ルース・アサワ大回顧展 MoMAで開催中

抽象概念に密められた計算

 ニューヨーク近代美術館(MoMA)6階の特別展示会場、スティーブン&アレクサンドラ・コーエン・センターで開催中のルース・アサワ没後回顧展(1面に記事)は、ワイヤーを使った「ループ/結び目」構造の浮遊性ある彫刻で広く知られる彼女の約60年を網羅し、展示作品数はおよそ300点に上る。

 同展は、アサワが長く拠点としたサンフランシスコで発表された、サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)での展示(4月5日から9月2日)を経て今回MoMAに巡回展示された。展示から素材や形式を超えて「制作=生活」「内部=外部」「抽象=具象」を横断する視点が展覧会を通じて提示されており、現代美術/公共芸術/教育といった複数の文脈から読み解くことができる。

 観覧のポイントは、ワイヤー作品は「空間を透かすこと」や「影との関係」を含むので、観る位置・角度によって光の変化を意識すると新たな発見がある。多様な技法・素材を使った作品群を通じて、「素材が何をできるか」を探究し続けたアサワの姿勢に注目。ドローイングや版画の静かな作品と、空間的・彫刻的な作品との対比を楽しむことができ、静と動、内部と外部、生活と芸術の往還。中でも、公共芸術・教育活動にも触れておくと、「作品」を超えて「社会との関わり」という文脈が開ける。彼女が手がけたロゴや紋章など現代のようにコンピューターのない時代の作品としては、抽象の概念の中に込められた緻密な計算が見て取れる。

 展示構成は、出発点と教育期(1940〜50年代)、サンフランシスコ移住とワイヤー彫刻の発展(1950〜60年)、家族、公共美術とコミュニティ(1960年代後半〜)、細やかな素材探究・ミニチュア、晩年の植物/花モチーフによるドローイング・版画(1990〜2000年代)となっている。多数点数ゆえに「興味を持った素材やテーマ(例えばワイヤー作品)をまずじっくり見て、余力あればスケッチや版画系も回る」という回り方もおすすめだ。 (三浦)


MoMA

11 W 53rd St, New York, NY 10019 

TEL (212) 708-9400

https://www.moma.org

開館時間 10:30-17:30 金曜のみ 10:30-20:30