富山県立山町に注ぐ黒部の太陽

黒部ダム

日本一有名なダムを見に行く

 北アルプスの立山連峰と後立山連峰にはさまれた黒部渓谷にある「黒部ダム」。昭和38(1963)年に7年の歳月をかけて完成した黒部の水力発電用ダム建設は、東京タワーや青函トンネルと並ぶ戦後日本の一大事業といわれている。平成の時代、このダムをさらに有名にしたのは2001年に放送されたNHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」だろう。番組放送後に話題となり「その現場を訪れてみたい。延べ1000万人もの男たちが危険がともなう過酷な現場で完成させた巨大ダム建築を見たい」と、訪問者が飛躍的に増えた。私もいつか行ってみたいとずっと思っていた。

 黒部ダムへ行くには、長野県側と富山県側からの2つのルートがある。私たちは関越道から上信越道に乗り替え快適にドライブし、長野ICで下りて善光寺を参詣してから千曲川に沿って1時間ほど走り、立山黒部アルペンルートの長野県側玄関口として発展した小さな温泉町、信濃大町に到着した。「名峰あるところに名湯あり」といわれるように、旅や登山の疲れをいやす温泉宿が点在する信濃大町は、豊かな自然と水をたたえた美しいところだった。訪れたのは昨年10月上旬、まだ紅葉は始まっていなかったが、トンボが飛び交う夕暮れ時を楽しく散歩した。大きな台風が近づいているとテレビで言っていたが、そんな不安も忘れてのんびり過ごし、ゆっくり温泉に浸かった翌朝、ダムに向けて出発した。

ハサイダー

 50階建てビルと同等の186メートル、日本一の高さがあるだけにダムに到着してからは階段が多い。いくらなんでも長い、このままずっと階段なのかと思っていると、ついに巨大アーチ式ダムに到着し、轟音とともに毎秒10トン以上の水が大きなしぶきをあげながら霧状になって落ちる放水が目に入って来る。堤から下を覗くと吸い込まれそうな、足がぞわっとする怖さがある。迫力の景色を写真に納めることができるビューポイントは展望台や外階段、新展望広場のほか、レインボーテラスでは放水を間近に見ることができ、風向き次第で細かいミストとなって降りかかってくる。もちろん晴れた日には大きな虹がかかる。世紀の難工事と言われた黒部ダム建設の苦闘、特に「破砕帯(はさいたい)」(地下水が含まれる軟弱な地盤でトンネル工事では危険地帯)工事の困難を描いた1968年公開の映画『黒部の太陽』のポスターや資料の展示もある。売店には破砕帯から湧き出した天然水や、その水を使ったアイスコーヒー、ご当地サイダーの「ハサイダー」などが販売されているので、ダムカレーと合わせてお試しあれ。

 また、長野と富山を横断する立山黒部アルペンルートの料金について「結構かかります」という情報も入れておきたい。大町からダムへ行くための「扇沢駅」で車を駐めトロリーバスに乗車(1570円・16分)、ここで観光放水が見られる「ダム駅」に到着する。見事な紅葉が見られるもっと先や立山を越えて富山まで行く場合はそこからケーブルカー(870円、5分)、ロープウェイ(1320円、7分)、トロリーバス(2200円、10分)、高原バス(1740分、50分)、ケーブルカー(730円、7分)と乗り継ぎごとに料金がかかる。ハイシーズンになるとそれらの切符を買うにも乗車するにも、そのつど長い列に並ばなくてはならない。なので個人旅行よりツアーで行く方がお得かも知れない。

 料金について多少気になったとしても、ミシュラングリーンガイドで「わざわざ旅行する価値がある」とされる3つ星を獲得した黒部ダム。観光できる期間は今年も4月中旬から11月末まで、観光放水は6月中旬から10月中旬まで実施される。時間があったら、映画『黒部の太陽』かプロジェクトX「シリーズ黒四ダム」を見てから行くとさらに楽しめるだろう。たとえばトロリーバスが走るトンネル途中に約80メートル青い光で照らされた場所があり、「破砕帯」の看板表示がある。何も知らなければ一瞬で通り過ぎてしまうが、プロジェクトXを見ていれば「ここが! 掘っても掘っても天井から崩れてきた、凍えるように冷たい地下水が毎秒660リットルも吹き出したあの破砕帯か!」と感慨深く思えるだろう。

 旅を終えた2日後、巨大な台風19号が上陸。子供の頃に体験した台風とは規模が格段に違うと思えるような暴風雨を体験した。翌朝、ほんの数日前に見たばかりの千曲川が決壊し、冠水した道路や畑に収穫直前のリンゴが泥水に浮かんでいるニュース映像を信じられない気持ちで見た。高速道路も通行止め、新幹線も運転見合わせとなっていた。あののどかな景色が、鈴なりになっていた信州のリンゴが泥だらけになってしまったと思うと胸が痛んだ。被害を受けたリンゴ生産者が1日も早く復興されることを心からお祈り申し上げます。 (本紙/高田由起子)

サマーツイードの男

イケメン男子服飾Q&A 78
ケン 青木

 若い世代の皆様はもしかしたら聞かれたことのない言葉かもしれませんが、「梅春」、または「梅春物」と呼ばれる服地、洋服があります。言葉通りに意味を御説明いたしますと、梅春、梅春物とは、年が明け新春となり、桜の花の開花前の季節、つまり今くらいの時期から春先もしくは初夏まで着られる素材、またはそうした素材を用いた衣服について意味をいたします。

 私がこの仕事についた当時は、新春と言えば”売り出し“の時期ではあったのですが、合わせていかにも春の訪れを告げるがごとく、新鮮な「梅春物」の商品が入荷しても来たものでした。例えば、実はこれは梅春に限った素材というわけでもないのですが、春らしい明るい色調のウール・

ギャバジンのスラックス、はたまたザックリとしたオックスフォード地の様な厚手の綿シャツ、さらにはシルクや綿・リネン麻等のセーター、さらにはそれらの素材の混紡セーターなど、素材もなのですが、春らしい優しい色味のブルー、イエロー、ピンクといった秋冬の色調とは対照的な明るいトーンが中心でした。

 そして紳士モノのジャケットについてですが、私たちが「梅春物」と呼んでいる生地の多くは当地において”Summer Tweed”(サマーツイード)などと言われることが多いのですね。

 当地ニューヨークに限らずアメリカ東部一帯、さらにはシカゴ、サンフランシスコ、ロスアンゼルスといったアメリカ国内の大都市におきましては、一般にこの様な「梅春物」が活躍する時期は1年の半分くらいはあるかと思うのです。つまり日本よりもより長い期間着れるワケですね。

 「梅春物」紳士服のジャケットにおける素材につきましてもウールにシルク、そしてリネンといったところが中心でしょうか。特にウールとシルクという代表的な獣毛を組み合わせた素材、サマーツイードの生地は素材感も良くてとてもお奨めです。御参考までに一部宗教的な戒律について厳しいユダヤ教徒の皆様にはウールとリネンを混紡した生地を着用してはいけないことになっておりますので、念のため。

 サマーツイードと呼ばれます、主にシルクとウールをブレンドした生地は、ザックリした風合いながら

も秋冬物の様に厚手で重くはなく、上着の下にシャツさらには明るい色の同系素材を合わせたニットのヴェストやセーターを組み合わせいただくとvery goodかと思います。さらにスラックスにつきましてもあらゆる生地や素材を試されてみてください。なぜにウール・ギャバジンを真っ先に御紹介したのかと申しますと、歩いている時の足の運び具合、これもドレープ(生地のゆとり)と言いますが、とても美しいのです(笑)、生地のフワフワした動きが(笑)。そして用途、シチュエーションに応じて綿のチノ・パンツやジーンズなども是非組み合わせてみてください。

 靴についても表革でもスウェードでもお好みで。そうそう、上着の脇のポケットはパッチ・ポケットと呼ばれます、共布を張り付けたスポーティのものがいいかも(笑)です。そして”ウインドウペイン“と呼ばれます英国カントリー風の格子柄も御奨めなのですが、格子に使われている色をセーターやヴェスト、もしくはスラックスの色として拾われますと気が利いて見えます。それではまた。

 けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス.カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。

国連代表部主催で 天皇陛下誕生日祝う

 天皇陛下の誕生日祝賀レセプションが13日夕、国連大使公邸で行われ、各国の国連大使らが招待された。石兼公博国連大使が歓迎の挨拶で乾杯の音頭を取り、今回が新元号になって最初の天皇陛下の誕生日であること、陛下が1980年にオックスフォード大学に留学し、水が世界に与える影響に興味を持たれ、2013年に国連本部総会議場で人と水と言うテーマで演説したことなどを紹介した。

 また2020年が国連創設75周年であること、東京五輪・パラリンピックのホスト役として国際的なスポーツ大会開催の年であることに触れ、スポーツを通して世界の平和と発展に貢献していくと述べた。

救援機に感染者14人同乗

下船を報じる2月17日付NYタイムズ1面

新型コロナウイルス

遅い迎えに怒りも

 ダイヤモンド・プリンセスには乗員乗客3711人(うち日本人1285人。香港人470人、米国人425人、カナダ人215人など9か国・地域2522人)が乗船し、1月20日に横浜港を出港。25日に香港で下船した男性の感染が確認されたため2月3日から感染症の国内侵入を防止するため検疫法に基づき検疫を実施。2月5日から潜伏期間に基づく観察期間となる29日までの14日間、全員を船内待機にした。

 しかし日本は新型コロナウイルスの検査体制が整備されておらず国立感染症研究所任せのため、菅官房長官が10日、乗客乗員全員に対するウイルス検査について「現状では厳しいものがある」と答えざるを得ない状況のなか、検査結果による感染者数は増え続けた。 13日には80歳以上の高齢者や持病のある人から優先的に下船させる方針に切り替えた。17日までに1723人が検査を受け、確認された感染者は454人(日本人212人)となった。順次、医療機関に搬送されていおり、20人が重症となっている。

 米国は7日時点で、アメリカ人を移送したいと日本側に要請していた。クルーズ船のアメリカ人の感染者はすでに55人に上っている。17日、米国のチャーター機2機によって328人の米国人が羽田空港よりカリフォルニア州とテキサス州の米軍基地に運ばれた。もしも2月5日以降にも船内で感染が起きているのならば、日本が検疫期間と設定していた2月19日という日付そのものが意味を失い14日間の観察期間を再設定しなければならない。このため到着後、乗客は改めて2週間隔離される予定になっている。米国からのチャーター機で帰国した乗船客のうち14人が新型コロナウイルスに感染していることが、乗客の下船後、羽田空港に向かう途中で判明。その時点で、空港で14人を隔離して搭乗させない判断をなぜできなかったのか新たな問題となっている。14人はそのまま機内に乗り込み、他の乗客とのあいだにビニールの仕切りをして貨物機内にプレハブ住宅のような箱を設置、その中に同乗することになった。米国内の米軍基地に到着後、14人は入院。残る乗客も14日間の基地内での隔離滞在を余儀なくされる。  

 ダイヤモンド・プリンセス船内に乗客を止めたことに対する日本政府への批判同様、救援機を出すのが遅いとの米国政府に対する不満を持つ米国人乗船客が船内に残った。

 米国内では今回のチャーター便のほかに、武漢からの帰国者など15人の感染者が確認されている(16日時点)。

 米国以外にもチャーター機の派遣は香港やカナダも発表、15人が乗船しているイスラエルも16日、チャーター機の派遣準備を進めていることを明らかにした。

(関連記事)新型コロナウイルス日本を厳しく批判

「精神0」 想田監督の新作 MoMAで招待上映

 想田和弘監督の新作ドキュメンタリー映画「精神0」が、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の第19回ドキュメンタリー・フォートナイト映画祭で14日と18日に上映された。

 主人公の精神科医、山本昌知医師は82歳となり、引退することになった。患者たちに動揺が広がる。一方、山本の仕事を陰で支えてきた妻の芳子は、認知症を患い介護を必要としていた。

 舞台挨拶で、想田監督は、自身に課している映画撮影の十戒を紹介した。それは、リサーチはしない。打ち合わせをしない。台本は書かない。カメラは一人で回す。長時間回す。アリバイ的な取材は慎む。編集作業でテーマを設定しない。ナレーションはなし。カットは長めに編集。制作費は自分持ち、と言うことだそうだ。

 妻の柏木規与子さんはコンテンポラリー・ダンサー、振付師で、この映画では製作を担当した。映画を観終わったあと、「映画を観た」と言う感覚ではなく、むしろ実際に自分がその映像の中、と言うか、その場にいて、山本医師夫妻の横でじっと見つめていたような臨場感ある記憶が残る。映画のシーンに出てきた出前の寿司まで一緒に食べたような、そんな気になっている。

         (三浦)

遊牧民を夢見る音楽家

チェロ奏者

花岡 伸子(しんこ)さん

 1971年、甲府生まれ。姉の影響で6歳からバイオリンを始めたが、「姉妹で同じ楽器をやっても面白くない」ので8歳からチェロに転向。当初はお稽古ごと的だったが10歳で藤原真理氏に師事。健康で丈夫、耳が良くて、指が強いことから藤原氏に本格的なレッスンを進められたのを機にプロのチェロ奏者目指してスイッチが入った。桐朋女子高等学校音楽科、同校ディプロマコースを経て米国イリノイ州立大学に進学、当時同校で教鞭をとっていた岩崎洸氏に師事した。もちろんチェロ演奏に励んだが、恋もした米国留学だった。

 23歳月の時、伝説のチェリスト、ジャクリーヌ・デュプレを育てたウィリアム・プリース氏に招かれ、奨学金を得て英国ロイヤル・アカデミー音楽院大学院に進学。同大学院を首席で卒業後はBBCヤング・アーティストシリーズ、スピタフィールド国際音楽祭などに出演、スペンサー伯爵邸でのダイアナ妃メモリアルコンサートやヴィクトリア&アルバート美術館で開催された平成天皇皇后両陛下訪英記念晩餐会などで演奏したほか、トーマス・ツェトマイヤー音楽監督率いるノーザン・シンフォニアのゲスト首席チェリストとして演奏し、絶賛を博した。音楽家の競争が激しいロンドンで、しかもビザ取得が必須の外国人が正規の楽団員になるのは非常に厳しい中、29歳で日本人初の英国ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の一員となる。

 それから14年間、チェロを抱えて西へ東へ飛び回る日々を送った。やりがいはあったもののリハーサル→コンサート→移動→リハーサル…の連続で体力的にきつかった。そんな中、米国人男性と出会い、結婚。長年の激務のせいか腰を痛めたこともあり、2016年にロイヤル・フィルハーモニーを退団、翌年夫の古巣であるニューヨークへ移住した。ロンドンで一線の音楽家として活躍していた妻のことを思い憚ってか、積極的に移住の手続きを進めようとしない夫にハッパをかけて段取りを進めた。当時のことを「人生の分岐点だったと思う。音楽的な面でも」と振り返る。これからの人生をどう生きていきたいのかを再考する、いわば人生のリセットだった。

NYでプラプラしている間にチェロの存在を再認識したと言う花岡氏。「自宅でのんびりチェロを弾きながら、人のために弾く機会をなんとなく待っていた」。そして、花岡の才能を応援する支援者にも恵まれ機会はやってきた。3月12日、カーネギー・ワイルリサイタルホールにてピアニストの内田玲子氏とコンサートを開催する。

 「いらしてくださった方が来て良かったと思えるコンサートにしたい」と語る花岡氏に、チェロ奏者にならなかったら何をしていると思うかの質問に「遊牧民になりたい!」。満点の星空の下、まどろむ羊の群れに囲まれてチェロを弾く遊牧民姿の花岡氏を思い浮かべてみる。全く違和感がない。不思議な音楽家である。

     (東海砂智子)

ハートが伝わる会話術     

しゅわぶ美智子・著
IBCパブリッシング・刊

 日本人は、英語がうまく話せない。と言うより、言語能力よりもそもそもコミュニケーション能力が低いのではないか。そんな思いにいくつかのストレートな答えを出してくれる本だ。

 アメリカで異文化コミュニケーションのコンサルタントとして長く活動してきた著者のしゅわぶさんは、この本をまず、英語で執筆した。それを日本語に和訳して日英対訳の形で日本人向けの本としてまとめている。なので、直訳英語で話すと、誤解を招くことがある。文化に起因する誤解を避けるための言い回しや、視線などの非言語コミュニケーション、また対話向上へのヒントに加え、日本人が陥りがちな「きちんとした英語を話す」ことへの恐怖心を解きほぐすエッセンスを盛り込んで紹介している。

 初対面の人と何を話すか。日本人から「あなたはメキシコ料理が好きですか」といきなり唐突に聞かれたとする。聞かれた方はまず、「え、なんで?」「どうしてそんなことを聞くんですか」と思うのが普通。その質問の裏にあるココロは何?となる。それが分からないと的外れな答えをするのが怖いから。ところが、アメリカ生活が長い読者の方なら経験あると思うが、アメリカ人だったら、とにかく聞かれたことに素早く機転の効いたジョークも入れて会話のキャッチボールを始めてしまう。で、永遠とメキシコ料理の話をしているのかと思うと、そうではなく、「義母がやけに好きで、親戚が集まるといつも大騒ぎなんだ、子供が集まると親は教育ローンの話題で持ちきりなんだ」といった具合に話題はどんどんそこから発展していく。

 電車の中で切符を切る車掌が乗客と延々と会話を楽しんでいる光景なども日本人なら違和感を感じるが、要はそこが超えなくてはならないカルチャーの要衝なのかもしれない。

 文化の違う様々な地域で相手との信頼関係を構築する究極の方法はまず、失敗を恐れず、相手の文化に興味を持ち、その好奇心を梃に積極性をもってその地域の人たちと交流する姿勢が大切だと説く。

 また、お互いの文化の強みを合わせ、多様性を受け入れることでさらに交流を深化させる知恵へとアップグレードとしてゆき、失敗を恐れず、失敗から偏見へと傾斜せず、お互いの異なる文化という2点を結び付けていくことが大切だと説く。1992年に青山学院大学大学院を修了後来米。ニューヨークで会社勤めをした後、97年から大学院で専攻した異文化ビジネスを生かし、異文化コンサルタント、トレーナー、コーチとして活躍している。

 「日本人の英語対話力は向上しつつあるが、世界の英語力が急激に伸び、その結果、日本人は分かりにくいという評判がますます定着しつつあることに危惧を抱いた」のが執筆の動機だそうだ。(三浦)

「世の中は豪華な地獄」

本紙のインタビューに答える原監督(左)と安冨さん

原監督と安冨さんにインタビュー

映画「れいわ一揆」上映
MoMAで北米プレミア

 ドキュメンタリー映画の鬼才、原一男監督の映画「れいわ一揆」が12日、近代美術館(MoMA)で開かれた「ドック・フォーナイト」で北米プレミアとして上映された。映画は昨年の参議院選挙で山本太郎代表率いる「れいわ新撰組」から出馬した「女性装」で注目を浴びた東京大学東洋文化研究所教授・安冨歩さんをはじめとする10人の立候補者の選挙活動を追った作品。上映時間4時間8分。

 原監督がこの映画で一番伝えたかったのは、「立候補者が有権者に向けて発する言葉」だという。しかし、言葉に頼らないドキュメンタリーを撮るというのが監督の信念、そこがジレンマだったと話す。昨年6月にもMoMAで原監督の映画が上演されたが、「まさか、数か月後にMoMAに戻ってくるとは夢にも思わなかった」。また、「ニューヨークで自分の作った映画が上演されることは、もっとがんばろうと闘士が沸く」と話した。また、自身が撮る映画については、「映画は権力者のものではなく人民のもの、私は裕福な家の生まれではないので、私が立つところは底辺の所、そこから世界をみて映画を撮っている」と話した。

 安冨さんは、原監督が撮ってくれるので参議院選挙に出馬することにしたと本音を明かしたが、「私が思っていたのと全く違った映画になった。当初は記録映画になるかと思っていたがエンターテイメント映画になり、すごいなと思った。原監督の力量が出ている」。また、自身が出演した映画がMoMAで上映して、ニューヨーク・タイムズ紙で映画が紹介されて自分の写真が掲載されるなんてことは夢にも思わなかったと話した。また馬で選挙活動を行ったことについて、「みんな政治に興味がないから選挙に行かないのではない、選挙に興味がないから行かないのだ。日本の選挙がつまらなくなってきている。選挙を一つのメディアとして、選挙を変えていかないといけない」と話した。

 この日は原監督と安冨さんも参加して舞台挨拶。上映後には質疑応答の時間も設けられた。観客から「おもしろい映画だ。特に安冨さんが言っていた『この世の中は豪華な地獄』という言葉がとても印象に残った」「4時間を長く感じなかった。特に日本式の障害者とのコミュニケーション方法に感心した」と話した。

 映画は午後6時15分開演で、質疑応答がおわったのが午後11時を過ぎていたが、その後も原監督や安冨さんを囲んで、質問する観客が後を絶たなかった。

  (石黒かおる、写真も)

輝く未知の世界 The Call of the Wild

 未開の地を目指すソーントン(フォード)とバック
PHOTO : Twentieth Century Fox

 米作家ジャック・ロンドンの同名小説(邦題・野生の呼び声)の映画版。19世紀末、カナダ・ユーコンのクロンダイク・ゴールド・ラッシュ時期にカリフォルニアでさらわれた飼い犬バックがカナダでそり犬となり、冒険家ソーントンと未開の地を目指し、やがては自分の奥底にあった野生に目覚める冒険物語だ。

 人気小説だけに何度か映画化されているが今までと大きく異なるのはバックをはじめとする動物がCGIである点だ。「ライオン・キング」(19年)のリアルすぎる動物たちと同様、見た目は本物と変わらない。が、CGIによる彼らの「演技」は躍動感に溢れ、物語を数倍もおもしろくスリリングにする。 

 もちろん本物の犬がうまい具合にそうした動作や表情をするわけはないので違和感を覚える人もいるが、俳優との「共演」も自然で動物でCGIを使うのは個人的には賛成だ。第一、危険なシーンも動物愛護団体から虐待クレームが来ることもない。ただしバックだけはシルクドソレイユのパーフォーマーを使ったモーションキャプチャとCGIをミックスしたハイブリッドでこれも新たな技術として今後ますます広がっていくだろう。

 出演はハリソン・フォード、ダン・スティーブンスら。監督は「How to Train Your Dragon」シリーズ(ヒックとドラゴン)のクリス・サンダース。

 セントバーナードとスコットランド系牧羊犬の雑種バックはカリフォルニア州サンタクララバレーでミラー判事の家のペットとしてかわいがられていた。しかしある日、さらわれ犬の仲買業者に売り渡され、結局、逃げ出した後にクロンダイク地方で郵便を運ぶ犬ぞりの一員に加えられる。

 体は大きいがそりを引いたこともない上に雪の上を歩いたこともない。初めは列を乱し足手まといになるがバックはぐんぐんと力を付け学んでいく。

 ハラハラするシーンも満載でソーントンとの間に生まれる友情は大自然の中で大きく羽ばたく。1時間50分。PG。     (明) 

https://family.foxmovies.com/movies/call-of-the-wild


■上映館■
AMC Loews 34th Street 14
312 W. 34th St.
Cinepolis Chelsea
260 W. 23rd St.
AMC Loews Kips Bay 15
570 Second Ave.

【今週の紙面の主なニュース】(2020年2月15日号)

(1)インフエンザ米で猛威

(2)パラサイトオスカー4部門

(3)国連職員採用説明会NYで

(4)名取由稀江ネイルアート

(5)国連アート/ベルリンの壁

(6)八木さんの叙勲祝う

(7)人影失せたチャイナタウン

(8)NYウーマン 本田真穂

(9)狭間美帆NY公演

(10)シネマ映写室 Birds of Prey

インフルエンザ米国で猛威

 中国では新型コロナウイルスが猛威をふるっているが、日本の外務省は9日、米国におけるインフルエンザの流行に注意を喚起する最新情報を海外在留邦人に発信した。それによると米疫病対策センター(CDC)は7日、最新の推計値を発表。2019〜20年のシーズンで患者数は2200万人に上ったとし、さらに拡大する恐れを指摘している。インフルエンザのために21万人が入院し、死者数は1万2000人に達したとしている。今年は子供の症状が深刻化するケースが多く、すでに小児の死者数は78人となった。
 同省では次のような毎日の予防策を推奨している。
⑴病気の人との密接な接触を避ける。⑵病気の間は,他の人に感染させないため接触をできる限り制限する。⑶インフルエンザに似た病気にかかっている場合,医療を受けることやその他不可欠なものを除き,熱が下がってから少なくとも24時間は家にいること。⑷咳やくしゃみをするときは,鼻と口をティッシュでカバーする。ティッシュはゴミ箱に捨てて、手を洗う。⑸石けんと水で頻繁に手を洗い、手洗いが出来ない場合、アルコールを使用する。⑹病原体の拡散を防ぐため、目、鼻、口に触らないようにする。⑺インフルエンザなどの病原体に汚染されている可能性がある表面や物体を清潔にして消毒する。インフルエンザ感染は例年10月ごろに始まり、5月ごろまで続く。米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)は、19〜20年は過去10年で最悪規模になる可能性があると予測している。

アカデミー賞 パラサイト4部門受賞

 第92回アカデミー賞授賞式が10日、ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われポン・ジュノ監督の韓国映画「 Parasite」(パラサイト 半地下の家族)が作品賞を含む主要4部門を受賞する大快挙となった。
 英語以外の言語の映画が作品賞を受賞するのはアカデミー賞史上初。同作品は 国際長編映画賞(旧:外国語映画賞)も受賞、ポン・ジュノ監督は監督賞、脚本賞に輝くなど会場は「パラサイト」フィーバーに包まれた。また、日本人アーティストのカズ・ヒロ(辻一弘)は「Bombshell」でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞し二度目のオスカー獲得となった。

カズ・ヒロさんは2度目

 今年のアカデミー賞は「パラサイト」の躍進を除けばほぼ「本命」がオスカーを獲得。俳優陣ではホアキン・フェニックス(主演男優賞、ジョーカー)、レネー・ゼルウィガー(主演女優賞、ジュディ)、 ブラッド・ピット(助演男優賞、ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド)、ローラ・ダーン(助演女優賞、マリッジ・ストーリー)らが順当に受賞。
 また撮影賞は「1917」のロジャー・ディーキンス、編集賞は「フォードvsフェラーリ」のマイケル・マカスカーとアンドリュー・バックランド。長編ドキュメンタリーは「アメリカン・ファクトリー」。
 ノミネーション段階では「ジョーカー」が11部門に入りトップ。次いで「1917」、スコセッシ監督の「アイリッシュマン」、タランティーノ監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」が10部門だったが、結局、6部門でノミネートされた「パラサイト」が4部門の最多受賞となった。スタジオ別ではネットフリックスがソニー、ディズニーなどの大手を抑えて24部門でノミネートされたがオスカーは2部門にとどまった。
 カズ・ヒロさんは第90回アカデミー賞で「Darkest Hour」(ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男)で主役ゲイリー・オールドマンをチャーチル首相に変身させメイクアップ部門でオスカーを受賞。今回はFOXニュースのセクハラ事件を描いた「Bombshell」でシャーリーズ・セロン(キャスターのメーガン・ケリー役)やジョン・リスゴー(CEOロジャー・エイルズ役)の特殊メイクを担当。セロンは撮影時は毎回3時間かけ顎から鼻孔まで手を加え見事なほどにメーガン・ケリーになりきった。 (明)