メイクアップアーティスト
佐藤栞さんは、東京都小金井市出身で、バンタンデザイン研究所を卒業後、現在はニューヨークを拠点に活動しているメイクアップアーティストだ。来米して4年、この間にヴォーグ、ロフィシェル、エルなど一流ファッション誌やニューヨーク・ファッションウィークの現場でメイクを担当、既に第一線で活躍している。メイクアップを通して「その人らしさ」や「作品全体の空気感」を表現することを大切にしているという。
佐藤さんが考える「その人らしさ」とは、作品に関わるすべての人──フォトグラファー、スタイリスト、モデル、ヘア、メイクなど──それぞれの「かっこいい」や「こだわり」が作品の中に自然に息づいていることだ。チーム全員の頭の中にあるイメージや感性を、ひとつの世界観としてどう形にしていくか。そのプロセスの中に「その人らしさ」があると思っている。
また「作品全体の空気感」とは、関わる全員のやりたいことをただ詰め込むのではなく、それぞれの想いをどう美しく調和させ、ひとつの作品として完成させるかということ。時には意見の衝突もあるが、その中で最適なバランスを探り、みんなが「かっこいい」と思える作品を追求していくことを何よりも大切にしている。
「チームで作品をつくるとき、全員の意見や想いを形にするのは簡単なことではありません。けれど、試行錯誤の末に『これ、ほんとにかっこいいね』と全員が同じ瞬間に感じられたとき、そこには言葉にならない感動があるんです。その瞬間に立ち会うたびに、みんなで協力してひとつの『かっこいい』を作り上げることの素晴らしさを改めて実感します」と話す。
メイクを始めたきっかけは、高校3年生のときだった。それまでバドミントン部に所属していて、メイクをする習慣はまったくなかったという。部を引退して、時間に余裕ができたころ、自然とメイクをするようになって、そのときに「メイクってこんなに印象や雰囲気を変えられるんだ」と強く感じた。そこから一気に夢中になって「なんていうか、まさに目覚めたような感覚でしたね」。
そんなとき、母との会話で「メイクアップアーティストってどう?」と何気なく言われ、その言葉に興味を持って調べたのがきっかけで、翌年、バンタンデザイン研究所へ進学した。
「私は、メイクには正解がないと思っています。正解がないからこそ、自分が何をしたいのか、自分が好きだと思えること、かっこいいと感じる表現を追することを大切にしています。
そしてそれは、アートやファッションにも通じます。作品をつくるたびに『こうすればよかった』と思うこともありますが、それも次に生かしていくための大切な過程です。アシスタントとして現場に入ることも多く、学びの途中にありますが、ニューヨークという多様なカルチャーの中で刺激を受けながら、自分なりの表現を模索しています。完璧ではなくても、自分のペースで成長しながら、自分にしかできない『美しさの形』を見つけていけたらと思っています」と語った。(三浦良一記者、写真も)

