いい男ジュード・ロウ

 ジュード・ロウは身長こそイマイチだが、まず全世界の俳優内ではピカイチのハンサムに違いない。彼の強みは「生まれつきだから、別にどうでも良い」という態度で、全く意識していないところだろう。カメラを向けても、照明だとか、アングルだとか、メークなどに全くこだわらず、あっけらかんとしている。

 最近の彼の仕事ぶりが物凄い。まず、美人女優のブレーク・ライブリーが汚れ役の新米スパイを演じる「リズム・セクション」では彼女を鍛える英国MI-6のベテランスパイ役、これぞ適役と言える見た目は良いが、中身が腐ったペテン投資家を演じる「ネスト」=写真=、謎の島で迷う男のドラマ「ザ・サード・デイ」、デカダンのローマ法王を怪演中の「ザ・ニュー・ポープ」、まもなく公開の「ザ・ ファンタスティック・ビースト第3弾」、フック船長を演じる「ピーター・パン・アンド・ウエンデイー」、そして、ワトソン博士を演じる「シャーロック・ホームズ第3弾」などなど企画も延々と続く。

 現在子供が6人!これも大スターらしからぬ生産力と家長力であるが、子供達と前妻などを養うためのハードワークなのか、それとも家庭からのエスケープ作戦なのかはともかく、映画でテレビで大活躍中なのである。

 ジュード・ロウに初めて会ったのは「ガタカ」GATTACA(1997年)の時。超ド級美男子の彼が車椅子の身障者を演じるとその悲惨さが相乗効果を上げるという効果を計算しての配役だった。

 もちろん「ヘイ・ジュード!」と呼びかけたら、その挨拶には慣れきっているはずだろうが、嬉しそうに笑顔で応えてくれた。

 「JUDE THE OBSCURE」というトーマス・ハーデイーの小説とビートルスの歌の両方から名付けられたそうだが正統派美男がごまんといる英国映画界でもずば抜けての眉目秀麗故に早々とスターになり、ルックスに頼らない演技力も高く評価されている。

 ロンドンの自宅からのジュード48歳の最近のズームインタビューを紹介しよう。

「コロナ禍のために、つい最近生まれた赤ん坊を含めて6人の子供たちとの濃い時間が持てたし、家の中の整理をしたり、古いドアを直したり、かってない程の愛情を庭の手入れに注いでいる。藤棚をすっきり刈り込んだし、盆栽も生き返ったし。この時期、僕はね、人生を振り返って深呼吸をするという至極貴重な時間を過ごしている。

 6人もの子供を持つなんて夢にも思ってなかったが実は僕の両親はふたりとも孤児で非常に寂しい思いをして育っているから、僕はその穴を埋めるためにもロウ一族の子孫繁盛に努力をしているというわけさ。それに、小さい赤ん坊がそばにいると僕自身も若返るという恩恵もあるしね。

 役を選ぶ基準?同じような役は繰り返さない、少しばかり恐くなるような、驚異を感じるような役を選ぶことにしている。非合理で一笑に付してしまうような状況下で逃げ惑う人間てな役に魅力を感じるね。

 それからね、演技って、70パーセントは、相手の話を聴いている時に実力が判明するという事。自分で叫び狂っている時は演技というより、単なる反応だと思うんだ」

 不敵な面構えで淡々と話してくれた。

(なりた・ようこ/ジャーナリスト/カリフォルニア州在住)