八神純子が旅するルート66    「今を大事に」の言葉に涙

 ルート66には「生きる伝説」「マザーロードの父」と言われる人がいる、と聞いて、会いに行かないわけにはいかない。その人、エンジェル・デルカディロさんは、人口わずか500人のアリゾナ州セリグマンに住み、国道40号の開通とともに、地方の「ただの道」になってしまったルート66を「ヒストリック・ルート66」として復活させた立役者だ、という。

 エンジェルさんは98歳。体調や忙しいこともあり、約束があっても会えるかどうかは、その時になってみないと分からないらしい。セリグマンに着くと、まだ朝早いのにエンジェルさんが家族とやっている土産物店は既に観光客で賑わっていた。「会えるのかなあ」と思っていると、娘のクラリッサさんが出迎えてくれた。

 「父はもうすぐ来ます」エンジェルさんがゆっくりと近づいてくるのが見えた。想像したよりずっと若々しい。がっしり握手をしたあと、土産物店の奥に併設し、エンジェルさん自身も立っていた、かつての理髪店の部屋に案内してくれた。年季の入った理容椅子に座ると、ゆっくりと語り出した。まずは父親の話。人種隔離政策が続いていた1920年代に全ての人種や民族に扉を開いた理髪店を作ったそうだ。それだけでも当時、どれだけ大変だったかは想像に難くない。

 そして「ヒストリック・ルート66」にする話に移る。1978年に国道40号線が開通、一夜にしてルート66沿線の町のモーテルやダイナーに人が来なくなり経済はどん底に落ち込んだ。「このままではルート66は本当に地図から消えてしまう」と思ったエンジェルさんは、ルート66沿いの街々の代表者15人とアリゾナ州運輸局に掛け合った。「初めは届かなかったが、でも我々は諦めなかった」。言葉に力が宿り、拳を握りしめた。10年近いそうした努力が実り、ルート66は1987年に「ヒストリック・ルート66」として地図に残ることになった、という。

 エンジェルさんに「人生の鍵は何か?」と聞いてみた。力強く、でも優しい声でエンジェルさんはこう言った。「今を生きること。昨日は終わったのだから昨日に生きることは出来ない。明日はまだだから無理。今、この瞬間を生きて、人を幸せにすることだよ」。

 「今を大事にして、私の歌で少しでも多くの人を幸せにすることができたら」という心を信じて歌ってきた私は、自分の生き方を認めてもらったようで、自然に涙があふれ出て、止まらなくなった。 

 エンジェルさんはにこっと笑い「鳥小屋を作らなくてはいけないから、そろそろ帰るね」と立ち上がった。鳥小屋を売って恵まれない子供達を支援していると聞いた。もう一度握手をして、ハグをして、エンジェルさんが店の奥に消えるのを見送った。強さの裏にある真の優しさを見た気がした。エンジェルさんは、私のルート66の旅を、また素晴らしい旅にしてくれた。

(やがみ・じゅんこ、シンガーソングライター、ロサンゼルス在住) 

防衛医科大卒のバレエ教育者 菊池理園さん

ABT公式教育アーティスト
NY市立公立学校ダンス科臨時教員

 ニューヨークを拠点にダンス教育者、バレエ指導者として活動している菊池理園(きくち・りおん)さん(26)は、日本の防衛医科大学校で看護・医学を学び、看護師と保健師の国家資格を取得した異色の経歴を持つ。ダンサーの怪我予防やヘルスケアに医療知識を活かす教育者を志した情熱で一念発起して2年前に留学のため来米した。

 ニューヨーク大学(NYU)大学院でダンス教育学の修士号を取得、現在は米最高峰のバレエ団アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の公式教育者として、また市内公立校では一般児童から特別支援学級(自閉症・発達遅滞等)の子どもたちまでを指導する生活を送っている。

 防衛医科大に進んだのは、父親が自衛官だったこともあるが、中学時代から親の転勤に伴い東京、アラバマ州で過ごしたことが、防衛省傘下の防衛医科大で、国際的にどれくらい勉強ができるのだろうかという探究心につながった。将来バレエを続ける上で、ダンサー自身の怪我の予防に活かすために看護学や医学の知識を学びたいと思うようになった。そして多くのバレエダンサーたちを支える職業像を描いた時に、看護師・保健師の両方の国家資格を同時に取得できるのは防衛医科大のみだったことも大きな理由だ。看護師はメンタルな部分で保健師は社会全体を見てサポートする。

 高校時代にアラバマで地元のバレエ教室に通った時に、ABTに所属した教師の指導を受けたことが、帰国後再び海外、そして今度はニューヨークへ留学したいという卒業後の進路の希望へと繋がった。

 本来、防衛医大卒業後は看護師として6年間の防衛医大または自衛隊基地での勤務が義務付けられているが、在学中にNY大に合格したこともあり「卒業したら勤務には就かずに留学の道を選びたい」と大学に伝えた。規定の償還金を一括で支払う必要があるため、家族の多大な支えを得てその手続きを完了させ、渡米を果たした。

 「バレエは趣味でやっていけばいいと思っていた父親にとってはショックだったようです。最初は大反対でしたが、今は応援してくれています」という。

 現在は米最高峰バレエ団(ABT)での活動、大学院での指導経験が認められ、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)の公式「Teaching Artist」として活動している。多様性をテーマにしたプログラムや、公立校でのアフタースクール・プログラムなどでメインの指導を任せてもらっており、公立学校の通常及び特別支援学級での指導は、9月からも引き続き臨時教員として登録、活動する。

 これに加え、今年9月以降は、ABT認定スクール「American Youth Dance Theater(AYDT)」でのバレエ指導とABTティーチングアーティストとしての活動が米国におけるキャリアの完全なメインとなる予定だ。

 「防衛医科大で学んだことは、国を担っている者としての自覚と知識。世界ではまだ戦争の中で生きる多くの子供達がいる。医療従事者としてバレエ教育者としてその両方を学んだ経験で、どんな辛い時でもバレエという美しい、そして楽しい世界があることを伝えていきたい」と話した。

 (三浦良一記者、写真も)

建国250年で岐路に立つ米国文明

 独立以降の米国は欧州からの移民が基盤を作ったことから、ヨーロッパ文明圏が新大陸に進出したに過ぎないという言い方は可能だ。だとすれば、米国が独立の文明を持つというのは過大評価となるかもしれない。けれども、2度の世界大戦を経て世界の盟主へと米国を押し上げたものは、やはり米国独自の文明であった。

 具体的には、開拓民が育んだ独立独歩の気概と、都市が育んだ理想社会を実験し続ける気風が原点である。この2つの態度が、時代によって対立軸を変えながら、二大政党のダイナミックな牽制と協力というメカニズムを通じて社会経済に活力をもたらしてきた。理想と現実は矛盾するが、そこは現実主義で調整することで理想も現実も捨てないという米国流のプラグマティズムは、まさにこの2つの態度をルーツとして一大文明を築いたのである。けれども、建国250年を迎えた現在、二大政党は分断の泥沼を脱することができず、社会には閉塞感が満ちている。米国という文明は明らかに行き詰まっている。

 問題は分断だけではない。現在アメリカにおいて分断や対立を形成している各グループの思想が、実は米国オリジナルではないということに、危機感を感じざるを得ない。まず、理念として機会の平等や国際協調、人種の平等などを掲げつつ、自由競争経済やグローバリズムを推進するという、クリントン、ブッシュ、オバマ3代12年間の政治は、実は米国独自のものではない。一言で言えば英国のトニー・ブレアが提唱した「第三の道」のコピーである。

 勿論、同様の思想はアメリカにもあり、レーガン政権はそうした合理主義で国の荒廃を救ったというのは事実であろう。経済のグローバル化に適応したのはクリントンの功績かもしれない。けれども、思想として考えたときには、サッチャーの冷徹な合理主義に、ブレアが理念を接ぎ木していった「第三の道」にこそオリジナリティがあるのであって、クリントン、ブッシュ、オバマには厳密な意味でのオリジナリティはないのである。

 さらに言えば、現政権に代表されるような反エリート感情を求心力とした自国中心主義というのは、2009年の金融危機を受けて経済社会が混乱したEUが発祥である。勿論、米国には孤立主義の伝統があり、ポピュリズムの歴史も多々ある。けれども、21世紀型の反エリート、反グローバリズムのポピュリズムということでは、英国のブレグジットやフランスのルペン父娘など欧州が先行しており、これもまたアメリカ独自のものではない。

 本稿の時点で勢いが増している民主党の党内左派についていえば、思想としてほぼ100%欧州由来のものであって、これこそ独自性はない。公選による民主社会主義、左からの反グローバリズム、左からの反戦など、何もかもが欧州の長い歴史の中で変遷を経てきた思想以上でも以下でもない。彼らが重視している環境問題にしても、本家は欧州である。

 つまり、90年代以降のアメリカで起きたことは、思想とか文明のレベルではオリジナリティに欠けるのだ。これでは世界最古の民主的な共和国として建国250年を祝うなどということは、かなり難しい。確かに、今回の250周年行事は盛り上がりに欠け、その背景には分断という問題がある。けれども、さらに根底の部分でアメリカがその文明の独自性を消失しているというのは、やはり深刻な問題であろう。

 一方で、21世紀に入って以降も、アメリカの国力は衰えていない。これは何と言ってもテクノロジーの進歩に経済的な価値創出を組み合わせた民間が牽引した結果である。けれども、ここへ来てAIの急速な進歩により米国の民間活力も壁に突き当たっている。知的活動における機械依存と雇用危機、過剰な監視統制の可否、出力内容の真正性の確保など、人間とは何かという根源的な問いに立ち戻る必要が立ちはだかっている。

 これは米国文明にとって正念場であろう。欧州のように環境やプライバシーなどの観点からブレーキを踏むのが良いのか、あるいは中国のように技術を統制の道具とする社会実験を続けていいのか、正答はそのどちらでもないに違いない。では、アメリカという文明はこの問題にどのような答えを出してゆくのか、アメリカはまさに歴史の岐路に差し掛かっている。

(れいぜい・あきひこ/作家・プリンストン在住)

NYで日本食材の底力 ファンシーフードショーに日本32社

 北米最大級の高級食品見本市「サマー・ファンシー・フード・ショー2026」が6月28日から30日まで、0ジェイコブ・K・ジャヴィッツ・コンベンションセンターで開催された。主催者情報などによると、今年は約2500社が出展し、8000人超のバイヤーが来場。約34万平方フィートの会場に24の国際パビリオンが並び、世界各地の食の最前線が集結した。

■JETROと農林水産省の支援によるジャパンパビリオンには、日本各地から32社が出展。抹茶、日本茶、和牛、調味料、菓子、加工食品など、日本ならではの品質と物語性を前面に打ち出した。

■京都の日本茶専門店「茶匠六兵衛」は、1818年創業の老舗茶問屋の流れを受け継ぎ、代表の井上祐氏が抹茶の魅力を海外市場へ伝える。

■鹿児島県からは「鹿児島黒牛」を紹介。県農政部の新原慎一氏は、日本一に輝いた和牛の霜降り、口どけ、厳格な衛生・トレーサビリティを訴求し、米国市場で他国産WAGYUとの差別

化を図る狙いを示した。

■日本食の人気定着

 次の課題は「おいしい」だけでなく、産地、技術、信頼まで伝えるブランド発信にある。ジャパンパビリオン全体からは、単なる日本食紹介にとどまらず、地域産品の背景、職人技、安心・安全へのこだわりを、いかに米国市場の言葉で伝えるかという各社の挑戦が見えた。

■2026年のトレンドと特徴

 会場では、低糖質・高たんぱく・高繊維など健康志向を反映したスナックや機能性飲料、韓国、ベトナム、西アフリカなど多文化の味を取り入れた商品、さらに温めるだけで本格的な味を

楽しめるプレミアム簡便食が目立った。ノンアルコール飲料の進化も著しく、「あえて飲まない」ライフスタイルの広がりを感じさせた。また、米国企業のブースでは「サステナビリティ」を大きく掲げる展示も多く、環境配慮が一過性の流行ではなく、食品ビジネスの経営基盤になっていることを印象づけた。

■古市裕子

サステナビリティ・ジャーナリスト。国連サステナビリティ (ABD: Ph.D.) 。

著書・新潮社『欧米企業に学 ぶ・SDGs 転換戦略:サステナブル×これからの企業価値』。『パーパス: 何の ために存在しどんな価値を提供するのか』

建国250年祝う海と空 NY両岸で花火

独立記念日盛大に

 米国の独立記念日となった4日、ニューヨークでは建国250年を祝う大規模な記念行事が朝から夜まで繰り広げられた。中心となったのは、ニューヨーク港を舞台にした帆船パレードと、夜のメイシーズ花火大会で、マンハッタン、ブルックリン、ジャージーシティ、ホーボーケンなど水辺の観覧スポットには、多くの市民や観光客が詰めかけた。

(写真上)大勢の市民が見守る中、ハドソン川上空を飛行した各国精鋭のアクロバット航空隊の戦闘機(写真・植山慎太郎)

 日中には、米海軍のブルーエンジェルスを先頭に、米軍や同盟国の航空機による大規模な飛行ショーが行われた。あわせて、世界各国から集まった帆船や艦船がニューヨーク港からハドソン川へ進むパレード「セイル・フォース250(Sail4th 250)」を実施した。帆船パレードは、1976年の建国200年や、自由の女神100周年を祝った1986年の大規模海上行事を思わせる演出で、港町ニューヨークの歴史を印象づけた。

 夜には、恒例のメイシーズ・フォース・オブ・ジュライ花火大会が開催された。数日間続いた危険な熱波はこの日が山場となり、雷雨など悪天候への懸念から、通常は午後9時半前後に始まるところ9時過ぎに打ち上げが始まった。今年は同大会の50回目とも重なり、花火はロウアー・ハドソン川とロウアー・イースト川に配置された6隻の打ち上げ台船などから放たれ、ブルックリン橋では特別演出も行われた。

 打ち上げられた花火は約8万5000発に上り、このうち約2万発はブルックリン橋での演出用に特別に設計された装置から放たれた。赤、白、青を基調とした光が夜空と川面を彩り、ショーの模様はNBCなどを通じて全米に中継された。

 ニューヨーク市と周辺地域では、花火に合わせ道路閉鎖や交通規制が敷かれ、観覧後の地下鉄、PATHトレイン、フェリー、道路の混雑も目立った。ハドソン川とイースト川の双方を使う今回の花火大会は、建国250年を祝う特別仕様で、市内各地では関連イベントも行われた。一方、花火の最中にブルックリン橋の仮設設備付近で小規模な火災が発生。消防が対応し、けが人は報告されていない。 

「私の仕事を増やさないで」 田村麻子のカーテンコール

 母が昔からよく使う言葉の中に、私がどうしても好きになれないフレーズがある。

「私の仕事を増やさないで」

 たいていそれは、私が何か失敗をした時や、家のルールを間違えた時に言われた言葉だった。忙しいのにこれ以上迷惑をかけるな、もっと注意深くなれ、というその裏の意味は、自分が母になってからは、よく理解できるようになった。だが私は、娘に同じ言葉を使ったことは一度もない。この一言を聞くたびに心がきゅっと固くなり、悲しくなったことを覚えているからだ。子供の私にとってそれは単なる注意ではなく、「あなたは私の負担を増やす厄介な存在だ」という意味に等しかった。

 日本では昔から「人に迷惑をかけないこと」が美徳とされてきた。電車の中では静かにし、公共の場はきれいに使い、相手の時間や労力は極力奪わない。そうした心遣いは日本社会の素晴らしさの一つだと思う。

 しかしその価値観が強くなりすぎると、人は他人にも自分にも厳しくなる。困っていても助けを求められず、育児や介護を一人で抱え込んでしまう。さらに「人に迷惑をかけない」は、裏を返せば、「自分も人から迷惑をかけられるべきではない」という価値観でもある。自分にそこまで厳しく律してきた分、他人にも同じ基準を無意識に求めてしまうのだろう。困っている人を見ても「自分で何とかすべきだ」と考え、時には他人の不手際を公然と批判することさえある。または、下手に介入して、逆に迷惑になる事を避ける人もいるのかもしれない。

 実は私は、音楽の世界でも同じことを感じる時がある。ある高名な指揮者のもと、著名なオーケストラと共演した時のことだ。私は迷惑をかけまいと様子を伺いながら歌い、そんな私を気遣って彼も控えめに棒を振り、その空気を読んだオーケストラもまた固唾をのんで演奏していた。皆が互いに遠慮し合うあまり、音楽が縮こまってしまって、三者で苦笑したことがある。本来アンサンブルとは、互いに遠慮し合うものではなく、よく聴き合いつつ自分のやりたい事を表現し、そして相手も受け止め合いながら一つの世界を創り上げていくものだ。

 社会の中で生きるということは、このアンサンブルと同じではないかと思う。隠居した仙人でない限り、誰にも迷惑をかけずに生きられるわけはない。気を配りつつ助け合い、時には面倒をかけ合って生きていくものだ。その温かいやり取りの繰り返しの中にこそ、人間関係の豊かさがある。

 日本にはまた、「困った時はお互い様」という暖かい言葉もある。気をつけていても迷惑をかけてしまった時、かけられた時には、「お互い様」と笑って許し合えるバランスの良い社会が、一番居心地が良いのではなかろうか。「迷惑をかけない」が日本の美徳であり続ける一方で、「迷惑をかけ合うのもまた人間」と認め合うことも同じくらい大切な価値観として育ってほしい。

 母のあの言葉も、きっと彼女なりの不器用な、「迷惑をかけないで」という時代の呪縛だったのかもしれない。私自身はそんな「お互い様」の精神を胸に、今日もまた誰かに少し迷惑をかけている。

田村麻子=NYタイムズ紙に「輝くソプラノ」と絶賛されリンカーンセンターデビュー。欧米歌劇場で『椿姫』『ルチア』『蝶々夫人』他、数々の主役に抜擢。W杯前夜祭3大テナー公演で故パヴァロッティらと共演。MET管、BBC交響楽団などと共演。MLB公式戦にて外国人初の米国国歌斉唱の栄誉を担う。ディステファノ国際コンクール(伊)1位。米マネス音楽院首席修了。世界を舞台に活躍する国際的プリマドンナ。

海外結婚相談室 直感を信じて一歩踏み出そう

スピードデートが教えてくれる出会いのヒント (5)

 ニューヨークでは、マッチングアプリのようなバーチャルな世界での出会いが増えている一方、五感で相手を感じられる「スピードデート」という対面イベントも人気です。スピードデートは、一度のイベントで多くの異性と1対1の短い会話を順番に重ねていく、効率的でエキサイティングな出会いのスタイルです。

 「スピードデート」は、とてもシンプル。参加しているお相手候補者全員と、一人あたり5分程度の対話を順番に行っていきます。時間の合図とともに男性が次の席へと移動、お相手全員とお話しが終わった後、「もう少し話してみたい」「連絡先を交換したい」と感じた方を選んで主催者へ伝えます。お互いの希望が一致すればマッチングが成立。連絡先交換や次のデートへと繋がっていく仕組みです。

画面越しでは分からない「直感」の力

 スピードデートの最大の魅力は、お相手の話し方や雰囲気、そして「直感的な相性」を短時間で体感できる点にあります。画面越しに文字だけのコミュニケーションに行き詰まりを感じがちな婚活において、「まずはリアルで会ってみる」というアプローチは、実は理想のパートナーに出会うための近道なのです。

安心感と、質の高い出会いを両立

 結婚相談所が主催するスピードデートであれば、参加者全員の意識が「結婚」にフォーカスしているため、安全で質の高い出会いが期待できます。エンタメ的な要素もあり、リラックスして出会えると参加者からは毎回、好評をいただいています。

 「プロフィールや写真だけでは、お断りしていたかもしれないお相手でも、実際にお会いしてみたら印象が全く違った。『真剣交際』へと発展しました」という嬉しいフィードバックも少なくありません。条件やデータだけでは測れない五感のひらめきが、そこにはあります。

ニューヨークでの新しい一歩に向けて

 私たちの結婚相談所では、ニューヨークをはじめ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、東京、シンガポールなど数多くのスピードデートを開催し、世界中でご縁を繋いできました。 

 ぜひ次回ニューヨークで開催される際には、勇気を出して一歩を踏み出してみてください。あなたの直感が、未来のパートナーを引き寄せる素晴らしいきっかけとなりますように。私たちはいつでも、あなたの新しいスタートを心から応援しています。

松本直子

国際結婚相談所TJM代表。米国を拠点に、世界でパートナーを探す日本人女性と海外男性の良縁を繋ぐ。温かく丁寧な支援で成婚へ導く。  https://traditionaljapanesematchmaker.us/

イーストビレッジで「赤色エレジー」あがた森魚

CRSが癒しの音楽と共催

 シンガーソングライターとして第一線で55年、アルバムも絶えることなくリリースし続けているあがた森魚さんがこのほど来米し、ニューヨークのイーストビレッジにある教会ミドル・チャーチでソロコンサートを行った。ギター伴奏は髙橋裕。後半はコンサートを共催したCRSと癒しの音楽活動をするサウンド・ヒーリング・サンクチュアリーのサコ・ミヨジとケビン・ナサニエール両氏とのジェムセッションが加わった。

 あがたさんは、「サルビアの花」や「春の嵐の夜の手品師」を歌ったあと稲垣タルホの世界観も語りで披露しながら、1972年の自身のデビュー曲「赤色エレジー」を熱唱した。「赤色エレジー」は、今から半世紀以上も前にアニメーターのような画家を目指して上京した若き幸子と一郎の同棲生活を描いた林静一の漫画で、月刊漫画雑誌「ガロ」に連載された作品。あがたさんはその二人のエレジーな生活に感動してこの曲を作ったという。

 そしてボブ・ディランに憧れて若き日にニューヨークに来たあがたさんは、ニューヨークにも幸子と一郎のような若き日本人の画家やアーテイストたちがいることを知る。当日は、かつてニューヨークで幸子や一郎を地で生きた在留邦人アーティストたちが今もなお健在とばかりに大勢コンサートに詰めかけた。聞き入った人からは「まるで同窓会やね」と言った声も聞かれたほどだ。そしてあがたさんは北海道小樽市で育った少年時代の担任教師、佐藤啓子先生を敬う歌を披露することも忘れなかった。

 あがたさんは「僕がニューヨークにひかれるのは、やはり強くて大きな、錯綜する近代がそこにぎっしりあるからです。僕の感受性では、自分が小学校時代に過ごした小樽の街と同じなのです。近代の栄光と錯綜を強く内包し、それでもそれは、未来への強い希望を秘めていることが強く感じ取れるからです。こんなに魅力的な場所は僕にはそうそうないのです。ですので、今後とも様々なトライをしていきたいです」と語った。

黄昏時のイーストビレッジが、70年代の東京とオーバーラップしたコンサートだった。      (三浦)

【今週の紙面の主なニュース】(2026年7月4日号)

(1)日本敗退もNYは熱気  FIFA 19日世界一決定戦

(2)大型帆船NY来航 7月4日の独立記念日

(3)短歌とジャズの融合で新世界 及川陽菜さん

(4)伊藤沙帆 NYで朗読劇上演

(5)米・イラン会談を支えるスイスの仲介外交

(6)JPX 山道CEOを表彰 外交政策協会NY夕食会

(7)沖縄の住民探して 元海兵隊員の孫

(8)米国ESTAで大規模障害 一度は「承認」も突如却下

(9)建国記念25セント硬貨25万枚発行へ

(10)JAPAN BEYOND the GENKAN   日米関係支える力紹介

大型帆船NY来航 7月4日の独立記念日

世界30ヵ国以上
建国250周年記念

 米国建国250周年(セミクインセンテニアル)を記念する国際イベント「Sail4th 250」が7月4日(土)の独立記念日にニューヨーク港で開催される。世界30か国以上から大型帆船(トールシップ)が集結し、自由の女神像やマンハッタンの摩天楼を背景に史上最大規模の帆船パレードが繰り広げられる。主催者は600万人を超える来場者を見込んでいる。翌5日には、NJ州メットライフ・スタジアムでFIFAワールドカップでラウンド・オブ・16(ベスト16決定戦/決勝トーナメント1回戦)が開催される予定で、世界中から多くの観光客がNY都市圏を訪れる見込みだ。独立記念日の祝賀行事とワールドカップが重なることで、この夏は近年で最も国際色豊かな1週間になると期待されている。

 今回のイベントは、1976年のアメリカ建国200周年、2000年のミレニアム祝賀で実施された帆船パレードを受け継ぐもので、建国250周年という歴史的節目を祝う最大の記念行事の一つとなる。各国の帆船は自国の国旗を掲げてニューヨーク港を航行し、国際親善と文化交流を象徴する航海を披露する。

 主催団体「Sail4th 250」のクリス・オブライエン会長は「大型帆船は各国を代表する親善使節であり、このイベントは過去を振り返るだけでなく未来へ向けた希望を共有する機会になる」と述べている。オブライエン氏は元米沿岸警備隊員で、企画は4年以上前から進められてきたという。パレード終了後は、参加する帆船の多くが数日間ニューヨーク港に停泊する予定で、一般公開や船内見学、世界各国の乗組員との交流イベントもある。普段は目にする機会の少ない歴史ある帆船を間近で見学できることから、家族連れや観光客にも人気を集めそうだ。各船は航海の様子をSNSで発信し、世界中の人々がオンラインでもイベントを楽しめるようになる。

 この時期は日本の海上自衛隊の令和8年度遠洋練習航海船がNYに来ているが、Sail4th 250には参加せず、ハドソン川に錨泊する。公開上船などの予定はない。イベントの詳細は公式サイトhttps://sail4th.orgを参照する。

(写真上)photo : U.S. Navy, Fleet Forces Command 

建国250年祭

独立記念にピーク
世界が注目のイベント続々

EVENT

■ジェファーソンの「独立宣言」公開=7/1〜7/7 NYPL(476 5th Ave, )五番街42丁目にあるNY公立図書館(NYPL)は建国250周年記念行事の一環として、建国の父トーマス・ジェファーソンが1776年7月1日に自筆で記した「独立宣言」の貴重な歴史的写本を一般公開する。同館に保存されている「独立宣言」の希少かつ貴重な写本は、トーマス・ジェファーソンが自筆で作成した現存する数少ない「清書」の一つ。入場無料だが要事前予約。詳細はhttps://events.leapevents.com/tickets/declaration-independence-nypl-2026/tag/nyplconnect

■タイムズスクエアの独立記念日カウントダウン&ライブ=7/3 大晦日以外では史上初となる夏のカウントダウンイベント。アメリカ国内の各タイムゾーンが真夜中を迎える瞬間に合わせ、1日に8回のボールドロップ(カウントダウン)が実施される。タイムズスクエアの会場に観覧エリアなどは設けられないため、ストリーミングなどで視聴する。詳細はhttps://www.timessquarenyc.org

■コニーアイランドで前夜祭・独立記念日の花火=7/3・4 21:45 Coney Island Beach (W 12th St付近) 3日と4日の2夜連続で花火が打ち上げられる。打ち上げ場所のリゲルマン・ボードウォーク(遊歩道)では迫力のある花火が見られる。そのほかビーチの砂浜や、Deno’s Wonder Wheel(観覧車)から見る花火もおすすめだが混雑必死なので早めの到着を推奨する。詳細はhttps://www.allianceforconeyisland.org/events-programming

■「Sail4th 250」=7/3〜7/8 建国250周年を祝う祝賀行事の一つ。世界32か国から約1万5000人の水兵を乗せた、大規模帆船や海軍艦艇の艦隊がNY港に集結する海洋イベント。7/3はクラスBの船のパレードがイーストリバーで、7/4はクラスAの帆船パレードがハドソン川で開催。4日朝は海軍所属のアクロバット飛行隊ブルーエンジェルスが先導を務め、米国および各国の大規模な編隊が、ハドソン川に架かるジョージワシントン橋上空と、セーリングパレードの上空を飛行する。帆船はNYの各埠頭に8日まで停泊し、船内の一般見学なども行う。詳細はhttps://sail4th.org/

■ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権=7/4 11:00〜13:00 Coney Island(1310 Surf Ave, Brooklyn,)100年以上の歴史を持つ、独立記念日の午前中に行われる恒例イベント。去年の勝者は男性部門がジョーイ・チェスナットが70本と半分、女性部門は須藤美貴が33本のホットドッグを完食した。詳細はhttps://nathansfranks.sfdbrands.com/en-us/promotions/hot-dog-eating-contest/

■Macy’s花火大会=7/4 20:00  今年は建国250周年と同時に同花火大会の50周年を祝い、イーストリバーとハドソン川のダウンタウンエリアに浮かぶ船から、史上最多となる合計8万5000発の花火が打ち上げられる。ブルックリン橋では史上初のレーザー演出もある。花火の前のパフォーマンスショーは午後8時から、花火は日没後にスタート。テレビ中継はNBCにて。花火の観覧場所等は公式サイトで確認する。詳細はhttps://www.macys.com/s/fireworks/

■フレンチ・レストラン・ウィーク=7/4〜19  米仏友好250周年を記念し、NYで開催されるイベント。ノーホーの「ラファイエット」やトライベッカの「フレンチェッテ」、ヘルズキッチンの「マルセイユ」、ダニエル・ブールー氏が手がける各店が参加。プリフィックス・メニューやクロックムッシュなどの軽食、伝統的フレンチのコースなどを提供する。詳細はhttps://frenchrestaurantweek.com

MUSIC

■コンサート「Happy Birthday America」=7/5  16:00〜18:00  Conference House Park(7455 Hylan Blvd., Staten Island)スタテンアイランド・フィルハーモニー管弦楽団による、合衆国建国250周年を祝う無料の野外コンサート。アメリカのクラシックと祝賀にふさわしいオーケストラ作品を演奏する。詳細はhttps://conferencehouse.org/events/

THEATRE/DANCE 

■シェイクスピア・イン・ザ・パーク=8/23まで Delacorte Theater in Central Park 6/28までは約20年ぶりの上演となる『ロミオとジュリエット』。7/25〜8/23までは、晩年のシェイクスピアによる悲劇と喜劇、そして赦しと再生が混ざり合った独特な戯曲『冬物語(The Winter’s Tale)』を上演する。入場無料。詳細はhttps://publictheater.org/free-shakespeare-in-the-park

ART

■加藤亮太郎の陶芸展=7/7〜8/28 Joan B Mirviss LTD(39 E 78th St, Suite 401)岐阜県美濃地方、多治見市にある名門「幸兵衛窯」の8代当主で、人間国宝の祖父を持つ陶芸家の加藤氏による個展。オブジェや花器、水指、書作品等を展示する。入場無料、完全予約制。詳細はhttps://www.mirviss.com/

■YUKAKO (由賀子) 個展「INTO THE FOREST, INTO THE SKY」=7/23まで The International Center of CCCS(80 Maiden Lane, 14F)「森林の中へ、空の上へ」をテーマに、見る人がそれぞれの絵画の物語の登場人物として世界の中に入り込む「想像的没入型展示会」。入場無料。開廊時間は月〜木曜の11時から16時。

■画家・依田寿久の個展「Toshihisa Yoda: Continuum, 1967  oday」=8/7まで  NowHere(40 Lispenard St, )1960年代から現在までの依田の制作を30点の作品を通して紹介する。展覧会は2部構成で、前期「1960s  990s」(6/4〜7/2)、後期「2000s  oday」(7/9〜8/7)として開催。依田は色彩の重なりや反復的な筆致、瞑想的な構成を特徴とし、日本的感性とニューヨークの都市的風景が重なり合う独自の作品世界を築いている。入場無料。詳細はhttps://nowhere-nyc.com

メイシーズの花火を見るには
郊外でも楽しめる独立記念日

 今年のメイシーズの花火は、ロウアー・ハドソン川、ロウアー・イースト川、ブルックリン橋から打ち上げられるため、例年以上にニュージャージー側からも見やすくなる。次の5か所がおすすめ。テレビ中継はNBC(英語)、Peacock(配信)、Telemundo(スペイン語)で午後8時から生中継される。

1 ブルックリン・ブリッジ・パーク(ブルックリン)

 今年のメイン観覧会場の一つでブルックリン橋と花火を一緒に撮影できる絶景スポット。一部エリアは事前チケット制。

2 サウスストリート・シーポート(マンハッタン)

 ブルックリン橋に最も近い人気観覧エリア。こちらも一部は事前チケット制。

3 ジャージーシティ・ウォーターフロント(Exchange Place) 

 今年の公式観覧会場。昼間から無料フェスティバルやコンサートが開催され、夜はメイシーズ花火を正面から観賞できる。チケット不要。

4 ホーボーケン(Pier A Park、Sinatra Park、Maxwell Place Park) 

 マンハッタンの夜景とメイシーズの花火を一緒に楽しめる人気スポット。非常に混雑するため早めの到着がおすすめ。

5 FDRドライブ(ロウアー・マンハッタン) 

 今年も一般開放される無料観覧エリア。打ち上げ場所に近く迫力は抜群だが、かなりの混雑が予想される。

郊外の主な花火大会

〈ウエストチェスター郡〉

●バルハラ 

Kensico Dam Plaza

 4日ではなく3日に「Westchester County Music Fest and Fireworks」を開催。午後5時から音楽イベントが始まり、午後9時ごろ花火。郡主催の大規模イベントとして人気が高い。

●ライ 

Rye Playland Beach

 4日午後9時からロングアイランド湾を背景に恒例の花火大会。遊園地「プレイランド」の人気イベントで、夏の金曜日にも花火が予定されている。

●ママロネック 

Harbor Island Park

 4日午後9時15分ごろ打ち上げ。消防団主催のカーニバル、ライブ音楽、屋台とともに楽しめる人気イベント。

●ニュー・ロシェル 

Hudson Park & Beach

 4日開催の「Spark the Sound」と題した恒例の花火大会。午後9時開始。花火は全米的に有名なグルッチ社が担当し、ハドソン・パークが観覧スポットとなる。

●タリータウン 

Pearson Park

 4日開催。昼はジャズ演奏やフードトラック、子ども向けイベントがあり、夜に花火が打ち上げられる。スリーピー・ホロー側からも観覧できる。

〈ニュージャージー州〉

●バーゲン郡

 Overpeck County Park(Leonia/Ridgefield Park)

 4日(土)午後2時より。建国250年を記念する「Bergen250」の公式イベント。ライブ音楽、フードトラック、子ども向けイベント。午後9時25分ごろから独自の花火大会が行われる。

日本敗退もNYは熱気  FIFA 19日世界一決定戦

 FIFAワールドカップ2026で日本代表は6月29日、ブラジルとの決勝トーナメント1回戦(ラウンド32)で善戦したものの惜敗し、悲願の上位進出はならなかった。日本チーム5回目の決勝トーナメント、3大会連続の挑戦だったが壁は厚かった。前半29分に佐野海舟が先制のゴールを決めたが、後半11分に同点に追いつかれ、アディショナルタイムで逆転負けした。勝利していれば7月5日にニュージャージー州イーストラザフォードで開催されるラウンド16への進出も期待されたが、その夢は持ち越しとなった。一方、ニューヨーク・ニュージャージー地区では大会終盤の主要試合が予定されており、世界最大のスポーツイベントはこれからクライマックスを迎える。

 大会期間中、マンハッタンでは日本クラブ、NY日本商工会議所(JCCI)、ニューヨーク日系人会(JAA)日系3団体が中心となって日本代表の応援イベントを計3回開催。日本人駐在員や留学生、家族連れら多くのファンが集まり、青いユニフォーム姿で声援を送り続けた。結果は悔しい敗退となったが、海外で暮らす日本人が一つになって代表を後押しした応援の輪は、日系社会の結束を感じさせる機会となった。「悔しい。でも日本に勇気を与えてくれた試合だった」と涙ぐむ応援者もいた。

 ニューヨーク地区では7月5日にラウンド16が開催され、日本を破ったブラジルは勝ち上がれば同会場で再び登場する。そして大会の締めくくりとなる決勝戦は7月19日(日)、イーストラザフォードで開催される予定で、世界中から数十万人規模のサポーターや観光客が訪れる見込みだ。

 大会期間中はマンハッタンとニュージャージーを結ぶ鉄道やバス、高速道路で混雑が予想される。ニューヨーク日本国総領事館は、試合当日は公共交通機関を利用し、時間に余裕を持って行動することや、人混みでのスリや置き引きなどへの警戒を呼び掛けている。また、市当局も会場周辺や主要駅周辺で交通規制強化を実施し、観戦や外出の際には最新の交通情報を確認するよう求めている。

 日本代表の挑戦は終わったが、ワールドカップはなお続く。ニューヨーク・ニュージャージー地区は決勝戦の舞台として、世界の視線を集めることになる。

(写真)マンハッタンで開催された日本応援観戦イベント

短歌とジャズの融合で新世界 及川陽菜さん

アルトサックス奏者
作編曲家、歌人

 ニューヨークを拠点に活動するアルトサックス奏者・作編曲家、バンドリーダー、歌人の及川陽菜(おいかわ・ひな)さんは8月にファーストアルバム『Short Songs』をリリースする。音楽監修にはライアン・ケバリー氏、編曲・共同制作にジャズトランペッター、小倉直也氏を迎え、現代NYジャズシーンを担う若手実力派ミュージシャンたちと共に制作した。ラージ・アンサンブルと短歌を結びつけるプロジェクトから生まれたユニークな作品。タイトル「ショート・ソングス」は及川のもうひとつの表現である「短歌」の直訳だ。

 及川さんは埼玉県朝霞市出身。中学の時に吹奏楽部に入り、子供心ながらカッコいいと思っていたアルトサックスに配属されたのがきっかけだった。高校時代にジャズに惹かれジャズ科があった尚美学園大学に全額特待生として進学、2020年卒業と同時に留学予定だったが、コロナ禍で1年延期、その期間に自分の時間の中で出会ったのが短歌だった。

 ジャズ学科のあるニューヨーク市立大学クイーンズ校修士課程へ進み、そこで同大学院ジャズ作曲科を首席で修了したジャズトランペッターの小倉直也氏と出会い、結婚した。現在夫婦揃ってNYで音楽活動を続けている。プロポーズの際には及川が作った短歌連作「湯葉の国」に小倉が曲をつけて贈った。今回のアルバムにも収録されている。

 海外に目を向けるきっかけとなったのは、大学時代に参加したセイコー・サマー・ジャズ・キャンプだった。4日間の体験ではあったが、人生転換の重要な体験だった。同キャンプでも優秀な成績を残した及川は、10周年記念スペシャルライヴにキャンプ出身ゲストとして招かれ、ジャズ・アット・リンカーン・センター内ディジーズクラブ(7月30日)やブルーノート東京(8月9日)などへの出演が決まっている。

 リリースされる新作では、伝統的ラージ・アンサンブルの編成をベースに、短歌の言葉を歌詞として用いるだけでなく、短歌自体から着想を得た楽曲や、「五・七・五・七・七」という三十一音の構造そのものを、楽曲と即興演奏の設計へ取り込んでいる。冒頭曲「Introduction」では短歌の音数を拍子として再構築し、最終曲「Thirty-One Syllables」では三十一文字をメロディの骨格へと反映。「定型という制約の内側にこそ自由がある」という確信が、アルバム全体を貫いている。ヴォーカルにはベトナム系アメリカ人のミータム。日本語を母語としない彼女の、透明感あふれるフラットな歌声が言葉を音楽のなかへ自然に溶け込ませる。及川自身もアルトサックスで全編に参加し、タイトル・トラック「ショート・ソングス」などで印象的なソロも聴かせている。

 現代短歌は日常の風景を拾い上げ、新たな光を差し込む表現でもある。短歌アドバイザーには、「塔短歌会」を主宰する現代短歌を代表する歌人、吉川宏志氏を迎えている。ジャズと日本の短歌というクロスカルチャーな演奏が米国でどう評価されるのか注目される。

 (三浦良一記者、写真も)