歌があり明日がある街NYに生きる

歌手、俳優

熊本 翔士さん

 来米5年後の2015年にマクドナルド・ゴスペル・フェスティバルで応募総数2万人の中からソロファイナリスト4人に選出。さらに4年後の19年11月には、アポロ劇場アマチュアナイト1回戦で準優勝した。

 熊本さんは、1987年福岡市内で蕎麦屋の長男として生まれた。高校は男子校。乱れていたというより荒れていた。「スクール・ウォーズ」のモデルとなった京都市立伏見工業高校ラグビー部元監督の山口良治さんが学校に招かれ、発声した第一声が「君たち悪いねえ」だった。学校を辞めるかラグビー部に入るかの選択を迫られ、熊本さんも仲間と共に身長180センチのウイングとフルバックのポジションに。猛練習の成果あって高校ラグビーの名門がひしめく九州で県大会ベスト16まで食い込んだ。まさに「ガチガチに性根入れ直されてラグビーに救われた」青春だった。

 その後、福岡工業大学の社会環境学部に進学し、2003年に卒業。東京都内の警備会社大手に就職した。サラリーマンになったのは家の事情だった。本当は歌手になりたかったが親の商売が失敗して家に仕送りをしなくてはならなかった。大学の学費もアルバイトで払った。歌は子供の頃から上手かった。と言ってもカラオケで歌う程度だったが就活で吉本興業と渡辺プロダクションには役者枠で合格している。だが自分で仕事を取ってこない限りしばらくは無給だと分かって諦めて会社員になったのだ。大学時代、夏休みに祖父の妹にあたる叔母が国際結婚をして住んでいたテキサス州に毎年遊びに行っていたことがアメリカに目を向けた。自由なアメリカの空気が気にいっていた。大学を出て社会人になって1年半たった頃、高校時代の親友が歌手になると言って上京してきた。目が覚めた。ちょうど法律が変わり親の借金も帳消しになり、もう怖い取り立て屋も来なくなったのが契機となった。親に「これからは自分の好きなことして生きていくからね」と言って学生ビザで渡米した。23歳だった。

 英語はボーカルの先生につき5年間、単語の数より「発音」だと信じ徹底的に学んだ。発音記号を全部読めるようになり、歌に関しては、ネイティブと変わらない発音を体得した。現在は自身の楽曲制作をしながら日本の大手芸能事務所所属の役者、歌手にオンラインで英語の歌の発音レッスンを行っている。「後から勉強してできるようになった発音なので、日本人に口の開き方、舌の動かし方、顎の使い方を一つ一つ教えることができる。ただ、第二言語だなと思うのは、後から聞いた時にずれていることがあること。生まれながらの発音ではなく大人になってから覚えた発音なので、ギターやピアノ、野球のバッターのスイングのように調整、チューニングが常に必要になるのがなんとも悔しい」という。

 ニューヨークでは2014年から子供教育番組のメインキャストとしてブルックリン地区のテレビ番組に出演中だ。モデルとしてもファッションブランドJ Crewや、FadedNYCなどの撮影に参加。最近では、5月14日にNYで開催されたジャパンパレードで花魁道中の男衆としても参加。6月1日に放映された吉本興業ノンスタイル主演の番組「福岡のノンスタさん」で自身のオリジナル曲Lady Bが使用されて日本のテレビで自分の作った曲が流れた。親も聞いて喜んでくれた。「自分を育ててくれる街ニューヨークが好きです。いつかグラミー賞のような祭典に参加できるようなアーティストになりたいです」。目標がある人生を自分の足でしっかりと歩いている。そんな確かな実感がある。

(三浦良一記者、写真も)

勉学の大海は世界へ

第52回JAA奨学金授与式行う

 ニューヨーク日系人会 (JAA)が主催する第52回奨学金授与式が3日夕、ハーバードクラブで行われた。9月から米国の大学に進学する10人にJAA奨学金が、大学院に進む5人に第16回本庄スカラシップが授与された。

 佐藤貢司JAA会長の開会挨拶に続き、新家良一奨学金共同委員長(三菱UFJ銀行専務執行役員米州副担当)が祝辞を述べ、その中で故緒方貞子国連難民高等弁務官の言葉「人間は仕事を通じて成長していかなければならない。その鍵となるのは好奇心だ。常に問題を求め、積極的に疑問も出していく心と頭が必要だ」を受賞者に贈った。

 続いて村瀬悟同共同委員長の紹介で、ニューヨーク総領事の森美樹夫大使が登壇し、「皆さんをここまで育て勉学をサポートしてくれたご両親に感謝し、その恩を将来社会のために還元してください」と激励した。

 基調講演はラトガース大学の若林晴子准教授が19世紀末のラトガース大学と日本の交流を振り返り、勝海舟が息子をラトガースに留学させた際に贈った「万里の洋を蹴破り、高涛遥かに群れを絶せよ」(大海を蹴破り、高波の向こうにある世界へ単身乗り出して行け)という言葉を今年の奨学金受賞者に贈った。奨学金受賞者は次の通り。

第52回JAA奨学金受賞者

▽MUFG賞(1万ドルと全日空の日本往復航空券)=エリサ・ジョイ・テイラーさん(セイクレッド・ハート・グリニッチ高校)ノースウエスタン大学進学▽村瀬ファミリー賞(1万ドル)=アレクサ・ミレール・ナカニシさん(グリニッチ高校)ジョージタウン大学へ進学▽富川宗次博士賞(7500ドル)=ワァン山口浩さん(ベンジャミン・N・カルドーゾ高校)ジョージア工科大学へ進学▽米国オリエントコーポレーション賞(5000ドル)=ナオミ・リリアン・ユさん(ジェリコ高校)ペンシルベニア大学へ進学▽一戸&堀重賞(5000ドル)=篠田美波音さん(バーゲン・カウンティー・アカデミー)ジョージタウン大学へ進学▽松川とし子賞(5000ドル)=アーロン・カノー・グラスマンさん(コロンビア高校)ニューヨーク大学へ進学▽TVジャパン賞(3000ドル)=ディラン・カムイ・ジルさん(コロンビア高校)ニューヨーク大学へ進学▽西宮伸一大使賞(3000ドル)=アリサ・アージェントさん(ブルームフィールド高校)南カリフォルニア大学へ進学▽斉藤もと賞(2500ドル)=ウォン田中泰来さん(ブロンクスビル高校)ノースウエスタン大学へ進学▽全日空ジャパン・トラベル賞(1000ドルと日本往復航空券)=ダニエル・ヒロ・シャーレイさん(ノーザン・ハイランズ・リージョナル高校)タフツ大学へ進学。

 第16回本庄奨学金受賞者

▽7500ドル=城川七瀬さん(ウィリアムズ・カレッジ)マサチューセッツ工科大学大学院▽タマキ・ケントさん(東京大学)ジョージタウン大学大学院▽5000ドル=マイケル・リーさん(ボストン大学)コネチカット大学院▽キンバリー・マルチネズさん(ハンターカレッジ)コロンビア大学大学院東アジア研究所で日本語と日本文化を専攻▽ミヤザキ・マホさん(京都大学)コロンビア大学大学院東アジア研究所で日本文学と能について研究。

(写真)受賞者(後列の右8人)と前列森大使を中心に奨学金授与関係者

入国審査アプリの運用で心配な日本のDX

 この5月に久しぶりの一時帰国をしてきた。簡素化されていたとはいえ、入国の諸手続きはやはり複雑であった。中でも現時点でしっかり確認しておきたいのは、入国審査におけるデジタルの利用についてである。本稿の時点でもそうだと思われるが、現在、日本に入国するにはスマホの携行が必須であり、そのスマホには3つのアプリのインストールが要請される。問題はその運用だ。

 3つのアプリの第一は「mySOS」である。本来は、隔離を管理するツールであったが、5月の時点では検疫のデジタル化という機能に変わっていた。検疫に関する4項目(誓約、健康確認、ワクチン、陰性証明)を入力すると、ステータスが「緑」に変わり、そのステータスに伴うQRコードが生成される。このQRコードがあれば、検疫プロセスはスムーズに進むという設計である。

 ちなみに、6月1日からは米国から日本の入国の場合はワクチンの3回接種がなくても隔離は不要となり、3項目(誓約、健康確認、陰性証明)だけで良くなった。また、審査後に与えられるステータスは、入国時の抗原検査に関して「免除対象国」を意味する「青」に変わっているが、QRコードが生成されることは変わらない。

 その運用だが、まず、問題は降機直後にあった最初のチェックポイントである。ここではパスを意味する「緑(現在は青)」を確認するとともに、QRコードの存在がチェックされた。だが、そこではQRコードをスキャンせず、存在を目視するだけであり、その上で不思議なことを指示されたのだった。「電波状態が悪いといけないので、今のうちにスクショを撮るように」というのである。

 実は、接続の問題でQRコードが出せない場合を想定してスクショを撮っておくと良いというアドバイスは、ネットに溢れている。そこで、自分の場合は既に事前にスクショを撮っておいたのだが、その旨を申し出ると「それで結構です」という答えが返ってきた。

 QRコードというのは、高度な技術と思われている。この「mySOS」のように「バージョン10」という57セル×57セルに加えて3つの隅に位置切り出しのシンボルがついている大型の場合は「いかにも最先端」というイメージを与えるが、実は中身は単純であり改ざんは可能だ。したがって、真正性、つまり内容が正しいことを証明するには、オンラインで政府のサーバに接続された上での表示でなくてはならない。仮にスクショなどのオフラインでも真正性を確保するには、認証を「政府の側から」かけなくてはいけない。これはDXの初歩である。この「mySOS」の設計として、QRコードはアプリ内では生成されず、必ずブラウザに飛ばしてWeb上でリアルタイム表示をする設計になっているのもそのためだ。

 しかしながら、実際に電波状態が悪く、肝心のスキャンするタイミングでQRコードが出なくては大変だというので、現実的な運用として「念のためスクショを撮っておいてください」という指示になっているものと思われる。これでは、真正性も何もあったものではない。

 だが、それなりに「使われている」という点では、この「mySOS」はまだ「まし」である。2つ目の「COCOA」はどうだろうか? これは位置情報や通信技術を使って陽性者との「15分以上の濃厚接触」を検知するアプリだ。この「COCOA」に関しては、十人以上の担当者が待機していて「入国者にアプリをインストールさせる」ことは徹底されていた。だが「作動させてください」という指示はなかった。おかしいと思って調べてみると、日本国内でも「COCOA」は事実上運用されていないようなのだ。巨費を投じていながら使用されていないし、使用されていないのに入国者にはインストールの徹底だけは求められるというわけだ。

 3つ目の「税関アプリ」に至っては、税関審査の担当官に「アプリも入力してあるんですが、紙の方が簡単なんですか?」と尋ねたらアッサリ「やっぱり紙ですね」という指示が返ってきて、思い切り「脱力」させられた。

 3つのアプリのそれぞれに、複雑な事情があるのは推察できる。だが、真正性を確保できないのに、スクショを撮らせてオフラインでの運用を認めるとか、使いもしないアプリをインストールさせるなど、根本的な部分でDXの原則が崩れてしまっているのは大きな問題だ。デジタル庁を設置してDXを推進するというのを、本当に国策としたいのであれば、とにかく業務のデジタル化における原理原則を全ての官庁が理解しなくてはダメだ。このままでは先が思いやられる。

(れいぜい・あきひこ/作家・プリンストン在住)

踊るプライドパレード26日

 日本人ダンスアーティストで、NY拠点のダンスカンパニー「sarAika movement collective」を率いる武島アイカが、26日(日)に開催される第53回「NYCプライドマーチ」に約70人のダンサー、ミュージシャン、ドラアグクイーンらとともに参加する。

 武島はクイア(性的マイノリティ)や女性、移民、有色人種などマイノリティコミュニティ「LIVABALL」の代表として活動。当日はダンスカンパニーとLIVABALLがタッグを組み、ローカルのLGBTQIA+やBIPOC(黒人、先住民、有色人種)やアライ(性的マイノリティの人たちを理解し支援する人)らが80・90年代のヒットソングの生演奏と、それに合わせて踊るパフォーマンスを披露する。パレードは26日(日)正午から五番街25丁目から南下する。詳細はウェブサイトhttps://www.nycpride.orgを参照。

大リーグ取材草分け、出村義和さん死去

 スポーツ・ジャーナリストの出村義和さんが2日、間質性肺炎のため神奈川・藤沢市内の自宅で死去した。71歳だった。葬儀、告別式は家族葬で行う。日本人のメジャー担当記者の草分け的存在として1980年代から現地で取材をして日本に大リーグ野球を伝えた。日本の報知新聞では20年以上にわたり毎週「NY特球便」のコラム連載を続けたほか、本紙週刊NY生活でも2004年の創刊以降「MLB通信」を担当した。出村さんは1950年9月24日生まれ。法政大学社会学部、ユタ州立大学ジャーナリズム科卒。ベースボール・マガジン社で週刊ベースボール編集長などを経て86年からフリー。拠点をニューヨークに移し、米大リーグだけでなく、政治、ビジネスなどを発信。帰国後は「J SPORTS」のメジャー中継の解説に加え、年に数回来米し生のメジャー情報を発信していた。MLB選手からの信頼も厚く、肉薄する記事が鋭いとの定評があった。1995年の野茂投手の米メジャー登場以降、各社から多くの日本人記者が来米するようになったが、後輩の面倒見がよく、現地取材などでは日本人運動部の記者たちにも慕われていた。

(写真左)2013年2月23日のアリゾナのクリーブランドでのキャンプ取材中にジアンビと談笑する出村さん(写真提供・Hiromi Takahashi )

サンタモニカで日光浴

 メモリアルデーの週末にLA遠征し、ファッションインタビュー敢行!快く応じてくれたのは仲良し女性2人組。400マイルもの道のりを交代で運転して来たという。まだ肌寒いサンフランシスコを離れ、常夏のサンタモニカビーチにて日光浴を楽しむため、2人ともエアリーの水着を新調した。「ボディポジティブを意識したブランドなの。モデルも画像加工なしだから生身の自分が水着を身に着けた感じが想像しやすいのよ」。日本語ではボディポジティブとして定着したBody Positivityは、1967年にNYセントラルパークで開催された肥満体型差別への抗議デモが発祥。痩せた体型=キレイという従来の美の価値観に異を唱え、ありのままの体型を愛そうという運動である。米国では大きな社会現象となり、サイズ展開が限定的としてメディアで非難されたルルレモンが昨年プラスサイズを投入したし、バービー人形はCurvyシリーズを投入するなど、経済界でも無視できない運動となっている。ティーネージャーに絶大な人気を誇るAerie by American Eagleは、Body Positivityを前面に打ち出す戦略で主にZ世代の女性消費者から絶大な人気を博している。最後の質問には「この後の予定?夕食を食べてからコンブチャの有名なお店に行くわ」。英語で発酵したお茶全般を指す「kombucha」は、何かしらの誤解で日本語の昆布が語源になったらしい。と、トリビアを披露して撮影後の雑談を楽しみつつ、いつものNY街角インタビューとは異なる西海岸の雰囲気を満喫させてもらった。

(Wear 2Nextチーム/アパレル業界関係者によるファッション研究チーム)

たおるマジック®セラピー

JAAサクラ・ヘルス・フェア
マイベストプロNY講演会

占部さんオンラインで

 ニューヨーク日系人会(JAA)が主催する第14回サクラ・ヘルス・フェアで、広島在住の薬剤師、占部千代子さんが「たおるマジック®」セラピー講座をオンラインで行った。NY日系ライオンズクラブが企画し、マイベストプロ、マイイベントUSAが協力して実施した。

 占部さんは、縫ったり、ハサミを使うことなく、輪ゴムとタオルが1枚あれば1分でできる子犬作りを通して、脳内の幸せホルモンといわれるセロトニン(音楽を聴いたり好きなことをして心をおだやかにするホルモン)、オキシトシン(ハグや触れ合うことで優しい気持ちになるホルモン)、ドーパミン(合格したり入賞した時の達成感を味わえるホルモン)をまとめて一度に引き出すメソッドを考案した。これまで心と身体の専門家としてセミナーなどを開催しながら「生命の価値、自己肯定感、人生デザイン」をサポートするプロとして活躍、NHKの番組でも紹介されるなど、特に子育て中の母親たちの間でブームとなり、これまで講演は500回を超え、関連書籍4冊ほか各種執筆活動もしている。

 必要な材料は、タオル、シール、輪ゴム、リボン。作り方は、どんな大きさのタオルでも構わないので半分に折る。真ん中に向けて両サイドからくるくると巻いていくが、ここで心を込めて「かわいいワンちゃんになってねー」と声がけすることが大切。そうすると2本のロールができるので、半分に折り、真ん中あたりに首輪となる輪ゴムを装着。ここで「ヨシヨシと頭を撫でる」のも忘れないこと。顔の部分にもう一つ輪ゴムをかけると鼻ができる。輪ゴムの位置によって足の長さ、顔の造形にさまざまなバリエーションをつけられる。シールにマジックで色々な目を予め描いておき、日替わりで表情を楽しむこともできる。占部さんは高校などでも授業でタオルによる子犬作りを指導することがあり、伝えているのは「一人ひとりみんな違ってみんないい。どれもが、めっちゃカワイー!」と喜びを共有することでの幸せも大切にしている。

 日常での活用方法として「昨今のZOOM会議では画面を見て話すことが多く、それだと相手に見える自分の顔が下向きに映ってしまう。そこで小さな子犬をパソコンの内臓カメラの横にちょこんと引っ掛けておくだけで顔がカメラ目線になって、なおかつ心も癒されますよ」とアドバイスした。

詳細・問い合わせは

https://mbp-japan.com/hiroshima/urabe-chiyoko/

ジャパン・アートフェア開催

ギャラリー・マックスで日本から69人による102点展示

 東京・銀座に拠点をおく国際アートサポート・ジャパンが20日(月)から25日(土)まで、ソーホーのギャラリー・マックス(ブロードウエー552番地401号、ブザー9)で「クールジャパン・ムーブメント・イン・ニューヨーク2022」を開催する。日本美術界の現在をNYに届けようと、現役美大生からベテラン作家まで、幅広い年齢層とキャリアの総勢69人が102点を展示する。

 出展作家は国際アートサポート・ジャパンの共同代表で画家のシアカ章子とアキ・ユウショウ・ワタナベをはじめ、青山洋子、稻田峻、岡本直枝、相馬亮、竹内優文、井崎聖子、行近壯之助らが参加。絵画、日本画、写真、書など多彩な作品群を展観する。

 日本にも世界に通用する作家は大勢いるが、マーケットといえる環境が整っていないのが現実だ。国際アートサポート・ジャパンはそんな状況を変え、優れていると思える作品を広く海外に紹介することを目的に2020年に創設された。同展は団体初の企画・主催となアートフェア・プロジェクトで、まずはその大きな一歩を踏み出した。目の肥えたニューヨーカーに認められれば世界を手にすることも夢ではないと、パリやロンドンでの開催も視野に、次の高みをめざす。

 入場無料。開廊時間は午前11時から6時、土曜は午後5時まで。オープニングレセプションは22日(水)午後6時から8時。問い合わせ・詳細はウェブサイトartspheres.orgを参照。

(写真)左:蓮實日菜子 Castaway 11×11 (右)相馬亮 SunnySpot 16×21

編集後記 2022年6月4日号

【編集後記】
 みなさん、こんにちは。メモリアルデーの5月30日、ニューヨーク市クイーンズ区にあるマウント・オリヴェット日本人墓地で恒例の墓参会が行われました(今週号3面に記事掲載)。ニューヨーク日系人会(JAA)が毎年主催しているものです。JAAは1907年に医師・高見豊彦博士が日本人墓地の購入と日本人の相互扶助を呼びかけ設立した日本人共済会をルーツとします。1914年に高峰譲吉博士を会長とし、高見博士を副会長にNY日系人会が設立されました。高見博士は、新島襄に憧れ、1890年熊本藩を出藩して1891年に大阪から米国に向け出航。コーネル大学医学部を2番の成績で卒業した秀才です。在学中の日本人男子の解剖に立ち会った際、番号だけで処理されてしまう現実を目の当たりにし、コロンビア大学学生会で在留邦人に相互扶助と親睦、日本人墓地の購入を説く演説をして協力を訴え、1912年に同墓地内に日本人のための土地を2500ドルで購入したのが日本人墓地の始まりです。現在同墓地には100人近い日本人、日系人と無縁仏の霊が眠っています。墓参会の式典にはニューヨーク総領事の森美樹夫大使、佐藤貢司JAA会長、岡田雅彦ニューヨーク日本人学校校長、岡本徹ニューヨーク育英学園学園長、滝田佳功NY日系ライオンズクラブ会長ら30人余りが参列しました。その日本人墓地の石碑から歩いて1、2分の所、マンハッタンを見下ろす小高い丘の上に高見家のお墓もありました。高見博士の墓前で、森大使は「日本人男子の解剖に立ち会った際、番号だけで処理されてしまう現実を見て、ではそこから日本人のお墓を作ろうという発想にはなかなか思い至るものではない」としみじみ。公共交通機関で行きずらい場所とあって、私もニューヨークに37年もいて、ここのお墓に来たのは今回が初めてでした。ニューヨーク近郊には、野口英世の墓や、高峰譲吉の墓、ニュージャージー州ラトガース近郊には幕末から明治初頭にかけて300人余りの大量の日本人留学生を受け入れたラトガース大学で留学中に亡くなった日下部太郎ら日本人留学生ら7人の墓、その隣に初代NY総領事の子供の墓などもあります。小さい子供の墓を外国の地に残す時に、せめて同じ同胞の日本人の側で眠らせてやろうとの親心でしょう。メモリアルデーは日本のお盆みたいなものなんですねきっと。亡き人を偲ぶ。先祖を偲ぶ。真夏日の太陽の下、ソプラノ歌手、田村麻子さんの「おぼろ月夜」の美しい歌声が、墓石の間を縫うように流れて行きました。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2022年6月4日号)

(1)教科書にアジア系の歴史 NY市教育局が方針

(2)セーラーガールよ! 水兵さんNYに上陸

(3)NYにおける 日系アート業界の動き

(4)日本人墓地に祈り捧げる  メモリアルデー墓参会

(5)海外日本人サポート(3) 在外邦人の国民審査権認める

(6)メッツ球団社長が謝罪 森大使始球式不投球で 

(7)ベビー用のタオル 米国で発売 育てるタオル

(8)NYでバレエ教室を主宰 イザベラ・マリア・トーレスさん

(9)検閲でも読んでほしい書籍 NY公立図書館が選んだ10冊 

(10)生還不可能な命令  TOP GUN: MAVERICK. 

セーラーガールよ!

NYで米軍艦隊週間
水兵さん全舷上陸

 5月25日から31日まで「フリート・ウィーク・ニューヨーク2022」が開催された。米海軍、海兵隊、沿岸警備隊の艦船がブルックリン、ニュージャージー、ハドソンリバーに接岸、2000人以上の乗員が来港した。メモリアルデー3連休の週末にはマンハッタンへの自由外出となる全弦(ぜんげん)上陸が行われ、タイムズスクエアには、白い制服姿の水兵たちが観光客や市民とにこやかに記念写真を撮る姿が見られた。対面式のフリート・ウィークは3年ぶり。

(写真・三浦良一、5月28日午後2時、タイムズスクエアで)

アジア系米国人の歴史 

NY市すべての公立校で教科化 

 NY市教育局は5月26日、パンデミック以降急増しているアジア系市民に対するヘイトクライムの原因である無知と偏見を打破する目的で、全1600公立校でアジア系米国人の歴史を教科として取り入れることを発表した。このカリキュラムには、1882年の中国人排斥法や、全国的な鉄道建設の労働力となる一方乗車は許されなかった過去、ハーレムのベンガル系コミュニティの成り立ちなども含まれ、歴史授業に組み込まれる。今秋から一部の学校で試験的に導入し、2024年春までに全公立校で実施される。 

 ビル・デブラシオ前同市長は昨年、連邦景気刺激資金のうち2億ドルを一般教育、文化的理解を促す教育の運営の予算として承認したが、今年3月時点で支出は1700万ドル程度に留まっている。デイビッド・バンクス同局長は「人種差別とヘイトの撲滅を目指す方法のひとつは、お互いの物語や歴史を教えて学ぶことだ。私たちは他人ではなく、皆がニューヨーカーで、皆が米国人である」と話している。またLGBTQやアフリカ系黒人の歴史教育も同カリキュラムに統合することを検討している。この動きは、アジア系コミュニティーや議員たちのロビー活動が奏功したものだが、第二次世界大戦中の日系人強制収容所の歴史的事実とフレッドコレマツ氏の人権運動によって日系人に対する差別補償がレーガン政権時に行われたことが今回の教科書再編纂に盛り込まれるかどうかは未定だ。

(写真)アジア系の歴史を教科書に盛り込むことを発表するバンクス市教育局長(写真提供・NY市教育局)