編集後記 6月12日

【編集後記】 みなさん、こんにちは。
毎週、水曜日の午後、印刷所で新聞を刷り終わるとそのあと夕方7時くらいまで、会社の相棒である久松の運転する車で、クイーンズの一部とマンハッタン内の日系スーパー、紀伊國屋書店などに2人で新聞の設置・配達をして回っています。電子版全盛のいまと言えど、紙の新聞は読者の手に渡って目に触れてなんぼの世界です。二人とも元の出身会社が、新聞社の中でも販売部が日本一強い、そして厳しい会社だったので、編集といえども、夜に会社に読者から「新聞がきてないぞ」という苦情がきたら、仕事の手を止め、マンハッタンなら社内にある新聞を持って飛んで行って届けたものです。それで読者は痛く感激してくれてまた愛読者になってくれます。その精神が骨まで(割と浅い方ですが)伝わっているので、配達中は体育会系のノリで「配達命」で頑張っている訳です。元ラグビー部ですし。コロナ以降この1年半、休業レストランでの新聞設置がなくなったので、配達業者を使わす、経費を節約してこうして二人で配達しています。今日も、相棒の久松は郊外へ出てて孤軍奮闘して配達しているはずです。一方、アメリカの新聞事情は変化してるようです。実は私は自宅でこの20年来ニューヨークタイムズを宅配で紙の新聞で読んでいます。ハリソンからグランドセントラル駅に向かうまでの45分は電車の中で朝刊を見てネタ探しです。ところが、この春から配達員が変わったのか、こともあろうに、1週間のうちに3回くらいは新聞が配達されません。土日は取ってないので週の半分は来ない計算です。今日も来ていません。カスタマーサービスにネットで連絡すると選択肢は2つ。「翌日配達」か「リファンド」かです。最初のうちは翌日配達のボタンを押してそれで済んでましたが、2週間ほどそんなことが続いたので「理由を知りたい」とチャット機能を使って書き込むと、答えは「配達地域の責任者に厳重に注意するので2度とこのようなことがないように気をつけます」という内容の長い、丁寧な返答がいく通りも違う表現で返って来ますが、私が知りたい肝心の理由については書かれていません。チャットの相手がAI のロボットであることに気がつくのに2週間くらいかかりました。機械相手のチャットではなくE メールで販売部に「長年新聞を購読しているがこんなひどいことは初めてだ。私が日本人だからこれはNYタイムズによる昨今流行りのアジアンヘイトなのか」とさすがに頭にきて書き込んだところ、すぐ今度は短い返事がきて、翌日からきちんと新聞が入るようになりました。しかし、今週になってまた来たり来なかったりの繰り返しです。新聞社も定期購読者の紙読者の激減で配達コストに以前の水準ではかけられなくなり、安い賃金で配達員を雇っているのかもしれません。それが原因で責任感のない、いいかげんなサービスしかできなくなってしまったのであれば悲しい限りです。しかも、ニューヨークタイムズはもう店頭販売をしていないので、街中のニューススタンド、書店でも紙の新聞を買うことができないのです。明日、また今日の新聞を1日遅れで読むことになります。小さな心配事、大きな心配事を乗り越えて「週刊NY生活」は今週号も無事に出ました。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2021年6月12日号)

(1)接種率NY州でほぼ7割達成

(2)NJ在住者は隔離対象外

(3)あー冷たいわ セントラルパーク動物園

(4)成田陽子のTHE SCREEN いい男ジュード・ロウ

(5)粋なリボンベルト イケメン男子服飾Q&A

(6)冷泉彰彦 あめりか時評 

(7)NY日系人会メモリアルデー墓参会

(8)北岡和義 東京レポート2 

(9)原一男と小林佐智子映画NY上映

(10)レコード店が開店 ロックフェラープラザに

接種率ほぼ7割達成

クオモ知事「各種制限の全廃間近」、NY州

 ニューヨーク州のクオモ州知事は7日、州全体の6日の新型コロナウイルスの陽性率が0・66%(検査数7万635件)となったと発表した。新規入院は799人、死者は9人だった。

 陽性率は今年1月4日に7・94%までになったが、ワクチン接種が進み減少傾向が続いている。ニューヨーク市が0・43%などすべての地域で1%を切っており、これは昨年8月19日以来となる。

 ワクチン接種は少なくとも1回が1092万3964件で、これは州全体の成人(18歳以上)の68・6%にあたる。州のホームページによると、地域別ではマンハッタンが73・2%、クイーンズ71・5%、ブリックリン58・6%、ブロンクス56・1%、スタテン島61・3%。ウエストチェスター郡61・5%で、ナッソー郡75・9%など。クオモ知事はワクチン接種率が70%を超えれば、現在19ある各種制限を事実上、すべて緩和できるだろうと述べた。

 ニューヨーク州のハワード・ザッカー保健省長官は州は7月に第一週までに70%に達するとの予測を立てているが、接種率がかなり低い所もある。

州郵便番号約1割
接種率36%下回る

  州の1700のジップコード(郵便番号)のうち10%がワクチン接種率が36%を下回っている。最も低いのは大きなユダヤ人コミュニティーがあることで知られるロックランド郡モンゼイ(10952)の17・6%。ニューヨーク市はクイーンズのファーロッカウェー(11691)の31・2%、ブリックリンのウイリアムズバーグ(11211)31・5%など最も低い25か所のなかに11か所入っている。州ではこうした接種率の低い地域を重点的に接種を進める計画だ。

 また州ではここにきて予防接種率が伸び悩んでいるため、野球のチケット、州立公園の2日間パス、サラトガ競馬場の入場バス、州立・市立大学の全額奨学金などの奨励策を取っている。

NJ州在住者は帰国隔離なし

 日本の厚生労働省が1日、検疫強化として日本到着後3日間の強制隔離を米国を含む6か国に指定し、米国内は15州が対象となった(本紙5日号既報)。その中で、ニューヨーク州とコネチカット州が指定対象州となったが、ニュージャージー州は含まれていないため、NY在住者でもNJ州のニューアーク空港から帰国すれば、到着後日本で隔離されなくて済むのではないかと一部戸惑うケースがあった。

 ニューヨーク日本総領事館によると「今回の水際強化措置は対象国・地域に指定された国・地域(アメリカでは州)に居住・滞在していた人が対象となる」ため「ニュージャージー州の在住者は原則隔離対象にはならない」という。従ってニュージャージー在住者が州外のニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港から帰国しても隔離の対象にはならない。

 一方、ニューヨーク州やコネチカット州の在住者はニュージャージー州のニューアーク空港を使って帰国した場合でも日本での隔離対象となる。

あー冷たいわ

 セントラルパーク動物園は1864年に作られ、マンハッタンの五番街64丁目に正門がある。

 中央の水槽プールでは、猛暑をよそに気持ち良さそうにアシカが水中をスイスイと泳いでいる。小規模な動物園だが熱帯、温帯、極地の3区域に分かれて多数の動物の施設がある。

 子供ペンギン館など、水族館並の設備を備えている。コロナ禍で休園していたが、このほど再開、入場料は14ドル。年中無休。

(写真)摂氏33度を越える猛暑のなか水槽で涼しそうに泳ぐアシカ(7日、セントラルパーク動物園で、写真・三浦良一)

いい男ジュード・ロウ

 ジュード・ロウは身長こそイマイチだが、まず全世界の俳優内ではピカイチのハンサムに違いない。彼の強みは「生まれつきだから、別にどうでも良い」という態度で、全く意識していないところだろう。カメラを向けても、照明だとか、アングルだとか、メークなどに全くこだわらず、あっけらかんとしている。

 最近の彼の仕事ぶりが物凄い。まず、美人女優のブレーク・ライブリーが汚れ役の新米スパイを演じる「リズム・セクション」では彼女を鍛える英国MI-6のベテランスパイ役、これぞ適役と言える見た目は良いが、中身が腐ったペテン投資家を演じる「ネスト」=写真=、謎の島で迷う男のドラマ「ザ・サード・デイ」、デカダンのローマ法王を怪演中の「ザ・ニュー・ポープ」、まもなく公開の「ザ・ ファンタスティック・ビースト第3弾」、フック船長を演じる「ピーター・パン・アンド・ウエンデイー」、そして、ワトソン博士を演じる「シャーロック・ホームズ第3弾」などなど企画も延々と続く。

 現在子供が6人!これも大スターらしからぬ生産力と家長力であるが、子供達と前妻などを養うためのハードワークなのか、それとも家庭からのエスケープ作戦なのかはともかく、映画でテレビで大活躍中なのである。

 ジュード・ロウに初めて会ったのは「ガタカ」GATTACA(1997年)の時。超ド級美男子の彼が車椅子の身障者を演じるとその悲惨さが相乗効果を上げるという効果を計算しての配役だった。

 もちろん「ヘイ・ジュード!」と呼びかけたら、その挨拶には慣れきっているはずだろうが、嬉しそうに笑顔で応えてくれた。

 「JUDE THE OBSCURE」というトーマス・ハーデイーの小説とビートルスの歌の両方から名付けられたそうだが正統派美男がごまんといる英国映画界でもずば抜けての眉目秀麗故に早々とスターになり、ルックスに頼らない演技力も高く評価されている。

 ロンドンの自宅からのジュード48歳の最近のズームインタビューを紹介しよう。

「コロナ禍のために、つい最近生まれた赤ん坊を含めて6人の子供たちとの濃い時間が持てたし、家の中の整理をしたり、古いドアを直したり、かってない程の愛情を庭の手入れに注いでいる。藤棚をすっきり刈り込んだし、盆栽も生き返ったし。この時期、僕はね、人生を振り返って深呼吸をするという至極貴重な時間を過ごしている。

 6人もの子供を持つなんて夢にも思ってなかったが実は僕の両親はふたりとも孤児で非常に寂しい思いをして育っているから、僕はその穴を埋めるためにもロウ一族の子孫繁盛に努力をしているというわけさ。それに、小さい赤ん坊がそばにいると僕自身も若返るという恩恵もあるしね。

 役を選ぶ基準?同じような役は繰り返さない、少しばかり恐くなるような、驚異を感じるような役を選ぶことにしている。非合理で一笑に付してしまうような状況下で逃げ惑う人間てな役に魅力を感じるね。

 それからね、演技って、70パーセントは、相手の話を聴いている時に実力が判明するという事。自分で叫び狂っている時は演技というより、単なる反応だと思うんだ」

 不敵な面構えで淡々と話してくれた。

(なりた・ようこ/ジャーナリスト/カリフォルニア州在住)

粋なリボンベルト

イケメン男子服飾Q&A 85
ケン 青木

 メモリアルデーを過ぎますと「公式」に夏ですね。今はオフィスに出て来られる方はまだ少ない状況の様ですが、徐々に元に戻していくといった御話を大手企業の皆様から耳にしておりますので、遠からずニューヨークの街も以前の活気を取り戻していくのでは、と。ちょっとオプティミスティック過ぎますかね? 僕は9・11を目の前で体験しまして、あの時、大変な状況でしたが、ニューヨーカーの団結力は人種の壁を軽く越えとても素晴らしかったと記憶しているのです。

 この四半世紀余、ずっと続いてきた夏場のオフィスウエアのカジュアル化ですが、オフィス内ではシャツ姿であっても、通勤時にはやはりジャケットを羽織られたり、もしくはオフィスのロッカーに紺などダークカラーのジャケットを用意されておかれるのが何かという時に安心ですね。

 私がニューヨークに赴任しました1990年頃は今よりもずっとオフィスのドレスコードは厳しかったのでした。会社の中堅幹部以上の方々の多くは兵役経験者が多かったですし…(別の機会に触れますが、スーツ、背広のオリジンは軍服なのです)。ただその様な時代でも当時「フライデーカジュアル」と呼ばれておりました、金曜日だけのビジネスカジュアルの装いはありました。

 「フライデー」の典型的な装いとは、ネクタイをせずにボタンダウンのシャツを着て、上着は紺色の夏向けの生地のブレイザーを羽織り、そして綿とポリエステルを混紡したポプリン(POPLIN)と呼ばれます平織り、薄手の生地、そしてここが大きなポイントなのですが、パーマネント・プレスと呼ばれる折り目加工が施されたパンツを合わせて、つまりパンツのプリースが消えない。足元の仕上げは茶色のローファー、もしくはタッセルなどスリップオン、というスタイル。

 こうしたカジュアルドレスの装いのポイントを言葉で表現するならば、at easeながらもneatとかcrisp、すなわち小綺麗、こざっぱりという感じでしょうか。紺の上着、グレーのスラックスで何も問題なく、全てのシーンにてOKですが、昔からの伝統、何度か触れましたが、メモリアルデーからレイバーデイまでの期間がニューヨークのサマードレスのシーズン。目立って恥ずかしいという方もおありかと思いますが、ベージュやオフホワイト、サックス、ブルーなど明るい色、素材は綿や麻を取り入れられるのもまたお薦めです。

 そして最後になりますがnot at least、 夏に上着を脱いでいたり、シャツ姿の際に最も目立つのが実はベルトなのですね。

 私といたしましては、夏場のビジネスカジュアルのシーズンが始まる前にベルトを数本購入されておくことをお薦めいたします。上着を着用していても、ネクタイをしていない場合、上着を着ていない場合はなおのこと、ベルトの革がくたびれていたり、穴が広がっていたりするのはことの他悪目立ちするものなのです。女性のチェックポイントでもあるそうです。厳しいですね(苦笑)。

 こうした時期に個人的にお薦めなのがSurcingle Belt、日本ではリボンベルトなどと呼ばれております革と厚手のウールのツイル地を組み合わせたスポーティなベルトなのです。写真のように2色のストライプが多く、せっかくですから、例えば紺×赤のストライプでしたら、靴下を赤にするとか、やはりこの様なところで組み合わせのキーとなる色を拾ってあげますと、カジュアルなムードの中にある種の「まとまり感」と言いますか、良い意味で装いに気配りされているという印象になります。

 それではまた次回。

 けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス・カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。

コロナと五輪、迷走の原点は「お上と庶民」の相互不信

あめりか時評閑話休題 冷泉彰彦

 日本における新型コロナウイルス対策を、アメリカから見るのは何とも歯痒く、辛い。陽性者比率、死亡率を比較するのであれば、日本の数字は極めて優秀だ。人口比で見てみれば20分の1以下であり、この傾向は最新のデータでも変わらない。にも関わらず、大阪などでは医療崩壊で救命のできないケースも発生したし、何よりもワクチンの接種は遅れた。結果的に、GDPへのマイナス効果はアメリカよりも厳しい。こうした推移について厚労行政の責任とするのは簡単だ。だが、長く複雑な歴史的経緯を考えるのであれば、必ずしも当局を責めて済む話ではない。

 まずワクチン接種の遅れだが、根本にあるのは日本社会に根強いワクチン忌避感情だ。1970年前後までの日本では、感染症の予防接種は厳格に義務化されていた。だが、70年代以降、状況が変わった。副反応を経験した患者やその家族が「同じような苦しみを受ける人を根絶したい」という感情を抱くと、メディアや弁護士が群がって支援してワクチンの「義務化」をどんどん潰して行ったのである。この「反ワクチン」の流れに加えて、一連の薬害問題が事態を悪化させた。薬害エイズ事件に際しては、当時の厚生大臣が政治パフォーマンスに走る中で、厚生官僚の逮捕という事態まで起きた。

 これでは、「mRNAという遺伝子技術を使った新世代ワクチン」などという新技術を、率先して認可する勇気を出せというのは無理な話である。そんな中では、世界各国で大規模な接種実績が進み、その効果が明らかとなるのを待つしかなかったという推測が成り立つ。社会に満ち満ちている不信感に対抗するには、それが唯一のシナリオだからだ。

 日本におけるワクチン接種に関して、歯科医への拡大は進んだが、アメリカのように薬剤師による接種は実現していない。一般的には、医師会が既得権を握って放さないからという解説がされている。けれども、実情としては、薬剤師による接種で事故が起きた場合に監督の医師が厳しく批判され、場合によっては逮捕という可能性もある中では、医師会も防衛的にならざるを得ないのではないか。

 コロナ病床の増床が進まない問題も同様だ。4月から5月の大阪府の場合など、感染拡大の勢いに合わせてコロナ病床を増やせば、その分だけコロナ外の診療には支障が出たであろう。その場合にコロナ外で救命できる患者を救えなかったら、医療過誤事例として最悪の場合は医師に逮捕状が執行される可能性もあるのが現行の制度である。そう考えると、問題には裁判所や警察も含めた複雑な構造があるわけで、厚労省や医師会が保守的だという説明だけで済ますことはできない。

 融通の利かない制度の背景には、社会に統一された常識(コモンセンス)がないので、ルールを決めたら杓子定規に適用するしかないという問題もあるだろう。更に突き詰めて考えると、問題の原点には江戸時代から綿々と続く「お上と庶民」の相互不信という問題に行き着く。医療を縛る硬直した規制の多くは、こうした不信の産物だからだ。

 今回の五輪開催の是非をめぐっては、この相互不信が思い切り噴出した感がある。「庶民」の側は、ワクチンの効果など無視して外国人の大量入国に勝手に怯えながら、五輪反対のムードをエスカレートさせている。反対に「お上」の側は実施へ向けて引くに引けなくなってきた。政府としては、さまざまな矛盾点については大会が成功すれば「結果オーライ」となるという読みから開催という賭けに打って出ている。説明を渋っているのは、賭けの危険性を薄々感じているからであろう。更に、7月の東京都議会選挙と、10月と言われる衆議院選挙という政治日程が、政権与党を「五輪強行開催」という危険なギャンブルへと追い詰めている。

 この相互不信があるレベルを超えてしまうと、大会の成功も難しくなる。国民の8割が反対という状態が続くようでは、各国選手団に「感染拡大で危険な国」という印象を与え、大会の足を引っ張りかねない。そうしたシナリオを回避できるか、いよいよ正念場に差し掛かってきた。

(れいぜい・あきひこ/作家・プリンストン在住)

NY日系人会、メモリアルデー墓参会

日系の先駆者に感謝

 前日の大雨の後、曇り空の5月31日のメモリアルデーに、恒例のマウント・オリベット日本人墓地での墓参会を、山野内勘二大使をはじめ30人が集まり開催した。新型コロナ感染からのニューヨークの再開に合わせて参加者が昨年より増え、全員マスクをして、ニューヨーク仏教会イザベラ・バーナード副開教使の読経の中、厳かに全員で献花をした。副開教使は大好きな「千の風になって」の音楽のように、今この墓石の前で私たちの先駆者への感謝と敬意を表すことは大きな意味があると述べた。

墓参会でスピーチする山野内大使

 山野内大使は、1912年、JAAのルーツである日本人共済会がこの日本人墓地を購入し墓参会を始めて今年で110年目、今日、墓参できたことを嬉しく思うと述べた。そして1860年、今から161年前に日本使節団が初めてニューヨークを訪問して以来、多くの日本人・日系人が移り住み、幅広い分野で影響を与え、日米関係に貢献してきた。この歴史を将来の世代に語り継いでいくために「ニューヨーク日本歴史評議会を設立し、「ニューヨーク日本人デジタル歴史博物館」(www.historyofjapaneseinny.org)をオンラインで開設、歴史的文書、写真、手紙、新聞記事などを保存しているのでご覧くださいと述べた。

 この後、墓地のお掃除ボランティアとして参加していたソプラノ歌手田村麻子さんが、「千の風になって」と「アベマリア」をここに眠る先駆者に捧げた。最後にJAA竹田勝男副会長が、朝からお墓掃除に参加した人に感謝を述べた。

先駆者に歌を捧げる田村麻子

 今回の墓参会は、ニューヨーク仏教会、ニューヨーク日本国総領事館、ニューヨーク日系ライオンズクラブとニューヨーク育英学園とニューヨーク日系人会/JAAで行った。

 参加者は墓参会のあと、近くにあるJAAの創設者、高見豊彦先生の墓地にもお参りした。参加者はNY仏教会しんじょう副和尚、山野内勘二大使、寛二大橋建夫NY総領事館領事部長、竹田勝男JAA副会長、野田美知代JAA事務局長、ライオンズクラブ伊藤りき、相田マイク、三木伸夫、滝田佳功、滝田智佳、森本マリ、広瀬由美子、原茂和美、原茂佳正 &原茂英利佳とお掃除部隊のボランティア10人(ソプラノ歌手田村麻子さん親子も含まれる)。

 ニューヨーク育英学園の岡本徹学園長と上妻雅浩事務局長と参加者の多くは、式の前に日本人墓碑の掃除、花を植え、そして育英学園の子供たちが描いた世界の国旗を飾った。

コロナで異常事態の日本、渋沢栄一の墓碑静か

東京レポート2

北岡和義

 静かです。気味が悪いほど国民一般は静かです。声高に嗤い、喧しいのはテレビのコマーシャルだけ。政府はメディアを通じ「緊急事態」を姦しく叫んでいるが、国民はその言葉に飽き飽きし倦んでいる。それこそ「異常事態」だ。

 なんとかワクチン接種も始まってその効果が出始めたら新型コロナウイルス禍も鎮静化が見えるかもしれない。今のところ感染者数は以前よりマシになったが高止まり。警戒は続けるしかない。ぼくは独り杖をつき散歩にでる。

 ぼくが5月14日夜、ようやく取れたワクチン接種のアポイントは7月7日、七夕さままで待たねばならない。メディアでは「接種は順調」と報じているが、実態とかなり乖離している。間違いの混乱や無駄がでている。

 しかも7月23日から予定されている東京オリンピック・パラリンピックを日本政府も東京都もオリ・パラ組織委員会も頑なに「やる」と言っている。

 厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は国会で公然と開催反対を言明した。感染症の専門家なら当然の主張だろう。そこを敢えて開催して感染拡大が選手らに及んだら誰が責任をとるのか。どうも政府のやることは理解し難い。

 新型コロナウイルスのパンデミックは自然災害の一種である。人類が自然に試されているとも言える。茶の間の関心事は相変わらず美味しいもの、可愛いものが中心で“スタジオ井戸端会議”番組がプライムタイムを独占している。その番組の程度の低いこと。目も当てられない。JRの駅や新幹線はガラガラ。多くの企業や大学ではオンライン会議や授業だ。

 東京オリ・パラの後は衆議院議員の任期切れで総選挙、前後して自民党総裁選挙。白けるなあ。東京は「静か」だが、白け切っている、というのが本当のところ。ぼくは肝臓ガンで2年半、病院へ通っているが、改善のサインは観られない。

 ポスト・コロナはどんな社会となるのだろう。興味津々だが、それをみることができるかどうか。厄介な初夏の東京である。

 イライラを鎮めるため散歩に出た。近くの谷中霊園へ行ってみた。日暮里の駅からは一番奥の方角、徳川慶喜の墓の敷地は広大。さらにその北の奥の隅の一画に渋沢栄一の墓が広い。墓碑3基のうちの真ん中。墓地の中央に渋沢栄一の背高い墓碑が無言で建っていた。語りかけたくなった。深谷の血洗島の百姓の倅が・・・。じっとその高い墓碑を眺めた。涼風が頬を撫で気持ちがいい。

 日本に近大経済組織をもたらした渋沢栄一の墓碑は無言で建っていた。渋沢栄一は維新3傑とは違った、もう一人の近大日本の偉人である。セントルイス郊外に住む渋沢栄一の曽孫子に会いたくなった。彼とピアノバーで飲んだのは40年以上も前のLA。渋沢は英語の上手い明るい性格の銀行マンで、議論好きだった。現在92歳。元気だ。その頃30代だったぼくは希望に燃えていた。

(きたおか・かずよし/ジャーナリスト)

(写真)広い渋沢栄一の墓。3つ並んでいる墓標の真ん中(左から2つ目)が渋沢栄一の墓標

原一男と、小林佐智子の映画全作品群

7月2日までジャパン・ソサエティー

極私的エロス・恋歌 1974

 ジャパン・ソサエティーは4日から7月2日(金)まで、「苦闘としての映画・原一男と、小林佐智子の映画全作品群」をオンラインで上映している。(協力・ジャヌスフィルム、疾走プロダクション)

 今年は、疾走プロダクション(原一男、小林佐知子)の50周年記念にあたる。原は日本におけるドキュメンタリー映画作家として影響力のある一人で、小林はプロデユーサーとして映画を共同制作し、原の人生のパートナーでもある。彼らの映画は、人間の複雑で計り知れない根底の有り様を深く追求しており、世界で高く評価されている。その中で最も知られている作品『ゆきゆきて、神軍』は、第2次世界大戦の戦争犯罪を背負った奥崎健三の向こう見ずな人生をとことん描き、ある戦争犯罪を暴くもの。原と小林は、庶民と権力者の挟間にある困難な状況、苦闘をドキュメントすることに人生を掲げてきた。その疾走プロダクション50周年に敬意を捧げ、1972年制作の『さようならCP』から2020年製作の叙事詩的最新作『水俣曼陀羅』まで、全作品を上映する。

 視聴料は10ドル。会員でなくても映画を見ることができる。https://film.japansociety.org/を参照。

ゆきゆきて、神軍

疾走プロダクション海外セールス担当・黒岩久美さんからのコメント

 「今回、原一男、小林佐智子の疾走プロ50周年記念を迎え、全作品をジャパン・ソサエティーでオンライン上映することになり、嬉しく思っております。世界に誇る素晴らしいドキュメンタリーの数々、『またの日の知華』(劇映画)を観せていただく機会をジャヌスフィルムと共に作っていただきました。『ゆきゆきて、神軍』を見た時の感動は、

「こんな映画作りがあるのか!」という驚きでした。特に最新作の『水俣曼陀羅』は、6時間を超える作品ですが3部に分かれております。かつてない、人々に対する愛に満ち溢れた、叙事詩の様な作品です。

 映画とは、人々の感情を表現するものであるという信念に立たれている原監督の作品はどの映画にも驚きのあるものです。昭和、平成、令和へと日本の変容を物語る数々どうぞお楽しみください。2022年には、ついでながら「ドキュメンタリーは格闘技である」という本をアメリカでもkaya pressが出版予定です」

さようならCP

(写真)全身小説家

ブルックリンのレコード店ロックフェラープラザに Rough Trade

 ニューヨークにおける「音楽の聖地」の一つであるレコードショップ、ラフ・トレードNYC(Rough Trade NYC)が1日、マンハッタンのミッドタウンへ移転、再開店した。同店は2013年11月、ブルックリンのウィリアムズバーグにオープンしたが、市内のほかの場所へ移転する前提で、同店舗の営業を21年3月21日に終了していた。 

 新店舗の場所は、ミッドタウン6番街の48丁目と49丁目の間にある30ロックフェラープラザの一画で、地下鉄駅とテレビ番組『The Tonight Show Starring Jimmy Fallon』の収録スタジオに隣接する路面店。規模はブルックリン店の4分の1以下だが、それでもレコード1万枚は在庫できるほどの広さはあるようだ。品揃えは、オリジナルのビンテージLPは少なく、オリジナルから再生した人気LPをメインに値段も1枚18ドル〜25ドルとビレッジの中古レコード店と比べるとかなり高めだ。再生版が主体のため、掘り出し物はないが、かつての人気LPを再びレコードで聴ける楽しみはある。

 ラフ・トレードの共同オーナーであるスティーブン・ゴッドフロイは「新型コロナウイルスの影響を受け、ラフ・トレードを移転するという決定をした。マンハッタンには偉大なレコード店の輝かしい歴史があるが長年レコード店がなかったニューヨークの中心部に進出することができて嬉しい」とコメントを出している。

 今後はロックフェラーセンターのプログラムに組み込まれ、周辺の広場やアイススケートリンク、豪華なレインボールームなどを活用したコミュニティーイベントを展開していくという。