栄に思います。まず何よりも、日夜、我が国と地域の平和と安全のために尽力してくださっている自衛隊、そして在日米軍の軍人の皆様に、心から敬意と感謝を申し上げます。

 6年前、この横須賀の地で、トランプ大統領と亡くなった安倍晋三総理が、日米が共に手を取り合って、この地域の平和と安全を確保していくという決意を示しました。今ここに、再び日米の最高指揮官が並び立ったこの機会に、私は、その決意を引き継ぎ、インド太平洋を自由で開かれたものとし、そして、地域の平和と繁栄の礎とする決意を新たにしました。いま、我々はかつてないほど厳しい安全保障環境に直面していま

す。平和は言葉だけではなく、確固たる決意と行動によってこそ守られます。

 あちらに見える「もがみ」と「まや」を含む自衛艦と、「ジョージ・ワシントン」は、数多くの訓練を重ねてきました。また、横須賀にいる多くの補給、整備に携わっている日米関係者の方々、そして地域社会との絆が、米海軍の活動を長年にわたって支えてきました。こうした幾層にもわたる日米の協力が、日米の抑止力・対処力を確かなものとしております。

 私は決意しています。今後、日本の防衛力を抜本的に強化して、この地域の平和と安定により一層積極的に貢献していきます。そのことにより、トランプ大統領と共に、世界で最も偉大な同盟になった日米同盟を更なる高みに引き上げていく覚悟です。日米は共に帆を掲げ、自由で開かれた海を進みます。この横須賀から紡がれる航路は、日米の絆を輝く未来へと導くことを確信しています。(原文まま)

JAMSNETが第12回世界大会NYで開催

片平大使公邸でレセプション

 邦人医療支援ネットワーク(JAMSNET、本間俊一会長)は7日夕、ニューヨーク総領事公邸で、第12回世界大会のレセプションを開催した。米国内だけでなくドイツ、カナダからも合わせ26団体の関係者40人が参加した。新しく着任したNY総領事の片平聡大使が祝辞を述べた。

 同団体は、2006年に当時の米国日本人医師会(JMSA)会長でコロンビア大学の本間俊一教授と在ニューヨーク総領事館の仲本光一医務官が呼びかけ、在ニューヨーク日本国総領事館が側面支援することでニューヨークで設立された。

 ニューヨークには、医療や福祉、教育、心理の分野で邦人コミュニティーを支援する団体が多数存在していたが、連携した活動はしていなかったことから、現在も、米国日本人医師会(加納麻紀会長)を中心に日米ソーシャルサービス(JASSI)など26団体が参加している。

アワードを受けたオコーナー・イアンさん(中央)

 当日の式典では、今年度のコウタロウ・バーンズ・アワードがニューヨークのオコーナー・イアンさんとドイツ・デュッセルドルフ在住のホーネカムプ山本有さんに贈られた。

 また、翌8日午後には一般参加者向けの介護や医療、安全についてのプログラムがニューヨーク日系人会で開催された。内容は「介護支援ロボットの現状と近未来像」(浅田春比古マサチューセッツ工科大教授)、「サムライ介護」(理学療法士・介護福祉士の岡田慎一郎氏)、「安全な生活のために」(在ニューヨーク日本国総領事館・松永直樹領事部長)、「世界からの医療事情」柴田のりこさん(カナダ)、柏原誠さん(ドイツ)、柳沢ロバートさん(米国)、「これからのセルフケアー声を共鳴させる」(音楽療法士、ソーシャルワーカーの灘田篤子さん)。

 本年度のコウタロウ・バーンズ・アワード受賞者の横顔は次の通り。▽オコーナー・イアンさん(米国ニューヨーク)=カリフォルニアで育ち、補習授業校のあさひ学園に通った。大学はニュージャージー州のラトガース大学に進み、日本人学生会を立ち上げた。卒業後は「NYでボランティア」に所属、他のコミュニティにも目を向けスープキッチンなどで奉仕できるプログラムを企画中。現在は、マウント・サイナイ病院で研究員として勤務。医師になることを目指している。

▽ホーネカムプ山本有さん(ドイツ、デュッセルドルフ)=ドイツの認定臨床心理士の資格を持ち、長年にわたってドイツ、特にデュッセルドルフ近郊在住の日本人の心のケアに従事。ドイツの公的資格を持ち日本語で対応し、連携できる限られた専門家としてドイツでは貴重な存在。デュッセルドルフ日本人学校のスクールカウンセラーとしても子どもや保護者や学校を支え、またJAMSNETドイツでは「こころの相談メール窓口」も担当。JAMSNETドイツ副代表。

DEEPなQUEENS  ディトマース・スタインウェイ

世界的なピアノ産業で成長

 クイーンズ区ディトマース・スタインウェイ地区北部は、広大なコン・エディソン(電力会社)施設などがある産業エリアですが、19世紀頃の景色は全く違い、ピアノで有名なスタインウェイ家のビジネス関連一色の地区でした。

 ドイツ系移民の創業者ヘンリー・スタインウェイが始めた「スタインウェイ・ピアノ」工場があり、息子のウィリアム経営時に一層発展します。多くの技術革新や特許取得をし、世界的な高級ピアノブランドに成長。そして、ピアノ工場のみならず、近隣に工場労働者向けの住宅、教会、図書館、学校(キンダー)、公園、インフラを整備し、理想的な労働環境を目指した産業コミュニティとして、約400エーカーの「スタインウェイ・ビレッジ」も作っています。

 さらに、フェリーでマンハッタンから行ける海辺の家族向けリゾート地として「ノース・ビーチ遊園地」を1896年に開業。ここはクイーンズのコニーアイランドと言われたリゾート地でしたが、残念ながら1920年代後半頃には次第に衰退。今その跡地はラガーディア空港のターミナルA周辺です。

 加えて、マンハッタン区との交通手段の必要性から、イーストリバーの下に「スタインウェイ・トンネル」を作り、1915年に地下鉄が開業。現在は地下鉄7号線グランド・セントラル駅からハンター・ポイント・アベニュー駅間として使用されています。

 スタインウェイ家は、小高い場所に建つ「スタインウェイ・マンション」に1870年から1920年代まで居住。米国国家歴史登録財でNY市ランドマークですが、現在は私有地であり非公開。かつては広大な敷地内にあったこの邸宅は、産業地区の中でひっそりと佇んでいます。

 創業家によるピアノ会社経営は1972年に終息していますが、ピアノ事業、産業コミュニティ、遊園地にトンネルとさまざまな事業でビジネス手腕を発揮し、スタインウェイ家は地域リーダーとしてアストリアの発展に影響を与えたそうです。

 スタインウェイ・マンションまでは最寄り地下鉄駅から徒歩20〜25分です。

プロフィール: 明石鯛

兵庫県明石市出身、ウエストチェスター在住。週末の街歩きグループと共に、未知なるNY市内を元気に探索中。

チームで作り出す「かっこよさ」 佐藤栞さん

メイクアップアーティスト

 佐藤栞さんは、東京都小金井市出身で、バンタンデザイン研究所を卒業後、現在はニューヨークを拠点に活動しているメイクアップアーティストだ。来米して4年、この間にヴォーグ、ロフィシェル、エルなど一流ファッション誌やニューヨーク・ファッションウィークの現場でメイクを担当、既に第一線で活躍している。メイクアップを通して「その人らしさ」や「作品全体の空気感」を表現することを大切にしているという。

 佐藤さんが考える「その人らしさ」とは、作品に関わるすべての人──フォトグラファー、スタイリスト、モデル、ヘア、メイクなど──それぞれの「かっこいい」や「こだわり」が作品の中に自然に息づいていることだ。チーム全員の頭の中にあるイメージや感性を、ひとつの世界観としてどう形にしていくか。そのプロセスの中に「その人らしさ」があると思っている。

 また「作品全体の空気感」とは、関わる全員のやりたいことをただ詰め込むのではなく、それぞれの想いをどう美しく調和させ、ひとつの作品として完成させるかということ。時には意見の衝突もあるが、その中で最適なバランスを探り、みんなが「かっこいい」と思える作品を追求していくことを何よりも大切にしている。

 「チームで作品をつくるとき、全員の意見や想いを形にするのは簡単なことではありません。けれど、試行錯誤の末に『これ、ほんとにかっこいいね』と全員が同じ瞬間に感じられたとき、そこには言葉にならない感動があるんです。その瞬間に立ち会うたびに、みんなで協力してひとつの『かっこいい』を作り上げることの素晴らしさを改めて実感します」と話す。

 メイクを始めたきっかけは、高校3年生のときだった。それまでバドミントン部に所属していて、メイクをする習慣はまったくなかったという。部を引退して、時間に余裕ができたころ、自然とメイクをするようになって、そのときに「メイクってこんなに印象や雰囲気を変えられるんだ」と強く感じた。そこから一気に夢中になって「なんていうか、まさに目覚めたような感覚でしたね」。

 そんなとき、母との会話で「メイクアップアーティストってどう?」と何気なく言われ、その言葉に興味を持って調べたのがきっかけで、翌年、バンタンデザイン研究所へ進学した。

 「私は、メイクには正解がないと思っています。正解がないからこそ、自分が何をしたいのか、自分が好きだと思えること、かっこいいと感じる表現を追することを大切にしています。

そしてそれは、アートやファッションにも通じます。作品をつくるたびに『こうすればよかった』と思うこともありますが、それも次に生かしていくための大切な過程です。アシスタントとして現場に入ることも多く、学びの途中にありますが、ニューヨークという多様なカルチャーの中で刺激を受けながら、自分なりの表現を模索しています。完璧ではなくても、自分のペースで成長しながら、自分にしかできない『美しさの形』を見つけていけたらと思っています」と語った。(三浦良一記者、写真も)

品川哲山作品展 ギャラリー・マックスNYで

 「野人生涯」を貫いた書家、品川哲山(しながわ・てつざん)の作品展が11月4日から15日(土)までソーホーのギャラリー・マックス・ニューヨークで開催されている。これにあたり、 哲山の孫となる品川耕太氏ら親族がレセプションに参列した。耕太氏は、1981年ソーホーに創業した日本食レストラン「おめん」の創始者・故品川幹雄氏の甥で、現在は京都銀閣寺前にある「おめん」を経営している。

 アメリカでの最後の展覧会からおよそ30年の時を経て開催されるこの書道展は、再び日本の書の真髄に触れる貴重な機会とななった。

 品川哲山、本名品川要治は1910年、群馬県の織物業者・実治とたいの三男として生まれた。1930年代には赴任先の中国、朝鮮にて漢詩と書を学び、戦後は困窮の中にあっても精神的豊かさを追求し、筆をとり続けた。作品には、古代日本、中国、東南アジアの古典文学、更に西欧哲学の研究を通じて培われた豊かな教養が、ゆるぎない精神性として昇華されており、現代世界への深い洞察、美に対する純粋な称賛、先人への敬慕の念、そして家族に対する深い愛情が込められている。

 孫の品川耕太さんは、「今展覧会のテーマは『PASSION』。書を揮毫(きごう)する瞬間に拳を振り上げ、 込み上げる心の衝動を口ずさむ姿を家人は何度も目にしており、今展に相応しい一言と確信している。ニューヨークに『おめん・あぜん』を築き、発展へと導いた品川幹雄の根底にも流れる理念を、哲山の書から感じ取っていただければこの上ない喜びだ。自分の代で祖父の展覧会をニューヨークでできて嬉しく思う」と話している。(三)

編集後記


 編集後記

 みなさん、こんにちは。ニューヨークの市長選挙は投開票され、急進左派のニューヨーク州下院議員の民主党候補ゾーラン・マムダニ氏(34)が初当選しました。インド系移民でアフリカ東部のウガンダ生まれのマムダニ氏は、家賃値上げの凍結や市営スーパーの導入といった生活コスト低減政策を掲げ、物価上昇に苦しむ若年層を中心に支持を集めたと言われています。昨年までは無名で、7年前に米国市民権を取得したばかりの若干30代の元外国人の若者が、全米最大都市ニューヨークの市長に選出されたことは歴史的快挙といえますが、前途は多難なスタートになるかもしれません。

 英紙「デイリー・メール」が投開票前日の11月3日付で、マムダニ氏がニューヨーク市の次期市長に当選した場合、同市から少なくとも約76万5000人、最大で約200万人規模の市民が流出を「検討」または「確実に移住する」という世論調査の結果を報じました。マムダニ氏を批判しているニューヨークポストは同日、さっそくこれを紹介しています(本紙今週号4面に記事)。 
 それによると市民の9%が「確実に市を出る」と回答し、さらに25%が「離れる事を検討している」と答えており、合計でおよそ34%が離脱・市外への移住の可能性を示したのです。同市の人口は約850万人で、34%は約290万人に相当します。特に高所得者層の流出危機も指摘されており、年間所得25万ドル超の回答者のうち7%が「確実に離れる」と回答。ニューヨーク市では上位1%の所得層が市税収の半分近くを担っているとの指摘があり、彼らの大量流出が現実のものとなれば、市財政への打撃は深刻です。

これに加え、マムダニ氏を「100%共産主義の狂人(Lunatic)」などと批判してきたトランプ大統領は2日、CBSの報道番組「60ミニッツ」で、マムダニ氏が市長になれば、「大統領としてニューヨークに多額の資金を提供するのは難しくなるだろう」と語り、「共産主義者がニューヨークを統治すれば、そこに送るお金が無駄になるだけだ」と付け加え、当選発表後には、自身のSNS(Truth Social)に「…AND SO IT BEGINS!」と投稿しました。

 全米最大都市とはいえ、地方自治体の長の選挙で、大統領が自分の党推薦候補の応援演説をするのはいいでしょうけど、逆に対立候補や気に入らない候補に投票したり当選させたりしたら、国(連邦政府)が有権者や市政に懲罰的な報復を示唆するというのは、やりすぎのようにも見えるのですが、そんなことが許されてまかり通るというのも、議会制民主主義とはいえ、大統領という王様のなせる業と言えるのでしょうか。大統領令って自分で勝手に決められるんですからね。

 普通は、このような政治・社会環境の中では、報復や受難を恐れて、今回のような弱い立場の群衆の代表みたいな人が当選してしまうということは政権基盤の脆弱な国でもない限りあり得ないでしょうが、それがこの米国最大の大都会のしかも、全米最大の富裕層が集中する街の市長に選ばれてしまうところに、ある意味、アメリカ人の「やってみなければわからんでしょ」と実際に自分たちの身を切ってリスクを取って理想のままに進んでみるということを体現できるというのが、まだまだアメリカという国のポテンシャルを逆に感じました。トランプ大統領の圧力と富裕層を敵に回してどうやって弱い立場の人々が自分達の未来を切り開いていくのか、トランプ劇場に新たな一幕が加わり、新人の脇役が登場、果ては主役を食うかの見ものです。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2025年11月8日号)

(1)NY市長にマムダニ氏 若者層が支持、連邦政府敵に

(2)ルース・アサワ大回顧展 MoMAで開催中

(3)アンネ・フランク展 隠れ家を忠実に再現

(4)高市早苗新政権の性格を考える。

(5)祖母の思い出 田村明子のカーテンコール

(6)レストラン日本 62周年を祝う

(7)世界のどこでも地域盛り上げ隊 林 里奈さん

(8)THE TALE OF GENJI AND KYOTO  (BOOKS)

(9)Totto-chan The Sequel     翻訳者のサイン会などNYで開催 (BOOKS)

(10)ブレない者への賛歌 シネマ試写室

NY市長にマムダニ氏 若者層が支持、連邦政府敵に

 ニューヨークの市長選挙は4日、投開票され、急進左派のニューヨーク州下院議員の民主党候補ゾーラン・マムダニ氏(34)が初当選した。インド系移民でアフリカ東部のウガンダ生まれのマムダニ氏は、家賃値上げの凍結や市営スーパーの導入といった生活コスト低減政策を掲げ、物価上昇に苦しむ若年層を中心に支持を集めた。民主党の今後の方向性について議論が予想される。マムダニ氏は、全米最都市の市長としては最も若い人物となる。南アジア系の人物として、そしてイスラム教徒としても初めてこの役職に就くことにもなり、ニューヨーク市政で歴史的な選挙結果となった。

 今回の選挙でマムダニ氏は、無所属で立候補したアンドリュー・クオモ前ニューヨーク州知事との事実上の一騎打ちとなった。速報値の得票率でマムダニ氏は50・3%、クオモ氏は41・6%で共和党候補カーティス・スリワ氏は7%強に止まった。

 トランプ大統領はマムダニ氏を「共産主義者」と呼んで敵視。投票日前日の3日には自身のSNSで、「選択肢はない。クオモ氏に投票しなくてはならない」と呼びかけ、マムダニ氏が当選した場合は連邦資金の制限を行う考えを示し、さらに選挙結果が出た後、トランプ氏は自身のSNS(Truth Social)に「…AND SO IT BEGINS!」と投稿。これは、マムダニ氏の勝利を巡り新たな自身の政治的展開が始まるという意図とも解釈でき、選挙結果は、若者層、低所得層が勝利した一方で、富裕層や連邦政府を敵に回してのNY新市政の幕開けを示唆する、ある意味前途多難なスタートが予想される。

マムダニ市長誕生で100万人が流出?
英国デイリー・メールの事前世論調査

NYポスト紙が詳報

 英紙「デイリー・メール」が市長選投開票の前日11月3日付で「もし民主社会主義派の州下院議員ゾーラン・マムダニ氏(34、民主党)がニューヨーク市の次期市長に当選した場合、同市から少なくとも約76万5000人、最大で約200万人規模の市民が流出を「検討」または「確実に移住する」という世論調査の結果を報じた。マムダニ氏を批判しているニューヨークポストは同日、さっそくこれを紹介した。 

 調査は英紙「デイリー・メール」が委託した米調査会社JLパートナーズによるもので、市民の9%が「確実に市を出る」と回答し、さらに25%が「離れる事を検討している」と答えており、合計でおよそ34%が離脱の可能性を示した。同市の人口は約850万人で、34%は約290万人に相当する。

 特に高所得者層の流出危機も指摘されており、年間所得25万ドル超の回答者のうち7%が「確実に離れる」と回答。ニューヨーク市では上位1%の所得層が市税収の半分近くを担っているとの指摘があり、彼らの大量流出が実現すれば市財政への打撃は深刻だ。

 離脱意向は地理的に差が出ており、スタテンアイランドでは21%が「確実に離れる」と回答、さらに54%が「離れるかもしれない」と答えた。ブルックリンではそれぞれ8%と18%、マンハッタンでは6%と20%という数字となっている。性別・年齢別でも、男性が「確実に」が12%、「検討」が25%、女性は7%、24%。50〜64歳が離脱を最も検討しており、「確実に」が12%、「検討」が33%だった。

 マムダニ氏は、バス運賃無料化、賃貸料凍結、5歳以下の無料保育、年収100万ドル超の高額所得者への2%増税、法人税率の7・25%から11・5%への引き上げなど、野心的な政策を掲げている。しかし、批判側は「高額所得者や企業が低税率州に移転し、市税収が大きく目減りする」と警戒感を示しており、実際に離脱の検討が「既に始まっている」とする声もある。もし流出が現実のものとなれば、都市の機能や税収、住民サービスに「歴史的な打撃」が及ぶ可能性がある。

 これに加え、マムダニ氏を「100%共産主義の狂人(Lunatic)」などと批判してきたトランプ大統領は2日、CBSの報道番組「60ミニッツ」で、マムダニ氏が市長になれば、「大統領としてニューヨークに多額の資金を提供するのは難しくなるだろう」と語った。「共産主義者がニューヨークを統治すれば、そこに送るお金が無駄になるだけだ」と付け加えた。

(写真)投票所を出る市民(4日午後1時、マンハッタンの西46丁目の教会特設投票所で、本紙撮影)

ルース・アサワ大回顧展 MoMAで開催中

抽象概念に密められた計算

 ニューヨーク近代美術館(MoMA)6階の特別展示会場、スティーブン&アレクサンドラ・コーエン・センターで開催中のルース・アサワ没後回顧展(1面に記事)は、ワイヤーを使った「ループ/結び目」構造の浮遊性ある彫刻で広く知られる彼女の約60年を網羅し、展示作品数はおよそ300点に上る。

 同展は、アサワが長く拠点としたサンフランシスコで発表された、サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)での展示(4月5日から9月2日)を経て今回MoMAに巡回展示された。展示から素材や形式を超えて「制作=生活」「内部=外部」「抽象=具象」を横断する視点が展覧会を通じて提示されており、現代美術/公共芸術/教育といった複数の文脈から読み解くことができる。

 観覧のポイントは、ワイヤー作品は「空間を透かすこと」や「影との関係」を含むので、観る位置・角度によって光の変化を意識すると新たな発見がある。多様な技法・素材を使った作品群を通じて、「素材が何をできるか」を探究し続けたアサワの姿勢に注目。ドローイングや版画の静かな作品と、空間的・彫刻的な作品との対比を楽しむことができ、静と動、内部と外部、生活と芸術の往還。中でも、公共芸術・教育活動にも触れておくと、「作品」を超えて「社会との関わり」という文脈が開ける。彼女が手がけたロゴや紋章など現代のようにコンピューターのない時代の作品としては、抽象の概念の中に込められた緻密な計算が見て取れる。

 展示構成は、出発点と教育期(1940〜50年代)、サンフランシスコ移住とワイヤー彫刻の発展(1950〜60年)、家族、公共美術とコミュニティ(1960年代後半〜)、細やかな素材探究・ミニチュア、晩年の植物/花モチーフによるドローイング・版画(1990〜2000年代)となっている。多数点数ゆえに「興味を持った素材やテーマ(例えばワイヤー作品)をまずじっくり見て、余力あればスケッチや版画系も回る」という回り方もおすすめだ。 (三浦)


MoMA

11 W 53rd St, New York, NY 10019 

TEL (212) 708-9400

https://www.moma.org

開館時間 10:30-17:30 金曜のみ 10:30-20:30


アンネ・フランク展 隠れ家を忠実に再現

来年2月まで延長

 第2次世界大戦中にアンネ・フランク一家らがナチスの迫害を逃れて約2年間潜伏したオランダ・アムステルダムの隠れ家が、ニューヨーク市内で再現されて話題を呼んでいる。ニューヨーク・ユダヤ歴史センター(Center for Jewish History:西16丁目15番地)は、アウシュビッツ解放80年にあわせて今年1月27日の国際ホロコースト記念日から、「アンネの日記」で知られるユダヤ人少女アンネ・フランクが強制収容所に送られるまで生活していた隠れ家を世界で初めて実物大で再現した。

 「Anne Frank The Exhibition」の隠れ家には、出入り口を隠すための本棚をはじめ、ベッドルームやキッチンの家具、日記帳や生活用品のレプリカが展示されている。アムステルダムの隠れ家はアンネの父オットー・フランクの希望により家具や生活用品がない状態で保存・公開されているが、NYではアムステルダムから提供された未公開品も含む100点以上の収蔵品も加えて再現されているため、来館者は当時のアンネと家族らの日常を感じながら見学できる。また、同展では隠れ家を再現しているだけでなく、強制収容所に送られた2年後に15歳で亡くなったアンネの生涯についてや、書籍・各国の出版物、ホロコーストに関する展示が7500平方フィートの会場に歴史を追うようにつくられている。入り口で一人ひとりに渡される無料のオーディオガイドを使ってじっくりと耳を傾ける人も多く、すべての解説を聞きながら会場を歩くと約1時間、歴史と家族の物語を学ぶことができる。

 当初は4月末までだった同展は連日満員でチケット入手が難しくなったため10月末まで延長、そして現在はさらに2026年2月1日まで延長されている。入場料は一般24ドル〜、17歳以下は18ドル〜。土曜休館。ソールドアウトの日も多いため、オンラインで時間指定の事前購入を推奨する。チケット・詳細はウェブサイトhttps://www.annefrankexhibit.orgを参照する。

(高田由起子、外観写真も。ほかの写真は公式サイトより)