日本へ帰国、入国の注意点

旅行代理店のプロがアドバイス

 4月19日以降、日本の空港検疫において日本入国の際に必要な出国前72時間以内の「出国前検査証明」の記載事項の確認が一層厳格化された(本紙5月1日号既報)。厚生労働省では入国時の検疫における出国前検査証明書の確認を厳格化するにあたり、厚生労働省が指定するフォーマットを利用して検査証明を取得するよう勧奨している。任意のフォーマットの検査証明書も使用可能だが、この場合、航空機の搭乗時及び本邦入国時に検査証明の内容を確認するための時間がかかるほか、場合によっては搭乗拒否や検疫法に基づき入国が認められない事態がすでに発生しており帰国には注意が必要だ。厚生労働省が指定するフォーマットまたは任意のフォーマット、いずれの場合でも、厚生労働省が指定する有効な「検体」及び「検査方法」が記載された検査証明のみ有効として取り扱われる。この時期に帰国する人は、親族の一大事だったり、会社の転勤による帰国などを余儀なくされている人がほとんどで間違いは許されない。手続きが厳しくなるなかで、IACEトラベル法人部予約課の渋谷かなえさんに日本入国に関する注意点とポイント聞いた。

■日本入国に関する注意点とポイント

①検査は早めに予約/確認PCR検査結果判明に平均24〜48時間だが、ギリギリで検査結果がでる場合もある。予約時の確認事項:検査判明までの時間、検査方法 経由便利用の場合は、経由便出発時間(出国)からの72時間以内になるので注意。〜入国拒否/搭乗拒否一例〜 所定のフォーマット以外で、認められてない検査方法(Nasal swab) 所定のフォーマット+LAB結果(添付)での検査方法の表記が違うと指摘

②航空券予約時、出発の曜日には注意 通常の検査機関や医療機関は土日休みなので、月・火・水の出発は避けた方がよい。

③必要アプリはアメリカ国内で事前にダウンロード 日本での空港内のWi-Fi環境がよくないようでダウンロードに時間がかかるとの事。 設定等は日本到着後に実施だが、アプリは事前にダウンロードした方がよい。 家族で同じところに滞在予定の場合は1つのスマートフォンでもよい。 滞在先が異なる場合は各自のスマートフォンへアプリダウンロード必要。 スマートフォンを持ってない人は、入国前に政府指定のレンタル会社よりレンタルをすることとなるので、スマートフォンを持っていなくても日本へは渡航可能。

④出発前に質問票の記入 質問票の提出はアメリカ国内で実施。チェックイン時に回答されているか確認があるので 完了後のQRコードをスクリーンショットまたは、印刷して忘れずに携帯。

⑤誓約書の記入 誓約書も厚生労働省のウェブサイトからダウンロード可能なので事前に記入することも可能。事前準備、書類が多いので、クリアファイルに入れてまとめておくのもおすすめ。必要書類がアップデートされるので、記入前には最新のものかダブルチェックする。

■新型コロナウイルス変異株流行国・地域からの帰国者

 4月29日時点で滞在先(住まい)が、テネシー州、フロリダ州、ミシガン州、ミネソタ州の人が対象。乗り継ぎでテネシー州、フロリダ州、ミシガン州、ミネソタ州の空港を利用する人は措置対象外だが、対象州に前泊した場合は措置対象となる。対象の場合は日本入国後3日間(帰国日含め3泊4日)国が指定する施設に強制待機となり、入国日含め4日後に再度検査+陰性結果の上退所となる。残りの自主待機期間は手配したホテルや自宅など所定の場所で過ごす。

検査証明に対応している医療機関

(NY日本総領事館のサイトで紹介)

https://www.ny.us.emb-japan.go.jp/oshirase/border-control.html#3

【ニューヨーク州】

○ 安心メディカル http://www.anshinmedical.com/

○ CareCube https://carecube.clinic/

○ 20 East Medical http://www.20eastmedical.com/

○ 岩原内科 電話:(212) 879-2328

○ Jメディカル https://www.jmedical.com/

○ Lenox Hill Hospital https://lenoxhill.northwell.edu/signature-services

○ 東京海上記念診療所 https://www.mountsinai.org/locations/msd-japanese-medical-practice/japanese

○ The Mount Sinai Hospital https://www.mountsinai.org/locations/mount-sinai/your-visit/locations

【ニュージャージー州】

○ ひばりファミリーメディカル https://hibarifamilymedical.com/

第25回NYで活躍する日本人・日系人美術家展

20日からJAAホールで

レセプションは対面とZOOM

 ニューヨーク日系人会(JAA)が主催する第25回「JAAニューヨークで活躍する日本人・日系人美術家展覧会」(後援・ニューヨーク日本総領事館、週刊NY生活、よみタイム)が20日(木)から29日(土)まで、オンラインとニューヨーク日系人会(西45丁目49番地11階)で開催される。

 参加作家はニューヨークで創作活動を続ける次の26人。服部夏子、廣瀬ジョージ、広瀬公美、百田和子、市村しげの、キノマホ、三浦良一、 森本洋充、森戸泰光、本宮陽子、永野みき、野田正明、岡田桂、小野知美、作山晙治、佐々木健二郎、佐藤正明、澤野水纓、篠原乃り子、篠原有司男、竹田あけみ、渡辺啓子、依田順子、依田寿久、依田洋一朗、 飯塚国雄(特別参加)。展示作品は販売され、売り上げの半額がニューヨーク日系人会の活動資金に寄付される。

 入場無料だが事前予約が必要。開廊時間は月〜金曜が午前10時から午後5時、土曜は午後3時まで。日曜休廊。オープニングレセプションは20日(木)午後4時から6時まで開催される。コロナパンデミック対応の会場入場制限がこれまの30人から50人に緩和されたため、レセプションは会場での対面式とZOOMオンラインの2方式を併用して開催する。問い合わせ・会場への入場予約は電話212・840・6942まで。

【今週の紙面の主なニュース】(2021年5月1日号)

(1)草間彌生代表作展開幕       1面

(2)NY市が観光市場復活へ     1面

(3)セントラルパークでラジオ体操  3面

(4)予約なしでワクチン接種     4面

(5)帰国時の入国規制を厳格化    5面

(6)高齢者にアラームを配布     5面

(7)高齢者が帰国時に直面する問題  7面

(8)終着駅はポキプシー       9面

(9)平安時代の香を世界に      11面

(10)トシ・カプチーノ還暦ショー   19面

草間彌生代表作展

NY植物園で開幕
10月31日まで開催

 前衛芸術家・草間彌生の大規模展示「KUSAMA:Cosmic Nature」が、ブロンクスにあるニューヨーク植物園(NYBG:2900 Southern Boulevard)で開催中。NYBGの広大な敷地内に草間の代表的なインスタレーションの数々が展示され話題を呼んでいる。

 チケットは前売りで完全予約制、入場時間指定制。入場料はガーデン&ギャラリーパスが一般35ドル、学生・65歳以上が32ドル、2〜15歳が15ドル、2歳以下とNYBG会員は無料。そのほか、毎週水曜日に屋外の作品を無料で見ることができるNY市民割引などもある。同展は昨年5月に開催予定だったが、新型コロナウイルスのパンデミックで延期されていた。詳細はウェブサイトhttps://www.nybg.orgを参照。10月31日(日)まで。

(写真)Kusama with Pumpkin, 2010 © YAYOI KUSAMA. Courtesy of Ota Fine Arts, Tokyo / Shingapore / Shanghai; Victoria Miro, London / Venice; David Zwirner, New York

観光市場復活へ

NY市が3000万ドルキャンペーン

 ニューヨーク市のデブラシオ市長と市の観光局であるNYC&カンパニーは21日、およそ3000万ドル(約32億4000万円)の予算を投じて観光キャンペーン「NYCリアウェークンズ」を行うと発表した。通常の観光促進事業の10倍にあたり、新型コロナウイルス禍で大きな打撃を受けた観光業を早期回復させるのが狙いで、ニューヨーク市のReawakens(目覚め)と命名した。ワクチン普及が奏功したもので、活動が止まっていたニューヨークの観光業界は、これを機に一気にホテル、旅行代理店、航空輸送などが息を吹き返すものと見られる。

 コロナ禍前はおよそ40万人の雇用と700億ドル規模の経済活動を観光業が創出していた。NYC&カンパニーによれば、市を訪れる観光客はコロナ禍が始まる前の2019年は年間6600万人(国内5310万人、海外1350万人)にのぼっていたが、昨年は2230万人(国内1990万人、海外240万人)と大幅減少した。しかしワクチン接種の普及により2022年には5720万人と急増することが予測され、2023年には6470万人に達し、2024年には2019年を超える6930万人までになると見られている。現在ニューヨーク市では16歳以上なら予約なしでワクチンの接種を受けることができる。

セントラルパークでラジオ体操

新緑の薫風と音楽を浴びて!

毎週土曜日午前9時スタート「今週末参加しませんか」

高田さん

 土曜日の午前9時。新緑のセントラルパーク。五番街に近い67丁目近くの公園内でNHKラジオ体操第一のあの軽やかなピアノの音が木漏れ日に乗って流れ始めた。日本人男女が30人あまり、アメリカ人もラジオ体操の音楽に合わせて体を動かしている。

 きっかけは、今年の3月、ニューヨークで理学療法クリニックの医院長を務める高田洋平さん(44)の呼びかけで近郊在住の日本人たちが集まってラジオ体操を始めたこと。春から姉妹で参加しているという満仲桂子さんは「以前は家でテレビジャパンのラジオ体操をしていましたけど、ここで実際に人と会って朝の空気を吸いながら体を動かすのはとっても気持ちがいいです」と話す。

 中盤以降英語版の伴奏を担当するのは、NY総領事の山野内勘二大使率いるラジオ体操@セントラルパーク・スペシャルバンド。

 主催する高田さんは「今多くの人に一番大切なのはパッと思いついた時にパッとできる手軽な運動、そして外に出るキッカケ作りです。私はラジオ体操は日本の誇る文化だと思っています。音楽を聴いたら体が反応して全身運動ができてしまう。ニューヨーカーをより健康にしたいという思いから今回の活動を始めました」と話している。誰でも参加大歓迎。取材当日の動画はこちらから。

予約なしでワクチン接種

NY市内600か所
米自然史博物館でも

 アッパーウエストサイドにあるアメリカ自然史博物館(セントラルパークウエスト79丁目)で23日からワクチン接種が始まった。会場は館内1階のシロナガスクジラの実物大模型が展示されている場所。火曜〜金曜の午前8時から午後6時まで。会場でワクチンを受けた人には、4人分の自然史博物館無料チケットが提供される。現在、市内のワクチン接種会場は公共図書館、ブロードウェイ、ショッピングモール、大学、教会など600か所ほどある。16歳以上のすべての市民を対象に市が運営する会場で予約なしでワクチンを接種できる。ジャビッツセンターやヤンキースタジアムなどでは、60歳以上は予約不要。29日から州運営のワクチン会場でも16歳以上すべての人が予約なしでの接種が可能になる。接種完了2週間後からはマスクなしも認められる。23日からJ&Jワクチンの使用が再開になったが、CDCは50歳未満の女性は接種後の血小板の減少に注意するように呼びかけている。またそのリスクを回避するためには他のワクチンの接種も検討するようにと助言している。

予約なし、ウォークインでワクチン接種ができる会場

(マンハッタンの場合/16歳または18歳以上)

Abyssinian Baptist Church

132 W 138th Street

New York, NY 10030

Dates: April 20 – 24

Tuesday – Saturday, 9:00 AM – 5:00 PM

Vaccine offered: Pfizer (16+)

American Museum of Natural History

200 Central Park West

New York, NY 10024

Dates: April 23 – 25

Friday – Sunday, 8:00 AM – 6:00 PM

Vaccine offered: Moderna (18+)

ATC Vaccination Times Square

 (Previously NFL Experience)

20 Times Square, 7th Avenue

New York, NY 10036

Dates: April 19 – 25

Monday – Sunday, 7:30 AM – 7:00 PM

Vaccine offered: Pfizer (16+)

City College of New York – North Academic Center

1549 Amsterdam Avenue

New York, NY 10031

Dates: April 22 – 24

Thursday – Saturday, 9:00 AM – 6:00 PM

Vaccine offered: Moderna (18+)

Essex Crossing

224B Broome Street

New York, NY 10002

Dates: April 22 – 24

Thursday – Saturday, 9:00 AM – 6:00 PM

Vaccine offered: Moderna (18+)

Ford Foundation

321 E. 42rd Street

New York, NY 10017

Dates: April 19 – 24

Monday – Saturday, 9:00 AM – 6:00 PM

Vaccine offered: Moderna (18+)

Fulton Community Senior Center

/Hudson Guild

119 9th Avenue

New York, NY 10011

Dates: April 20 – 24

Tuesday – Saturday, 10:00 AM – 5:00 PM

Vaccine offered: Pfizer (16+)

Yeshiva University

2495 Amsterdam Avenue

New York, NY 10033

Dates: April 19 – 23, 25

Monday – Thursday, 9:00 AM – 7:00 PM

Friday, 9:00 AM – 5:00 PM

Sunday, 9:00 AM – 7:00 PM

Vaccine offered: Pfizer (16+)

市内全域の接種会場リストはこちら

https://www1.nyc.gov/site/doh/covid/covid-19-vaccines.page

日本へ帰国、入国規制を厳格化

厚生労働省の書式を原則求める

帰国時の出国前に準備する必要事項

 4月19日以降、日本の空港検疫において日本入国の際に必要な出国前72時間以内の「出国前検査証明」の記載事項の確認が一層厳格化された。厚生労働省では入国時の検疫における出国前検査証明書の確認を厳格化するにあたり、厚生労働省が指定するフォーマットを利用して検査証明を取得するよう勧奨している。任意のフォーマットの検査証明書も使用可能だが、この場合、航空機の搭乗時及び本邦入国時に検査証明の内容を確認するための時間がかかるほか、場合によっては搭乗拒否や検疫法に基づき入国が認められない事態がすでに発生しており帰国には注意が必要だ。

 厚生労働省が指定するフォーマットまたは任意のフォーマット、いずれの場合でも、厚生労働省が指定する有効な「検体」及び「検査方法」が記載された検査証明のみ有効として取り扱われる。 

帰国時のPCR検査証明に厚生労働省が求めている規定

 ニューヨーク日本総領事館では以下の点に注意するよう呼びかけている。

1 交付を受けた検査証明書については記載内容を確認し記載漏れ等の不備がないか必ず確認する。

・検査証明書の提示について(厚生労働省HP)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00248.html

(厚生労働省が指定する検査証明のフォーマットもこのサイトに掲載されている)ダウンロード可能。

2 厚生労働省が指定する検査証明のフォーマットで証明を取得することが難しい場合には、任意のフォーマットの証明書を取得し利用することも可能。この場合には、航空機の搭乗手続き及び本邦入国時に検査証明の内容を確認するための時間がかかるほか、不備があれば搭乗拒否や本邦への入国が認められないおそれもあるので注意すること。任意のフォーマットを使用する場合には、厚生労働省が指定する検査証明のフォーマットに掲載されている項目・情報がすべて記載されている必要がある。

3 検査証明の取得に際しては、必ず厚生労働省が有効と認めている「検体」及び「検査方法」で検査を受ける必要がある。日本入国時に必要な検査証明書の要件について(検体、検査方法、検査時間) https://www.mhlw.go.jp/content/000770638.pdf

4 質問表及び誓約書の提出など

 日本の空港到着時に、以下のリンクの説明にあるとおり、「質問票」及び「誓約書」の提出、並びに指定アプリのスマートフォンへのインストールが求められるので、可能な限り出発地の空港にチェックインする前にオンラインで質問票に回答しQRコードを取得(スクリーンショット又は印刷)し、誓約書の記入をすること。誓約書は入国者1人につき1枚必要。また、指定アプリを使用するために、日本国内でデータ通信が利用可能なスマートフォンを所持していない場合は、空港内でスマートフォンを自費でレンタルすることが求められる。

○ 「質問票」(出発前にQR コードを取得すること)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00251.html

○ 「誓約書」の提出(1人1枚必要)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00249.html

○ スマートフォンの携行、必要なアプリの登録

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00250.html

5 日本の水際措置等に関する関連情報

○ 海外から日本に入国する全ての人が対象となる措置全体説明

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00209.html

○ 海外から帰国する方向けのQ&A

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19_qa_kanrenkigyou_00001.html

検査証明に対応している医療機関

(NY日本総領事館のサイトで紹介)

https://www.ny.us.emb-japan.go.jp/oshirase/border-control.html#3

【ニューヨーク州】

○ 安心メディカル http://www.anshinmedical.com/

○ CareCube https://carecube.clinic/

○ 20 East Medical http://www.20eastmedical.com/

○ 岩原内科 電話:(212) 879-2328

○ Jメディカル https://www.jmedical.com/

○ Lenox Hill Hospital https://lenoxhill.northwell.edu/signature-services

○ 東京海上記念診療所 https://www.mountsinai.org/locations/msd-japanese-medical-practice/japanese

○ The Mount Sinai Hospital https://www.mountsinai.org/locations/mount-sinai/your-visit/locations

【ニュージャージー州】

○ ひばりファミリーメディカル https://hibarifamilymedical.com/

アラームを配布

NY日系人会の敬老会で

 アジア人のヘイトクライムに反対する若者のグループが4月22日、ニューヨーク日系人会(JAA)で開催された敬老会で護身用の携帯アラームを30個プレゼントした。届けたのはジャーナリストの丸山メグさんで「自分が、何度も、アジア人であることで、因縁つけられたりしていたので、日系老人を守りたいと強く思ったわけです。昔、ずっとボランティアで、老人のお世話しに、そこら中駆けまわっていたので、そのころからの、日系老人に対する思いですね」とグループから預かったアラームを日系人会に手渡した。最初はペッパースプレーの配布を考えたそうだが、相手に攻撃的なので高齢者には無理と判断、握るだけで音がなるアラームにしたという。受けとった高齢者たちは「お守りとして心強い」などと喜んでいた。

(写真)アラームをもらい喜ぶ敬老会参加者の皆さん

高齢者が帰国で直面する住まいとお金の問題対策

JAAサクラ・ヘルス・フェア 山口さん講演

 米国在住の日本人高齢者が日本に帰国した場合、どのようなことに直面するのか、そのための準備について司法書士法人・行政書士法人コスモ(本社東京都)代表の山口里美社長が25日、「どうする住まい?お金?これからのおひとりさまの備え」と題してオンライン講演した。NY日系人会(JAA)春のサクラ・ヘルス・フェアのプログラムの一つライオンズ大学・大人の教養講座シリーズ第2弾としてインターネット配信した。

【確実に帰国後の住まいを確保する】持ち家があれば問題ないが、賃貸住宅の場合、資産があっても高齢者に対して躊躇するネガティブな「拒否感」を多くの大家が持っているのが現実。帰国前に収入のある親族などに保証人になってもらうなどの協力が重要だと述べた。親族を保証人に立てられない場合は、一般財団法人高齢者住宅財団が提供している連帯保証人サービスを利用する方法があるほか保証人のいらない「UR賃貸」という公的機関が関与している高齢者向け住宅が日本全国に72万戸ある。

 【介護施設入所時には身元保証サービスがある】高齢者施設に入居する場合には身元保証人が必要だが、こちらは一般社団法人リレーションサポート協会(https://relation.or.jp/) などの企業やさまざまなNPO法人が高齢者の身元保証サービスを提供している。介護施設によっては身元保証契約が成立しない場合、成年後見人を立てれば入居できるところもある。

【元気なうちに認知症対策をする】認知症になると銀行口座や不動産などの財産が凍結される。対策は、財産の管理を第三者に任せる成年後見。成年後見には法定後見制度(月額3万円から5万円の費用が生涯必要)と元気なうちに親族や信用できる専門家に頼んで契約する任意後見の二つがある。また「最後の認知症対策」と言われる親族に財産管理を任せる民事信託がある。山口さんは「人は対策ができる時には何もせず、問題を感じた時にはなにもできないという現実がある。備えておきさえすれば安心。気づいた時がタイミング。事前に知っておくことが備えになる」とアドバイスした。

 講演は次のアドレスで視聴可能。https://youtu.be/CPWQjXDNc7I

ここは終着駅ポキプシー

 グランドセントラル駅からハドソン川沿いを北上するハドソンラインに乗って約2時間、終点のポキプシー駅に到着する。一度聞いたら忘れない印象的な地名ポキプシーとは先住民族ワッピンガー族の言葉で「小さな水辺の葦で覆われたところ」と言う意味だとか。21世紀の今日、葦はすっかり姿を消したけれど、水辺の場所に変わりはない。駅を出て川に向かって坂を降りて行くと、正面にハドソン川と新緑の森を、右手に歩行者専用の高架橋「ウォークウェイ・オーバー・ザ・ハドソン」、左手にはルート44が通る「ミッドハドソン橋」を眺める。川辺に立って、この景色を眺めながら郊外の空気を胸いっぱいに吸い込むと、身も心も軽くなったような気がする。

■歴史

 1686年に英国人とオランダ人入植者がワッピンガー族から一帯の土地を取得(幾らで、或いは何と交換したのかは不明)、その後入植者がどんどん増えて一大コミュニティを形成した。独立戦争時、ニューヨーク市に次ぐ第二の都市として栄えていたオルバニーに州議会を置くのは危険と判断、より南に位置するキングストンで議会を開催していたが、そのキングストンが英国軍の襲撃に遭い焼き払われてしまったため、一時期ポキプシーに議会が移された(1797年オルバニーが州都となる)。19世紀には立地を生かした海運業や製紙業、醸造業などで繁栄。また、風光明媚でNY市から近いため、アスター家やヴァンダービルト家などの富裕層が別荘を建てた。

■ウォークウェイ・オーバー・ザ・ハドソン

 元々は1889年にポキプシーとハイランドを結ぶ複線鉄道橋として開通したカンチレバー(片持ち梁)橋で、開通当時は世界最長の橋だった。セメント材や木材、家畜、牛乳を運ぶ貨車のほか、ワシントンやフィラデルフィア、ボストンとニューヨークを結ぶ客車も通る重要な橋だったが、1974年に火災で通行不可となってしまう。長らく放置されていた橋は元の構造を残しつつ大規模な改修工事が行われ、2009年に歩行者専用の橋として生まれ変わる。同年、米国土木学会によって国定歴史建造物に指定された。高さ65メートルの橋の上から眺めるハドソン川の景色は圧巻、訪れる季節によって異なる景色が楽しめる。橋は朝7時から日没まで通行可。通行無料。ポキプシー側はパーカーアベニュー、ハイランド側はハビランドロードに出入り口があり、いずれも階段が無いので車椅子やベビーカーもOK。*橋の下の公園(Upper Landing Park)にエレベーターがあるが現在コロナ対策のため閉鎖中。https://walkway.org/

ウォークウェイ・オーバー・ザ・ハドソン

■リバー・ステーション

 その名の通り、駅と川の間にあるレストランで、遠足の始めや終わりの腹ごしらえにぴったり。川に面したテラス席からはウォークウェイとミッドハドソン橋の両方を望む。料理は「普通」だが、ロケーションと眺めの良さで星をあげよう。(写真はクラムチャウダーとコーン&ロブスターチャウダー各8ドル)

River Station 

1 North Water St. Poughkeepsie

電話:845-452-9207

月〜日11:30〜21:00 

https://riverstationrest.com/

■クラフテド・カップ

 ウォークウェイや駅からは少々離れるが、コーヒー好きの人に絶対おすすめのカフェ。香ばしく焙煎された豆を男前なスタッフが手際よく淹れる。カフェラテ小3ドル、中3ドル55セント、大4ドル5セントと言うリーズナブルな値段も嬉しい。各誌の大学ランキングで最難関とされるヴァッサー大学近くにあり、学生達で賑わっている。

The Crafted Kups 

44 Raymond Ave. Poughkeepsie

*他に2店舗あり

電話:845-483-7070

月〜日8:00〜17:00

www.thecraftedkup.com/

平安時代の日本の香は時空を超える

プロジェクト・フェリシア代表

なかやま ひろさん

 ニューヨークで6年半前まで世界最大の日英バイリンガルのための就職・転職イベントを運営する人材会社でマーケティングの仕事に従事していた。帰国して15年ぶりの日本だったが、海外から戻っての日本暮らしは3度目で数か月の滞在も入れると6か国で生活していたのと、もともと一か所で一生暮らすつもりはないので、帰国というよりも「新しい国に移っただけ」と言う感じだったという。

 現在は2013年にNYで設立したプロジェクト・フェリシアLLCの香りの自社事業運営とコントラクターとして2017年から日立製作所、2020年から某IT企業に従事し、#IamRemarkable powered by Googleファシリテーターとしても活躍中だ。

 現在取り組んでいるのは、1000年前のお香の調合を現代風にアレンジした商品のデザインプロジェクト。これは日本のお香の約70%を製造する淡路島の香司によって天然100%の香原料を使ってハンドメイドされた平安時代を代表する6つの香りを、環境に配慮したサステナブルなパッケージに収めた「新しい」ホームフレグランスの提案事業。収益の一部は「1% for the Planet」に寄付する。

 依頼があれば、お香だけでなく、香りに関わるプロジェクトは、マーケティング、コンサルティング、商品開発、イベントなど幅広く積極的に関わっている。執筆依頼も増え、海外はもとより最近は東京商工会議所会報誌にも執筆した。

 お香は2015年に母親が亡くなり、お香を手向ける機会が増えたことで使い始めた。すでに、香りの世界で仕事をしていたので、実家に来たお坊さんが毎回使用しているお香の香りが異なることに気づき、お坊さんと話し込んだこともあるという。その後、お香を創作するワークショップが日本にあることを知り、当時生活していたシンガポールから日本へ向かった。自分でお香を創作することの楽しみに出会い、これを多くの人と共有したいという思いが募り「お香創作ワークショップ」の開催を始めた。現在、米国も含め数か国で開催している。

 「香りは、私たちが生きていくためにとても大切なものなんです。嗅覚から『心地よい』と感じる香りの刺激は幸せを感じるホルモンの分泌を促します。香りの心地よさを体験し、心地よく過ごす方法を知ることで、人に対する優しい気持ちや、日常のストレスを乗り越えていく力も育みます。私たちは心地よいと感じたとき、自分自身と、まわりと素直に向き合え心を豊かにします。一人一人が前向きで良い状態であると、それはグループでも広がりやすく、社会がより良くなると思います」。東京生まれ、静岡育ち。現在クラウドファンディング「KICKSTARTER」でキャンペーンを展開中で受け付けは5月18日午後9時(日本時間)に終了する。

(三浦良一記者、写真は本人提供)

     ◇

クラウドファンディング「KICKSTARTER」はhttps://www.kickstarter.com/projects/bridgeandblend/premium-incense-inspired-by-blending-1000-year-old