賀詞名刺交換会を開催

NY総領事館主催・日系3団体共催で

 ニューヨーク日本総領事館主催、日系3団体共催による新年賀詞名刺交換会が20日開催された。例年会場となる日本クラブが現在移転中のため、西44丁目のペンシルベニア大学クラブで開催され、100人余りの参加者で賑わった。

 緊急公務のため欠席となった片平聡大使の代理で間瀬博幸首席領事が年頭の挨拶を行った。片平大使一家が年越しの瞬間をセントラルパークでミッドナイトランを見ながら迎え、今年NYシティマラソン出場を決意したことも紹介した。ベネズエラ情勢の緊迫化で幕を開けた新年は、地政学的なリスク、不確実性が高まりつつある中、強固な日米関係は揺るぎない柱であり、国際秩序の安定に不可欠の存在となっていると述べ、その重要性を胸に刻み、未来に向けて一層の努力を続けていかなくてはならないと述べた。

 またニューヨーク総領事館は、3つの大切な使命を持っており、在留邦人の安全と安心を守り抜くこと、日本企業の活動を力強く支えること、人と人との絆を深め、理想的な日米関係を重層的に築くこと。その3つ目のシンボルが5月9日、土曜日に開催される第5回ジャパンパレードだ。ニューヨークの街並みに彩りを添える恒例行事としてニューヨーカーに認識されることを切に願っている。2026年はさまざまな意味で節目の年。米国建国250周年、同時多発テロから25年、32年ぶりにサッカーワールド大会がニューヨークに戻ってくる。これらは日米の絆をさらに深め、未来を共に切り開く絶好の機会と考えていると挨拶した。

 松井透NY商工会議所(JCCI)会頭は、昨年1月20日に第二次トランプ政権が発足、年明け早々ベネズエラの大統領拘束、イランの反政府デモという世界が緊迫化している中で、日系社会がこうして一堂に会し新年を祝えることができて嬉しい。昨年は関税政策に翻弄された面があるが日本政府関係者の尽力により一旦落ち着きを見せており、日米関係も非常に良好だと感じている。日米ビジネスの連携も増しており、この1年は非常に良い年になるのではないかという予感と期待をしている。今年はスポーツも含めて明るいニュースがたくさんあるのではないかと思って、この1年に臨んでいる。今年は干支が丙午。丙は太陽の明るさや情熱、午は走る馬の力強さやスピードを象徴すると言われるように、経済の中心地であるNYで日本を明るく元気づけたい。

 為田耕太郎日本クラブ会長は、現在行われている日本クラブの移転について、単に場所が変わるということではなく、日本クラブが新しい章、チャプターに入るということだと述べた。ニューヨークというダイナミックな街において、今後50年、100年という組織を作り直していく基盤を構築していく重要なタイミングだと語った。

 佐藤貢司NY日系人会会長は、世界が極めてチャレンジングな年明けとなったと前置きしながら、ニューヨーク日系人会は、年間を通してさまざまなプログラム、敬老会、東日本大震災メモリアル、スカラシップ奨学金授与、親睦ゴルフ大会、外務大臣杯野球大会、ヘルスケアイベント、ジャパンパレード参加、シティーフィールドでのジャパンナイト協賛などの活動を今年も行っていくと語り総領事館、日系企業のサポートによって支えられていることに感謝の意を表した。

(写真)乾杯する左から間瀬首席領事、佐藤会長、為田会長、松井会頭

高市総理はなぜ解散に踏み切ったのか? あめりか時評

 それにしても異例である。昨年中は気配すらなかったのが、年明けになると読売のスクープから始まって、アッという間に「風」を吹かせ、気づいたら解散が既成事実となっていた。この内閣の評価はまだまだ未知数ではあるが、現時点では決断と実行の力を見せることには成功している。では、高市総理はどうして、このタイミングで解散したのか、5点ほど理由を挙げることができる。

 1点目は、これが最大の理由だが、やはり多くの世論調査が78%前後という高い支持率を叩き出しているということだ。これは千載一遇のチャンスであり、この支持率を背景に解散し、仮に勝利すれば党内外における権力基盤が固まる。こうしたチャンスは二度と巡ってこないと考えれば、伝家の宝刀を抜くのに躊躇はなかったのであろう。

 2点目は、これは非常に大事な点だが、予算審議を中断して通常国会の冒頭に解散する、この内閣にはこの手法が絶対に必要だったということだ。理由は簡単で、高市氏の政治姿勢は積極財政と財政規律という水と油、炎と氷を両立させるという矛盾に満ちたものだからだ。現時点では積極財政の姿勢だけが目立ち、円も下げている。だが、政権を支える麻生太郎、片山さつきの両氏は、それでも日本という国家が存続するための最低限の財政規律を守る決死の姿勢で内閣に協力しており、総理もこれを理解していると見る。

 その場合に、予算審議が進めば給付や減税の「財源」がどうしても出てくることになる。だが、予算審議前の現時点なら、そのような「複雑な数合わせ」は話題にしないことが可能だ。給付のたびにバカ正直なまでに財源として増税を示してきた岸田文雄氏が、「増税メガネ」と言われて世論に憎まれたミスを繰り返さないという、固い決意がそこにはありそうだ。勿論、政治手法としては邪道だが、このタイミングであれば、辛うじて成立する話であり、選挙に勝った後にもっと有利に予算審議を進めるための手段の問題とも言える。

 3番目は、これは憶測だが、立憲と公明の提携ということは、昨年内に気配として察知しており、先手を打ったことが考えられる。時事通信社が数字を公開して話題になったが、前回総選挙における公明票が自民から立憲に動いた場合の議席数に与えるインパクトは意外と大きそうだ。高市氏は、これに対する策として相手の準備不足を突くという判断をしたのだろう。

 4番目は、これに対して与党の一角を占める維新の会が、社保スキャンダルで炎上中ということだ。一見すると、そんな時に選挙なんてという判断になりそうだが、維新は大阪のダブル選に命運をかけつつ、スキャンダルを選挙で強行突破する構えである。早晩維新が崩壊するのであれば、ここで勝手にさせつつ、政策面では大きなことを言わせないということで、手を打ったのだろう。結果的に副首都の話も、定数削減の話も曖昧にできている。

 最後の5番目は、参政党との関係だ。昨年の参院選では、自民党から参政党が「保守票」を奪ったことが結果を大きく左右した。けれども、高市氏については、対中外交などを含めて、現時点では「保守票が満足する」ような言動をしており、参政から票を奪還できそうという見通しが立ったのであろう。

 この問題も賞味期限の短い話であり、総理として実現可能な政策を続けていけば、いずれ中道実務路線であることが露見して「保守票」が離れるかもしれない。その前に選挙をして勝って政権基盤を固めたいということであれば、そこには合理性はある。

 では、選挙戦の行方はどうなるか。こちらは、国民民主の動き、立憲と公明が財政規律を主張するのか、それとも、全政党が財源抜きの政策論議に陥るのか、論戦の可能性は様々なことが考えられる。旧清和会の「裏金議員」に対して総理が厚遇することの得失も未知数だ。そうした点は、展開を見ながら別途議論することとして、現時点では少なくとも高市氏の側から見た場合には、解散には一定程度の合理性は認められると考える。(れいぜい・あきひこ/作家・プリンストン在住)

トランプ大統領記念名称相次ぐ

史上例のない在任中の拡大

 トランプ大統領の名を冠した政府関連施設や制度が、在任中にもかかわらず相次いで誕生している。ジョン・F・ケネディ記念舞台芸術センターを「ドナルド・J・トランプ・アンド・ジョン・F・ケネディ舞台芸術センター」にしたり、米国平和研究所を「ドナルド・J・トランプ米国平和研究所」にしたりするのに留まらず、海軍の新クラスの戦艦の呼称を「トランプ級」とする構想や、さらには米国建国記念1ドル硬貨や医薬品割引サイト「TrumpRx」まで、その範囲は多岐にわたる。

 政府支援の貯蓄制度「トランプ・アカウンツ」のほか、「トランプ・ゴールドカード」といった民間寄りの政府プログラムまでも登場しており、従来の政府プログラムとの境界が曖昧になりつつあるとの指摘もある。

 歴代の米大統領は通常、退任後あるいは死後に図書館や記念館、道路、学校などの名称に名前が付けられてきた。しかしトランプ大統領の場合、現職のうちから連邦機関や主要なインフラ、政府支援プロジェクトに自身の名前を冠する事例が相次いでいる。これについて歴史家たちは「在職中の自己名付けは前例がなく、西洋政治史でも異例だ」と指摘する。

 トランプ政権内では、これらの名称は「国民への貢献や成果の象徴」であると説明されているが、一部の反対論者は「権力とブランドを結びつける危険な傾向」と批判している。歴史家の中には、「国家的記念が自己称揚的なブランド戦略に変わっている」と警鐘を鳴らす声もある。南メソジスト大学の歴史家ジェフリー・エンゲル氏は「自らを記念し称揚する行為は、西洋政治文化では下品とみなされてきた」と指摘する。実際、国立公園の年間パスに大統領の肖像を用いる決定や、存命中の人物を描いた1ドル硬貨発行計画には、法令違反の可能性を巡る訴訟や批判が起きている。

 共和党議員のなかからは大統領誕生日を国民の祝日とする法案や、ワシントン近郊の高速鉄道システム「メトロ」を「トランプトレイン」に、ワシントン・ダレス国際空港をドナルド・J・トランプ国際空港に改名する提案なども出ている。支持層ではこうした動きが支持される一方、バーニー・サンダース上院議員(無所属、バーモント州選出)が現職の大統領にちなんで連邦政府の建物や土地に命名、改名することを禁止する法案を提出するなど、批判派は「権力私物化」との批判を強めている。

DEEPなQUEENS ジャマイカ・エステーツ

トランプ大統領の元実家がある出身地

 ジャマイカ・エステーツ地区は、ジャマイカ地区の北東に位置し、不動産開発業者によって1907年に設立された富裕層の住む閑静な高級住宅地。アパートや集合住宅は少なく、広々とした敷地にチューダー様式、アメリカ建築様式や地中海様式などの家が建つアッパー・ミドルクラスが暮らす地域。氷河期に形成された丘陵を活かし、可能な限り木々など自然を残しているため、曲がりくねった道がほとんどで平らで真っすぐな道はほんのわずか。また、高級感を出すためか通りの名もイギリスの街の名が多くついています。

 2000年の国勢調査によると人口は1万4000人で45%が外国生まれ。白人が43%ですが、少数ながらも南アジア系、カリブ系、ロシア系の人々が住む地区です。伝統的にユダヤ系住民が多く、ユダヤ教学校やシナゴーグがあります。また、祖国での迫害から逃れてきたイラク系やアフガン系ユダヤ教の人々の新天地での再出発を助ける場となっている、一軒家を利用したシナゴーグもあります。

 この街で出身の最も有名な元住民はトランプ大統領。父のフレッド・トランプはこの地域で不動産開発を手がけていたそうで、出生証明書にも記載され4歳頃まで住んでいたチューダー様式の家と、10代前半まで住んだもっと大きい家があります。

 街の西側に隣接して、強豪で全米トップクラスのバスケットチームを持つカソリック系私立大学セント・ジョンズ大学キャンパスがあります。大学敷地内にはアジア研究所でギャラリーが併設されている孫文ホールの建物が目を引きます。

 この区域は広くはありませんが、食料品店や飲食店等がなく、最寄り駅の地下鉄F線終点179通り 駅までは若干距離があります。そのため、喧騒から離れた静寂さがあり、手入れが行き届いた個性的な邸宅が並ぶ地区です。東隣町ホリスウッドも同様に静かで美しい街並みの住宅地だそうです。 

明石鯛:兵庫県明石市出身、ウエストチェスター在住。

週末の街歩きグループと共に、未知なるNY市内を元気に探索中。

ブログ  kkykm-m.com 

編集後記

編集後記

 みなさん、こんにちは。 2026年は、米国のベネズエラ大統領拘束電撃作戦で幕を開けました。石油利権を米国管轄下に収め同国の運営にも関与するとの姿勢に世界は国際秩序への危機感を強めています。さらに米国の国家安全保障上「必要」とグリーンランドの割譲にも意欲を見せるトランプ大統領は66の国際機関からも脱退。「私を止めることができるのは私の道徳観だけ」(1月9日付ニューヨークタイムズ紙1面)と他国からの干渉を拒絶するさながら「現代版のモンロー主義」による孤立化への暴走にも見えます。「不測の事態」がいつ起きてもおかしくない米国の置かれている今の現状を本紙ではあえて「不測の時代」と呼びました。

 就任前の選挙戦でトランプ大統領が掲げた「アメリカ第一主義」とは、アメリカ国民を再び元気付け、失われた白人労働者階級の復権を下支えするアメリカ国民に向けたメッセージだったはず。今、そのスローガンは、ベネズエラ、キューバ、コロンビア、メキシコ、グリーンランドへの外に向けた「アメリカ帝国主義」に置き換えられてしまってはいないでしょうか。

 確かに国際法と名付けられた法律こそありませんが、国際的秩序の枠組みの中で培われたルールはあるはず。かつてジャパン・アズ・ナンバーワンなどと持ち上げられていた日本のバブル助走時代、「ジャパニーズ YES ミーンズ NO」「ジャパニーズ DEEP コンシダレーション(検討します)ミーンズ  forget it 」「日本の常識は世界の非常識」とまで揶揄されフルボッコにされた時代がありましたが「大統領令」に署名して何でもかんでも決められる「王様」こそ「はだかの王様」になってはいないか他人ごとながら心配になります。

 「私を止められるのは私自身だけ」などと本人に真顔で言われると、今、不法移民に向けられているICEのキバが、民主主義やリベラルな思想への弾圧に姿を変えた独裁政治になっていかないことを願うばかりです。中国や北朝鮮とは違う、自由にものが言えるのがアメリカの素晴らしさなので。アメリカ人の常識と良識と良心をアメリカに住む外国人の一人として信じたい、そんな一縷(いちる)の気持ちだけは持っていたいと思います。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2026年1月17日号)

(1)国際機関へ就職を 外務省が募集要項を発表

(2)「不測の時代」米国が突入 現代のモンロー主義

(3)時空を超えた逃避行 ジャパン・ソサエティーで「勧進帳」

(4)VR茶室を体験 ハンター大で開発

(5)2026年の不穏な幕開け 視座点描

(6)東京都が女性起業家支援 10人が来米しNYで研修

(7)篠原有司男一家展 GOCAギャラリーで

(8)SOUND OF 生け花  土佐尚子がジャパン・ソサエティーで2月9日

(9)世界に茶室文化を 茶室建築家 椿邦司

(10)日本の紙フィルム MoMAで上映へ 1月31日

国際機関へ就職を 外務省が募集要項を発表

説明会オンラインで実施

 外務省は、2026年度ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)派遣候補者選考(2026年度JPO選考)を実施することとし、今月、募集要項を公表した。応募受け付け開始は2月2日(月)、締切は3月3日(火)。日本時間1月18日(日)及び1月22日(木)に「2026年度JPO選考説明会」をオンラインで開催する。

 JPO派遣制度は、国連を始めとした国際機関への就職を支援する目的で、各国政府の費用負担を条件に、国際機関が若手人材を受け入れる制度。35歳以下の若手の日本人に対し、2年間、国際機関で勤務経験を積む機会を提供することで日本人の国際機関への就職を後押ししている。外務省では1974年から同制度による派遣を開始し、これまでの累計派遣者数は約2000人に上る。

 2024年末・時点の最新の調査では、979人の日本人職員が国連関係機関の専門職以上のポストに就いており、このうち半数近くの476人がJPO出身者だ。幹部職員についても、94人中45人がJPO出身者で、国連事務次長・軍縮担当上級代表を務める中満泉(なかみつ・いずみ)氏を始めとして、多くがJPO出身者だ(いずれも2024年末・時点の人数)。このように、現在、国際機関で活躍する日本人職員の多くがJPOからそのキャリアを開始している。

 JPOは、派遣期間中に国際機関職員として必要な経験を積み知識を得て、派遣期間中または終了後に正規ポストを得ること、ひいては各分野のスペシャリストとして、また国際機関を代表する幹部となって活躍し、日本と国際機関との連携を一層強める役割を担っていくことも期待されている。

 説明会では、応募方法の詳細に加えて、応募書類作成に当たっての留意点や、派遣までのプロセスについても説明する。参加には事前の予約が必要で、説明会はいずれも同一の内容。説明会に出席したか否かは、選考結果に一切影響しない。

選考はオンライン実施
海外からの応募も多数

 選考は全面的にオンラインで実施しており、海外在住者の応募も多数ある。外務省では、「世界中で活躍している意欲ある若手日本人の国際機関への挑戦を支援している」と海外在住者の応募も歓迎している。

 応募資格は、今年2月1日現在35歳以下(生年月日が1990年2月2日以降)であること、修士号を有すること、関連分野において2年以上の職務経験を有することなど。説明会の申し込みと応募資格の詳細は、外務省国際機関人事センターウェブサイトのJPOページ(https://www.mofa-irc.go.jp/jpo/index.html)に記載されている。(本紙20面全面広告参照

「不測の時代」米国が突入 現代のモンロー主義

 2026年は米国のベネズエラ大統領拘束電撃作戦で幕を開けた。石油利権を米国管轄下に収め同国の運営にも関与するとの姿勢に世界は国際秩序への危機感を強めている。

 さらに米国の国家安全保障上「必要」とグリーンランドの割譲にも意欲を見せるトランプ大統領は66の国際機関からも脱退した。

 「私を止めることができるのは私自身だけ」(1月9日付ニューヨークタイムズ紙1面)と他国からの干渉を拒絶するさながら「現代版のモンロー主義」による孤立化への暴走にも見える。不測の事態がいつ起きてもおかしくない米国は今「不測の時代」に突入した。  

 写真はベネズエラ大統領拘束に抗議する人々(マンハッタン連邦裁判所前で5日、Photo: Gregory D’Agostino)

「私を止められるのは私の道徳観だけ」

権力で国際法退ける
NYタイムズ紙がインタビュー記事1面に


トランプ大統領のインタビュー記事を1面で報じる9日付NYタイムズ紙とノエム国土安全保障省長官の記者会見を伝える12日付同紙

 9日付ニューヨークタイムズ紙は1面トップで「私を止められるのはただひとつ、私の道徳観だ。私の心だ。それだけだ」と題するインタビュー記事を掲載した=写真=。トランプ大統領は広範なインタビューで、自身こそが最高司令官としての権限の唯一の裁定者だと同紙に語り、国際法やその他の権力抑制装置を退け、米軍に世界各国の攻撃や侵攻を命じる権限を主張した。

 自身の世界的な権限に制限があるかとの同紙の質問に対し、トランプ大統領は「ああ、一つある。私の道徳観だ。私の心だ。私を止められるのはそれだけだ」と答えた。

 同紙は「これはトランプ氏の世界観をこれまでで最も率直に認めた発言である」としながら国家の利益が衝突する際には、国家の力だけが決定要因となるべきだという考えであると紹介、トランプ大統領が、過去の大統領たちは米国の力に対して慎重すぎたと示唆したとも報じた。

 同紙の大統領執務室でのインタビューは、ICE(移民関税捜査局)職員がミネアポリスで37歳の米国人女性を射殺した事件からわずか数時間後に実施された。

 大統領は女性が警官を「ひき殺そうとした」ため過失があったと語ったが、インタビュー後、3つのカメラアングルからの映像分析により、運転手が連邦職員に向かってではなく、逆に離れて走行していた際に少なくとも10発が発砲されていたことが判明している。11日にはマンハッタンをはじめ全米で大規模な抗議デモ活動が行われたが、国土安全保障省は1000人規模のICE応援部隊をミネアポリスに投入して抗議運動を制圧する対応に乗り出し、死亡した女性と社会運動活動との関連がないか連邦捜査局(FBI)が捜査に乗り出した。

時空を超えた逃避行 ジャパン・ソサエティーで「勧進帳」

 ジャパン・ソサエティーは8日から11日まで、京都を拠点に歌舞伎の演目を現代劇として再解釈・再発信する木ノ下歌舞伎(主宰・木ノ下裕一)による「勧進帳」を上演した。「勧進帳」は源義経が兄・頼朝に追われ、家来の武蔵坊弁慶や一行とともに山伏に変装して関所を越えようとする歌舞伎の代表作。人気若手演出家・杉原邦生の現代的な演出・美術により、若者言葉やラップ、テクノ音楽なども交えながら、12世紀の古典の物語を黒ずくめの俳優7人が演じた。

(写真上)Photo by Ayumi Sakamoto

 舞台の奥にも観客席を作り、ステージそのものを歌舞伎の花道に見立てた奇抜な舞台セット。逃亡して検問を潜り抜けるという逃避行は、時代を超えた世界各地の現代社会とも重なり、送り手と観客がそれぞれの思いで劇場を一つにした。木ノ下氏と杉原氏に作品について聞いた。(三浦良一記者)

作品への思いを語る木ノ下氏(右)と杉原氏(左)

木ノ下 初演から10年。2016年にこの作品を作った年は、トランプ第一期大統領選挙があった年で分断と排除という言葉が聞こえてくる時期だった。その時期に勧進帳を上演したのは演劇としてのアンサーとしての側面があったが、10年経って、時代はよくない方向に進んでいる感じが深まっている。まさか、アメリカを含めて争い、侵略が起こる時期にNY公演を行うとは思っておらず重さを感じる。

杉原 かねてからNYでやりたいねと言っていた世界のエンタメタウンなので、個人的にも演出家としてもようやく来れたという嬉しい思いだ。

木ノ下 メッセージは自分と他人、国と国、 共感することは難しくても、理解しようとすることはできるということ。共感することは100%は無理でも諦めないことが大事ということを作品を通して伝えたい。

杉原 作品のテーマはボーダーライン。意識するしないに関わらず人は勝手にボーダーラインを作っている。いろんなところにラインがあることによって、コミュニケーションを遮断したりしないことが平和の一歩。見た人がそういうことに思いを馳せられたらいいのだが。

木ノ下  演劇の魅力は生の良さです、と思いつつもそこに固執していいのかという思いもまた一方である。来れない人もいる中で、何がなんでも劇場で生ですよというのは傲慢だし、その場所と時間を共有できなくてもさまざまな技術を使って何かをシェアできるという努力も怠ってはいけなのではないかと思う。ただ何が起こるかわからない、客席で咳が聞こえたり、舞台でやってる側だけで演劇を作っているわけではないので毎回違った感じはおそらくAIにはできない。

杉原 自然に涙が出るとか言語化できない、情報化できない感動というものがアートや演劇にはある。日本だと古典を現代的に表現することはまだあまりないのでまたNYに来たい。

 舞台を見た観客からは「弁慶と義経のユニークで革新的な作品で、感情が客席に伝わり反応やリアクションも良かった。古典作品への忠誠心と斬新な挑戦の融合を学んだ」(ジャスティン・テダルディさん)、「オリジナルの歌舞伎の話は知らなかったが、とても楽しめた。テーマのボーダーラインは、南米からの移民が7日間昼夜ジャングルを移動して国境を超えていく姿とオーバーラップした。友人に勧められる作品だ」(トリサ・アイリーンさん)、「コンテンポラリーな表現、演出が素晴らしく、出演者もドラマチックで良かった」(アルテン・クレーマーさん)、「日本人だと、伝統的な歌舞伎の世界の作品を現代的にアレンジすること自体、何かやっちゃいけないこと、触ってはいけないことみたいなアンタッチャブルなイメージがあるが、それを見事にやれているのが面白い」(黒部エリさん)などさまざまな感想が聞かれた。

VR茶室を体験 ハンター大で開発

NYでデモンストレーション

 12月8日、マンハッタンのフラットアイアン地区にある「ザ・ギャラリー・バイ・オードー(THE GALLERY by Odo)」にて、「茶とテックのセレモニー」(Tea X Tech Ceremony)VR/AR茶室の体験型展示と、ハンター大学 古典・東洋研究学部日本語・日本文化学科で日本語と茶道を教えるコール阿部真理氏と学生による茶会が開催された。

(写真)裏千家NY茶の湯センター所長の鈴木宗慶業躰さんもVR茶室を体験

 12月に入り急激に冷え込んだ人影の少ない夜のストリートの中で、会場はひっそりと光を放ち、ひときわ印象的な存在感を放っていた。ミシュランスターシェフ・大堂浩樹(Hiroki Odo)が手がける、食とアートが融合した洗練された空間に一歩足を踏み入れると、オープン時から多くの来場者で賑わっていた。 

 会場には、ハンター大学オリエンタル学部の学部長、日本語・日本文化学科の学科長に加え、京都、裏千家家元直属の鈴木宗慶業躰さん(NY裏千家茶の湯センター所長)も来場し、実際にヘッドセットを装着してVR/AR茶室を体験する姿が見られた。 

 VR/AR茶室というまだ馴染みの少ない展示を、来場者は一人ひとり手に取り、実際に体験していた。Sony CSL Kyoto が開発するAR茶室は、まるで実在する京都の茶室に入ったかのような体験が可能で、点前を鑑賞するだけでなく、自ら亭主と同じ視点、位置に座り、動作を学びながら体験することができる。

 一方、VR茶室はハンター大学コンピューターサイエンス学部のオヤウォーレ・オエコヤ教授と学生のジャック・ジェウェル氏が開発中のもので、SONY CSL Kyotoが所有する茶室「寂隠」を模した室内空間を自由に探索でき、茶道具を手に取って移動させるといった動作まで擬似的に体験できるインタラクティブな展示であった。

 このVR茶室は、ハンター大学の茶道の稽古にも時折使用されており、畳の上での歩き方、床の間の拝見、襖の開閉といった、本物の茶室がない環境では練習しにくい所作の習得に役立っている。 

 午後4時半からは計5回の茶会が催され、ハンター大学の茶道を学ぶ学生たちが交代で点前を披露した。北米伊藤園の提供による薄茶が振る舞われると、近年の抹茶ブームも相まって、多くの来場者は茶碗を丁寧に手に取り、その一服をゆっくりと味わっていた。

 日本茶はもはや珍しい存在ではなく、日常に根付きつつあることを感じさせる光景であった。茶菓子には、ハンター大学のイニシャル「H」をあしらい、スクールカラーである赤紫を基調とした、渋みのある意匠の一品が供された。伝統的な茶道と最先端のテクノロジーが融合し、その新たな可能性を一度に体験できた本イベントは、参加者に深い余韻を残す特別な一夜となった。 (城林希里香、写真も)

2026年の不穏な幕開け 視座点描

 米国がベネズエラ大統領マドゥロを「麻薬テロ共謀」「米国向けコカイン密輸共謀」などの罪状で起訴したのは5年前、第一次トランプ政権の2020年3月のことです。

 ベネズエラで1999年年にチャベスが大統領になって反米路線を掲げ、石油資本を国有化して米国を追い出して以来、ブッシュ(子)、オバマ政権とも同国を敵対国と見なしてさまざまな圧力、制裁、野党支援を実行してきました。その間、2013年にマドゥロがチャベス死後の政権を継承したのですが、18年5月の大統領選挙は野党候補の選挙排除などマドゥロ再選のための出来レースで、体制転覆を目指すトランプ政権はもとより、欧州西側諸国や日本政府までも「大統領不在」として国民議会議長だった野党のフアン・グアイドを「暫定大統領」として支持したのです。

 これが今回のマドゥロ逮捕の伏線です。国際法上、国家元首は免責特権があるため在職中に外国で訴追されることはないのですが、トランプ政権にとっては「彼は国家元首ではなく訴追は可能」となるわけ。

 ただし、その起訴罪状は甚だ疑わしい。ベネズエラの麻薬は主に欧州に流れ米国にはほとんど入っていません。麻薬テロを糾弾するならお隣コロンビアやメキシコこそが標的です。しかもトランプ政権は昨年12月初め、米国への大量のコカイン密輸共謀で45年の禁錮刑で服役中のホンジュラスの前大統領に恩赦を与えている。矛盾ですが、トランプに言わせれば「彼はバイデン前政権のワナにはめられた」だけだからだそう。

 今回の軍事侵攻は麻薬ではなく世界最大の埋蔵量のベネズエラの石油が目的です。侵攻直前には中国の使節団が巨額の石油プロジェクト契約を結ぼうと首都カラカスでマドゥロと会談していたタイミングでした。

 トランプは侵攻3日後の6日にはベネズエラが5000万バレルの高品質原油を米国に引き渡すことを発表。「原油市場で販売する収益は自分が米国大統領として管理して活用する」と喧伝しています。

 実はこれは「西半球はアメリカの権益領域」とするトランプ政権の覇権主張に関係します。

 今回の軍事侵攻には国務長官のマルコ・ルビオが後押ししました。

 ルビオは両親がカストロ以前のキューバからの経済移民で、自身もフロリダ州選出上院議員としてキューバ系やベネズエラ系の有権者圧力でトランプに対しベネズエラ強硬策を強く促してきた人物です。しかも、ベネズエラの石油を押さえることで、その恩恵に預かってきたキューバを兵糧攻めにもできる。

 キューバはソ連崩壊後に経済的苦境に陥りましたが、そこで反米路線でつながるベネズエラに救われます。優秀な医療や教育要員さらには中南米最精鋭とされる兵員を提供する見返りに(今回のマドゥロ逮捕の衝突で、キューバ人警護部隊32人が死亡したのはそういう事情です)、ベネズエラから安価な石油や資金を得て国家を運営していた。つまりベネズエラ攻略はキューバ攻略のおまけがついてくる一石二鳥なのです。

 トランプはこの軍事作戦成功に機嫌をよくしてコロンビアやメキシコへの軍事介入、あるいはデンマーク領グリーンランドの武力による領有も示唆していますが、コロンビアやメキシコの軍隊は米国製の武器兵器を持っていて強い。本当に地上侵攻して麻薬カルテルを叩くメリットがあるのか? それともブラフか?

 グリーンランドに関してはルビオがトランプ発言を軌道修正して「買収」を示唆していますが、こちらは政権内よりもどうもトランプ一族が乗り気のようで、表向きの中国やロシアとの安全保障上の懸念の背景に、グリーンランドのレアアースなど資源ビジネスがらみの思惑が透けて見えます。

 ベネズエラもカネ、グリーンランドもカネ──フォーブスの推計ではトランプの資産は大統領になってから数十億ドル増えたとされ、一族全体では総額100億ドルに倍増したといわれます。第一次政権で頻繁に問題視された「利益相反」も、今や他の問題の「洪水」に水没している状態です。

 そんななかでミネアポリスで移民税関捜査局(ICE)職員が車を運転する女性を射殺する事件が起きました。SNSでその現場映像を拡散した投稿者は「アメリカが今アメリカ国内でアメリカがやっていることを見たら、アメリカはアメリカの暴虐からアメリカを解放するためにアメリカに侵攻していただろう」と書いていました。

 予想はされましたが、かつてなく不穏な2026年の幕開けです。

(武藤芳治/ジャーナリスト)