河合優実 NY初登場 ジャパン・カッツ2025

CUT ABOVE 賞は黒沢清監督に

 ジャパン・ソサエティー(JS)が開催した日本映画祭「ジャパン・カッツ」で12日、「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」が米国で初上映された。

 ヒロインを務めた俳優の河合優実さん(24)が上映前にステージに登場し、「ジャパン・カッツに来るのが夢でした」と英語で挨拶。河合さんは2019年にデビュー後、映画を中心に活躍。24年、宮藤官九郎氏が脚本を手がけたTBSドラマで昭和の不良少女17歳の純子を演じて大ブレイク。現在放映中のNHK連続テレビ小説「あんぱん」に出演中。  

 同映画祭は今年のセンターピース・フィルム(映画祭の最注目作品)には黒沢清監督の「クラウド」を選出した。日本映画への功績を称え贈られるCUT ABOVE賞は16日、黒沢清監督に授与が発表され上映された。(菊楽めぐみ、写真も。)

「米国映画にも出演したい」

ジャパン・カッツ上映で来米
河合さん抱負語る

 ジャパン・ソサエティー(JS)が開催する日本映画祭「ジャパン・カッツ」で12日、「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」が米国で初上映された。監督と脚本は大九明子氏。原作は吉本興業に所属する日本のお笑いコンビのジャルジャル・福徳秀介氏の同名恋愛小説。今年4月25日に日本公開。ヒロインを務めた俳優の河合優実さん(24)が上映前にステージに登場し、「ジャパン・カッツに来るのが夢でした」と英語で挨拶。チケットが完売した満席の客席からは拍手と歓声が起きた。

 上映後は、元ジャパン・カッツのプログラム担当で、現在はイサカ・カレッジで映画研究の分野で教鞭を執っているジョエル・ネヴィル・アンダーソン氏が質問するQ&Aが行われた。通訳はモニカ・ウチヤマ氏。河合さんと大九明子監督が一緒に働くのはこの映画が初めてではなく、再タッグになる。前作はNHK BSで2023年に放送されたドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』。監督は、既に小さいセリフのイメージが出来上がっていて、何度もリテイクがあったと河合さん。言葉遊びがある台詞があり、それが字幕でどう訳されて伝わっているかも気になっているという。撮影に入る前には関西弁を勉強し、メロディのように覚えたという。ちなみに河合氏は東京都練馬区出身。

 13日には河合さんが第48回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞に輝いた映画「あんのこと」も上映された。実際の新聞記事をきっかけに入江悠監督が共鳴して制作され、公開後大きな反響を呼んだ。幼い頃から母親に虐待され売春や覚醒剤の常習者となった女性の壮絶な人生を描いた社会派ドラマだ。上映後、Q&Aが行われ、役作りについての話はもちろん、今後についても聞かれ、年齢的に高校生や子供を演じてきたが、先生や親に変わっていくのが楽しみであり、またアメリカ映画に出てみたいと抱負を語った。14日には、河合さんが大学生を演じる東京国際映画祭で東京グランプリと主演男優賞(長塚京三)に輝いた筒井康隆の小説を吉田大八監督が映画化した「敵」がNY初上映された。

 河合優美さんが出演する映画が3本も上映され、日本を代表する俳優のひとりとして世界で活躍する期待が高まる。(菊楽めぐみ、写真も)

矢野顕子トリオ NYライブチケット発売中

 矢野顕子トリオのニューヨークライブが10月5日(日)午後8時から、ソニーホール(西46丁目235番地)で開催される。出演は矢野のほか、長年のNY在住ミュージシャンフレンズであるウィル・リー(ベース、ボーカル、シンセサイザー)と、クリス・パーカー(ドラム)。同メンバーでこの夏に日本ツアーも行われる。入場料は40ドル55セント〜58ドル16セント。詳細はウェブサイトhttps://sonyhall.com/shows/?eid=14479643を参照。

 矢野は1976年、アルバム『JAPANESE GIRL』でソロデビュー。2024年、上原ひろみとの3枚目の共演ライブアルバム「Step Into Paradise – LIVE IN TOKYO-」 をリリースし、同作は第39回日本ゴールドディスク大賞で「ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」を、ミュージック・アワーズ・ジャパン・2025で「最優秀ジャズアルバム賞」を受賞した。今年5月には「やのとあがつま」で約5年ぶりの新曲をビクタースピードスターレコーズからリリースしている。

敵国、日本を訪ねて ニューヨークの魔法

 反日感情を抱いていた元米国軍人ね。それは私ですよ。

 今からもう二十年前、日本の全国紙の日米姉妹都市についての特集で、そういう人がいると知って、調べていた。ケン・ウッドさんを探し当て、初めて電話で話したとき、彼は静かにそう語った。

 その七年前、姉妹都市提携の調印で高知県土佐清水に行くための費用を、マサチューセッツ州フェアヘーブンの町が出すことに、住民の会議で決まった。当時、都市行政委員だったウッドさんは、土佐清水行きのメンバーの候補に上がった。

 でも、第二次世界大戦中、ミッドウェーで戦い、たくさんの友人を亡くした彼は、日本に行くことを頑なに拒んだ。

 フェアヘーブンでそういう思いを抱いている人は、彼だけではなかった。姉妹都市の活動でホームステイを引き受けるのはいい。でも、日本人だけはごめんだ、と言い張っていた人もいた。日本に対する憎しみから、日本車に乗らない人もいた。

 私は海軍で、祖国のために戦ったことが誇りです。多くの軍人のように、日本を憎んでいました。今でも真珠湾攻撃を忘れることができないし、そのことで日本人を許すことはできない。私はこれまでずっと、この憎しみを胸に抱いてきたのです。

 同じように軍人だった父親が、ウッドさんを説得した。

 お前の気持ちはよくわかる。だが、一度、日本に行って、その目で今の日本を見てきたらどうだ。

 ウッドさんはついに折れ、ほかの十四人とともに日本へ向かった。

 あの日本人など信用できるものか。そう思い続けていたんです。

 船が土佐清水の港に近づいた。こちらに向かって、日本人の老人たちが立っているのが見えた。片手に杖を持ち、もう一方の手で星条旗の小旗を振っている。自分たちの到着を、歓迎している。

 子どもたちも無邪気な笑顔で、星条旗と日の丸を振っていた。

 白い手袋をはめた消防隊員らが、自分たちを迎え入れてくれた。

 警察官たちは、すぐそばに付き添い、エスコートしてくれた。

 私の日本人への憎しみは、潮が引くように、すっと消えていきました。土佐清水で、老人に出会えば駆け寄ってその手を握り、子どもを見かけると抱き上げてほおずりをし、私は何度も涙ぐんでいました。

 目の前の日本人は、自分たちが戦った敵ではなかった。

 滞在中、ウッドさんら一行は、土佐清水市の市長の自宅に招待された。

 市長は私のところにやってくると、頭を下げて謝ったのです。

 私は、第二次大戦で、戦闘機に乗っていたひとりです。本当に申し訳なかった、と。

 何を言っているんですか、とウッドさんは市長の肩に手をやった。

 It’s all over now.

 すべてもう、終わったことじゃないですか。

 市長は私を強く抱きしめました。彼の目からは、涙が流れていました。

 その後、フェアヘーブンの一行を乗せたバスが、星条旗と日の丸をはためかせて、高速道路を走っていたときのことだ。バスが近づくと、道路を工事していた工夫たちが、かぶっていた帽子を脱ぎ、拍手で彼らを歓迎してくれた。

 そのなかにひとりだけ、自分たちに背を向けた男がいた。ウッドさんと同年配だった。

 私はそれが気になって、バスガイドに頼んで、その人に理由をたずねてもらいました。

 その人はバスガイドに、自分は第二次大戦で兄弟を失くしたんです、と話しました。

 そして、私たちのバスの前にはためいていた星条旗を指さして、俺はあいつが嫌いなんだ、と言って、にらんだのです。

 日本人にも同じように、忘れられない辛い思い出があることを、私は初めて実感しました。今、私は、大切な息子たちを失った日本人の母親ひとりひとりのほおに口づけをして、すまなかった、と謝りたいのです。

 別れの日、彼らを乗せて遠ざかっていく高速艇に向かって、いつまでも手を振り続けている土佐清水の人たちに、ウッドさんも見えなくなるまで手を振って応えた。

 このエッセイは、シリーズ第8弾『ニューヨークの魔法のかかり方』に収録されています。40万部突破の「ニューヨークの魔法」シリーズ(全9巻)は文春文庫から刊行されています。

https://books.bunshun.jp/list/search-g?q=岡田光世

週刊やさしいにほんご生活 日本の夏の清涼飲料 人事を尽くして天命を待つ 

この連載は、日本語を勉強している人を読者対象としたコーナーです。日本文化やマナー、タイムリーな日本に関する話題などを簡単な日本語で毎月第3週号に掲載します。アメリカ人の友人などにご案内ください。また、漢字をまだ習っていないお子様にとっても社会を知り、漢字に接するよい機会になります。

日本の夏の清涼飲料

 日本の夏は蒸し暑く、体にやさしい飲み物が欠かせません。家庭では麦茶が定番で、最近ではスポーツドリンクや冷たい緑茶もよく飲まれます。熱中症対策としても人気です。夏祭りや花火大会では、涼を感じる飲み物として、ビー玉入りの瓶の炭酸飲料「ラムネ」が親しまれています。飲み方がやや難しいのでぜひ試してみてください。ペットボトルは立ち止まって静かに飲むと所作が美しく映ります。家で人に麦茶を出すときは、グラスに注ぐことでもてなしの心が表れます。味わうことだけでなく、丁寧なふるまいにも、日本の夏らしさと心づかいが感じられます。

(長久保美奈、マナー講師)

わくわくことわざ(11)
文とイラスト 平田恵子

人事を尽くして天命を待つ 


 「できることは全てやった」という最大限の努力をしたら、後はくよくよ悩まずに結果を心静かに受け止めよという教えです。望み通りでなくても天からのメッセージとして次につなぎたいもの。「人事」は人ができること、「天命」は天の神が決める人の運命です。中国の古典に同意の言葉があり、日本には漢籍(中国の本)でもたらされ、江戸時代(17世紀)に努力の大切さを伝えることわざとして広まりました。「よし、がんばろう」と背中を押してくれる言葉です。


《言葉の意味(ことばのいみ)》

・麦茶:barley tea

・熱中症対策:heatstroke prevention

・涼を感じる: feel cool

・ラムネ:Ramune soda / Japanese soda 

・ビー玉:  marble 

・ペットボトル: bottled drink

・人事を尽くす: Do one’s best

・天命:fate or destiny

・古典: old book

・背中を押す:encourage or motivate

・「人事を尽くして天命を待つ」と同じ 意味の英語のことわざ:

God helps those who help          themselves.

対日関税25%を通知 8月1日に発動へ

トランプ大統領

参院選後に交渉の正念場

 トランプ大統領は7月7日、石破総理大臣宛の書簡を送り、日本からの輸入品に対して来月1日から25%の関税を課すと通知した。相互関税の一時停止の期限は9日だったが延長された。4月に発表された日本に対する「相互関税」は一律関税の10%とあわせて24%だったが、25%に引き上げられた。通商拡大法232条に基づき品目ごとにすでに発動している措置(自動車と自動車部品への25%の関税と鉄鋼・アルミニウムへの50%の関税)に上乗せはされない。

 同様の内容の書簡が税率は別にして各国に送付されている。追加関税率は、韓国、マレーシア、カザフスタン、チュニジアは日本と同じ25%、南アフリカ共和国、ボスニア・ヘルツェゴビナは30%、インドネシアは32%、バングラデシュとセルビアは35%、カンボジアとタイは36%、ラオスとミャンマーは40%となっている。

 トランプ大統領は「ほぼ最終的な提案だ」としているが、4月のような世界株安は起こらず、米国のS&P総合500種株価指数が最高値圏にあるなど世界的に株価は落ち着いた動きをしている。トランプ氏はこれまでも関税を発動しては引っ込めるということを繰り返しており、金融業界の間ではTACO(TRUMP ALWAYS CHICKENS OUT=トランプ氏はいつもびびって退く)」と揶揄する言葉があるほどだ。トランプ氏が「威嚇」しようとも関税によって経済が大混乱になることはないという見方が強い。実際、米国の経済やインフレには大きな悪影響は出ておらず、株価も高水準にある。しかしそのことが逆にトランプ氏を強気にさせているとの見方もある。

 日本は、赤沢亮正経済再生相が7回訪米するなどして米側と協議を重ねてきたが、日本側が求める自動車関税の削減などの進展は見られない。トランプ氏は「各国からほかの方法の申し出があれば、われわれはオープンに対応する」とも述べている。13日には「日本がとてもとても急激に方針を変更している」と語った。ベッセント財務長官は「参院選が合意に向けた制約になっている」と述べており、交渉は7月20日の参院選以降に本格化すると思われる。

大統領の美しい支出

NY州知事が猛反発


 大統領が4日署名した「一つの大きな美しい支出パッケージ」は、全米およびニューヨーク州において、社会保障網を大幅に再編成する可能性がある。この4兆5000億ドルの法律は、2017年にトランプ政権の最初の任期中に可決された富裕層向けの継続的な減税措置を資金調達するほか、移民取り締まりと国境安全保障の強化を盛り込んでいる。これらの優先事項への支出増額を賄うため、メディケイドや補充栄養支援プログラムなどのサービスに大幅な削減が施されている。ホウクル知事は5月初旬に254億ドルの州予算に署名し、支出を大幅に増やしたが、迫る連邦資金削減の大部分を反映していないため、声明で「この法案は医療を剥奪し、コストを上昇させ、数百万人の食料支援を削減する」と猛反発している。

なめられてたまるか
首相発言米では静観

80年代「なめねこ」ブーム連想の投稿Xも

 「これは国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか」。9日、石破首相は参議院議員選挙の街頭演説で、こう語気を強めた。日本の首相が同盟国の米国相手に激しい口調で語るのは極めて異例だったこともあり、日本国内では参議院議員選挙前の国内向けのポーズ発言とも受け止められ、大統領の対日感情を悪化させて関税交渉に影響を与えるのではないかと危惧する報道が相次いだ。

 発言の意図は「(日本は米国に)いっぱい頼っているのだから(米国の)言うことを聞きなさいということだとすれば、それは侮ってもらっては困りますということ」と首相は翌日出演したテレビで説明した。

 日本メディアの過敏な反応の一方、米国主要メディアではこの発言についての報道、論調などは出ていないが、投稿サイトのXでは「80年代に日本で流行ったなめねこ(写真=『なめんなよ、又吉のかっとびアルバム』立東舎文庫・刊、津田 覚 その他、写真・脇田 敏 )ブームを連想させる」といった投稿が英語で10日に配信されているくらいだ。果たしてトランプ大統領がなめねこを知っているかどうかは別として、「なかなかしっかり言うべきことを言うじゃないか(見直した)」と前向きに捉えるのか「喧嘩売ってんのか」と逆鱗に触れるのかは未知数で予測不能だが、又吉のキャラクターは「かわいい」と思うかもしれない。

中高生16人が来米 新潟県南魚沼市

ワシントンDCとNYを訪問

世界と故郷の架け橋に

 新潟県南魚沼市の中学生と高校生を合わせた16人がワシントンDCとニューヨークを訪問し、ホームステイなども含め7月29日から8月4日まで来米する。市が主催する「南魚沼市中学生海外派遣事業」の一環で来米するもので今年で3回目。一行には岡村秀康南魚沼市教育長はじめ、市教育委員会職員が同行する。 

 生徒たちは、ワシントンDCでホワイトハウスやリンカーン記念堂、アーリントン墓地、スミソニアン国立自然博物館などを見学する。またアメリカン大学を訪問して学校生活などを日本人留学生から話を聞く。

 ニューヨークでは山﨑国連大使とNY総領事の森大使を表敬訪問して両大使から海外における日本の立場や日本人の役割などについて直接話を聞く機会が設けられている。滞在中は、同時多発テロの現場に作られた9・11メモリアル博物館を見学するほか、ニューヨーク新潟県人会が迎えるホストファミリー宅に宿泊し、海外で生活する同郷の先輩たちとも交流する。主催する南魚沼市では、選抜は成績評価だけで決めるのではなく、一生懸命努力をしている子や、芸術やスポーツに熱心な子などさまざまな観点から市教育委員会が選んだという。  

 この新潟県の生徒たちをアメリカに招くきっかけとなったのは、ニューヨーク新潟県人会の現名誉会長で南魚沼市出身の大坪賢次さん(不動産会社社長)の発案からだ。大坪会長の妻、理恵さん(故人)が生前、パンデミック前から「故郷が発展するには人材の育成が大切で、それにはまだ進路を決めていない中学生の時が良いと思う」と言っていた言葉を叶えたいと「中学生をアメリカに招いて、政治の中心地のワシントンDCと経済・文化あらゆる面で世界最高の地であるニューヨークを見せてあげたい」とニューヨークから故郷新潟に何度も足を運んだ熱意が南魚沼市の林茂男市長に伝わり、市が全面協力して実現に漕ぎ着けたものだ。

 そういう事情で「南魚沼市中学生海外派遣事業」と銘打った市の事業は、3回目となる今回も中学生12人に加え、高校生4人を派遣生として選考した。大坪さんは「今後も南魚沼の生徒たちが世界に目を向ける機会を提供し、新潟の発展に貢献してくれるような人材が育つよう応援していきたい」と話している。

 南魚沼市からの参加学校名と生徒名は次の通り。(敬称略)。

〈中学生〉井上聡太郎(大和中学)、髙野真歩(大和中学)、上村愛莉(八海中学)、並木あかり(八海中学)、久保田在希(六日町中学)、小林春斗(六日町中学)、石井真都(塩沢中学)、小野塚真央(塩沢中学)、貝瀬滉介(塩沢中学)、石田会(附属長岡中学)、関詩音(附属長岡中学)、樋口大駕(附属長岡中学)、〈高校生〉石田由唯(国際情報高校)、小泉舞桜(十日町高校)、志田亜呼(長岡高校)、塚本佳史(長岡大手高校)以上16人。

日米をつなぐ日本食産業のアンバサダー 木下直樹さん

NY日本食レストラン協会会長

木下直樹さん(69)

 4月28日に開催された定例理事会で、ニューヨーク日本食レストラン協会(NYJRA、NY Japanese Restaurant Association)の会長に就任した。45年あまりのニューヨークの老舗「レストラン日本」の支配人、CEOとして日本食の対米普及に貢献してきた経験と手腕を見込まれての就任だ。

 NYJRAは2020年1月設立以来、ニューヨーク地域における日本食レストランを代表し、日本料理とその食文化の振興に取り組んでいる団体だ。日本食レストランが直面するさまざまな課題の解決に役立つ調査や情報提供を行い、それにとどまらず、政府機関への政策提言も積極的に行っている。コロナ禍パンデミックの時は、市内全域で店内営業ができなくなったが、アウトサイド店舗の設営基準の会員店への迅速な広報活動やオンライン講習会を開催、また、ロビー活動を通じて従来販売カテゴリーがハードリカーだった日本の焼酎をビール並みにレストランで飲める基準まで下げることにも成功した。

 政府機関との交渉は、恩師レストラン日本創業者の倉岡伸欣氏が築いたトラフグ輸入解禁でも毎回JFK空港の税関でバイヤーズ・アソシエーションの代表としてFDAとやりとりした経験から現場感覚は今も現役だ。

 日本食レストランを取り巻く環境は、トランプ大統領の対日関税25%課税やニューヨーク市内の物価高騰、キッチンヘルパーなど現場の底辺を支えている移民労働者の激減など、日に日に厳しさを増している。最盛期120店ほどあった協会加盟会員は現在70社あまりに減っている。

 「第一に会員にとって何がベネフィットになるのかを考えたい。コンプライアンス(法令順守)、保健局対応、チップ、オーバータイム、人事管理、労働力確保、保険代の高騰などレストランビジネス、外食業界の内側を全て見てきた経験があるからこそ分かるレストラン業界の悩みに寄り添ったサポートをしたいです」という。

 就任以来、「NYJRAの果たす役割、存在意義の明確化」を再認識すべく、協会各理事、輸入卸業者、食材サプライヤー、レストランコンサルティング、法務アドバイザー、政府機関など、幅広い分野との意見交換を交わし、包括的なサポートの活性化を目指している。

 「ニューヨークの日本食市場の活性化や食文化の普及にはさまざまなアプローチがありますが、私たちは、日本食レストランこそがその中心的な役割を果たすと考えています。会員の皆様と手を携え、日本食文化の発展と普及に共に取り組むことができれば、これに勝る喜びはないです」と語る。

 1975年 兵庫県立龍野高校卒業。78年 慶應義塾大学法学部政治学科卒業。慶應義塾体育会バレーボール部主将を務め、世界バレーボール連盟公認 国際コーチライセンス取得。パキスタン男子ナショナルチームコーチ就任(1978〜79)。母校慶應の先輩、レストラン日本創業者の倉岡社長(故人)に請われてレストランビジネスの世界に入った異色の経歴の持ち主。趣味は最近自宅近くのイーストリバーでできるカヤックに心酔している。(三浦良一記者、写真も)

NYで学んだ「演劇とは行動なり」胸に秘め 伊藤 沙帆さん

俳優

 日本で演劇俳優として舞台や映画で活動してた伊藤沙帆さんがニューヨークに拠点を移したのは、コロナ・パンデミックが明けた2023年。演劇学校のザ・ネイバーフッド・プレイハウスに留学し、この5月に卒業したばかりだ。

 在学中、学校の制作作品「ドラキュラ」で殺される看護師を演じて好評だった。ザ・ウォーターフロントという小作品にも在学中出演した。

 東京都出身。日本では6歳よりバレエを始め、パフォーマンスすることが好きだった。大学在学中に小さい頃から興味のあった演劇を始めるため、劇団スーパーエキセントリックシアターレッスン生を経て東京芸術劇場シアターウエストなど幾つかの舞台や、映画カイジファイナルゲームでエキストラを経験した。

 ニューヨークに来た時にこのエネルギーに溢れたチャレンジ精神を奮い立たせる場所に惹かれた。とは言っても英語も得意ではなかったので自分では、夢のまた夢だと思っていたが、パンデミックと社会人生活3年の経験を経て、一度しかない人生やはりこの好きな場所で演劇をやりたい、将来後悔したくないし、一度しかない人生を良いものにしたいと思い長期留学を決意した。

 ニューヨークの演劇学校で体験したのはマイズナー・テクニックと呼ばれる演劇習得方法やダンス、歌、ステージコンバット、ボイストレーニング、スピーチ方法など。1年生から2年生は選抜制の進級となるが、無事に進級し、ファイナルプレイなどのスクールパフォーマンスの経験を経て卒業し、現在は舞台活動や、ショートフィルムなどのオーディションを受け始めている。また、今の英語力をキープそしてさらにスキルアップするためにTOEICの勉強も始めた。

 将来の夢は後悔しない人生を送ること。そのためにオフブロードウエー、オンブロードウエーの舞台に立つこと。演劇を英語でアメリカで学ぶことの楽しさと素晴らしさも伝えていきたいと思っている。いつかはアメリカのメインロールでフィルムに出ることを大きな夢として心に秘めている。「先が見えないという不安はありますが、毎日がチャレンジで、ニューヨークで寂しいと思うことはなく、みんな周りが頑張っているので、ニューヨークは落ち込んでいる場合じゃないという思いでいっぱいです。自分を奮い立たせてくれるものがある街です。役者としてしっかり稼げるアクトレスに、多分続けていれば、諦めなければいつかなれる、そんな気がします」。恩師、サンフォード・マイズナー氏が言った「ACTING IS DOING 演劇は行動だ」という言葉を噛み締めている。

 (三浦良一記者、写真も)

Jurassic World Rebirth 未来を開く鍵 シネマ映写室

 「ジュラシック・パーク/ワールド」シリーズ7作目。回を重ねるごとにCG恐竜の「まるで本物」という驚きも新鮮さもだんだん薄れてきてはいるものの恐竜ファンにとっては待望の新作。

 今回はジュラシック・パークの大ファンだったというスカーレット・ヨハンソンが準主役をはる。主役はもちろん、がんがん出てくる恐竜たち。「ムーンライト」「グリーンブック」で2度のアカデミー助演男優賞を受賞しているマハーシャラ・アリがいつもながらの絶妙な演技で脇を固め、キャスティングは申し分ない。監督は「ゴジラ」(2014年)のギャレス・エドワーズ。

 一度は人間社会で共存しかけた恐竜たちも地球環境の変化に伴い生息できる地域が狭められ、今は赤道近くの孤島で生き延びている。

 製薬会社パーカーゼニックスは心臓病の先端治療薬開発のために現在生息する最大級の恐竜から生体材料を採取する計画を実行に移す。同社の幹部マーティンが率いる探検チームは元特殊部隊工作員のゾラ、恐竜に詳しい古生物学者ヘンリーそしてゾラの元同僚で傭兵のダンカンらでカリブ海バルバドス近くの島めがけて出港する。

 途中、ゾラらのチームはヨット航海中に遭難したデルガド・ファミリーを救助、一時は行動を共にするも、ある事故をきっかけに離れ離れに。

 チームが追うのは海棲爬虫類モササウルス、大型草食恐竜ティタノサウルスそして翼竜ケツァルコアトルス。陸・海・空を支配する最大最強の恐竜が相手だ。彼らは生体材料の採取に成功するのか、それとも恐竜たちの餌食となり果てるのか。

 常連ティラノサウルス、スピノサウルスなどの他にかなり気味の悪いミュータントも登場する。人間と恐竜の絡みはデルガド・ファミリーとゾラのチームとが並行して繰り広げられ、それぞれファンの期待に応えるパニックぶりを見せてくれる。デルガド・ファミリーの少女イサベラが島で見つけた角竜類恐竜アキロプスの子どもにドロレスと名付け一緒に連れて行くあたりはご愛敬。2時間14分。PG13。(明)

(写真)ゾラ(ヨハンソン)らは島に上陸する Photo : Amblin Entertainment/Universal Pictures


■上映館■

Regal Times Square

247 W. 42nd St.

AMC Empire 25

234 West 42nd St.

AMC 34th Street 14

312 W. 34th St.


編集後記

編集後記


 みなさん、こんにちは。夏休みシーズンとなり、日本に一時帰省する在米の日本人も多い時期かと思います。数週間程度の帰省旅行であれば、アメリカに戻って来る時の再入国審査も、日本のパスポートを持っていれば特段問題ないのかと思いますが、最近は、4か月以上の長期間にわたりアメリカ国外に出ている人の空港での再入国審査が厳しくなっているという話をよく耳にします。実際、NYの移民弁護士事務所にも多くの問い合わせ、相談が寄せられているようです。企業派遣の駐在員、留学など一時滞在ビザを所有している長期滞在者はビザ有効期限内であれば問題ないようですが、永住権(グリーンカード)保持者で実際にはアメリカに住んでいないのに永住権を持ちながら日本に住んでいる人が、入国できるのか心配になって問い合わせているようです。6か月以上米国外に滞在する場合は、予め「再入国許可証(reentry permit )を取得していれば2年間国外に出ていても出入国は自由ですが、それを取得して出ている人が案外多くないのが現状のようです。取得する時に米国に滞在していることが条件なので、米国外からは申請できないのも原因のようです。実際に米国に住んでいる証拠として、自分の名前の不動産契約書、電気代の請求書などユーティリティー・ドキュメントのプリントアウトしたコピーなどを持っていれば、入国審査官の窓口での質問に即答できるので事なきを得るようです。弁護士によっても見解は様々で、窓口の係官の裁量次第という部分も少なからずあるようです。今週号の1面と中面で弁護士の説明などを掲載していますので永住者の方で、この夏一時帰国を考えている人は参考にされてください。要するに、ちゃんとアメリカに住んでいて、家賃も電気代も税金も自分の名前できちんと納めていますよ、という人は、当たり前のことですが、何の心配もいらないという事です。国外に出る前にパスポートとグリーンカードの有効期限が半年を切っていないかどうかだけお忘れなく。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一) 

【今週の紙面の主なニュース】(2025年7月12日号)

(1)永住者米国再入国にご用心 長期国外滞在者の審査厳格化も

(2)USA連呼 独立の花火

(3)参議院議員選挙 在外投票始まる

(4)政権選択も重要な政策論議も行われない参院選の悲劇

(5)アポロ劇場大規模工事 1年間休館で近代的に

(6)GOGOカレーNY再オープン 25日は55セント

(7)福岡県がNYで商談会 日本酒や特産品をPR

(8)アメリカっぽいイベントを満載! 

(9)絶望から未来見据える瞳描く Yuriyoさん

(10)フィラデルフィアで沖縄の音楽と舞 

永住者米国再入国にご用心 長期国外滞在者の審査厳格化も

 永住権(グリーンカード)所持者が米国外に出国して国外に長期滞在した場合に、空港における米国再入国の検査が厳しくなっているという相談が移民専門法律事務所に相次いでいる。ディヴィッド・ナックマン/ニューヨーク州・ニュージャージー州弁護士は「米国税関・国境警備局(CBP)の職員は、6か月以上国外に滞在していたグリーンカード保有者に対して、より厳格な審査を行っています。渡航者のアメリカとの結びつきや帰国の意思についての質問が含まれ、場合によってはグリーンカードを自主的に放棄するよう求められることもあります」と話す。

 一方、加藤法律事務所の加藤恵子弁護士によると、6月の重大なトランプ大統領令は、12か国の国々からの人たちのアメリカへの入国禁止、および7か国の国々の人たちの旅行、短期出張、学生、交換留学などの目的でアメリカへの入国を禁止したことだ。また、永住権申請者およびスポンサーが申請者がアメリカで生活するのに十分な収入を得ていることを以前よりも厳しく審査することはあっても、「従来の永住権(グリーンカード保持者)の入国審査を厳しくするというようなことは、大統領令にも新規則も公式には発表されていない」という。

 本人の名前の電気代、家賃支払い、税金支払いのプリントした書面を証拠として持っていた方が良いにこしたことはないが、必ず審査官に見せなければならないという規則はない。またアメリカ入国時に永住権を所持している人が、仮に移民・税関審査官にアメリカでの住所を聞かれた場合に、友人の住所を知らせたとしても、永住権保持者が何らかの犯罪を犯しているということがない限り処罰の対象になるということはないだろう」という。

グリーンカード保有者の再入国リスク:海外渡航前に知っておくべきこと

 最近「長期の海外滞在後に米国に再入国しようとする永住権(グリーンカード)保持者に対して米国入国時の取り締まりが強化されている」と報告を受けています。グリーンカードを持っていて6か月以上アメリカを離れる予定がある場合、たとえ1年未満の旅行であっても、こういった影響を受ける可能性があります。

 米国税関・国境警備局(CBP)の職員は、6か月以上国外に滞在していたグリーンカード保有者に対して、より厳格な審査を行っています。渡航者のアメリカとの結びつきや帰国の意思についての質問が含まれ、場合によってはグリーンカードを自主的に放棄するよう求められることもあります。CBP職員が「あなたが永住権を放棄した」と判断した場合、移民裁判所への出頭通知(Notice to Appear)の発行、グリーンカード放棄書(Iー407フォーム)への署名を求める、強制退去手続きに移行(審理には数か月かかる場合もあり)などの措置を取られる場合があります。犯罪歴や未解決の逮捕歴がある場合、保釈が認められず拘束される可能性もあります。強制退去手続き中に国外に出た場合、不在のまま退去命令が出され、5年間の再入国禁止処分となることもあります。

 自分自身を守るためにできることとして、弊社では長期の海外旅行を計画しているグリーンカード保持者に対し、渡航前に「再入国許可証(Reentry Permit)」の申請を検討することを強く勧めています。再入国許可証は1回の申請で最長2年間有効であり「米国永住の意思がある」ことを示す有力な証拠になります。申請と指紋採取のために米国内に物理的に滞在している必要があります。すでに国外にいる場合は「帰国永住者ビザ(SBー1)」の申請が必要ですが、取得するのが困難です。

 CBP職員が単独で永住権を取り消す権限はありませんので、国境でIー407フォームに署名する前に、必ず弁護士に相談してください。刑事問題がある方は、渡航前に法的アドバイスを受けることが非常に重要です。高額所得者・資産家の方は、米国永住権を放棄することによって税務上の影響にも注意が必要です。

(ディヴィッド・ナックマン/ニューヨーク州・ニュージャージー州弁護士)