広島G7サミット、米国の論調広島G7サミット、

核軍縮の機運は高まらず

 日本を議長国に広島で開かれた先進7か国首脳会議(G7広島サミット)では、G7や招待国の首脳らが広島平和記念公園を訪れ、原爆の生存者と面会し、資料館を見学、献花なども行われたことは米国のメディアも写真や動画付きで大きく報じた。

 5月19日付ニューヨークタイムズ紙電子版は「(バイデン大統領は)厳粛な表情で原爆死没者慰霊碑を見つめたが、何もコメントしなかった。ましてや一部の日本人がいまも米国に望んでいる謝罪については何も述べなかった」と報じた。

 ワシントンポスト紙はウクライナのゼレンスキー大統領が電撃訪問し、各国首脳らと対面で会合したことで核軍縮から焦点が移り、終了後は「ウクライナに焦点が移ったままG7終了」(5月21日付)と報じた。

 AP通信(21日付)は「ゼレンスキー大統領の訪問は、平和を愛する都市である広島にはふさわしくない」との広島の被爆二世の活動家の中谷悦子さんの話を伝えた。また若手活動家の高橋悠太さんが「(この訪問は)ウクライナが第二の広島になるのを防ぐために核抑止力の必要性を正当化する」メッセージを送る恐れがあり、「広島は平和のメッセージを送るために核保有国によって利用されただけであると私たちに感じさせるだけです」と答えたことを報じた。記事はワシントンポストやザ・ヒル、ABC、FOXなど幅広いメディアが掲載した。

 ウォールストリートジャーナル(22日付)は、核の恫喝を行なっているロシアや軍備増強を続ける中国など「核兵器のリスクの高まりが、広島G7での核軍縮に影を落としている」と報じた。「広島でのG7には世界初の核攻撃の恐怖が漂っていた」と書いている。ブルームバーグ(21日付)は、「G7が、中国、ロシアに取り込まれた国々の説得に苦戦」と報じた。各国に「国連憲章を守るように求める」に留まり、「ブラジルのルラ首相はG7に歩み寄る様子はなくバイデン大統領を非難」と報じている。

 ブラジルはロシアの侵略行為を非難する一方、対露制裁も武器供与も行なっていない。

(写真)ゼレンスキー大統領の広島電撃訪問を報じる20日NYタイムズ電子版

今日から始めるシニアの断捨離®

小林理恵さんオンラインで講義

 NY日系ライオンズクラブ企画、第15回JAA春のヘルスフェア「ライオンズ大学・大人の教養シリーズ第6弾」で断捨離®チーフトレーナーの小林理恵さんが「今日からはじめるシニアの断捨離®〜住まいと心と身体の関係性〜」と題して講演した。

 「断」は不要、不適、不快なモノを断ち、「捨」はガラクタを捨て、「離」は、執着から離れることを意味し、日常の生活空間を健やかに整える営みであり、身の回りのケア、メンテナンスと言える。これまでの人生とこれからの人生を考えた時、これからも人生を共にし、大切にしたいモノか、それとも終わりにし、卒業をし、手放していくモノかを考えること。

 今日から断捨離を始めるなら、(1)冷蔵庫の食材=傷みかけているものはないか(2)食器棚の食器=同居家族が多かった時代の数は今必要か?(3)クローゼットの洋服=何年も着ていない服はないか(4)本棚の本=読んでいない本はないか。

 あることも忘れていたモノ=忘却のゴミとして捨てる。もう使わなくなったもの=不要なモノとして捨てる。今の自分には相応しくない心地よくないもの=不適・不快なモノとして捨てる。靴箱も必要で大事な靴のみを残す。雑多な玄関は、来客のお迎え、お見送りの場所に相応しくシンプルに。

 住まいは身体と心を映し出す「相似象」という概念で考える。過去のモノに始末をつけることは身体でいえば古い細胞の新陳代謝を促すことと同じ。小林さんは「大掃除をすると、気持ちがスッキリするのは、住まいの片付け・大掃除と同時に心の片づけ・大掃除をしているから」と述べ、「断捨離で住まいの今を整えると、身体も心も未来も整う」と解説した。

詳細はhttps://mbp-japan.com/tokyo/danshari/

(写真左)断捨離前(左)と断捨離後(右)

ウクライナの家庭料理を美味しく作る

プロに聞く、生き生きEATS(イーツ)

元気と美味しいを求めて料理の達人が腕を振るう (37)

 今月の生き生きEATSは、ニューヨーク市のキューガーデンに住む料理研究家、平野顕子さんに、ウクライナ人の義母ニーナさん伝授の「ウクライナの家庭料理」を紹介していただきます。平野さんは、最近、夫のイーゴさんとの共著『キャプション家に伝わる日々のごはん ウクライナの家庭料理』(PARCO出版)=写真=を上梓されたばかり。今回はその中で紹介されているオススメの2品です。(料理、人物写真 by Takako Ida)


■ボルシチ

 ビーツを使うウクライナ発祥の深紅色のスープ、ボルシチは、毎日のようにいただく日本のお味噌汁のような存在。コツは、ビーツに火を通しすぎると色が悪くなるので、スープ作りの最後に下茹でしておいたビーツを加え、さっと煮るだけにして美しい色合いに仕上げること。

〈材料〉(作りやすい分量)

ビーツ 大1個

にんにく(薄切り) 2片

玉ねぎ(細切り) 1個

にんじん(細切り) 大1本

じゃがいも 1個

サラダ油 適量

水 800ml

チキンブイヨンの素 1個

ローリエ 3〜4枚

キャベツ(細切り) 1/8個

トマトペースト 85g

塩・黒胡椒 各適量

サワークリーム 適量

お好みでディル、パセリ

(みじん切り) 各適量

〈下準備〉

 じゃがいもは短冊切りにし、15分ほど水に浸す。

〈作り方〉

①ビーツは根の先端と茎を切り落とし、柔らかくなるまで500〜600ミリグラムの湯で30分ほどゆでる。ゆで終わったら、弱目の流水にあて、皮をむいて8ミリ幅の細切りにする。②フライバンにサラダ油をひいて弱中火にかけ、にんにくを炒める。香りが立ってきたら中火にし、玉ねぎ、にんじん、じゃがいもをさっと炒める。

③鍋に水、チキンブイヨンのもと、ローリエ、②を入れて中火にかけ、じゃがいもに火が通るまで煮る。①、キャベツ、トマトペーストを加えてさっと煮て、塩、黒胡椒で味を整える。


■クネードリ(鶏団子のサワークリーム煮)

 あっさりとした味付けとサワークリームのコクが好相性。コツは、最後にチーズをからめると風味とコクがさらに豊かに仕上がります。

〈材料〉(作りやすい分量)

鶏ひき肉 300g

玉ねぎ(みじん切り) 1/2個

サラダ油 適量

パセリ(みじん切り) 大さじ2

卵(卵黄と卵白に分ける) 2個

水 400〜500g

チキンブイヨンのもと 1〜2個

マッシュルーム(薄切り) 8個

バター(食塩不使用) 20g

サワークリーム 60g

生クリーム

(脂肪分42〜45%) 60ml

お好みのシュレッドチーズ

大さじ2

〈作り方〉

①フライパンにサラダ油をひいて中火にかけ、玉ねぎを炒め、粗熱をとる。

②鶏肉に①、パセリを入れてよくかき混ぜる。卵黄を加えて混ぜ、5分立て程度泡立てた卵白を加えてさっと混ぜる。

③鍋に水、チキンブイヨンのもとを入れて中火にかけ、沸騰したら②をスプーンなどで楕円形にすくって入れる。3〜4分ゆで、取り出す。

④フライパンにバターを入れて中火にかけ、マッシュルームを茶色になるまで炒める。サワークリーム、③の煮汁150ミリリットルを加える。

⑤ ③の肉だんごを加え、全体に火が通るまで煮る。生クリーム、お好みのシュレッドチーズをからめる。⑥器にスープと共に盛り合わせる。

日米バイリンガルのジャーナリスト

ヴァイス・ワールド・ニュース日本担当

モンゴメリー花子さん

 米国に本拠地を置き世界30か国以上に支部を持つデジタル・メディアのヴァイス。モンゴメリー花子さんはそのヴァイス・ワールド・ニュースの日本担当として東京に住んで活躍している。

 働き始めたのは2021年の1月。日本担当はモンゴメリーさん一人で、香港にいる編集者と打ち合わせを毎朝行い、何を記事にするか決める。動画は別にチームがあり、その人たちと制作する。取り上げるのはおもに日本の社会問題で男女格差やLGBTQ、環境問題など。最近では原発の処理水海洋放出問題や「寿司テロ事件」なども取り上げた。記事を書くことが多いが、動画では取材はもちろんレポーターも担う。記事や動画は英語だが、ネタ(題材)探しや取材には日本語が不可欠だ。

 モンゴメリーさんは日米バイリンガル。米国人の父親と日本人の母親との間に1998年、ロンドンで生まれた。2歳の時にニューヨークのクイーンズへ移住。地元の公立校に通う傍ら、毎週土曜日はニューヨーク補習授業校LI校に幼児部から高2で卒業するまで通った。

 大学はビンガムトン大学で、アジアとアジア系米国人研究を専攻した。3年生の時、もっと日本のことや日本語を学びたいと上智大学国際教養学部に1年間留学した。「補習校で漢字をしっかりは勉強してなかったので最初の頃は大変でした」と笑う。

 日本の社会問題を扱う授業でビデオを制作することになり、日本の風俗業についての1時間ほどのドキュメンタリーをイタリアとイギリスからの女性留学生2人と組んで制作した。これがモンゴメリーさんのその後を方向付けることになる。「女3人で危ないところに行ったり、すごく楽しくて(笑)。こういうのがいいなと思いました」

 留学中にはジャパンタイムズで半年ほどインターンをして記事執筆と動画制作も経験。米国に戻ってからはテレビジャパンで3か月ほどインターンをし、その後フルタイムに。大学は2020年5月に卒業した。「テレビジャパンは楽しかったです。チームの一員として活躍してもらう感じでネタを考えたり、原稿を書いたり、レポーターもしました。皆さんすごく親切でいろいろ教えてもらいました。テレビで働きたいという現在の私の気持ちも、この時によくしてもらったことが大きいですね」と語る。

 その後、ヴァイスに。「テレビジャパンはおもに日本語の仕事だったので、英語での仕事にも接したいと思い、次のステップかなと」。日英両語で仕事のできるレポーターというのはなかなかいなく日本担当に採用された。「ものすごいプレッシャーとストレスで苦労しましたが、おかげで大きく伸びたと思います」と振り返る。動画のレポーターとしてもっと活躍したいそうで、次はテレビの仕事をメインにしたいと思っている。(取材・文/武末幸繁)

編集後記 2023年5月20日号

【編集後記】 みなさん、こんにちは。ニューヨークに感謝の気持ちの表明と、日本文化の紹介、そして日系社会の連帯を目的に13日、マンハッタンのセントラルパークウエストでジャパン・パレードが盛大に開催されました。81丁目から67丁目まで日系98団体約2500人が着物姿や神輿で行進し、沿道を埋めたニューヨーク市民約5万人が大きな声援と拍手を贈りました。パレードのグランドマーシャルとして1992年のアルベールビル冬季五輪フィギュア女子シングル金メダリストの日系米国人アスリート、クリスティ・ヤマグチさんが先頭のオープンカーから手を振りました。また歴代市長としては初めてエリック・アダムス市長がオープニング式典に出席し、日の丸の小旗を振ってスタートから終点まで一緒に行進したのは画期的な出来事でした。NY市民との連携、米国メディアでの取り上げ方も一段レベルアップしたのではないでしょうか。お天気にも恵まれ、大成功だったといえます。ただ、一方で、沿道には日本人の小中学生の子供たちの姿はあまり多く見られませんでした。パレード当日は土曜日。補習授業校に通っている日本人、日系人の子供たちは、授業があるため見ることができなかったのです。会場にいた日本人女性は「郊外からおいでになる人は学校を休ませるしかないですね。夫がいま学校にこどもを迎えに行ってますが、ナルトを見せてあげたかったです」。また別の保護者のからは「補習校の子供たちとその親たちは、日本人コミュニティにおいてある一定の規模を占めている。日本ではできない経験をする、 海外における日本の位置づけを知る、つまり日本を相対的にみる力をつける、現地校において日本を考える機会を提供するといった教育的観点からも、今後の国際交流を担う子供たちに早くから、そのような体験を、これほどの規模で経験する機会は非常に貴重だと思っている。来年以降に関しては、できれば補習校の子供たちも参加できる形にしてもらえれば、よりよいイベントになるのではないか」と話していました。パレードの運営事務局の吉井久美子事務局長は「事務局のスタッフにも補習校に子供を通わせているママさんもいて、日曜日開催も断然候補に入れるべきと考えます。パレードは、そもそもNYPDからの許可が出ないと実施できません。で、許可が出たのが5月13日だったのです。土曜日開催か、実施しないかという二択で泣く泣く事務局としては『許可が出た日での実施』だったのです。この件は、種々ある課題の一つだと思っています」と話しています。ニューヨーク補習授業校には約600人、ニュージャージー補習授業校には約400人、NY育英学園のサタデースクールに約500人、リセ・ケネディ日本人学校の土曜課程に約150人の児童生徒が在籍しています。このほかにも土曜日に授業をしている日系の学校は多いです。NY市長が日の丸を振って歩く姿や、ナルトのアクションをもし子供たちが見ていたら、きっと大人になっても覚えている貴重な思い出となったことでしょう。大人たちの課題といえそうです。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2023年5月20日号)

(1)ジャパン・パレード盛大に開催

(2)春の装いで外出楽しい W2NXT街角ファッション

(3)JAAで美術家展 今月20日まで開催中

(4)ニューヨークの魔法 男子トイレの風景

(5)草間の水玉世界 無限の鏡の間に新作

(6)坂本龍一さんVR公演 惜別

(7)ジャパン・パレードに課題 補習校の児童生徒ら見られず

(8)吉田実代選手祝勝会 女子プロボクシングNY戦

(9)すぐ体感!30分で体が楽になるストレッチ

(10)日本のいいとこ再発見 熊本編 市内で日本を満喫する

ジャパン・パレード、NYで盛大に開催

アダムスNY市長、日系祭典に初登場

ニューヨークに感謝の気持ちの表明と、日本文化の紹介、そして日系社会の連帯を目的に13日、マンハッタンのセントラルパークウエストでジャパン・パレード(大会名誉会長・森美樹夫NY総領事・大使)が盛大に開催された。81丁目から67丁目まで日系98団体約2500人が着物姿や神輿で行進し、沿道を埋めたニューヨーク市民約5万人(NYPD調べ)が大きな声援と拍手を送った。

 パレードのグランドマーシャルとして1992年の冬季五輪フィギュア女子金メダリストの日系米国人アスリート、クリスティ・ヤマグチさんが先頭のオープンカーから手を振った。

 また今年のパレードには、同目的で2007年開始のジャパンデー@セントラルパーク以来16年間の歴代市長としては初めてエリック・アダムス市長がオープニング式典に出席し「ニューヨーク市は誰にとっても住みやすい街であり続ける」とスピーチ、魚返大輔大会実行委員長(米国東京海上社長)にNY市からのの感謝状を贈り、日の丸の小旗を振ってスタートから終点まで一緒に行進した。

(写真上)花笠音頭でパレードを盛り上げる民舞座・花笠会の踊り。民舞座は今年結成30周年を迎える(写真・本紙三浦良一)

NARUTOが来米、ライブスペクタクル

 パレードには、日本からのスペシャルゲストとして、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト」を迎えた。同作品はアニメを原作にした2015年3月初演の舞台化作品で、当日はうずまきナルト(中尾暢樹)、春野サクラ(伊藤優衣)、はたけカカシ(君沢ユウキ)が登場した。メインスタンド前でフロートを降りたナルトは、レッドカーペットの上で今回1回限りの特別格闘アクションパフォーマンスを披露して沿道のファンから大歓声を受けた。

 うずまきナルトの中尾さんは「ニューヨークの皆さんが、ナルトのことをすっごく好きだなという気持ちが伝わってきたので、僕たちも熱くなってアクションもとても楽しくできました。本当に愛を感じました」と話し、世界中で人気の理由については「忍者とか、勇気とか、汗とか正義とか日本がすべて詰まっているとことがウケているのだと思う」と答えた。またニューヨークの日本人のパワーについてはたけカカシ役の君沢さんは「ここで見るとすごいパワーですよね、皆さんの顔を見て安心しました。こんなに多くの日本の人たちがいるのでびっくりしました」と感想を述べていた。

昨年以上の人出、日本の頑張る姿PR

オープンカーから手を振る森大使

  森大使はパレード後、次のように語った。「沿道のお客さんが去年にもまして多くなっていてすごく嬉しい。これだけ多くの人たちに日本の文化、日本のもの、日本の人たちを見に来てもらえてとても幸せだ。パレードは、個人的には毎年というよりしょっちゅうあってもいいかと思うが、いろんな組織をどう組み立てるのか、資金をどう集めるのかといったことや皆さんに支えていただいて実現しているものなので、今後の在り方については虚心坦懐に考えたい。ニューヨークの人たちに日本文化をみてもらえただけでなく日本の方々にも日本がこれだけ頑張っているんだよということを伝えていきたい。

 ストリートフェアもこれだけ多くの人に来てもらえたことは大変素晴らしいことだ。コロナ後の地方の国際交流の促進と活性化から、地方色を全面に出したフードを出し、東京、大阪、京都だけではない日本の地方の魅力をもっと知ってもらい、認知度を高めたいという意味で地方をテーマにしたフードフェアにした。

 日本の存在感を高めるという意味では、具体的に日本の心配りや気配り、細やかさや丁寧な仕事は目立たない特徴なので、ともすれば、アメリカの人たちには、それが当たり前だと思われる。日本人というおとなしい人たちがいて、ああそうですかで終わってしまうので、そこに止まらず、日本人、日本企業がこういうものを作ってきて、あなたたちにもベネフィットがあるんだよ、これだけ社会に溶け込んでいるんだよと日本の良さに気づいてもらいたい。ニューヨークでジャパンパレードをしたことで、こういった試みが、アメリカ全土に広がり、アメリカ人だけでなく日本人、日系人の励みになるようになれば望外の喜びだ」

ニューヨーカーの声、I JAPAN
日本文化に感動、フードも楽しむ

鼓舞のダイナミックな演奏(写真上)と慶応義塾NY学院(高等部)のチアリーダーたち(同右)

 13日、午後1時からセントラル・パークで行われたジャパンパレードには、日米交流のさらなる促進と日系コミュニティの強化を図りつつ、ニューヨークに感謝の意を表し、未来世代へと交友のバトンをつないでいくことを目的とし、今年も90を超える団体によるパレードや日本食を楽しみに多くの観客が集まった。

 当日は天候もよく、お神輿や和太鼓、武道などの披露に、日本食やヨーヨー風船を片手に歩く人々がまるで日本の夏祭りのような雰囲気を醸し出していた。NYでITマネージャーとして働くアレックス・コロンさん(44)は、フェイスブックでジャパン・パレードについて知り、クリスティ・ヤマグチ氏を一目見ようと訪れていた。カレーライスやから揚げを楽しんで、着物や浴衣等の日本の文化的な衣装に感動したという。また、ベビーシッターとして働くレティーナ・シルバさん(28)は、「このイベントは、とても素晴らしい!」と笑顔で語った。ドラえもんなど日本のアニメやすしに手巻き、麺などの日本食になじみがあり、かねてから日本文化に興味を持っていたというシルバさんは、特に日本の美しさの感覚は魅力的だといい、パレード参加者の舞いや音楽が好きだと話した。ジャマール・シンクレアさん(30)は、大人気アニメ「鬼滅の刃」の主人公、竈門炭治郎のコスプレで観覧し、「最高のイベントだ」と話した。特に日本のラーメンが好きでブルックリンのジャパンビレッジに頻繁に足を運ぶシンクレアさんは、ウェブサイトでジャパン・パレードを知り日本文化を楽しみに来たという。人々の注目を集めながら、パレード参加者の楽しむ姿をみていると元気が出ると話していた。

本紙取材班:ペン・中村恵理、写真・植山慎太郎、三浦良一

春の装いで外出楽しい

 暖冬であっても春の訪れは気分を高揚させる。週末、イーストビレッジのトンプキンズスクエアパークには地元ニューヨーカーが集まりピクニックを楽しんでいた。「漸く春の装いで外に出れるようになったわね」と、取材に応じてくれた女性が着ていたのは、黒地に白いボーダーのH&Mクロップトップにヘルメート・ラングのミニスカート、そしてお母さんのおさがりの黒いブーツ。ヘルメート・ラングはベーシックデザインのデニムラインが豊富だし、お古のブーツは履き慣らされていて履き心地満点だ。本日はH&Mのトップスだが、環境配慮から普段はなるべくファストファッションは避けている。また、アメリカらしい屈強なデニムが好みで、リーバイスもお気に入りブランドだ。一方で、おしゃれにスタイリングしたい日はプリントが可愛いガーニーを着こなす。休日は大抵、ロウアー・マンハッタンかブルックリンでくつろぐ。友人関係が出来上がってるから居心地が良いし、進化を続ける街だから同じ場所に行っても常に新しい発見がある。「この後の予定?友達と古着屋巡りよ。ワクワクするわ」。さまざまなブランドを気軽に試せる古着購入は、環境保護意識も相俟ってミレニアムやジェネレーションZ世代から高い支持を受けている。昨今のインフレは、その傾向をより一般化し、ニューヨーカーの週末スケジュールに欠かせないエンタメとなり始めた。インタビュー最後の「We’re gonna go East Village thrifting!」の一言が時代の流れを顕著に表している。

(Wear 2Nextチーム/アパレル業界関係者によるファッション研究チーム)

JAAで美術家展、今月20日まで開催中

 第27回JAAニューヨークで活躍する日本人・日系人美術家展が5月11日から20日(土)まで、JAAギャラリー(NY日系人会・西45丁目49番地5階)で開催されている。(後援・在NY日本国総領事館、週刊NY生活、よみタイム)。オープニングレセプションが11日午後開かれ、100人余りの来場者で賑わった。佐藤貢司会長の挨拶に続きニューヨーク日本総領事の森美樹夫大使が祝辞を述べた。

 今回の参加アーティストは、服部夏子、廣瀬ジョージ、廣瀬公美、百田和子、市村しげの、河合敦子、久住真理子、三浦良一、宮本和子、森本洋充、森本和也、森戸泰光、永野みき、野田正明、大野廣子、岡田桂、小野知美、作山畯治、佐々木健二郎、佐藤正明、澤野水纓、篠原空海アレックス、篠原乃り子、篠原有司男、竹田あけみ、渡辺啓子、ウインチェスターセツ子、依田順子、依田寿久、依田洋一朗。入場無料。開廊時間は月〜金曜が午前10時から午後5時、土曜は午後3時まで。

男子トイレの風景

 夫が楽しそうに公衆トイレから戻ってきた。初秋のある夕方、私たちはニューヨーク公共図書館の裏にあるブライアントパークにいた。

 夫が手を洗おうとすると、手洗いの鏡の前にアジア系の男の人が立っていた。三十代くらいの小柄な人だ。さっきトイレに入ってきたときにも、確かそこにいた。自分の顔に見入っていて、鏡の前から動こうとしない。

 白いシャツに、赤系の柄の派手なネクタイ、サスペンダーで固定された黒いズボンに、黒いジャケットをはおっている。目の前には白い紙袋が置かれ、中から色とりどりの花のブーケが顔を出している。これから彼女とデートなのか。もしかしたら、プロポーズでもするのか。

 蛇口の水で何度も手を濡らしては、びしっと七三に分けた髪をなでつけて、整えている。手を洗う人の迷惑を顧みず、仁王立ちで身繕いに夢中だ。周りの人はまったく視界に入っていない。皆、主役の邪魔をしないように、隣の蛇口を使って遠慮がちに手を洗っている。

 彼のすぐ後ろで、清掃している黒人の男の人が、モップで床を拭く手を止め、その様子を見ている。ほかの人の邪魔になるからそろそろどくように、と注意するのだろうと思って、夫はふたりを眺めていた。

 ついに、鏡に映ったアジア系の男の顔に向かって、黒人の男が声をかけた。

Hey, don’t worry. You’re beautiful.

なあ、心配することないぜ、あんた。十分、男前だ。

  黒人の男は半ば感心し、半ば冷やかすように、笑っている。

 こんなことを言ったら失礼だけど、鏡の前の男は、とても「男前」には見えなかったんだよ。まして、ビ

ューティフルとはなあ。

 アジア系の男は表情ひとつ変えず、真面目な顔でこれに答える。まるで中学生が英語の教科書を音読するように、一語一語、区切って、はっきりと発音する。

 Yes, I am.

   はい、私は男前です。

 返事がまた、ふるっているだろ。

 気をよくしたのか、さらに念入りに髪をなでつけ、シャツの襟を立てたかと思うと、 ネクタイをわざわざ

ほどいて締め直している。

 There you go. That’s perfect. You’re looking great.

 そうそう、ばっちりだ。決まってるぜ、あんた。

 アジア系の男は相変わらず無表情で、今度はしきりに肩やズボンの裾のゴミを払い落としている。

 黒人の男はますますご機嫌で、鏡の前の男の身繕いにいつまでも見入っている。

 ここは自分も、隣で手を洗いながら、ひと言、ほめ言葉をかけてみるか、と思ったけれど、ビューティフルを超える形容詞はさすがに思いつかなかったよ。

 控え目なイメージのアジア系男性も、ここまで自信に満ちあふれていれば、大丈夫。

 十分、ニューヨークでやっていける。

 楽しそうな男子トイレ。ぜひ現場を見てみたいと思ったけれど、さすがにそれは叶わない。

 このエッセイは、シリーズ第6弾『ニューヨークの魔法をさがして』に収録されています。

https://www.amazon.co.jp/dp/4167717220

無限の鏡の間に新作 、草間の水玉世界

 日本人アーティスト、草間彌生氏の鮮やかな水玉模様の世界に没入する展覧会「I Spend Each Day Embracing Flowers(毎日花々を擁している)」が現在、チェルシーのギャラリー、デイビッド・ツヴィルナー(西19丁目)で開催されている。 

 同展は、西19丁目の519、525、533番地域を4セクションに分け、2セクションは彫像、1セクションは絵画、そして最終エリアは代表的な作品シリーズの一つ「インフィニティー・ミラールーム(無限の鏡の間)」の新作となっている。彫像セクションは、1部屋は黄色地に黒いドット柄のパンプキンが空に向かって伸びている彫像、もうひとつの部屋では、原色とパステル色で水玉と格子状パターンを施した巨大な花々が、生きているかのような緑や青い幹で絡み合っている。絵画のセクションは「Every Day I Pray for Love(毎日愛について祈っている)」と題し、近年取り組んでいる絵画36作品で草間氏の創作の現在地を紹介する。そして無限の鏡の間は、小さな黄色い扉をかがんで入ると、万華鏡のような鏡で覆われた空間が広がる。深い青、明るい黄色、止まれの赤、静寂の緑、これらの原色のドットが天窓から差し込む自然の光でさらに鮮やかに反射する。 

 草間氏の同ギャラリーでの個展は今回で10周年を迎えた。草間氏は同展に向けて「私は、心の底からの歌、草間のマインドを毎日、毎日歌ってきた。さあ現代の若者たち、ユニバースの心の底からの歌を一緒に歌いましょう!」と伝えている。7月21日まで。 入場無料。開廊時間は火曜〜土曜の午前10時から午後6時まで。日・月曜休廊。詳細はウェブサイトhttps://www.davidzwirner.com

(写真・高田由起子)

坂本龍一さんVR公演

ハドソンヤードで6月7日から

 ニューヨークに長く拠点を置き、今年3月28日に71歳で亡くなった坂本龍一さんの複合現実(バーチャルリアリティ:VR)コンサート『KAGAMI(鏡)』が、6月7日(水)から7月2日(日)まで、ハドソンヤードにある劇場ザ・シェッド(西30丁目545番地)にて開催される。

 坂本さんとVRコンテンツ制作スタジオ「ティン・ドラム」のコラボで作られたKAGAMIは写真と現実世界を融合させ、これまでに経験したことのないVRを表現する。観客はVRヘッドセットを装着し(14歳以下は不可)、バーチャルな坂本がピアノで演奏する様子や、音楽に合わせた立体的アートを鑑賞するもの。演奏曲は坂本の代表作品である「エナジーフロー」や「メリー・クリスマス・ミスター・ロレンス」、「種をまく人」など10曲。観客は1時間のコンサート中、自由に動くことができる。 

 入場料は一般38ドルから、学生・シニア33ドルから。最初の3日間のみ一律28ドル。詳細はウェブサイトhttps://theshed.orgを参照する。

監督の言葉に耳を疑い七転八倒した坂本さん

 2017年3月17日に日本クラブで坂本龍一さんをゲストに迎えた対談形式のトークイベントが開催された。ジャーナリストの津山恵子さんが坂本さんの仕事と日常を聞いている。本紙の当時の紙面から先ごろ亡くなった坂本氏へのオマージュの思いを込め、再掲載する。


本紙2017年3月25日号に掲載された坂本さんと津山さんの対談

 ニューヨーク在住の音楽家、坂本龍一さんの対談形式の講演会が17日夕、日本クラブで開催された。

 坂本さんは音楽ユニット、イエロー・マジックオーケストラのメンバーとして活躍後、数々の映画音楽を手掛け、作曲家としてアカデミー賞を受賞するなど世界的な評価を得ている。講演会では、生い立ち、出会い、音楽を含むさまざまな活動やその思い出について語った。

 対談したジャーナリストの津山恵子さんが「坂本さんが手掛けた映画音楽は26本にのぼる」と話題を振ると、印象深い思い出として、アカデミー賞受賞作品『ラスト・エンペラー』で組んだベルナルド・ベルトリッチ監督から93年の映画『リトル・ブッダ』で「世界一悲しい曲を作って欲しい」と頼まれた時のエピソードを面白おかしく披露した。

坂本さんが依頼に添って悲しさ満載の自信作を持っていくと、監督は「まだ悲しさが足りない。世界中の人が悲しみうちひしがれるような曲を作ってほしい」と頼まれる。坂本さんは、自宅の床に転がるほど悔しい思いをしながら再び「世界一悲しい曲」をこれでもかと持っていく。それでも監督は首を縦に振らない。3度目の正直で曲を持っていくと監督は一言。「悲しすぎる」。

 「だって、あなた世界一悲しい曲を作れといったじゃないですか」と食い下がると監督は「これには『希望』が見えない」とボソリ。「え?」坂本さんは耳を疑った。「希望?ちょっと待ってください。希望なんて言葉いま初めて聞きましたけど?!」。最終的には監督に納得してもらう曲を作ることができたが、何十作も映画音楽を手掛けて分かったことは「映画監督はみんなそういうところがあるってことですね。昨日言ったことと今日言うことが違うなんてことはざらです。ただ、自分はニューヨークの生活で『引き籠り』に近い生活をしていて、家の中で1日に20歩くらいしか歩かないこともあるくらい。家の前に美味しいレストランがあるので家とそこの往復だけみたいな。ブロックを超えていくようなことのない私が、そういう映画音楽のような(社会の縮図のような)世界と接点を持つことでバランスを保っているようなところがある」などと語った。

 また環境問題などにも発言する坂本さんは「同じ水でも美味しいからといって遠く外国から運んでくるようなコストのかかったものは、アプリでチェックしてなるべく選ばない、環境に優しいものを選ぶような生活を心掛けている」などと生活信条も披露した。