粋なリボンベルト

イケメン男子服飾Q&A 85
ケン 青木

 メモリアルデーを過ぎますと「公式」に夏ですね。今はオフィスに出て来られる方はまだ少ない状況の様ですが、徐々に元に戻していくといった御話を大手企業の皆様から耳にしておりますので、遠からずニューヨークの街も以前の活気を取り戻していくのでは、と。ちょっとオプティミスティック過ぎますかね? 僕は9・11を目の前で体験しまして、あの時、大変な状況でしたが、ニューヨーカーの団結力は人種の壁を軽く越えとても素晴らしかったと記憶しているのです。

 この四半世紀余、ずっと続いてきた夏場のオフィスウエアのカジュアル化ですが、オフィス内ではシャツ姿であっても、通勤時にはやはりジャケットを羽織られたり、もしくはオフィスのロッカーに紺などダークカラーのジャケットを用意されておかれるのが何かという時に安心ですね。

 私がニューヨークに赴任しました1990年頃は今よりもずっとオフィスのドレスコードは厳しかったのでした。会社の中堅幹部以上の方々の多くは兵役経験者が多かったですし…(別の機会に触れますが、スーツ、背広のオリジンは軍服なのです)。ただその様な時代でも当時「フライデーカジュアル」と呼ばれておりました、金曜日だけのビジネスカジュアルの装いはありました。

 「フライデー」の典型的な装いとは、ネクタイをせずにボタンダウンのシャツを着て、上着は紺色の夏向けの生地のブレイザーを羽織り、そして綿とポリエステルを混紡したポプリン(POPLIN)と呼ばれます平織り、薄手の生地、そしてここが大きなポイントなのですが、パーマネント・プレスと呼ばれる折り目加工が施されたパンツを合わせて、つまりパンツのプリースが消えない。足元の仕上げは茶色のローファー、もしくはタッセルなどスリップオン、というスタイル。

 こうしたカジュアルドレスの装いのポイントを言葉で表現するならば、at easeながらもneatとかcrisp、すなわち小綺麗、こざっぱりという感じでしょうか。紺の上着、グレーのスラックスで何も問題なく、全てのシーンにてOKですが、昔からの伝統、何度か触れましたが、メモリアルデーからレイバーデイまでの期間がニューヨークのサマードレスのシーズン。目立って恥ずかしいという方もおありかと思いますが、ベージュやオフホワイト、サックス、ブルーなど明るい色、素材は綿や麻を取り入れられるのもまたお薦めです。

 そして最後になりますがnot at least、 夏に上着を脱いでいたり、シャツ姿の際に最も目立つのが実はベルトなのですね。

 私といたしましては、夏場のビジネスカジュアルのシーズンが始まる前にベルトを数本購入されておくことをお薦めいたします。上着を着用していても、ネクタイをしていない場合、上着を着ていない場合はなおのこと、ベルトの革がくたびれていたり、穴が広がっていたりするのはことの他悪目立ちするものなのです。女性のチェックポイントでもあるそうです。厳しいですね(苦笑)。

 こうした時期に個人的にお薦めなのがSurcingle Belt、日本ではリボンベルトなどと呼ばれております革と厚手のウールのツイル地を組み合わせたスポーティなベルトなのです。写真のように2色のストライプが多く、せっかくですから、例えば紺×赤のストライプでしたら、靴下を赤にするとか、やはりこの様なところで組み合わせのキーとなる色を拾ってあげますと、カジュアルなムードの中にある種の「まとまり感」と言いますか、良い意味で装いに気配りされているという印象になります。

 それではまた次回。

 けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス・カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。