イーストビレッジで「赤色エレジー」あがた森魚

CRSが癒しの音楽と共催

 シンガーソングライターとして第一線で55年、アルバムも絶えることなくリリースし続けているあがた森魚さんがこのほど来米し、ニューヨークのイーストビレッジにある教会ミドル・チャーチでソロコンサートを行った。ギター伴奏は髙橋裕。後半はコンサートを共催したCRSと癒しの音楽活動をするサウンド・ヒーリング・サンクチュアリーのサコ・ミヨジとケビン・ナサニエール両氏とのジェムセッションが加わった。

 あがたさんは、「サルビアの花」や「春の嵐の夜の手品師」を歌ったあと稲垣タルホの世界観も語りで披露しながら、1972年の自身のデビュー曲「赤色エレジー」を熱唱した。「赤色エレジー」は、今から半世紀以上も前にアニメーターのような画家を目指して上京した若き幸子と一郎の同棲生活を描いた林静一の漫画で、月刊漫画雑誌「ガロ」に連載された作品。あがたさんはその二人のエレジーな生活に感動してこの曲を作ったという。

 そしてボブ・ディランに憧れて若き日にニューヨークに来たあがたさんは、ニューヨークにも幸子と一郎のような若き日本人の画家やアーテイストたちがいることを知る。当日は、かつてニューヨークで幸子や一郎を地で生きた在留邦人アーティストたちが今もなお健在とばかりに大勢コンサートに詰めかけた。聞き入った人からは「まるで同窓会やね」と言った声も聞かれたほどだ。そしてあがたさんは北海道小樽市で育った少年時代の担任教師、佐藤啓子先生を敬う歌を披露することも忘れなかった。

 あがたさんは「僕がニューヨークにひかれるのは、やはり強くて大きな、錯綜する近代がそこにぎっしりあるからです。僕の感受性では、自分が小学校時代に過ごした小樽の街と同じなのです。近代の栄光と錯綜を強く内包し、それでもそれは、未来への強い希望を秘めていることが強く感じ取れるからです。こんなに魅力的な場所は僕にはそうそうないのです。ですので、今後とも様々なトライをしていきたいです」と語った。

黄昏時のイーストビレッジが、70年代の東京とオーバーラップしたコンサートだった。      (三浦)

【今週の紙面の主なニュース】(2026年7月4日号)

(1)日本敗退もNYは熱気  FIFA 19日世界一決定戦

(2)大型帆船NY来航 7月4日の独立記念日

(3)短歌とジャズの融合で新世界 及川陽菜さん

(4)伊藤沙帆 NYで朗読劇上演

(5)米・イラン会談を支えるスイスの仲介外交

(6)JPX 山道CEOを表彰 外交政策協会NY夕食会

(7)沖縄の住民探して 元海兵隊員の孫

(8)米国ESTAで大規模障害 一度は「承認」も突如却下

(9)建国記念25セント硬貨25万枚発行へ

(10)JAPAN BEYOND the GENKAN   日米関係支える力紹介

大型帆船NY来航 7月4日の独立記念日

世界30ヵ国以上
建国250周年記念

 米国建国250周年(セミクインセンテニアル)を記念する国際イベント「Sail4th 250」が7月4日(土)の独立記念日にニューヨーク港で開催される。世界30か国以上から大型帆船(トールシップ)が集結し、自由の女神像やマンハッタンの摩天楼を背景に史上最大規模の帆船パレードが繰り広げられる。主催者は600万人を超える来場者を見込んでいる。翌5日には、NJ州メットライフ・スタジアムでFIFAワールドカップでラウンド・オブ・16(ベスト16決定戦/決勝トーナメント1回戦)が開催される予定で、世界中から多くの観光客がNY都市圏を訪れる見込みだ。独立記念日の祝賀行事とワールドカップが重なることで、この夏は近年で最も国際色豊かな1週間になると期待されている。

 今回のイベントは、1976年のアメリカ建国200周年、2000年のミレニアム祝賀で実施された帆船パレードを受け継ぐもので、建国250周年という歴史的節目を祝う最大の記念行事の一つとなる。各国の帆船は自国の国旗を掲げてニューヨーク港を航行し、国際親善と文化交流を象徴する航海を披露する。

 主催団体「Sail4th 250」のクリス・オブライエン会長は「大型帆船は各国を代表する親善使節であり、このイベントは過去を振り返るだけでなく未来へ向けた希望を共有する機会になる」と述べている。オブライエン氏は元米沿岸警備隊員で、企画は4年以上前から進められてきたという。パレード終了後は、参加する帆船の多くが数日間ニューヨーク港に停泊する予定で、一般公開や船内見学、世界各国の乗組員との交流イベントもある。普段は目にする機会の少ない歴史ある帆船を間近で見学できることから、家族連れや観光客にも人気を集めそうだ。各船は航海の様子をSNSで発信し、世界中の人々がオンラインでもイベントを楽しめるようになる。

 この時期は日本の海上自衛隊の令和8年度遠洋練習航海船がNYに来ているが、Sail4th 250には参加せず、ハドソン川に錨泊する。公開上船などの予定はない。イベントの詳細は公式サイトhttps://sail4th.orgを参照する。

(写真上)photo : U.S. Navy, Fleet Forces Command 

建国250年祭

独立記念にピーク
世界が注目のイベント続々

EVENT

■ジェファーソンの「独立宣言」公開=7/1〜7/7 NYPL(476 5th Ave, )五番街42丁目にあるNY公立図書館(NYPL)は建国250周年記念行事の一環として、建国の父トーマス・ジェファーソンが1776年7月1日に自筆で記した「独立宣言」の貴重な歴史的写本を一般公開する。同館に保存されている「独立宣言」の希少かつ貴重な写本は、トーマス・ジェファーソンが自筆で作成した現存する数少ない「清書」の一つ。入場無料だが要事前予約。詳細はhttps://events.leapevents.com/tickets/declaration-independence-nypl-2026/tag/nyplconnect

■タイムズスクエアの独立記念日カウントダウン&ライブ=7/3 大晦日以外では史上初となる夏のカウントダウンイベント。アメリカ国内の各タイムゾーンが真夜中を迎える瞬間に合わせ、1日に8回のボールドロップ(カウントダウン)が実施される。タイムズスクエアの会場に観覧エリアなどは設けられないため、ストリーミングなどで視聴する。詳細はhttps://www.timessquarenyc.org

■コニーアイランドで前夜祭・独立記念日の花火=7/3・4 21:45 Coney Island Beach (W 12th St付近) 3日と4日の2夜連続で花火が打ち上げられる。打ち上げ場所のリゲルマン・ボードウォーク(遊歩道)では迫力のある花火が見られる。そのほかビーチの砂浜や、Deno’s Wonder Wheel(観覧車)から見る花火もおすすめだが混雑必死なので早めの到着を推奨する。詳細はhttps://www.allianceforconeyisland.org/events-programming

■「Sail4th 250」=7/3〜7/8 建国250周年を祝う祝賀行事の一つ。世界32か国から約1万5000人の水兵を乗せた、大規模帆船や海軍艦艇の艦隊がNY港に集結する海洋イベント。7/3はクラスBの船のパレードがイーストリバーで、7/4はクラスAの帆船パレードがハドソン川で開催。4日朝は海軍所属のアクロバット飛行隊ブルーエンジェルスが先導を務め、米国および各国の大規模な編隊が、ハドソン川に架かるジョージワシントン橋上空と、セーリングパレードの上空を飛行する。帆船はNYの各埠頭に8日まで停泊し、船内の一般見学なども行う。詳細はhttps://sail4th.org/

■ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権=7/4 11:00〜13:00 Coney Island(1310 Surf Ave, Brooklyn,)100年以上の歴史を持つ、独立記念日の午前中に行われる恒例イベント。去年の勝者は男性部門がジョーイ・チェスナットが70本と半分、女性部門は須藤美貴が33本のホットドッグを完食した。詳細はhttps://nathansfranks.sfdbrands.com/en-us/promotions/hot-dog-eating-contest/

■Macy’s花火大会=7/4 20:00  今年は建国250周年と同時に同花火大会の50周年を祝い、イーストリバーとハドソン川のダウンタウンエリアに浮かぶ船から、史上最多となる合計8万5000発の花火が打ち上げられる。ブルックリン橋では史上初のレーザー演出もある。花火の前のパフォーマンスショーは午後8時から、花火は日没後にスタート。テレビ中継はNBCにて。花火の観覧場所等は公式サイトで確認する。詳細はhttps://www.macys.com/s/fireworks/

■フレンチ・レストラン・ウィーク=7/4〜19  米仏友好250周年を記念し、NYで開催されるイベント。ノーホーの「ラファイエット」やトライベッカの「フレンチェッテ」、ヘルズキッチンの「マルセイユ」、ダニエル・ブールー氏が手がける各店が参加。プリフィックス・メニューやクロックムッシュなどの軽食、伝統的フレンチのコースなどを提供する。詳細はhttps://frenchrestaurantweek.com

MUSIC

■コンサート「Happy Birthday America」=7/5  16:00〜18:00  Conference House Park(7455 Hylan Blvd., Staten Island)スタテンアイランド・フィルハーモニー管弦楽団による、合衆国建国250周年を祝う無料の野外コンサート。アメリカのクラシックと祝賀にふさわしいオーケストラ作品を演奏する。詳細はhttps://conferencehouse.org/events/

THEATRE/DANCE 

■シェイクスピア・イン・ザ・パーク=8/23まで Delacorte Theater in Central Park 6/28までは約20年ぶりの上演となる『ロミオとジュリエット』。7/25〜8/23までは、晩年のシェイクスピアによる悲劇と喜劇、そして赦しと再生が混ざり合った独特な戯曲『冬物語(The Winter’s Tale)』を上演する。入場無料。詳細はhttps://publictheater.org/free-shakespeare-in-the-park

ART

■加藤亮太郎の陶芸展=7/7〜8/28 Joan B Mirviss LTD(39 E 78th St, Suite 401)岐阜県美濃地方、多治見市にある名門「幸兵衛窯」の8代当主で、人間国宝の祖父を持つ陶芸家の加藤氏による個展。オブジェや花器、水指、書作品等を展示する。入場無料、完全予約制。詳細はhttps://www.mirviss.com/

■YUKAKO (由賀子) 個展「INTO THE FOREST, INTO THE SKY」=7/23まで The International Center of CCCS(80 Maiden Lane, 14F)「森林の中へ、空の上へ」をテーマに、見る人がそれぞれの絵画の物語の登場人物として世界の中に入り込む「想像的没入型展示会」。入場無料。開廊時間は月〜木曜の11時から16時。

■画家・依田寿久の個展「Toshihisa Yoda: Continuum, 1967  oday」=8/7まで  NowHere(40 Lispenard St, )1960年代から現在までの依田の制作を30点の作品を通して紹介する。展覧会は2部構成で、前期「1960s  990s」(6/4〜7/2)、後期「2000s  oday」(7/9〜8/7)として開催。依田は色彩の重なりや反復的な筆致、瞑想的な構成を特徴とし、日本的感性とニューヨークの都市的風景が重なり合う独自の作品世界を築いている。入場無料。詳細はhttps://nowhere-nyc.com

メイシーズの花火を見るには
郊外でも楽しめる独立記念日

 今年のメイシーズの花火は、ロウアー・ハドソン川、ロウアー・イースト川、ブルックリン橋から打ち上げられるため、例年以上にニュージャージー側からも見やすくなる。次の5か所がおすすめ。テレビ中継はNBC(英語)、Peacock(配信)、Telemundo(スペイン語)で午後8時から生中継される。

1 ブルックリン・ブリッジ・パーク(ブルックリン)

 今年のメイン観覧会場の一つでブルックリン橋と花火を一緒に撮影できる絶景スポット。一部エリアは事前チケット制。

2 サウスストリート・シーポート(マンハッタン)

 ブルックリン橋に最も近い人気観覧エリア。こちらも一部は事前チケット制。

3 ジャージーシティ・ウォーターフロント(Exchange Place) 

 今年の公式観覧会場。昼間から無料フェスティバルやコンサートが開催され、夜はメイシーズ花火を正面から観賞できる。チケット不要。

4 ホーボーケン(Pier A Park、Sinatra Park、Maxwell Place Park) 

 マンハッタンの夜景とメイシーズの花火を一緒に楽しめる人気スポット。非常に混雑するため早めの到着がおすすめ。

5 FDRドライブ(ロウアー・マンハッタン) 

 今年も一般開放される無料観覧エリア。打ち上げ場所に近く迫力は抜群だが、かなりの混雑が予想される。

郊外の主な花火大会

〈ウエストチェスター郡〉

●バルハラ 

Kensico Dam Plaza

 4日ではなく3日に「Westchester County Music Fest and Fireworks」を開催。午後5時から音楽イベントが始まり、午後9時ごろ花火。郡主催の大規模イベントとして人気が高い。

●ライ 

Rye Playland Beach

 4日午後9時からロングアイランド湾を背景に恒例の花火大会。遊園地「プレイランド」の人気イベントで、夏の金曜日にも花火が予定されている。

●ママロネック 

Harbor Island Park

 4日午後9時15分ごろ打ち上げ。消防団主催のカーニバル、ライブ音楽、屋台とともに楽しめる人気イベント。

●ニュー・ロシェル 

Hudson Park & Beach

 4日開催の「Spark the Sound」と題した恒例の花火大会。午後9時開始。花火は全米的に有名なグルッチ社が担当し、ハドソン・パークが観覧スポットとなる。

●タリータウン 

Pearson Park

 4日開催。昼はジャズ演奏やフードトラック、子ども向けイベントがあり、夜に花火が打ち上げられる。スリーピー・ホロー側からも観覧できる。

〈ニュージャージー州〉

●バーゲン郡

 Overpeck County Park(Leonia/Ridgefield Park)

 4日(土)午後2時より。建国250年を記念する「Bergen250」の公式イベント。ライブ音楽、フードトラック、子ども向けイベント。午後9時25分ごろから独自の花火大会が行われる。

日本敗退もNYは熱気  FIFA 19日世界一決定戦

 FIFAワールドカップ2026で日本代表は6月29日、ブラジルとの決勝トーナメント1回戦(ラウンド32)で善戦したものの惜敗し、悲願の上位進出はならなかった。日本チーム5回目の決勝トーナメント、3大会連続の挑戦だったが壁は厚かった。前半29分に佐野海舟が先制のゴールを決めたが、後半11分に同点に追いつかれ、アディショナルタイムで逆転負けした。勝利していれば7月5日にニュージャージー州イーストラザフォードで開催されるラウンド16への進出も期待されたが、その夢は持ち越しとなった。一方、ニューヨーク・ニュージャージー地区では大会終盤の主要試合が予定されており、世界最大のスポーツイベントはこれからクライマックスを迎える。

 大会期間中、マンハッタンでは日本クラブ、NY日本商工会議所(JCCI)、ニューヨーク日系人会(JAA)日系3団体が中心となって日本代表の応援イベントを計3回開催。日本人駐在員や留学生、家族連れら多くのファンが集まり、青いユニフォーム姿で声援を送り続けた。結果は悔しい敗退となったが、海外で暮らす日本人が一つになって代表を後押しした応援の輪は、日系社会の結束を感じさせる機会となった。「悔しい。でも日本に勇気を与えてくれた試合だった」と涙ぐむ応援者もいた。

 ニューヨーク地区では7月5日にラウンド16が開催され、日本を破ったブラジルは勝ち上がれば同会場で再び登場する。そして大会の締めくくりとなる決勝戦は7月19日(日)、イーストラザフォードで開催される予定で、世界中から数十万人規模のサポーターや観光客が訪れる見込みだ。

 大会期間中はマンハッタンとニュージャージーを結ぶ鉄道やバス、高速道路で混雑が予想される。ニューヨーク日本国総領事館は、試合当日は公共交通機関を利用し、時間に余裕を持って行動することや、人混みでのスリや置き引きなどへの警戒を呼び掛けている。また、市当局も会場周辺や主要駅周辺で交通規制強化を実施し、観戦や外出の際には最新の交通情報を確認するよう求めている。

 日本代表の挑戦は終わったが、ワールドカップはなお続く。ニューヨーク・ニュージャージー地区は決勝戦の舞台として、世界の視線を集めることになる。

(写真)マンハッタンで開催された日本応援観戦イベント

短歌とジャズの融合で新世界 及川陽菜さん

アルトサックス奏者
作編曲家、歌人

 ニューヨークを拠点に活動するアルトサックス奏者・作編曲家、バンドリーダー、歌人の及川陽菜(おいかわ・ひな)さんは8月にファーストアルバム『Short Songs』をリリースする。音楽監修にはライアン・ケバリー氏、編曲・共同制作にジャズトランペッター、小倉直也氏を迎え、現代NYジャズシーンを担う若手実力派ミュージシャンたちと共に制作した。ラージ・アンサンブルと短歌を結びつけるプロジェクトから生まれたユニークな作品。タイトル「ショート・ソングス」は及川のもうひとつの表現である「短歌」の直訳だ。

 及川さんは埼玉県朝霞市出身。中学の時に吹奏楽部に入り、子供心ながらカッコいいと思っていたアルトサックスに配属されたのがきっかけだった。高校時代にジャズに惹かれジャズ科があった尚美学園大学に全額特待生として進学、2020年卒業と同時に留学予定だったが、コロナ禍で1年延期、その期間に自分の時間の中で出会ったのが短歌だった。

 ジャズ学科のあるニューヨーク市立大学クイーンズ校修士課程へ進み、そこで同大学院ジャズ作曲科を首席で修了したジャズトランペッターの小倉直也氏と出会い、結婚した。現在夫婦揃ってNYで音楽活動を続けている。プロポーズの際には及川が作った短歌連作「湯葉の国」に小倉が曲をつけて贈った。今回のアルバムにも収録されている。

 海外に目を向けるきっかけとなったのは、大学時代に参加したセイコー・サマー・ジャズ・キャンプだった。4日間の体験ではあったが、人生転換の重要な体験だった。同キャンプでも優秀な成績を残した及川は、10周年記念スペシャルライヴにキャンプ出身ゲストとして招かれ、ジャズ・アット・リンカーン・センター内ディジーズクラブ(7月30日)やブルーノート東京(8月9日)などへの出演が決まっている。

 リリースされる新作では、伝統的ラージ・アンサンブルの編成をベースに、短歌の言葉を歌詞として用いるだけでなく、短歌自体から着想を得た楽曲や、「五・七・五・七・七」という三十一音の構造そのものを、楽曲と即興演奏の設計へ取り込んでいる。冒頭曲「Introduction」では短歌の音数を拍子として再構築し、最終曲「Thirty-One Syllables」では三十一文字をメロディの骨格へと反映。「定型という制約の内側にこそ自由がある」という確信が、アルバム全体を貫いている。ヴォーカルにはベトナム系アメリカ人のミータム。日本語を母語としない彼女の、透明感あふれるフラットな歌声が言葉を音楽のなかへ自然に溶け込ませる。及川自身もアルトサックスで全編に参加し、タイトル・トラック「ショート・ソングス」などで印象的なソロも聴かせている。

 現代短歌は日常の風景を拾い上げ、新たな光を差し込む表現でもある。短歌アドバイザーには、「塔短歌会」を主宰する現代短歌を代表する歌人、吉川宏志氏を迎えている。ジャズと日本の短歌というクロスカルチャーな演奏が米国でどう評価されるのか注目される。

 (三浦良一記者、写真も)

伊藤沙帆 NYで朗読劇上演

ネイバーフッドプレイハウス仲間と

 ニューヨークを拠点に活動を続ける俳優・パフォーマーの伊藤沙帆が6月27日、自主公演「ギディオンズ•ノット」の朗読劇に出演した。舞台はパブリックスクール小学五年生のクラスルーム。子どもの死をきっかけに一人の母親と一人の教師が真実と向き合う心理ドラマ。教育や親子の関係、言葉の責任について深く問いかける作品だ。一人の母親、一人の教師が違う立場からそれぞれの葛藤、責任、苦しみを抱えながら会話が進む二人芝居だ。出た二人のカンファレンスのシーンだけで物語が進み、その中で二人のいろんな感情が沸き出てくる。

 伊藤は東京都出身、2023年に来米し、25年5月にネイバーフッドプレイハウスを卒業、学校ではマイズナーテクニックを中心に俳優としての基盤を学んだ。現在は、サムライパフォーマンスや、Batsu liveでパフォーマンスを行うなど活動の幅を広げている。「今回初めて自分達でプロデュースし、ネイバーフッドプレイハウス時代のクラスメイトのエリン・ジェフリーさんと当時の教師セレナ・ミラーさんに監督として協力してもらい舞台が実現した。随分前から企画を温め会場探しから自分たちでしたのでやりがいのある舞台でした」と話した。脚本はジョナ・アダムス。

米・イラン会談を支えるスイスの仲介外交

 米国トランプ大統領は、6月17日フランスで、イランのペゼシュキアン大統領との14項目の覚書に電子署名しました。21日にはスイスで、ヴァンス副大統領とイランのガリバフ国会議長が会談し、60日以内に覚書の最終合意に至る工程を決定し、作業部会を設置しました。米・イランの直接会談は4月のパキスタン以来ですが、今回もイラン側は米国との写真撮影を拒否しました。

 仲介国はパキスタンとカタールでしたが、調整と橋渡し役を務めたのがスイスでした。私はこの時期にスイスの国際ICの会議に参加中で、関係者からスイス政府の対応をうかがいました。スイスは、米国がイランとの国交を断絶した1980年以降、米国のイランにおける利益代表国(保護国)として、両国間での拘束者問題や核合意問題などの仲介を行ってきました。2015年の両国による核合意(JCPOA)もジュネーブで行っています。

 今回はジュネーブではなく、スイス中部ビュルゲンシュトック山中での開催でした。カタール資本のホテルで完全隔離でき、アクセス道路も1本でメディアも遮断。空域を閉鎖し、ドローンやヘリの接近も完全遮断。これらの予算を国会が承認して軍や警察などが対応しました。イラン側が一時退席の場面もあった中で、両国間を往復し徹夜での合意にこぎつけたとのことです。

 スイスが、こうした仲介外交の実績が豊富なのは、永世中立国で、NATOやEUといった軍事・政治ブロックに属していないことが強みです。永世中立国とは、軍事同盟に入らない、戦争に参加しない、紛争当事者に武器を供与しないことが基本です。EU加盟国でないので対ロシア制裁などの政治的立場にも拘束されません。本年もコンゴ民主共和国と武装勢力 M23との停戦合意を仲介したほか、南北朝鮮間の対話も行われていると言われます。

 今回の合意は、ホルムズ海峡閉鎖による世界経済への影響と、対イラン戦争に反対する米国議会や世論に配慮したトランプ大統領の決断であり、イラン側に有利な内容です。故にイスラエルの反発も強く、同国軍によるレバノン領内のヒズボラ攻撃も続いています。今後も米国・イランの協議はスイスで随時開催されるようですが、イスラエルともパイプを持つスイスの仲介外交に期待するものです。本来は日本もそうした貢献を果たすべき時ですが。

ふじた・ゆきひさ=オックスフォード大政治国際問題学部客員研究フェロー。慶大卒。国際ICや難民を助ける会等の民間外交活動を経て国会議員、民主党国際局長、財務副大臣等を歴任。現在、国際IC日本協会理事、岐阜女子大特別客員教授、東アジア共同体研究所特別研究員。英国在。

JPX 山道CEOを表彰 外交政策協会NY夕食会

「日本に投資するなら今」スピーチで強調

 日本取引所グループ(JPX)の山道裕己取締役兼代表執行役グループCEOは6月25日、ニューヨークのハーバードクラブで開かれた外交政策協会(Foreign Policy Association)のコーポレート夕食会で、FPAメダルを受賞した。同賞は国際理解や経済・外交分野への顕著な貢献者に贈られるもので、日本の資本市場改革を主導してきた山道氏の功績が高く評価された。

 授賞式では、損保ホールディングスのアドバイザーを務めるポール・シェアード博士が山道氏を紹介。野村證券を経てJPX入りし、大阪証券取引所、東京証券取引所のトップを歴任、2023年からグループCEOとして市場改革を牽引している歩みを紹介した。両氏は、野村證券時代の元同僚の関係にあたる。

 受賞講演では、日本のコーポレートガバナンス改革をテーマについて語った。東京証券取引所が政府と連携して進めてきたコーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードの導入により、企業が資本効率や株主価値を重視する経営へ転換しつつあることを説明した。こうした改革を背景に、日本企業の収益力やROE(自己資本利益率)が改善し、海外投資家からの評価も着実に高まっていると述べた。

 山道氏は「この受賞は私個人だけでなく、日本そのものへの評価でもある」と謝意を表明。長年続いたデフレや「ジャパン・パッシング」の時代を経て、日本は企業統治改革や構造改革、デジタル化やAI活用を追い風に新たな成長段階へ入ったとの認識を示した。

 さらに、海外投資家の意識は「日本に投資すべきか」ではなく「いつ投資するか」へと変化していると強調。「日本に投資するなら今だ」と力を込め、今後も透明性が高く信頼される市場づくりを進め、日本市場の国際競争力向上に取り組む決意を示した。日本経済の再評価が進む中、ニューヨークの金融関係者らも山道氏の講演に大きな関心を寄せ、出席した日系企業幹部や政府高官らも受賞の喜びを分かち合った 。

沖縄の住民探して 元海兵隊員の孫

一枚の写真に写る3人

 沖縄県の離島、久米島に終戦直前の1945年に駐留した米海兵隊員の孫が、祖父から託された1枚の写真に写った3人の日本人の消息を探している。

(写真上)元海兵隊員の祖父、フランク・クロウさん(最後列右)が持っていた1945年の写真

 この男性は、アトランタに住むニコラス・フォーブスさん(37)。「沖縄戦について学ぶうちに悲惨さに衝撃を受け、言葉にできないほどの申し訳なさと悲しみを感じているとその家族に伝えたい」という。

 祖父の名前は、フランク・クロウさん。写真には、米海兵隊員14人と住民と見られる日本人3人が写っている。写真の裏には、海兵隊員全員の名前と3JAPSと記載されている。

 フォーブスさんは、2001年に祖父が亡くなる前にこの写真を託された。子供の頃から祖父とハイキングなどに出掛けて可愛がってもらったが、戦争のことは話さなかったという。

 歴史が好きで大学でも歴史を専攻したフォーブスさんは、第二次世界大戦時下の日本や沖縄のことにも興味を持って調べているうちに、沖縄では戦闘に関係のない多くの住民が巻き込まれて死亡したことを知り、この写真のことがずっと気掛かりだったという。

 祖父が所属した海兵隊は、1945年7月中旬から10月下旬にかけて久米島に駐留し、その後、中国に移動したことが、ワシントンDC郊外の国立公文書館の資料で知った。フォーブスさんは「もし、この写真に写っている人やその家族などがまだいたら知らせて」と本紙に手紙を送ってきた。心当たりの人はEメール[email protected] で連絡を。

米国ESTAで大規模障害 一度は「承認」も突如却下

渡米直前の旅行者が悲鳴

 米国への渡航に必要な電子渡航認証システム(ESTA)において、大規模なシステムエラーが発生し、世界中で大混乱が起きている。X(旧ツイッター)や海外のネット掲示板「レディット」では、夏休みの渡米や、開催中のサッカー・ワールドカップ観戦、独立記念日(7月4日)の休暇を直前に控えた旅行者から悲痛な声が相次いでいる。

 今回のトラブルは、主に6月23日(米国東部時間)に申請を行い、一度は正常に「承認(Approve)」された渡航者が対象。渡航のわずか数日前や数時間前になって、突如「不承認(Denied)」や「認証取り消し」へとステータスが変更される事態が多発している。これにより、航空機への搭乗を拒否されたケースや、旅行保険の適用を断られた例もあり、現場は緊迫している。

 実は、ビザ専門メディア「VisasNews」や英BBCなどでは、ワールドカップ開幕前の6月上旬から「一度承認されたESTAが突如無効化される怪現象」が一部で報じられており、注意喚起がなされていた。それが今回の「6月23日申請者」をターゲットに、さらに大規模なシステム障害として爆発した形だ。

 米税関・国境取締局(CBP)の電話窓口につなげた複数の被害者によると、窓口担当者は「大規模な技術的問題(システムバグ)が発生しており、数千人に影響が出ている。現在修正作業中」と回答している。一部では、再度申請し直すことで「承認」へステータスが戻ったケースや、審査保留に変わったという報告もあるが、ビザの緊急面接枠の確保は数か月先まで不可能な状況だ。

 近々渡米予定のある渡航者は、過去の承認結果を過信せず、速やかにCBP公式サイト(esta.cbp.dhs.gov)から現在のステータスを確認し、問題がある場合は直接CBPへ電話などで問い合わせるなど、自己防衛が強く求められている。


アメリカ国内からESTA(およびCBP:米国税関・国境取締局)に電話で問い合わせる場合の番号は以下の通り。

(1)ESTA・渡航者専用ライン(Traveler Communications Center)

ESTAのステータスや個別のトラブルに関する、CBP直通の番号。

電話番号+1-202-325-8000、 または202-325-5120

受付時間:月曜〜金曜 / 午前8:00 〜 午後4:00(米国東部時間・EST)

(2)CBP 総合インフォメーションセンター(CBP INFO Center)

CBP全体のカスタマーサービス窓口(アメリカ国内からの通話料無料)。

フリーダイヤル(米国内):1-877-227-5511、 (1-877-CBP-5511)

受付時間: 月曜〜金曜 / 午前8:30 〜 午後5:00(米国東部時間・EST)

(電話をかける際のアドバイス)

▷つながりにくい場合: 現在、システムエラーの影響で全米・世界中から問い合わせが殺到している可能性が高く、回線が非常に混雑していると予想される。朝の受付開始直後(東部時間の朝8時すぎ)を狙ってかけるのが比較的つながりやすい。

▷手元に用意するもの: 電話がつながったらスムーズに確認できるよう、「パスポート番号」と、もし分かればESTAの**「申請番号(Application Number)」をメモして手元に置く。もし電話がどうしてもつながらない場合は、CBPの公式サイト(help.cbp.gov)にある「Ask a Question」のWebフォームから、オンラインでテキストでの問い合わせ(インクワイアリー)を並行して送っておく。


建国記念25セント硬貨25万枚発行へ

 アメリカ建国250周年を記念し、アメリカ造幣局(U.S. Mint)は25セント硬貨を含むすべての流通硬貨のデザインを一新した記念硬貨を発行している。

 特に25セント硬貨はアメリカの歴史や自由の理念をテーマに、5種類の異なるデザインが流通する。デザインと発行月は次の通り。

1月:メイフラワー誓約 (Mayflower Compact)1620年に巡礼始祖(ピルグリム)を運んだメイフラワー号と、抱き合う男女。

3月:アメリカ独立戦争 (Revolutionary War)独立戦争時のジョージ・ワシントンと、バレーフォージを見下ろす大陸軍兵士。

5月:アメリカ独立宣言 (Declaration of Independence)トーマス・ジェファーソン(表)と、「自由の鐘(リバティ・ベル)」(裏)。

8月:アメリカ合衆国憲法 (U.S. Constitution)ジェームズ・マディソン(表)と、フィラデルフィアの独立記念館(裏)

10月:ゲティスバーグ演説 (Gettysburg Address)エイブラハム・リンカーン(表)と、固く握り合わされた2つの手(裏)

 表面のデザインも通常のワシントン大統領ではなく、各テーマに沿った歴代大統領や偉人の肖像に変わる。すべての硬貨に「1776〜2026」の記念刻印が入る。また、コレクター必見の「激レア硬貨」は5月発売の「独立宣言クォーター」で、わずか25万枚だけの限定硬貨が流通する。造幣局のウェブサイトからは購入できず、日々のお釣りなどから見つけるしか入手方法がないため、アメリカで大きな宝探し(コインハント)ブームが起きている。

(写真)Photo: United State Mint

JAPAN BEYOND the GENKAN   日米関係支える力紹介

ジョシュア・W・ウォーカー・著
amplify・版

 先ごろ退任を表明したジョシュア・W・ウォーカー・前ジャパン・ソサエティー理事長が、自身最後の公式行事として6月16日、著著『Japan, Beyond the Genkan』の出版記念講演会を行った。今年早々に日本で出版した『同盟の転機』とは異なり、アメリカ人向けに英語で書かれた日本紹介の本であり、日米関係の未来を考える提言の書でもある。国際秩序が大きく揺れ、日米双方が新たな関係を模索する今、本書の刊行は極めて時宜を得ている。

 タイトルにある「玄関(Genkan)」は、日本文化を象徴する重要な比喩だ。玄関は外と内を隔てる境界であり、客人を迎え入れ、信頼関係を築く入口でもある。著者は読者を「玄関の向こう側」へと導き、日本を表面的なイメージではなく、その文化や価値観、人と人との結び付きから理解してほしいと語りかける。

 ウォーカー氏は北海道札幌市で育った「道産子アメリカ人」であり、日本文化を肌で知る一方、米国務省や国防総省、ユーラシア・グループを経てジャパン・ソサエティー理事長を務めた。本書では外交や研究者としての専門知識だけでなく、自身の人生経験を織り交ぜることで、「インサイダー」と「アウトサイダー」の両方の視点から日本を描き出している。

 本書の魅力は、文化論と地政学を無理なく結び付けている点にある。「生きがい」「カイゼン」「社会的調和」といった日本独自の価値観を、単なる文化紹介で終わらせず、日本のソフトパワーや国際社会で果たす役割へと発展させている。日本を世界有数の投資国であり、文化的影響力を持つ存在として位置付け、その強みをどう外交や国際協力に生かすべきかを問いかける。

 形而学的な学術書ではなく、個人的体験に根差したした文化人類学的アプローチのその率直さこそが本書の読みやすさにつながっており、専門書では伝わりにくい「日本という国の空気」を生き生きと伝えている。それはまるで日本の開国時に里帰りして日米文化の橋渡し役をしたジョン万次郎のアメリカ版的立ち位置にも似て新鮮だ。今後は米国商工会議所の国際担当として活躍する。「日本人のトモダチがいないと大変な部署なので頑張ります」と語る。

 同書は私たち海外で暮らす日本人にとっては「日本をどう説明するか」という問いへのヒントにもなる。日本の魅力はアニメや和食だけではない。社会の信頼、文化の厚み、人々のつながりといった見えにくい価値こそが、これからの日米関係を支える力になる——。そのことを静かにそして丁寧にアメリカ人に伝えてくれている一冊だ。 (三浦)

(写真右)出版記念講演会で花束を受ける著者