(1)社会保障詐欺が急増 1面
(2)アーリーアメリカン食器(1面と2面)
(3)江戸型染作家 小倉充子 2面
(4)不平等と闘う不屈の精神 4面
(5)平和の鐘の音国連に響く 5面
(6)コロナ対策洋品店NYに 6面
(7)鎌倉シャツNY撤退 6面
(8)20世紀の黄金時代 8面
(9)生き生きEATS 10面
(10)MENS COLMUN 17面
社会保障詐欺が急増
政府職員装い「逮捕する」など脅す
日本大使館注意を喚起
ワシントンDCの日本大使館は14日、ソーシャル・セキュリテイー番号(SSN)に関する詐欺の手口を公開して注意を呼びかけている。
■「SSN詐欺」対策
(1)詐欺行為者は社会保障局その他政府機関職員を装い、「あなたのSSNに問題がある」などと電話やEメール等で連絡してくる。逮捕その他法的措置を取ると脅してきたり、給付金の増額をオファーしてきたりすることもある。
(2)通常、社会保障局が電話連絡を行うのは、あなたから依頼がある場合または継続案件である場合に限られる。
(3)以下に該当する連絡は詐欺と疑うこと。
・SSNやアカウントに問題があると言う
・反則金や債務の支払いをギフトカード、電信送金、プリペイド式デビットカード、デジタル通貨、または現金の郵送で行うよう求める
・逮捕や法的措置を取ると脅す
(4)社会保障局から電話することはあっても、以下を行うことはない。
・脅す
・SSNを停止する
・至急の支払いを求める
・現金、ギフトカード、プリペイド式デビットカード、電信送金による支払いを求める
・ギフトカードの番号を聞く
(5)自分と家族を守るため以下の行動を取ること。
・疑わしい電話を受け取った場合、電話を切り、社会保障局OIG(https://oig.ssa.gov/)に報告する
・不明の番号に折り返し電話しない
・大きな買い物や財政的な決定を行う前に信頼のおける人に助言を求める
・被害にあったら恥ずべきものと思わず届け出る
・さらに詳しくオンラインサイト(https://oig.ssa.gov/scam )で学ぶ
・この情報を他の人とも共有する
■フィッシング・メール対策
(1)社会保障局から送信するメールのほとんどはメールアドレスの末尾が「.gov」であり、同局委託業者が(これとは異なるアドレスから)オンラインサービス利用促進のための広報メールを直接送信することはあるが、いずれの場合もメール内のリンク(ロゴ、写真を含む)はすべて公式ウェブサイト(必ず「gov/」が付いている)に飛ぶよう設定されている。
(2)メールの見た目で判断することなく、リンクに正しいURL(ウェブアドレス)が設定されていることを確認する。リンク上にマウスカーソルを当てリンク先のURLを表示させ(クリックしない)、不審な点がないか確認する。
正しいURLの例 https://www.ssa.gov/myaccount/
不正なURLの例 https://www.socialsecurity.gov.gmx.de/ ※「gov」のあとに「/」(スラッシュ)がない、などの特徴がある。一見見分けがつかない巧妙なスペルになっているので要注意。
アーリーアメリカンな食器の宝庫
マンハッタンのダイナーで使っているような厚めのコーヒーカップやスープ皿、ホテルの紋章が入ったお皿、大学のエンブレムの入った器、アナポリスの海軍兵学校で使っていたお皿=写真=など、オリジナルなアーリーアメリカンの食器を専門に販売しているのが、アンティーク食器店、フィッシュエディ(ブロードウエー889番地、19丁目角)だ。
店の名前は、アップステートの小さな田舎町の名前に由来。その町でアンティークの食器を買い付けたことから1986年に町の名前を店名にしてビンテージ食器専門店となった。今ではアンティーク食器からオリジナル食器まで販売する。コップ1個から販売していて5ドル以下のものが多い。大衆的なレストランで使用する食器やカトラリーも豊富に扱っている。
洋食が映えるお皿の山

洋食も和食同様、器やお皿で料理の味が変わる。皿に引かれた線の色ひとつ、模様一つで肉料理、魚料理にアクセントが生まれる。それは目で味わうスパイスだ。料理に合わせた皿を用意するのもおもてなし。お一人様の食事だって気分が弾めば食事も美味しい。
写真・三浦良一
江戸型染作家の手ぬぐい
小倉充子さん作
イーストビレッジのマカリで販売
イーストビレッジにある和アンティークギャラリーのマカリ(3番街97番地、12丁目と13丁目の間)では、江戸型染作家・小倉充子さんの手ぬぐいを販売している。創業1884(明治17)年より三代続く神田神保町の履物屋「大和屋履物店」に生まれた小倉さんが、図案、型彫り、染めまで、ほぼ全ての工程を一貫して手がけた手ぬぐいで、同店では数多くの種類を取り揃えている。手ぬぐいに描かれているのは「ねずみ小僧」「歌舞伎職人図絵」「馬尻東風」など歌舞伎や落語、小噺からイメージしたストーリー性のある図案で、アートとして飾っても楽しめる。一番人気は東京駅のステンドグラスをモチーフにした「東京ステイション」(写真中央)。各25ドル。
開店時間は正午から午後5時30分まで。月曜定休。問い合わせは電話212・995・5888まで。オンラインからのオーダーも可能。詳細はウェブサイトwww.themakari.comを参照。
不平等と闘う、不屈の精神で立つ
“My mother told me to be a lady. And for her, that meant be your own person, be independent”
「淑女であれ、そして自立せよ」
など数々の名言で知られるルース・ベイダー・ギンズバーグ氏が86歳で亡くなった。
その功績を称え、 今、首にレースの飾りがつけられた ”Fearless Girl”が立っている。
男女差別と闘う最高裁判事と言われた彼女は 、コロンビア大学院を首席で卒業したにもかかわらず、女性であるという理由で弁護士事務所から落とされ続けた。
しかし、知性と努力で1993年ビル・クリントン大統領の心を動かし、アメリカの正義と平等を象徴する女性としてサンドラ・デイ・オコナーに続く史上2番目の女性として最高裁判事に指名された。そして生涯、多くの不平等な法律に向き合い改革してきた女性判事であった。
平和の鐘響く
国連事務総長打つ
石兼国連大使ら列席

今年の国連総会が新型コロナウイルスの感染拡大に伴いオンライン・リモートで開催されるにあたり、例年国連総会と重なる国連平和の日前後に鳴らされていた平和の鐘の式典の動向が注目されていたが、17日午前11時に鳴らされた。
当日はアントニオ・グテーレス事務総長、ヴォルカン・ボズクル第75回総会議長、メリッサ・フレミング事務次長、石兼公博国連大使が出席して式典が行われた。
国連平和デーは9月21日だが、代表部によると、例年、式典は国際平和の日前後に行われており、当日に開催されたことの方が少ないくらいとのことだ。この鐘は、日本が1956年に国連に加盟する2年前、日本人、中川千代治氏(元宇和島市長・故人)が世界平和を祈念して寄贈したもの。
写真:左からボズクル議長、グテーレス事務総長、石兼国連大使(写真提供・国際連合日本政府代表部)
コロナ対策用品店
焼き肉店主が開店
ヘラルド・スクエアに16日、マスクや除菌剤など細菌感染防止グッズの専門店「CV19エッセンシャル」(東35丁目41番地)がオープンした。
同店は、32丁目の韓国焼肉店「サムウォン・ガーデン」店主のトニー・パーク氏が、店内飲食が解禁になった時のために、従業員や客の安全を確保でき安心してもらえる用品を探していたところ、専門店の計画に至った。ほとんどの衛生用品は台湾や韓国などから輸入しなければならない上に、オンライン通販では実際に試着して使い心地を確認できない。ガーメント・ディストリクトで「アンジェリーナ・ベーカリー」も経営するパーク氏は、和風バーベキュー店を開店する予定だった近所のスペースを使って同店舗の準備を進めた。
店内は白く清潔感のあるショールームを思わせる内装で、壁の棚にはさまざまなマスクやフェイスシールド、携帯用UVライト、携帯電話用除菌剤、空気清浄機、抗菌性フィルム、プレキシガラス、顔認証型検温端末などが並ぶ。韓国人の両親のもとイタリアで育ったパーク氏は、コロナ禍で改めてアジアの対策を見直し、自身の事業に活かすことができたと話している。
おうちでまったりフルコース、NY*おもてなし料理
プロに聞く、生き生きEATS(イーツ)
元気と美味しいを求めて料理の達人が腕を振るう (6)
NY流おもてなしをテーマに料理教室にイベントやセミナー、そして現在オンラインで世界から料理好きが参加する「バーチャルサロン」を主宰するコルトン・ニューヨーク代表取締役のひでこコルトンさん。
同サロンは、コロナ禍で日々の料理やレシピのアイデアに困っている人、外食もままならず自宅で簡単にレストランの味を再現したい人、そしてこの機会にニューヨークの「テースト」や「おもてなし」の腕をあげたい人などなど、会員同士が交流できる新タイプのクッキングコミュニティーとして盛り上がっているそうだ。
今回はそんなひでこさんに、林檎にクランベリー、スクアッシュにマッシュルームといった季節の食材を使い、カクテルからスイーツまで秋の自宅でのお料理をフルコースで楽しめる「ひでこさん王道のレシピ」を紹介してもらった。

「フルコースといってもどれも簡単に作れて日々のクッキングに取り入れていただけるものばかり。美味しさは元気の源、家族や大切な人を笑顔にします。そして心身の健康にも繋がっています。日々の食事が『あなたを作り』、そして『パワーを生み出す』のでとっても重要です」と言ってまず最初に作ったのは、見た目も気分が上がるひでこさんオリジナルカクテル「クランベリーロイヤル」。見た目美しく、泡でクランベリーが上下に動くのもまさに「THE PARTY」といった感じだ。このグランマニエ漬けクランベリーはバニラアイスクリームやフレッシュリコッタチーズの上にかけてデザートにサーブしてもとっても美味とのこと。コースディナーのあとは、ビスコッティとマサラワイン、またはコニャックで、お好みのアイスクリームも添えて「あっという間に手が込んだ(ように見える)デザートの出来上がり。(笑い)。ご家庭でも時には気分を変えて、レストランのようにフルコースで『おもてなし』を楽しんでみては? エンジョイ!」とチャーミングな笑顔を見せた。お料理とスマイルが何よりのおもてなしだ。
*ビスコッティのレシピ及びバーチャルサロンで毎月開催するLIVEクッキングクラスを無料で試されたい方は、www.hidekocolton.com まで。

ひでこコルトン
COLTONS NEWYORK
代表取締役
NY*おもてなし料理家として、またライフスタイルブランディング講師として幅広く活躍中。VIRTUAL SALON by Hideko Colton New York 著書「NYのおもてなしレシピ」(講談社)「ニューヨーク流自分を魅せる力」(WAVE出版)
公式ページ www.hidekocolton.com
Harvest Salad (4人分)

バーチャルサロンでもご紹介した私の特製ドレッシングは、隠し味に醤油がきいたレモン風味。
林檎やスクアッシュ、そして南瓜などの甘みをより一層爽やかに引き立て旨味が増します。
<材料>
バターナッツスクアッシュ:3カップ(サイコロ状)
りんご:1個(サイコロ状)
ボストンレタス、アルグラ、スピナッチのグリーンミックス:約8カップ
Red Onion(紫玉ねぎ):1/4個(薄くカット)
ピーカンナッツや胡桃等:1/2 カップ
*ドレッシング
アップルサイダービネガー:大さじ2
エクストラバージンオリーブオイル(EVOO):大さじ4
レモンゼスト(皮すりおろし):大さじ1
レモン汁:大さじ4
醤油:大さじ1
蜂蜜:大さじ1
塩:小さじ1
胡椒:少々
<作り方>
1. 鍋にお湯を沸騰させ塩を入れ(海水程度)スクアッシュが柔らかくなるまで約3分間茹でたら、鍋から取り出し冷ましておく。
2. 林檎は芯を取り除きサイコロ状に切る。
3. ドレッシング:小さいボールにレモンの皮とレモン汁、醤油、蜂蜜、エクストラバージンオリーブオイルを入れてよく混ぜ塩胡椒で味を整える。
4. サラダボールにグリーンミックス、薄切りにしたレッドオニオン、茹でたスクアッシュ、林檎を入れドレッシングを満遍なくかける。
5. トップに胡桃をのせて出来上がり。
Chicken Marsala (4人分)

Chicken Marsala (4人分)
<材料>
鶏肉(胸肉、骨なし): 2 lbs
小麦粉:大さじ3
ガーリックパウダー:小さじ1/2
塩:小さじ1/2
胡椒:小さじ1/4
オリーブオイル:大さじ1
無塩バター:大さじ3
マッシュルーム:3カップ
玉ねぎ:1/2個(微塵切り)
マサラワイン:1カップ
チキンストック(チキンスープの素):1.5カップのスープ
オレガノ:4本
タイム:4本
塩胡椒:少々
イタリアンパセリ:お好みで(飾り用)
<作り方>
1. 鶏肉に小麦粉ミックスをまぶす。
2. 大きなフライパンにオリーブオイルを中火で熱し、バターを大さじ1加え両面約3分色よく焼きあげ取り皿にとっておく。
3. 残りのバターをフライパンに入れ、玉ねぎを炒め(約5分)、マッシュルームを加え更に5分間炒める。
4. オレガノとタイムを加え、マサラワインを注ぎ一旦沸騰させたらよくかき混ぜ、ワインが約半量になるまで煮詰める。
5. チキンストックを加え更に5分間煮たらソテーしたチキンを入れソースが煮詰まるまでさらに7分間調理する。塩胡椒で味を整えて出来上がり!(盛り付けの際フレッシュなタイム(分量外)または微塵切りにしたパセリをのせると綺麗です。)
鎌倉シャツNY撤退
閉店セールを開始
鎌倉シャツの愛称で知られるメーカーズシャツ鎌倉(本社・鎌倉市) が年内でニューヨークのマジソン街の店舗を閉店し、撤退することを決めた。今年5月に代表取締役に就任した貞末奈名子社長によると、今年春から新型コロナウイルスの感染拡大により店舗を4か月閉め経済再開を待ったが、再開店後もパンデミック前のような顧客の波が戻らないこと、ニューヨークの経済再開がいつ元に戻るのか見通しが立たないことなどから一時撤退を決めたという。日本のアパレル企業の中で、創業25年、対米進出8年で、世界の一流ブランドと肩を並べるまでに成長した成功例として注目されていた。
マジソン街店では現在、閉店セールを実施している。通常89ドルのワイシャツが50ドル、ネクタイが39ドル。在庫がなくなり次第セールは終了する。
20世紀の広告黄金時代
Jim Heimann & Steven Heller・著
TASCHEN・刊
ミッドセンチュリーとは、直訳すれば『世紀の半ば』。いろいろな世紀にそれぞれのミッドセンチュリーがあるが、この本は、20世紀半ばの1950〜60年代の古き良き時代に、アメリカを発祥として生まれたデザインの数々が広告を通していかに売られていったかを当時の広告やポスターをまとめて紹介している広告図鑑だ。
生まれた商品は豊富な資源と新進気鋭のデザイナーにより、成形合板やプラスチック素材を使った軽快で、曲線的なデザインが特徴だった。第二次世界大戦終結後、アメリカ軍兵士が帰郷し、多くの若者が家庭を持ったために住宅ブームが巻き起こり、それに連れて家具の需要が増えた。また空襲で荒廃したヨーロッパに変わり、本土が無傷なアメリカが世界産業の中心になったため、世界の需要を一手に引き受ける生産力を持ち、同時に大戦中の技術革新などが影響し、大量生産の技術が確立、コストが削減出来、安く生産できるために需要を満たすことができた。
結果として、本格的な消費時代に突入、需要が拡大した。作れば売れる時代の到来だ。それらの需要拡大の結果、消費者は従来に増してデザイン性の有る商品を望むようになり、ニーズに応えるためアメリカで質の高いプロダクトが製作されていった。これらの膨大な知の産物を大衆市場に売り込むために大きな役割を果たしたのが広告だ。
活躍したのはMADMENと呼ばれる男たち。マッドといっても狂人という意味ではない。広告代理店は時代の花形職業となり、雑誌、新聞、テレビ、ラジオの広告は、ニューヨークのマジソン・アベニューにオフィスを構える大手広告代理店が時代を先導しながら夢ある広告を作り出していった。雑誌広告の黄金時代を迎える。そんなマジソン・アベニューの男たちを略してマッドメンと呼んだのだ。
この本で扱っているのはモダンな家具、乗用車、服飾、バケーション、たばこ、清涼飲料水、タイプライター、コーヒー、海外旅行、下着、化粧品、洗濯機、冷蔵庫、テレビ、ステレオ、ワイシャツ、スーツ、お酒、肉、魚、野菜、ビール、ありとあらゆるものが商品として市場に流れていく様子が描かれている。売るためのキャッチフレーズ、レイアウト、モデルなど戦後の50年代と60年代のアメリカの消費文化を象徴する写真が満載されている。
広告に登場するモデルの99%が白人というのも時代を反映している。購買力があるのは白人が圧倒的であり、消費文化を支えていたのは紛れもなく白人だった。公民権運動前の時代につき、アメリカには黒人はまるで存在していないかのごとく広告には白人しか登場していない。私たち日本人が戦後のアメリカの豊かでおおらかなアメリカを意識するとき、そこには白人の顔しかないことに気づく。黒人社会と白人社会へのマーケテイングが分断されていたのだ。広告は限りなく美しく半世紀前へのノスタルジーを大いに掻き立てるが、一方で多人種社会であることを黙殺した時代であったことも強く感じさせる本だ。(三浦)
観客の視線で撮影する
撮影監督 清川 耕史さん
映画の撮影監督、清川 耕史さん(49)が撮影した映画「The Garden Left Behind」が、現在アメリカで公開されている。SXSWなどで賞を取っている注目作品だ。清川さんは日本で数々のコマーシャルやミュージックビデオなどを手がけた後、2013年に当時5歳と1歳の娘と妻を伴って来米、以来さまざまな映画に撮影監督として参加し、現在は、日本とニューヨーク、ロサンゼルスの3拠点で仕事をしている。来米当初はエージェントがいても仕事を思うようにとれず、日本でコマーシャルでの経験は豊富だが映画ドラマの経験があまりなかったことや、日本から海外ロケには何度も来ていても、いざこちらに住んで仕事となると、米国の仕事の進め方などに戸惑い、ニューヨークでのキャリアを学生映画への参画から始めた。
今回の映画はビザがなく不法滞在をしているメキシコ移民のトランスジェンダーの話。役者経験のない本当のトランスジェンダーが主演で、監督はブラジル人、プロデューサーはトルコ人、撮影部は日本人、ロシア人、イタリア人、フランス人、カメラ後ろも移民多数。「国際混成チームで、撮影が終われば解散。国境のない感じが自分に合っているかな。どんな仕事でも観客の視線で撮影することが一貫した自分のスタイルなんです」という。
日本大学芸術学部映画学科を卒業後、バンクーバーで撮影助手のキャリアを始めた。帰国後、CXドキュメンタリー番組「ザ・ノンフィクション」 でカメラマンデビュー。多くのミュージックビデオやCMに携わったのち、どうしても映画の撮影をしたくて2013年に拠点をNYに移した。日本では大手企業のCMや大物歌手たちのビデオ撮影をこなし、仕事にも経済的にも何不自由ない。だが大学を卒業後、カナダから帰国後、稼げる仕事を選んだ自分と、あるべき自分が追い求める姿との乖離の溝を埋めることに時間を費やしてきた。
撮影の技術と感性と日本での経歴は申し分ない。その自分がどこまで実力だけで海外で通用するのか。7年目の答えが出ようとしている。(三浦良一記者、写真も)
中央アジアの青い古都
ウズベキスタン・サマルカンド
シルクロードにロマンを感じる人は多い。駱駝を連れたキャラバンが、東西から売れそうなものをそれぞれ持ち合って利益を手にし、危険もあった砂漠の旅で疲れた体を商隊宿で休ませ、チャイハナ(お茶を飲む場所)で情報交換をした頃、サマルカンドはシルクロード交易の中心地で一時人口は世界最大だったが、1991年ソ連崩壊により独立した現在は青いタイルが美しい静かな古都。モスクや神学校に散りばめられた幾何学模様の下に土産物屋が並んでいる。「チンギス・ハーンは破壊して、ティムールは建設した」と言われている通り、サマルカンドは1220年にチンギス率いるモンゴル軍によって破壊され、150年後に地元出身のティムールが繁栄をもたらした。ティムールの棺があるグーリ・アミール廟はインドのタージ・マハルをはじめとするムガール建築の礎となった。
ウズベキスタンの人口の95%以上がイスラム教徒だが、道端で膝まずき祈る人やヒジャブを着けている女性は見かけない。酒や豚肉も解禁で、イスラム教の町ならば日に何度も聞こえてくるアザーン(礼拝の呼びかけ)が聞こえない。苦情が多くて音を小さくしているそう。言語はウズベク語、タジク語、テュルク語、ペルシャ語、ロシア語で、私には地元の人々の会話が何一つ解らず、標識や店の看板が全てお洒落な模様にしか見えなかった。滞在したゲストハウスのオーナーは、タクシーの運転手をしていたが、半年前に弟と観光ビジネスに打って出た。「ウズベキスタンの人々の平均月収は100ドルから200ドル、医者で300ドルです」と、オーナーは携帯の翻訳機能を使って話した(2019年の個人GDPは2459ドル、前年より約500ドル上昇)。
イスラム圏の公衆浴場ハマム(トルコ式風呂)は庶民の憩いの場。大理石の床暖房で室内は暖かく、お湯を洗面器に汲んで使用する。日本の銭湯から浴槽と鏡を除いて、数カ所のお湯汲み場を共用する感じだ。別料金を払うと中央にある暖かい大理石の台の上で身体を洗ってくれる。入浴料約1ドル、身体洗い約4ドル。市民の生活が伺える場所は楽しい。バザールにも毎日のように通った。ウズベキスタンのメロンはすごいと何処かで読んだのを思い出し、約3ドルでずっしりと重いメロンを買い、宿で切ってもらった。芳醇なメロンだった。
ビービー・ハヌム・モスクを見ながら、大学で英語を教える歴史観光ガイドのディルノザさんは解説した。「ハヌムは夫人、ビービーは尊敬するという意味です。英雄ティムールの第1夫人で、夫人の中で一番年上でした。子供は産みませんでしたが、他の子供たちの教育係であり、ティムールに最も愛されました。このモスクの建設中、遠征に出かけたティムールに留守中のモスク建設の指揮を任されました。ところが、ビービー・ハヌムの虜になった建築家が頬にキスさせてくれないと工事をすすめないと言いました。ティムールが戻る前に完成させたいビービー・ハヌムは、卵2つにそれぞれ色を塗り、外見は違っても中身は同じと建築家を諭しました。すると建築家は2つのワイングラスを用意して、1つにはワイン色のついた水を、もう1つにはワインを入れて、1つは何も感じさせないが、もう一つは私を酔わせる」。この話しには別バージョンもある。建築家が頬のキスをおねだりするまでは同じだが、こちらのストーリーではビービー・ハヌムが工事を進めるためにキスを許す。ところがそのキスマークが痣になってしまい、帰還したティムールがそれに気づいて彼女をモスクの塔から突き落としてしまうというもの。
夕暮れ時のシルクロード、まばらな通行人。シャシュリーク(串焼き肉)とサラダの夕食に行く途中だった。閉店後のパン屋さんの店先にナンと言う、直径約25センチの円盤型パンが袋に入って何個か置いてあった。「どうぞお持ちください」という事らしい。雑貨店の小さな明かりに照らされてバナナが並んでいた。一房買うと小さな子供を抱えた美しい顔の若い母親は、お金を握った手を胸の前に合わせ無言で頭を何度もペコリと下げた。バナナ1本がナンを3個買える値段。バナナは嗜好品なのだろうか。日本でも平均月収が1万円だった昭和30年、バナナ一房250円だったとか。ゲストハウスに戻ると、門前の地面に女性と小さな娘が座り、袋に手を入れてパウンドケーキのような物を2人で静かにたべていた。側には初老の男性も立っている。ゲストハウスでもジプシーに食べ物を無料提供しているのだ。
帰国前日アフラシャブ遺跡に行った。考古学上は価値があるけど、私にとってはデコボコした広い空き地。そこに立って悠久の歴史に思いを馳せた。ソ連時代の置き土産のクリスマスツリーを道路に飾り、神学校の外壁にイスラム教では御法度の人の顔をモザイクで描いたウズベキスタンの人々。違いを受け入れる宗教観が日本と似ている気がする。帰国後ディルノザさんがサマルカンドの銘菓ハルヴァを送ってくれた。届くまでに2か月以上かかった。現在でも砂漠の時間はゆったりと流れているのだった。 (山本真由美)

