芝生の憩いの場、ザ・グリーンがオープン

 リンカーンセンター中央の噴水のある広場に10日、芝生を敷いた緑化スペース「ザ・グリーン」が登場した。リンカーンセンターが進めるコロナ禍からの復興プロジェクト「リンカーンセンターズ・リスタート・ステージ」の企画の一つで、市民の憩いの場として、また屋外パフォーミングパークとして音楽やダンスなど今後さまざまなライブパフォーマンスが開催される。また、同センターの敷地内には10か所の屋外ステージ、ポップアップの公共図書館、飲み物が購入できるバーなどのほか、献血や食料の無料配給、市長選の予備選挙投票所が設置される予定。22日(土)は南側にあるダムロッシュパークで同センター室内楽協会によるコンサート「ドボルザークとメンデルスゾーン」、26日(水)はジュリアード音楽院のオープンハウスを開催。ザ・グリーンは今年9月まで。詳細は公式サイトhttps://www.lincolncenter.orgを参照。

編集後記 5月15日号

【編集後記】 みなさん、こんにちは。ニューヨーク州は、コロナウイルスのワクチン接種を大都市圏の4つの鉄道駅と4つの地下鉄駅で昨日、5月12日(水)から今週末16日(日)まで行っています。ワクチンは1回で済むジョンソン・エンド・ジョンソン製で予約は不要。場所は、ペンステーションの34丁目コリドー(午後3時から8時)、グランドセントラルのバンダービルトホール(午前8時から午後1時)、地下鉄コニーアイランド駅(午前8時から午後1時)、ロングアイランド鉄道のヘンプステッド駅(午後3時から8時)、メトロノースのオスニング駅(午後3時から8時)、ブルックリンのブロードウェイジャンクション地下鉄駅(午後3時から8時)、ブロンクスの東180丁目地下鉄駅(午前8時から午後1時)、クイーンズのジャマイカ地下鉄179丁目駅(午前8時から午後1時)の8か所です。同プログラム5日間で3万人への接種を目標としています。接種を受けた人には無料で7日間有効の地下鉄・バス乗車用メトロカードまたはメトロノースおよびロングアイランド鉄道の目的地自由の片道チケット2枚を贈呈するサービスぶりです。初日12日は午前7時前から大勢の市民や通勤客がグランドセントラル駅構内に並び、ビル内のバンダービルトホールで接種を受けていました。このプログラムの目的はただ一つ。ワクチン接種率を高めること。そして接種には手段を選ばず、公平に希望する人誰でもが打てるようにとの配慮がなされています。予約が取れずに諦めていた人、今からでもぶらっと駅まで行ってみませんか。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2021年5月15日号)

(1)駅でも予約不要ワクチン

(2)観光客も接種が可能に

(3)ジャパンデーはオンライン

(4)バレンタイン元監督市長選立候補

(5)タイムズスクエ銃撃3人負傷

(6)反ワクチン派が接種反対集会

(7)鈴木ファームを買収

(8)空き店舗利用のアート展

(9)ハリーポッターストア開店

(10)ニューヨークの魔法

駅でもワクチン

12日から16日、予約不要
グランドセントラルなど8か所

 ニューヨーク州のクオモ州知事は10日、コロナウイルスのワクチン接種を4つの近郊鉄道駅と4つの地下鉄駅で12日(水)から16日(日)に行うと発表した。

 ワクチンは1回で済むジョンソン・エンド・ジョンソン製で予約は不要。場所は、ペンステーションの34丁目コリドー(午後3時から8時)、グランドセントラルのバンダービルトホール(午前8時から午後1時)、地下鉄コニーアイランド駅(午前8時から午後1時)、ロングアイランド鉄道のヘンプステッド駅(午後3時から8時)、メトロノースのオスニング駅(午後3時から8時)、ブルックリンのブロードウェイジャンクション地下鉄駅(午後3時から8時)、ブロンクスの東180丁目地下鉄駅(午前8時から午後1時)、クイーンズのジャマイカ地下鉄179丁目駅(午前8時から午後1時)の8か所。同プログラム5日間で3万人への接種を目標としている。

 通勤中に接種を受けた人には無料で7日間有効の地下鉄・バス乗車用メトロカードまたはメトロノースおよびロングアイランド鉄道の目的地自由の片道チケット2枚を贈呈する。

 また知事は、ニューヨーク州立大学とニューヨーク市立大学で9月再開予定の対面授業を受講する学生にはすべてワクチン接種を義務付けることを発表した。私立大学に対しても同じ対応をするよう求めたいとしている。

 知事は、10日までの時点でニューヨーク州では計1680万回のワクチンが投与されており、18歳以上の人々の60・2%が少なくとも1回の接種を受けていると述べた。9日の州全体の新規入院患者は2016人、死者27人。陽性率は1・43%となっている。

 初日12日午前7時前から、大勢の市民や通勤客がグランドセントラル駅に並び、構内のバンダービルトホールで接種を受けた。

 接種を受けた人は「ジャクリーン・ケネディの尽力で保存されたこの歴史あるグランドセントラル駅でワクチン接種できたことは、私にとってのヒストリー、歴史だ」と喜んでいた。

観光客も接種が可能に

 デブラシオNY市長は6日、観光業の復活に向けた取り組みとして、観光客にワクチンを接種する機会を提供する計画を明らかにした。この計画では、多くの観光客が集まるタイムズスクエアやセントラルパークなどに移動式のワクチン接種会場を設け、1回で接種が完了するジョンソン&ジョンソン製のワクチンを提供するという。デブラシオ市長は会見で、「より多くの人がワクチンを接種することは、市民と観光客の双方にとって喜ばしいことだ。NYに来てください、安全で素晴らしい街です」と述べた。同市では、7月1日までに500万回分の接種を目標に掲げており、早期の経済再開を目指す。10日には米食品医薬品局(FDA)が12歳から15歳までの接種を認可したため、接種率はさらに加速しそうだ。

12歳から15歳にもワクチン接種許可

 米ファイザーと独ビオンテックは、共同開発した新型コロナウイルスのワクチンを12歳から15歳にも接種できるようにするため、米国などで当局の承認を求右ていたが米食品医薬品局(FDA)は10日、適用年齢の拡大を認可した。これにより9月からの新学年スタート前までに、対象学生にワクチンを接種することができることになった。

 12歳から15歳を対象にした臨床試験では、新型コロナウイルスの発症を防ぐ効果が100%だったことが3月に発表されている。この試験では成人と同じ投与量で2回接種の方式がとられた。

ワクチン打って野球観戦
ヤンキースタジアムとシティフィールド

 NY州保健局は、ヤンキースの本拠地ヤンキースタジアムとメッツの本拠地であるシティフィールドのワクチン接種会場でワクチンを受けた人には、次回の試合の無料チケットを提供すると発表した。クオモNY知事は「次のスタジアムでのゲームでは、友人や家族が隣に座って観戦することができる。これは試合の大きな楽しみのひとつとなる」と述べ、野球ファンへの接種を促した。各スタジアムでは、ジョンソン&ジョンソンのワクチンを接種することができる。

 また、ワクチン接種完了者の座席はソーシャル・ディスタンスが不要の100%の収容人数となるが、ワクチン未接種者は33%に人数を制限したセクションの座席が割り当てられる。スタジアム内ではワクチンの接種の有無に関わらず、全観客にマスクの着用を求めている。

ジャパンデー、今年はオンラインで公開

 毎年セントラルパークで行われてきた日米文化交流促進イベント「ジャパンデー」は、コロナ禍により野外イベントの実施許可が出ないため、今年は屋外開催に代わり「ジャパンデー・2021・サンキュープロジェクト」と題したイベントを1日から9日まで開催した。9日にはオンラインプログラム(https://japandaynyc.org/thankyouproject2021/)が公開された。出演は植村花菜=写真中央=、金子純恵、僧太鼓=写真下=、天手古舞、殺陣波濤流NY、 国際空手道連盟極真会館=写真上=。総合司会はサンドラ・エンドウさん、スペシャルゲストにTVキャスターの久保純子さんが登場した。

 スペシャルゲストのニューヨーク総領事、山野内 勘二大使は「コロナ禍が及ぼしたさまざまな変化や困難を乗り越えて開催される今年のジャパンデーが、日本とニューヨークの希望に満ちた明るい未来につながることを願っている」と挨拶。ジャパンデーインク会長の堀江 順丸紅米国会社社長は「楽しいイベントを通し、地元の日系コミュニティとニューヨークの皆様の文化的な理解促進を図ってきたが本年は、残念ながら直接参加いただく従来のイベントは実施できないが、このプロジェクトを通し、伝統の継続と感謝の意を伝えて行きたい」と挨拶した。

元ロッテのバレンタイン監督、スタンフォード市長選に出馬

 日本のプロ野球団、千葉ロッテマリーンズの監督を2度務めたボビー・バレンタイン氏(70)が7日、出身地のコネチカット州スタンフォード市の市長選に無所属で出馬することをSNS上で発表した。 

 バレンタイン氏は1968年にメジャーリーグベースボール(MLB)のロサンゼルス・ドジャースに入団。度重なる怪我で選手としての現役生活は長くなかったが、指導者としての素質が買われ、85〜92年はテキサス・レンジャーズ、94年以降はNYメッツ傘下のノーフォーク・タイズの監督を歴任した。95年、ロッテのゼネラル・マネージャーに就任した読売ジャイアンツ元選手、広岡達朗の依頼を受け、同球団の監督として迎えられた。 

 96年には帰国し、ノーフォーク・タイズを経てシーズン途中にメッツの監督に昇格した。2001年にはMLBのオールスターゲームでナ・リーグの監督を務めた。04年からは成績が低迷していたロッテに再び監督として復帰し、チームの健闘に貢献し、独自の指導法から「ボビー・マジック」、同氏に技術を見出された選手らを称する「ボビー・チルドレン」という言葉も生まれた。その後ボストン・レッドソックス監督も務め、退任後はラジオなどで解説を行う傍ら大学体育学部長にも就任。18年、NY総領事館公邸での叙勲伝達式で、春の叙勲で旭日小綬章を受賞している。

タイムズスクエア銃撃で3人負傷

 マンハッタンのタイムズスクエアで8日午後、男が銃を発砲する事件があり、通りがかりの4歳の少女と女性2人が脚などを撃たれ病院に運ばれた。命に別状はない。男は逃走した。

 事件が起きたのは午後4時55分ごろで、場所は7番街の45丁目付近。目撃者の話によると男3、4人が路上で口論となり一人が銃を抜いて撃ち始めたという。撃たれた3人は男らとは無関係で、それぞれ偶然居合わせたもの。ブルックリンから両親と一緒におもちゃを買いに来ていた4歳の女児は脚を撃たれた。ロードアイランドから観光で来ていた女性(23)は太ももを、ニュージャージーから来ていた女性(43)は足を撃たれた。

 警察は防犯ビデオなどから発砲した男はファラカン・ムハンマド容疑者(31)と特定、喧嘩となり兄弟を撃とうとしたと思われるという。ムハンマド容疑者はタイムズクスエアで海賊版CDなどを売っていることで知られており、2018年に脅迫で、昨年は男性の首をつかんでゴミ箱に投げ込むという暴行での逮捕歴があった。警察は男のビデオを公開、行方を追っている。

 ニューヨーク市警によると、新型コロナ禍が始まった昨年来、銃撃事件が増加傾向にあったが、今年はさらに増えている。今年初めから5月2日までの銃撃事件は昨年同期比で83%も急増。銃撃による犠牲者数は463人で、昨年に比べて79%の急増。殺人件数は132件で昨年の同時期の113件から17%増加している。

 多くの人で賑わう土曜日のタイムズズクエアでの銃撃事件に、デブラシオ市長は「恐ろしいもので容認できない、本当に痛ましい事件」と記者会見で述べ、「ニューヨークへの銃の流入を阻止するためには議会が行動する必要がある」と銃規制の必要性を訴えた。3000万ドル(約32億4千万ドル)の予算を投じて観光キャンペーンを開始した矢先の出来事で、市長はタイムススクエアに配備する警官を増やすとしている。

(写真)事件のあった7番街45丁目付近

反ワクチン派接種反対集会

 ニューヨーク市民の44%が少なくとも1回の新型コロナウイルスのワクチンを接種し、32%が2回の接種を完了している。デブラシオ・ニューヨーク市長が7月1日までに市民に500万回の接種完了を達成する目標に立ちはだかる問題は、ワクチン接種に対して否定的な考えを持つ人たちにいかに接種を促していけるかだ。

 人種別では31%のニューヨーク在住の白人が接種しているのに対し、黒人は17%、ラテン系は19%となっている。地域別でも格差があり、ブルックリンのファーロッカウエー地区での住民接種率は25%にとどまっている。

 市内では、4月23日から市の接種会場では予約なしのウォークインで接種できるようになったが、それ以前は、オンラインでの予約がネックとなり予約をためらう層が相当数いたと見られる。また、予約が取れても、地下鉄が動いていない午前3時にジェイコブ・ジャビッツ・コンンベンションセンターに来るようになどと接種を提供する側の都合で時間が強引に指定されたことも接種初動段階での取り残し組を生んだ。また郊外在住者では、仕事の都合や交通手段などに構わず、公共交通機関では行けない軍の施設などの場所での接種場所を指定するケースも接種の初期段階では多くの人々を断念させた。

 そしてワクチン接種そのものに否定的なアンチワクチン層の多くがワクチンの安全性に警戒感を持っている。4月30日現在ワクチン接種者のうち15万7277人が強い副反応があり、3837人が死亡、2万1623人が緊急治療を余儀なくされた。10日、タイムズスクエアではアンチワクチン運動団体の主催によるデモンストレーションが行われた。イベントを主催した「セイ・ノー・トゥ・キルショット」の配布資料には、1986年に全米小児ワクチン障害法が制定されたことで大手製薬会社はワクチンによる障害の責任を免れたことが契機となり、当時被害者だった子供たちの親が積極的な現代のワクチン否定派を形成していると書かれている。

鈴木ファームを買収

フーズ・スタイルUSA

米国で唯一日本野菜を販売

 アメリカで「らーめん山頭火」をフランチャイズ展開するフーズ・スタイル ・USA・インク(本社:ワシントン州ベルビュー、代表取締役社長:米田純)は、鈴木ファームLLC(本社:デラウエア州デルマー)から農業事業を譲り受けることで合意し契約を締結したと発表した。

 フーズ・スタイルは、アメリカ東海岸で唯一の日本野菜農業を30年以上経営する鈴木ファームの事業譲渡を受けることにより、確かな日本式農業技術に裏打ちされた新鮮で美味しく、安心な体に優しい日本野菜を生産し、既存レストランビジネスとのシナジー効果の発揮を目指す。また、動画による和食レシピや生産現場の紹介などと連動した販売も実施し、家庭で楽しめる日本料理と日本野菜の魅力を伝えて行く。さらに将来的には、農業技術においてもAIを活用した最新技術の導入も目指すという。前オーナーの鈴木氏は、引き続き一緒に運営に携わっていくとのこと。

空き店舗を利用したアート展示

アーティスト

小林園実さん

 NY在住アーティストたちの作品を展示するパブリックアート「アート・オン・アベニュー」が、7月8日(木)までウエストビレッジで開催されている。公募で選ばれた地元のアーティスト31人の作品を、コロナ禍により閉店した空き店舗やパンデミック後も頑張って営業を続けている店のウインドーに飾り、ローカルビジネスとアーティストをサポートする企画。日本人では、小林園実さん、遠藤良子さんが公募に入選し参加している。同企画の公式サイト(https://www.artontheavenyc.com/)上の地図を見ながら作品を巡るギャラリーウォークでは、各作品が展示されているウィンドーにアーティスト名や作品名のほか、QRコードをスキャンするとアーティストの声で作品の説明を聞くことができる。

 今回の企画に応募して採用された作品は、Infinity Bubbles「永遠の泡沫(うたかた)」と言うタイトルで、去年のロックダウン中に描き始めたシリーズ。小林さんは、「ロックダウン中は誰にも会うことなく、朝起きて、ヨガをして、ご飯を食べ、絵を描くという生活を繰り返していましたが、毎日違う生活であり、しかし世の中は、大きな変化を強いられていると感じた。その時の気持ちを、抽象的な泡を描くことで、時々刻々と形を変え、同じ様に見えるが全く新しい泡が現れては消え現れては消えるという、私の毎日の生活を表現した」と話す。

 小林さんは埼玉県出身。現在はニューヨークでアーティストとして活動する傍ら、美術講師としてニューヨーク市公園局の施設や公園などでアートのクラスやワークショップを行っている。2019年には小林さんの社会貢献が認められ、市長より感謝状( Mayoral Certificate of Recognition)が授与された。日米やヨーロッパでの展覧会のほか、現在活動の拠点としているニューヨークでは、クイーンズにあるモマPS1や紀伊國屋書店のアートブックフェアに参加。今年秋には、三重県の亀山トリエンナーレへの参加や京都での展覧会も予定している。また、5月末までは毎週火曜日にNY市公園局のプログラムで、マンハッタンの公園にて無料の水彩画ワークショップ(https://www.nycgovparks.org/events/arts-and-crafts)の講師も務めるなど、経済が動き始めつつあるニューヨークでアーティストとしての活動も順調な再スタートを切っている。

(高田由起子、写真は本人提供)

意外なほめ言葉

ニューヨークの魔法 ⑰
岡田光世

 I love your coat.

 あなたのコート、すてきね。

 I love your bag.

 そのバッグ、いいわね。

 見知らぬ人に、服装や身につけている物をほめられることは、ニューヨークではよくある。

 ある日、美しい女の人とエレベーターで乗り合わせた。ほかに誰もいなかった。インド系だろうか。特有の輝く大きな瞳に、きりりとした口元が印象的だった。胸を張り、背筋をぴんと伸ばして立っていた。

 どちらからともなく、笑みを交わした。その人は私を見つめていたかと思うと、突然、こう言った。

 I love your eyes.

 あなたの目、とてもすてきね。

 耳を疑った。私が自分の顔で何よりも好きになれないのは、このひと重の目だった。

 日本では子どもの頃、笑うと目がなくなる、とからかわれた。手でまぶたを持ち上げてふた重を作り、セロテープを貼って押さえ、このまま取れませんように、と何度、祈ったことか。

 二十年ほど前、チャイナタウンの写真館でポートレートを撮ったとき、一生懸命に目を大きく開けていたのに、ほら、ちゃんと目を開けて、と何度も言われ、悲しくなりながらも吹き出してしまった。目の大きなアメリカ人に言われるならともかく、その中国人カメラマンの目だって、私とそんなに変わらないのに・・・・・・。

 目の前の女の人は、誰が見ても魅力的な大きな瞳の持ち主だ。

 アメリカ人のほめ言葉には素直にお礼を言う私も、このときばかりは、ノー! と強い口調で否定し、恥ずかしくて顔を伏せた。

 イエス!

 女の人は私に負けない強い口調で、毅然として言い返した。

 とても深い、知的な目だわ。

 その顔があまりに真剣だったから、ありがとう、という言葉が自然に出た。

 部屋に戻ると、そのままバスルームに向かった。

 鏡の前に立った。

 さっきの女の人の言葉を思い出し、ほほ笑んだ自分の目を見て、私もふとそんな気持ちになった。

 I like my eyes. Thank you.

 私の目も、捨てたものではないかも。ありがとう。                          

このエッセイは、文春文庫「ニューヨークの魔法」シリーズ第3弾『ニューヨークの魔法のことば』に収録されています。

https://books.bunshun.jp/list/search-g?q=岡田光世