【今週の紙面の主なニュース】(2022年9月17日号)

(1) 英女王陛下崩御 米国の報道と論調

(2)ジャガーの行進 NY市内に彫刻40頭

(3)ミュージカル上海ソナタ CivilizASIAN Foundation

(4)新会長に加納さん 米国日本人医師会

(5)秋は家族でキャンプへ フロストバレーYMCAが募集

(6)JFKターミナル1  大幅改修工事へ

(7)ジミー赤川が個展 定点観測ビデオ撮影

(8)同時多発テロから21年 育英学園児童が黙とう

(9)熊本翔士が再び出場 アポロ劇場アマチュアナイト

(10)在米邦人に日本語で診療続ける  加納麻紀さん

英女王陛下崩御

2日前まで公務

激動の時代生きた安定の象徴

 エリザベス女王が9月8日に96歳で死去した。イギリス王室が亡くなったと発表した8日午後1時30分(米国東部時間)、米国のメディアも一斉に速報した。この日の午前、女王が医療管理下に置かれ、長男のチャールズ皇太子とカミラ夫人、孫のウィリアム王子らが静養先のスコットランドのバルモラル城に向かったと報道され、容態はかなり悪いとの憶測がソーシャルメディアでは飛び交った。

 6日に行われたリズ・トラス首相の任命式では杖をつきながらも元気な姿を見せていたため、突然の訃報に驚いた米国民は多かったと思われる。死去を受け米メディアのトップニュースは女王追悼が占めた。CNNは「世界的な激動と国内のスキャンダルを切り抜け、英王室を劇的に近代化させた」とした。歴代最長の70年在位に言及する記事が多く、ニューヨークタイムズは「価値観が変化する世界で、王室を永遠のとりでとして、その存続を支えてきた神秘性を維持しようと努めた」とし、ウォールストリート・ジャーナルは「目まぐるしく変化する世界における安定の象徴だった」と報じた。

 FOXニュースは、ウィリアム王子は最期を看取ることができたと速報したが、後に間に合わなかったことが分かった。また妻キャサリン妃は同行しなかった。子供の新学期初日とぶつかったためと見られるという。偶然帰国中だったヘンリー王子は急きょ予定を変更してバルモラル城に向かったものの間に合わなかった。キャサリン妃同様、メーガン妃も同行しなかったという。

 死去が伝えられた約3時間半前に英BBCのキャスター、ヤルダ・ハキム特派員が、女王が死去したことをツイッターに投稿したが間違いだったとして削除・謝罪するという騒ぎもあった。これについてニューヨークポスト(電子版)がすぐさま反応、女王の訃報が発表される前に「BBC特派員が女王死亡を誤報」と報じた。エリザベス女王の死去により長男のチャールズ皇太子がチャールズ3世として国王に即位した。イギリス王室は11日、エリザベス女王の国葬は19日に行うと発表、バイデン米大統領はじめ各国の要人の参列が見込まれている。日本の岸田首相は参列の意向。天皇陛下も参列する方向で宮内庁は調整を進めている。

NYでも市民が追悼

岸田首相がお悔やみの言葉発表

 エリザベス女王崩御のニュースは世界を駆け巡り、ニューヨークの東47丁目にあるNY英国総領事館前にも花を手向ける人や祈る姿の市民が見られ、マンハッタンの画廊などでは、女王陛下をモチーフにした作品などが店頭にディスプレイされた=写真上、NY英国総領事館前で花を手向ける市民(9日午後2時、本紙撮影=

 岸田首相は、外務省を通じて9日エリザベス二世女王陛下の崩御に関する岸田内閣総理大臣のお悔やみの言葉を発表した。次の通り。

 「英国エリザベス二世女王陛下の崩御の報に接し、日本国政府及び日本国民を代表して、英国王室、英国政府及び英国民の皆様に対し、心から哀悼の意を表します。エリザベス二世女王陛下は、1952年の御即位以降、英国王室史上最長となる70年にわたり在位され、世界の平和と繁栄のために極めて大きな役割を果たされてきました。日英関係は、皇室・王室の伝統的な友好関係に支えられて発展してきましたが、エリザベス二世女王陛下は、昭和50年に自ら御訪日されるなど、特に日英関係の強化に大いに貢献されました。激動の世界情勢において英国を導いたエリザベス二世女王陛下の崩御は、英国民のみならず国際社会にとっての大きな損失です。英国民の皆様が、この深い悲しみを乗り越えるに当たり、日本は常に英国と共にあります」(原文まま)。

豹の行進

マンハッタンに40頭を展示

 マンハッタンに美しく彩られたさまざまな等身大のジャガー(アメリカ豹)の彫刻が40体、市内各所に野外アートとして10月5日まで展示されている。「ジャガーの行進NYC2022」と名付けられたこの展示は、世界中のアーティストによって描かれた独自のポーズと独自のデザインで表現されている。作品は国連本部、セントラルパーク動物園、タイムズスクエアやグランドセントラル駅に隣接して建つメットライフビルのロビーや出入り口の正面に置かれている。

(写真)展示されている色とりどりのジャガー(メットライフビルで、写真・三浦良一)

 このイベントの目的は、ジャガーとその生息地を支援するための運動の一環で、イベントの最後にはアートオークションにかけられて競売され、純益の100%がジャガーの保護活動に寄付される。

 主催者は「ジャガーは現在、メキシコからアルゼンチンまで、中南米18か国に広い地域で生息しているが、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストでは、ジャガーは準絶滅危惧種に指定されている。この動物を助けることは、熱帯林や湿地帯などの環境を保全することでもある」と説明している。

「上海ソナタ」を支援

新作ミュージカル公演に向けて準備

CivilizASIAN Foundation
芸術を通してアジアの文化交流

 芸術文化交流を目的設立されたアジア系市民団体、シビリズアジアン・ファンデーション(CivilizASIAN Foundation、エマ・リウ会長)は10日、第二次世界大戦中ナチスの迫害から逃れた2万人のユダヤ人難民を受け入れた中国上海の人々との音楽を通じた交流を描いた新作ミュージカル「上海ソナタ」のお披露目のレセプションをプラザホテル最上階のペントハウスで開催した。同ペントハウスに住むリウ会長の自宅には、作品の脚本家や音楽家、ジャーナリスト、アジア系社会のセレブリティーが集まり、10月からのトライアル公演に向けての旗揚げを祝った。ニューヨークの日系社会からは、弁護士のゲイリー森脇元日系人会会長や大手不動産会社の関係者などが参加した。

ナチスから逃れたユダヤ人音楽家たちと中国で音楽を通じた友情が芽生える

 新作ミュージカル「上海ソナタ」は実話に基づき、避難民の中に200人近くいたとされる音楽家と中国市民との友情と交流を描いた作品。日本の杉原千畝が外交官として渡航ビザを発行した東洋のシンドラーの美談は有名だが、市民交流と友情に光を当てたドラマは、ユダヤ系難民の子孫が多いニューヨークでも話題となりそうだ。

 当日は日本の伝統文化工芸の木彫や鉄瓶など日本の匠の技が映像で紹介された。

 リウ会長は「今日は、大勢の支援者に集まってもらえて大変嬉しい。一人一人の立場は違ってもアートを愛する力でよりよい世界を作っていくことが我々の目的だ」と話した。ゲイリー森脇氏は「アジアの人々がこうして一緒に交流することは大切で、これがニューヨークの活力の原動力だ。日本人・日系人はアメリカ社会の中で他のアジア諸国と比べて顔が見えないと言われるので、もっとビジブル(可視化)していく必要がある」と語った。(三浦)

(写真上)From left, Sean Gao, Fanghua Jiang, Robin Mui, Emma Liu, Willa Ao, Gary Moriwaki, Photo by Ryoichi Miura

定点観測ビデオ、ジミー赤川が個展

 ジミー赤川は、1999年にニューヨークに来て以来、柴田雄一郎という芸術家のアシスタントをしながら、自身は映像(ビデオ)を通じて、表現活動を続けている。

 マンハッタンの定点観測を2003年から続けていて、10月8日(土)、9日(日)の両日、自身初のビデオ展覧会をブルックリンのミカ(テムズ通り25番地、電話347・916・1051)で開催する。

 「もうすぐ20年になりますが、街を歩く人々や乗り物の変化も追いながら人生や時間、命のことを考えさせられます。ビルの壁に絵を発注するのは広告主によりますが、だいたいは2か月から3か月くらいで壁が塗り替えられます」と話す。

 マンハッタンの街中の同じ場所から同じ角度でビデオを撮影する。歩いて通りすぎる人の姿は、時代が進むに連れて、スマホを見ながら歩く人が増えたり、走り去る自動車のスタイルがどんどんと変化していく。ビルの壁面に描かれる広告もまた時代を映す鏡であることを教えてくれる。(三)

秋は家族でキャンプへ行こう

大自然の紅葉を満喫

ロッジに宿泊なので安心
フロストバレーYMCAが参加者募集

 キャンプというと、自炊にテントのイメージがあるが、フロストバレーYMCAではキャンプ初心者や小さな子供がいる家族でも安心して参加できる週末ファミリーキャンプを用意している。場所はNYCから北西に車で約3時間、キャッツキル自然保護地区内にある。質素ながら、電気もあり、バンクベッドにシャワー、トイレが付いたロッジに宿泊する。食事はダイニングホールでビュッフェスタイルで用意されるので、気軽に食べることが可能。さらに、大自然の中でたくさんのアクティビティーが楽しめる。秋はアップルサイダー作りや紅葉の中のハイキングなど、季節ならではのプログラムも予定されている。電子機器から離れ、家族や友人とのんびり過ごしてみるのも良い経験になるのではないだろうか。

 日本人スタッフのサポート有り。開催日は10月14日(金)〜16日(日)/10月21日(金)〜23日(日)詳細はウェブサイト(www.ymcatfv.org) 、Eメールtokyo-info@frostvalley.org(東京ーフロストバレーYMCAパートナーシップ)まで(日本語)。

JFK改修工事、ターミナル1

 キャシー・ホウクルNY知事は8日、ジョン・F・ケネディ国際空港の第1ターミナルを約100億ドルで改修する工事を開始したと発表した。95億ドルの改修工事により、空港の南側に240万平方フィートの新しい施設が建設され、独立したターミナルとしては全米最大となるという。着工式で知事は同空港ターミナルについて「この都市と州にふさわしいものだ。プロジェクトはニューヨークという名前だけでなく、ジョン・F・ケネディ大統領の名前にもふさわしいものになる」と述べた。

 首都圏の3空港を管轄するニューヨーク・ニュージャージー港湾局によると、新施設は2030年までに完成し、23の新しいゲートを設置、そのうち最初の14ゲートは2026年にオープンする予定だという。新しいゲートは、現在の第1ターミナル、60年の歴史を持つ第2ターミナル、そして2014年に取り壊された旧第3ターミナルの跡地に作られる。同プロジェクトには、屋内緑地、飲食店やショップ、ラウンジ、家族向けの設備も含まれる。ターミナルの費用は、ロンドンのヒースロー空港など英国内の4空港を運営するスペインの運輸会社フェロヴィアルを中心とする民間企業連合が負担する予定。港湾局は同プロジェクトの一環として、周辺の道路や駐車場、変電所の新設を行うとしている。

育英児童が黙とう

同時多発テロから21年

 ニューヨーク育英学園では「セプテンバー・イレブン」の特別集会を持った。21年前の世界貿易センターでの悲劇が二度と起きないようにとの思いから全日制小学部では黙とうを行った。岡本徹学園長より当日の様子や2週間もの間、プラスチックの燃えた臭いがハドソン川を通って漂い続けた話を子ども達は神妙に聞き入っていた。教職員と児童一同は多くの被災者の方々のために一分間の黙祷を行い平和な世界を望んだ。同学園各サタデースクールでも同様の特別集会を持ち、平和の大切さを確かめ合った。

熊本翔士が再び出場

アポロ劇場アマチュアナイト、21日夜

 2019年のアポロ劇場アマチュアナイト1回戦で準優勝したニューヨーク在住の日本人歌手、熊本翔士が、今月21日(水)再び、アポロ劇場のアマチュアナイトのステージに立つ。熊本は2010年に来米し、歌手活動を開始。米最大級のゴスペル大会2万人の応募者から選出された4人のソロファイナリストの1人。オフブロードウエー、ブルックリン地区の子ども劇やTV番組に出演もしている。先日10日のNYファッションウィークでも歌声を披露した。当日はシンガーとしてコンペにて歌唱披露する。

 ショーの開始は午後7時30分。子供部門の後に大人部門がスタートする。ショーの最後に観客の声援で点数、順位が決まるので、最後の採点まで残って熊本のために叫ぼう。アポロ劇場(西125丁目253番地、地下鉄ABCD駅から東に徒歩3分)入場料は48ドル。詳細はウエブサイトhttps://www.apollotheater.org/

新会長に加納さん

米国日本人医師会

50周年晩さん会開く

 米国日本人医師会(JMSA)の創立50周年記念晩餐会が9日夜、ニューヨーク・アスレチック・クラブで開催された。同会は、米国在住の日本人医師及び医療関係者を中心として1974年に創設された。2期4年を務めたロバート柳沢会長は、コロナ感染パンデミックで米国内最悪の感染地域となったニューヨークにおける医療活動でリーダーシップを発揮した。

 柳沢会長の後任として、加納麻紀医師が新会長に就任した。加納会長は、マウント・サイナイ病院、東京海上記念診療所ハーツデール診療所で25年以上にわたりニューヨークを中心とする在米邦人に対して日本語による医療を提供し続けている米国小児科学会および米国内科学会の認定医=19面ウーマン欄に記事=。

(写真上)米国日本人医師会会長の就任スピーチをする加納さん

 式典でニューヨーク総領事の森美樹夫大使が、邦人医療を支え地域社会に貢献してきた同会の50年の活動に対して心からの感謝の言葉を添え祝辞を述べた。また長年にわたり同医師会に多大な支援をしている北米伊藤園の本庄洋介社長、柳沢前会長、ジーン古山元会長に感謝の盾がJMSAから贈られた=写真上=。

 同医師会は、将来医学の道で社会貢献する医学生たちに奨学金を授与して支援しているほか、アウトリーチ・プログラムにより、地元の日系医療関連NPOと支援意欲を持つ企業や個人をとつなぐ活動をしている。東日本大震災直後には医師たちが被災地に行き人的支援を行うなどの社会貢献活動もしている。当日は日系医療従事者、研究者、留学生ら185人が出席した。エンターテインメントとしてジャズピアニストの宮嶋みぎわとゴールデンミラクルズがジャズを演奏して参加者を楽しませた。

JMSA奨学金受賞者

米大学で学ぶ医学生を支援

■本庄JMSA奨学金=▽シャーロット・リー=日本での研修生のための米国レジデンシー申請プロセスのコツと留意点。(コロンビア・ニューヨーク・プレスビテリアン病院循環器科フェロー)、▽藤野えりな = ソーシャルメディアを利用した JMSAとそのミッションの広報活動(ノースカロライナ大学医学部医学生)、▽鈴木幸雄=在米日本人がん患者の支援と、在米日本人コミュニティーのがん予防啓発活動の推進。米国における日本人コミュニティーのためのがん予防啓発活動(コロンビア大学産科婦人科学教室婦人科腫瘍学部門ポストドクトラルリサーチフェロー)。

■村瀬紘郎MD-JMSAスカラシップ=▽ニコラス・ラブ =皮膚科領域における日本語表記の歴史を調査し、日本人の皮膚病理学を系統的に検討する。(カリフォルニア大学デービス校レジデント)。

■米国三井物産JMSA奨学金=▽宮下浩孝=医療ブログとソーシャルネットワークサービスを通じた現役フェローの経験談の共有により日本では普及していない専門分野とそのトレーニングへの理解を深めるためのサービス(マウントサイナイ・ベスイスラエル・アイカーン医科大学研修医)、▽木村あつみ=COVID-19パンデミックにおける日本人と日系アメリカ人が反アジアの感情を共有し、議論するためのバーチャルミーティングシリーズを立ち上げる。(アルバート・アインシュタイン医科大学医学生)、

▽岸田みずえ =小児蘇生トレーニングにおけるオンサイトとオフサイトのハイブリッド遠隔シミュレーションの有効性、医学生を対象とした小児蘇生訓練におけるハイブリッド遠隔シミュレーションの有効性(フィラデルフィア小児病院 シミュレーションフェロー)▽木村れをな = 日系アメリカ人の高血圧管理に関する教育および血圧検査イベントの開催と血圧測定イベントの開催(ストーニーブルック大学ルネッサンス医科大学3年次と4年次の間の研究学年)。

■日本生命JMSAスカラシップ=▽大嶽浩司=遠隔医療を利用した医療情報共有のためのグローバルプラットフォーム開発(スタンフォード大学医学部臨床情報管理学修士課程在学中)、

▽ 宇仁暢大= がんやその予防に関する正しい知識を共有するためのワークショップの開催(メモリアル・スローン・ケタリング癌センターにて博士研究員として勤務)

■西岡JMSA 奨学金=▽永吉詠舞=日本人および日系アメリカ人の高校生を対象とした医療分野でのアウトリーチのプレゼンテーション/オリエンテーション(ウィスコンシン医科大学医学生)、▽藤村紗奈=患者および病院従業員に対する音楽療法プログラムの実施(アルバート・アインシュタイン医科大学医学生)、▽ウチヤ志織=医療分野に関心を持つ日本人・日系人学生への働きかけと指導を続ける。医療専門職を志す日米の学生への働きかけと指導の継続(フィラデルフィア・オステオパシー医科大学医学生)、

■レイモンド・セキグチ MD-JMSA 奨学金=▽クリス池田 – アメリカの医師と患者のためにオステオパシー・マニピュレーティブ・メディスンの価値を広める(NYITカレッジ・オステオパシー・マニピュレーティブ・メディスン医学生)。     (敬称略)

(関連記事)在米邦人に日本語で診療を続ける

在米邦人に日本語で診療を続ける

第14代米国日本人医師会会長になった

加納 麻紀さん

 このほど米国日本人医師会(JMSA)の第14代会長に就任した。神奈川県鎌倉市生まれ。3歳で両親とともに来米し、ニューヨーク州ウエストチェスターのスカースデール、チャパクァで育つ。コーネル大学、マウントサイナイ医科大学卒業後、同大学とNYUメディカルセンター共同の定員4名の超難関プログラム、内科・小児科専門医養成・研修プログラムを修了。内科及び小児科両部門の専門医資格を有する医師は全米でも極めて少数だ。医大時代に米国日本人医師会から自身も2度にわたり奨学金を受けた経験がある。

 前職まで同医師会の副会長兼、2007年に創設の「日系コミュ二ティ支援委員会」(JCOP) 委員長を15年間務めるなど、米国日本人医師会の中核的リーダーとして活躍してきた。二児の母でもあり、2003年最初の出産後、日本語での子育てサークルの必要性を感じて同年9月、非営利の育児支援サポートグループ「NYすくすく会」を創設。月1回のセミナーでは、NY周辺在住の妊婦や母親を対象に、医療、母乳、しつけなど、さまざまな出産、子育てのトピックを取り上げている。

 現在、東京海上記念診療所のハーツデール診療所で内科と小児科の両部門で診療を行っている。加納さんは25年以上にわたり米国人だけではなくニューヨークを中心とする日系企業の駐在員・家族・旅行者・永住者に向けて日本語による医療を提供し続けている。その気さくな人柄と優しい心遣いが多くの在米邦人の心と身体を支えている。2013年からは慶応義塾ニューヨーク学院 (高等部) のスクールドクター (校医)も兼務している。

 加納さんのJMSAの最初の記憶は、1993年に奨学生として年次晩餐会に出席した時のことだ。「当時医学部の2年生だった私は、おずおずとエセックスハウスのボールルームに入ると、興奮と緊張、そして感謝を同時に感じながら、ボールルームを見渡したのを覚えています。華やかな集まりの中で、自分は部外者のように感じ、JMSA奨学金を授与されたことをとても嬉しく思いました」と振り返える。

 安西弦博士が理事長をしていた頃、ある理事会で新入会員を増やすにはどうしたらいいかという話になった。「ワインとチーズの会」を開いてはどうかという加納さんんの提案に、安西氏は快く応じてくれた。「ワインとチーズは、JMSAの主要な目的の一つである、人と人がつながり、一緒になるための最良の方法であることは誰もが知っているので、このワイン&チーズ・パーティーを再開したいですね」と笑顔を見せた。就任スピーチの最後に、奨学金を受ける学生たちに「私は学生や新しい世代の会員に、JMSAが皆さんの斬新なアイデアを尊重し、実行する意志とエネルギーがあればサポートする組織であることを強調したいと思います」と話した。30年近く前に緊張した面持ちでそこに座っている自分にまるで話しかけているようだった。(三浦良一記者、写真は本人提供)

(関連記事)新会長に加納さん

編集後記 2022年9月10日号

みなさん、こんにちは。ニューヨーク市の治安悪化に伴い、市はヘルズキッチンの一部を含むタイムズスクエアの公共施設や商業地区での銃の持ち込みを禁止する措置を8月31日に発表しました。同地域は、昨年11月に来米した秋篠宮家の長女で元皇族の眞子さんと小室圭さん夫妻が住むアパートに隣接しているエリア。治安悪化の中で、もし眞子さん夫妻が事件や事故に巻き込まれたらどうなるのでしょうか。皇室を離れ、一般人となった身分のため、表立った要人警護はなされていないとされますが、実態はどうなのでしょうか、誰に聞いても分からず、一切明らかにはされていません。そんな中で、ニューヨークで発足した自警防犯組織ガーディアン・エンジェルスがウエストサイドやヘルズキッチンの巡回パトロールを強化するとこのほど発表しました。同組織の日本代表で、30年前にNYで隊長を務めた小田啓二さん(50)が、同組織のトップであるカーティス・スリワ代表に治安悪化地区のほぼ中心部に日本の元プリンセスが住んでいると伝えたところ、アパート近辺をパトロール地区に含めることを決めて5日、小田さんの案内で一帯を視察しました(本紙今週号1面に記事)。NY市の防犯NPOが、眞子さんの自宅周辺の巡回パトロールを関係者として公言するのは初めて。現在隊員は200人。担当班は眞子さんの顔写真のコピーを持ちパトロールするそうです。ニューヨークでは、誰もが知らないふりをする眞子さん夫妻の話題。見るにみかねての登場でしょうか。小田さんは「事件が起こってからでは取り返しがつかない。我々は自主的に活動する米国のボランティア組織で日本の税金を使うわけではないのでどこからも文句は来ないでしょう。所轄の警察とも関係は良好です」と話していました。眞子さん夫婦が「週刊NY生活」を読んでいるとは思えませんが、知れば少しは安心でしょうか。なんだか心強い話ですね。小田さんとガーディアン・エンジェルス頑張れ。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)