挾間美帆NY

グラミー賞にノミネート

オーケストラ公演

 グラミー賞にノミネートされた日本人ジャズ作曲家の挾間美帆が、自身の率いるオーケストラ公演を25日(火)と26日(水)の二日間、午後7時30分と9時30分の4回、ジャズ・スタンダード(東27丁目116番地)で開催する。
 狭間は、ビッグバンドm_unitの最新アルバム「Dancer in Nowhere」が今回の第62回グラミー賞の最優秀ラージジャズアンサンブルアルバム部門にノミネートされた。狭間は国立音楽大学およびマンハッタン音楽院卒業。これまでに山下洋輔、東京フィルハーモニー交響楽団などへ作曲作品を提供。また、坂本龍一、鷺巣詩郎、NHK交響楽団、テレビ朝日「題名のない音楽会」などへ多岐にわたり編曲作品を提供している。
 チケットは電話212・576・2232、またはwww.jazzstandard.com/?event=20200225

狂気の世界はカラフルに Birds of Prey

ブラック・マスクに立ち向かうハーレイ(ロビー、中央)と仲間たち
Photo : Claudette Barius/Warner Bros. Pictures

 DCコミックス「スーサイド・スクワッド」の実写映画(2016年)からのスピンオフ作品で主役はハーレイ・クイン。
 ハーレイは元精神科医で患者だったスーパービランのジョーカーと恋に落ちた女性。ジョーカーの影響をたっぷり受け道化師的要素満載のかなり狂ったキャラだ。
 物語はハーレイがジョーカーと破局したことで彼の保護を失い、ゴッサムシティーで生き残るために敵と戦い大いに暴れまくる、という設定。
 ハーレイには「スーサイド・スクワッド」同様、マーゴ・ロビーが前にも増して狂気の女ジョーカーを演じる。もともと企画はロビー自身がワーナー・ブラザーズに持ち掛けたもので自らプロデューサーに名を連ね、監督、脚本、キャストのほとんどが女性というウーマンパワー炸裂の作品。
 ハーレイと姉妹の盃を交わす面々はロージー・ペレス、メアリー・エリザベス・ウインステッド、ジャーニー・スモレット=ベルら。ゴッサム・シティーで名の売れた犯罪組織の親玉ブラック・マスクにはユアン・マクレガー。監督のキャシー・ヤンはコメディ「Dead Pigs」(18年)で注目を浴び本作がハリウッドメジャー・デビューの中国系アメリカ人。
 ジョーカーとブレイクアップしたハーレイは心の傷を抱えながらもこれからは自身で身の安全を守らねばならない。ブラック・マスクに追い詰められ、すんでのところである取引をする。彼からダイヤを盗んだ少女カサンドラを捕まえ引き渡すことだ。しかし、カサンドラと過ごすうちに、心の迷いが生じる。
 並行して男社会の不公平にうんざりしているゴッサムシティー警察の刑事レニー(ペレス)、両親をマフィアに殺され復讐の鬼となったヘレナ( ウィンステッド)らと結束を組むことになり強固なシスターフッドが誕生する。
 衣装もアクションもカラフルそのもので「ジョーカーなんてくそくらえ}とばかりに狂気の全開ぶりが見もの。1時間44分。R。(明)

https://www.birdsofpreymovie.com/


■上映館■
Regal E-Walk Stadium 13 & RPX
247 W. 42nd St.
AMC Empire 25
234 West 42nd St.
AMC Loews 34th Street 14
312 W. 34th St.

スーパーボウル取材52回、タック牧田さん

ランニングバック(ゼッケン26)のダミアン・ウイリアムスが抜ける(2日夜マイアミで、写真・タック牧田)

87歳現役カメラマン

 今年のスーパー・ボウルは2月2日マイアミで行われ、AFC代表のカンサスシティ・チーフスがNFC代表のサンフランシスコ・49ers.に逆転勝ちして覇者となった。グラウンドで撮影を許されているただ一人の日本人カメラマンの姿があった。元関学大選手でシアトル生まれの写真家、タック牧田さん(87)だ。今年で撮影通算52回目。29・5キロの機材を背負っていまなお現役だ。牧田さんから白熱の写真とコメントが送られてきた。

 チーフスは、私が行けなかった第4回以来50年ぶり優勝となった。32チームからなるNFLで優勝するのは至難なのである。
 スーパー・ボウルの起源は、1966年に合併に同意した旧NFLの勝者と、新興の旧AFLの勝者のチャンピオンシップとして始まったのだが、第1回の旧AFL代表は今回優勝のチーフスであった。旧NFL代表のパッカーズに完敗したのを思い出す。両リーグの実力差を体感した私の記憶は古くなった。
 フットボール好きの私は第1回のそのゲームから今年で52度目の取材であったが、第3回で旧AFL代表のNY・ジェッツが旧NFL代表だったボルティモア・コルツを破ったので、無視を続けていたアメリカ中のメディアが取材に殺到したために、カメラでフットボールを写したい願いだけの私は取材から外されたのだ。
 旧AFLでは強かったチーフスは第4回に再び出場して優勝した。つまり、合併により両リーグの実力が平均したのだった。それから数えて50年ぶりの優勝となったのだ。50年は長い。NY・ジェッツも第3回以来一度もスーパー・ボウル出場の機会はないままである。
 今やスーパー・ボウルは世界の大スポーツ・イベントで世界各国から取材陣が来る。日本でもNHKとNTVの2社が実況放映している。        
 ハーフタイムショーはフットボールに関係ない。私は空っぽのフォト・ワークルームで一人、後半まで休んだ。再びフィールドに出ると常連の老人フォトグラファー達が「今年でやめにしようか」などと一騒ぎしていた。でも全員75歳以下だ。87歳の私は黙っていた。(原文まま)

新型コロナウイルス、NYで感染疑い2人

マスク姿が目立つ(NY市内クイーンズ区フラッシングで)

 ニューヨーク市保健局は2日、新たに感染の可能性のある2人が見つかったと発表した。同局は1日にも1人40歳未満の男性がベルビュー病院に入院したと発表したが4日、検査の結果陰性で感染していないことが分かった。2日に発表された2人はともに60代で、フラッシング病院医療センターとニューヨーク・プレスビテリアン病院にそれぞれ入院し、検査結果を待っている。検査対象となった3人とも最近、中国本土を旅行していた。

止まらない感染
石鹸手洗いとマスク

 新型コロナウイルスによる肺炎について世界保健機関(WHO)は1月30日、「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」と宣言。中国の保健当局は4日時点で、中国全土の感染者が2万4324人、死者が490人になったと発表した。中国本土以外の感染者は日本の35人など27の国と地域に及んでおり合計235人となっている。フィリピンでは2日、訪問中の中国人男性(44)が、4日には香港で39歳の男性が新型肺炎で死亡した。中国国外での死者は2人となった。日本や米国など各国は渡航警戒レベルを引き上げ国民の保護に動いている。米国務省はすでに感染の中心地である中国湖北省への「渡航禁止」を勧告していたが、30日には中国全土への「渡航禁止」を勧告した。
 米疾病管理予防センター(CDC)は中国からの直行便や乗り継ぎ便のある全米20の空港で特別検疫所を設置しているが防ぎ切れていない。CDCでは中国湖北省に旅行した人、あるいは感染者と接触した人で、潜伏期間である14日以内に発熱、咳、または呼吸困難が起きている場合はすぐに医療機関で診察を受けるよう強く勧めている。その場合、医療機関に行く前に電話し最近の旅行や症状について伝えることを求めている。病気の間は旅行しない、咳やくしゃみをするときは口や鼻をティッシュまたは袖(手ではなく)で覆う、石鹸と水で少なくとも20秒間手をよく洗うことを推奨している。アルコール手指消毒剤でもよい。花粉症以外の鼻と口全体を覆う通常マスクが有効。

The Karate Kid 宮本亞門演出で ミュージカルに

脚本家のケイメン、作詞作曲のガスパリーニらと打ち合せする宮本(中央)

 宮本亞門の演出で、1984年公開の大ヒット映画「The Karate Kid(邦題:ベストキッド)」のミュージカル化がニューヨークで進んでいる。まだ公演日程やキャストは決まっていないが、今後ブロードウェイ公演実施を目指している。舞台版の脚本は、オリジナルとなる「The Karate Kid」映画シリーズの脚本家であるロバート・マーク・ケイメン、作詞作曲家は若手の人気ソングライター、ドリュー・ガスパリーニが担当する。作品の原作はコロンビア・ピクチャーズによる大ヒット映画「The Karate Kid(邦題:ベストキッド)」、振付はキオネ&マリ・マドリード、舞台美術はデレック・マクレーン、プロデューサーは木下グループ、吉井久美子、マイケル・ウォーク。

吉井久美子氏

 プロデユーサーの吉井は次のように語る。
「『The Karate Kid』の不朽のストーリーを、いかにミュージカルとして舞台でよみがえらせ、新しい息吹を吹き込むかを試行錯誤しながら、クリエイティブ・チームと一丸となって舞台化に取り組んでいる。宮本亞門の演出は、この作品の鍵となるMr. ミヤギのキャラクター作りや空手そのものの精神論など、ミュージカル版『The Karate Kid』を生み出す過程において、重要な役割を担うと思う。『The Karate Kid』映画シリーズのオリジナルライター、ロバート・ケイメン自らによる脚本、新進気鋭のドリュー・ガスパリーニのスコア、独特のスタイルで現在ブロードウエーで注目を集めているキオネ&マリ・マドリードの振付、トニー賞受賞ベテランデザイナー、デレック・マクレーンによる舞台美術など、第一線で活躍するクリエイターとタッグを組み、この作品を作り上げていくことを楽しみにしている」。
 また演出する宮本は「多くの人が現実から逃げるためにブロードウエーのミュージカルを観に行くと思いますが、私がブロードウエーミュージカルを愛しているのは、今を生きるヒントが詰まっているからです。私がカラテキッドをミュージカル化したいと思ったのは、グローバル化の後に、今起こっている「分断の時代」に何が必要なのかを考えたからです。ショーの中にも出て来るように、カラテの本質である「空手に先手なし」は、相手を傷つけ勝利するのが目的ではなく、受け入れて、最良の形で収める事です。 こういった概念を、これまでブロードウエーでは見たことがないような視覚的な方法やムーブメントスタイルを通じて舞台上で表現していく。どうぞ、お楽しみに!」と話している。

ジャパン・ソサエティーで上映 鬼才、実相寺昭雄監督の映画3本

©Courtesy of Arrow Films

デジタル・リマスター版で2日間

 ジャパン・ソサエティー(JS=東47丁目333番地)は15日(土)と22日(土)の2日間、鬼才・実相寺昭雄監督が日本アート・シアター・ギルド(通称:ATG)で手掛けた映画3本を最新のデジタル・リマスター版で上映するイベント「実相寺昭雄〜仏教トリロジー〜」を開催する。
 実相寺監督は1960年代後半に円谷プロのテレビシリーズ「ウルトラマン」の演出や脚本を手掛けた後、勤めていたテレビ局を退社し、斬新で挑戦的に仏教感を追及した3部作『無常』(1970年)、『曼陀羅』(71年)、『哥』(72年)を手掛けた。これらの作品は実相寺監督と脚本家・石堂淑朗がタッグを組み、仏教の解釈を独自に表現するだけでなく、大胆な性描写で反社会的、反論理的でタブーな題材を取り上げている。入場は18歳以上。
 入場料は一般14ドル、シニア・学生11ドル、JS会員10ドル。チケット購入・詳細はウェブサイトwww.japansociety.orgを参照する。 

『無常』15日(土)午後1時、22日(土)午後7時。
 日本的風土の中での近親相姦を通じて、人間の精神の原鉱を探ろうとした意欲作。琵琶湖近くの旧家、日野家の長男は大阪で問屋を経営する父親の意に反して大学へも行かず、ただ仏像の魅力にとりつかれていた。正夫の美しい姉はなぜか父母のすすめる縁談に耳をかそうとしなかった。ある雨の日、広い屋敷に2人だけになった姉弟はふざけているうちに一線を越えてしまい、激しく抱擁し合う。70年、ロカルノ映画祭グランプリ受賞。出演は、田村亮、岡田英次、司美智子、田中三津子、寺田農。

『曼陀羅』15日(土)午後4時、22日(土)午後1時。
 農業とエロティシズムを柱として単純再生産を基本としたユートピア集団の実現を計るモーテルの真木支配人夫婦と、偶然モーテルに泊まっていた新左翼系の男女学生カップル2組が中心となり、恋人交換、暴行、サディズムなど、さまざまな型の性が交差する。大胆な性描写を用いて観念的なテーマを扱い、革命幻想と日本の姿に迫る。出演は、岸田森、田村亮、清水紘治、森秋子、桜井浩子。

『哥』 15日(土)午後7時、22日(土)午後4時。
 丹波篠山に邸宅を構える旧家の三男、実の母親に言われるまま森山家を守るために日々働き続けていた。一方、長男や次男は家を守ることには執着せず、自分たちの代で終わっても良いと考えていた。ある夜、長男の妻が同居している青年と女中の情愛を目撃し、淳を誘惑していく。出演は、篠田三郎、八並映子、桜井浩子、田村亮、岸田森。

日本の学校給食、食育は日本文化

日本の小学校をドキュメンタリー取材したシーン

米人女性が自主映画制作

サンボーンさん

 日本の学校給食(食育)の現場を取材したドキュメンタリー映画「Nourishing Japan」の上映とトーク、試食イベントが1月30日夕、ニューヨーク総領事の山野内勘二大使公邸で開催された。
 映画は福島県鶴岡市と宮城県大槌町を取材、小学校学校給食の現場を紹介したもので、制作した映像作家アレクシス・サンボーンさんが作品について解説した。
 日本では2005年に食育基本法が制定された。その理念は食に関する正しい知識・適切な食習慣を子どものうちから身につけることは、心身の健康を生涯にわたって保つのに欠かせないということだ。
 サンボーンさんは「食育に関わる人たちの思いや行動を通して日本文化をこの作品を通して伝えたかった。地元の農産品を学校給食に使う一から手づくりの日本の給食をそのままアメリカの学校にあてはめるには多くのインフラストラクチャーの壁があるが、支援する人がいれば、日本のすばらしい給食をアメリカの子供たちにも経験させることは可能だと思う」と話す。
 当日は、映画上映のあと、公邸料理人がポテトサラダや海老カツサンド、肉じゃがなど代表的な学校給食メニューを招待客のために作った料理が出された。
 この映画は、フード&ドリンク博物館(ブルックリン、ベイヤード通り62番地/62 Bayard Street/電話718・387・2845)で2月20日(木)午後7時から上映される。入場料25ドル。 (本紙今週号の英語面/19面に関連記事)

マスク売り切れ続出

日本もNYも品薄で値上げ

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日本だけでなく米国でもマスクの品薄、店頭での売り切れ状態が出始めている。日本ではネットで通常価格の4倍にも値段が跳ね上がっている。米国ではもともとマスクをする習慣がないため、店頭にもあまり数を置いていない店が多く、入手が困難になっている。

その8:サクレとプロファン(聖なるものと俗なるもの)

ジャズピアニスト浅井岳史の2019南仏旅日記

 2日間ダラダラと地元民になってビーチ三昧の生活を送っていたが、今日はアジェンダがある。ヴァンス(Vence)という街にあるマティスの教会にいく。ここコート・ダジュールはたくさんのアーティストが住み作品を残したインスピレーションに満ち溢れる場所でもある。数年前に私たちはアンティーブ(Antibes)で1週間を過ごした。そこはスペインのグラナダ出身のピカソが最後に住んでいたことでも有名である。ちょうど戦争が終わり、新しい女性と暗いパリからこの太陽で溢れる街に来てもう一度若者に戻ったように創作活動をした。ほかにも、マルセル・パニョール、ジャン・コクトー、マルク・シャガール、ピエール・オーギュスト・ルノワールがこの美しい風景を描き、世界レベルの作品を世に出した。そう思うとこの美しい景色の功績は大きいなんてものではない。
 アンリ・マティスもここの暮らしから作品を生み出したアーティストのひとりだ。1941年、72歳のマティスはガンになる。彼は「若くて可愛い看護婦」を募集。その広告にMonique Bourgeoisという「若くて可愛い」女性が応募する。どうやら彼女に熱を上げてしまったのか、彼女をモデルに作品を創り始める。その後彼女はVenceの修道院に入り(何か懺悔することがあったのか)シスターとなる。マティスは彼女の修道院の近くに家を買う。その修道院が新しくチャペルを建てると伝えるとマティスがそのデザインに協力することになった。1951年、Chapelle du Rosaire de Vence、通称「Matisse Chapel」ができる。
 チャペルは撮影禁止なので、じっくりと目に焼き付けた。白地に鉛筆書きを思わせるシンプルなラインでまとまっており、そのシンプルさに迫力が漲る。マティスのその女性(失礼)じゃなくて教会への思い入れはすごいものがあったのだろう。彼は人生の最大の作品を創るつもりでいたと言う。チャペルの席に座ってしばし心を休める。
 屋根瓦がコバルト色で、その青がプロヴァンスの陽を強烈に反射して、屋根の上の、それもシンプルなラインの十字架を際立たせる。その構図が素晴らしいので窓から写真を撮っていると近くにいた女性2人組と話が始まった。ここでツアーガイドのビジネスを立ち上げたオーストラリアの女性と、彼女のクライアント兼友達の日本人の女性の2人組であった。昨年秋にメルボルンとシドニーに行った話で盛り上がった。彼女はツアービジネスをしているだけあって、この辺の見どころをまとめて教えてくれた。お互いに住所を交換して別れた。旅の出会いは楽しい! 彼女の名はRosaria、この修道院はRosaire、なんという偶然。
 さて道端に停めた車に戻っていざ出ようとしたら、なんと目の前が先ほどの彼女の車で、予期せぬ再会を楽しんだ。彼女のグループの集合写真を撮ってあげた。なんかみんな楽しそう。
 さて、そこから彼女のお勧めにもある、Venceの街に出かける。車を街の駐車場に入れると昼のマルシェが立っていた。フライにするズッキーニの花、アーティチョーク、珍しいパイ、手作りの食材が芸術的な綺麗さで並んでいた。パン屋でサンドイッチを買って先ほどのパイと一緒に食べる。パン屋から中世の城門が見える。心が踊る。急いで食べて城門に入った瞬間にびっくりした。なんと、ここは数年前に来たことがあったのだ。その時は逆から周ったので分からなかったが、その噴水でお茶をした。綺麗な街なのでもう一度、今度は逆周りで見ることにした。街の中心の古い教会まで行ってみた。途中でビーチ行きの籐籠を買う。私はバッグフェチで、いつもバッグが欲しくなる。ラベンダーの匂い袋を欲しそうに見ていたらお姉さんが1つプレゼントしてくれた。欲しそうな顔をすることは美徳である(笑)。
 先回は気づかなかったが、その教会にはシャガールの壁画がある。同じところに住んだライバル同士、一体どんな関係であったのだろう。「マティスの野郎がチャペルをデザイン? じゃ、俺はノートルダムに壁画を献上だ!」なんて火花を散らしていたのだろうか。
 先ほどの女性、Rosaryからいきなりメールが入る。「さっき教えたTourette’s sur Loupが本当にいいから絶対に行くのよ!」今から行きますと答えて出発した。街の駐車場で、見終わって帰る彼女ご一向とこれから街に入る私たちはばったり出会った!で、再再会を喜ぶ。縁とはこういうことか。この旅はタイミングが全てパーフェクトである。
 彼女の言う通り、崖の上に建つこの中世の石の街は絶景であった。細い石畳を歩き、中世の街と所々に入っている店を楽しんだ。さて、これで昼の部は終わり。アパートに帰ってきちんと自炊。
 フランス語で夜のことをソワールという。夜の集まりをソワレと言う。奥さんが赤いドレス、私はTシャツ(笑)でモナコに出かける。毎回南仏に来るたびにその目抜き通りモンテカルロに来て、カフェ・ド・パリで一杯飲むのが私たちのお決まりである。世界の高級車、カジノ、セレブ、ビジネスマン、お洒落とお金の街である。私は中世の城や教会、ダサイ人たちが大好きである。それと同じくらいにモナコも好きだ。説明はできないけれど、そこにはお金以上の何かがあるような気がしてならないのだ。友人のフランス人の女性チェリストも私の写真をみて、「クラスがあって良いよね!」と賛同してくれる。アラブのプレートの高級車もいる。そう、来週私はエジプトに行く。カイロの街の砂と埃の中で、モンテカルロのこの風景を頻繁に思い出すことになろうとはこの時は思いもしなかった。ただ、優雅な人々を眺めて優雅な気分に浸る素晴らしいソワレであった。(続く)(浅井岳史、ピアニスト&作曲家)
www.takeshiasai.com

フォートリー区もフレッド・コレマツ・デー

古本さんが区庁舎でスピーチ

フレッド・コレマツという名前をご存じだろうか?第二次世界大戦時、日系アメリカ人は敵国のスパイという濡れ衣を着せられほとんどの人が強制収容所に入れられて不当な扱いを受けた。「私はアメリカ人だ。こんな扱いは納得できない。」と日系アメリカ人の人権を主張し、逮捕、投獄された人物がフレッド・コレマツ氏だ。戦後も国の不当性を訴えて戦い続け、アメリカが正式に非を認め大統領が謝罪、収容所に入ったことのある存命者に補償金が支払われるまで、何十年もの日々が過ぎていた。その後もコレマツ氏は、9・11米同時テロ以降、同様の扱いを受けていたイスラム系アメリカ人を擁護するなど、人権擁護活動家としてその一生を捧げた。
 そんなコレマツ氏の偉業をたたえ、カリフォルニア州は2010年、彼の誕生日である1月30日を「フレッド・コレマツの日」と定め、永久に「憲法で保証された州民の自由の重要性を再認識する機会」を作った。東海岸でも、強制収容所経験者の日系人を中心にこの日を認定させようという運動が起き、2017年にNY市が「フレッド・コレマツの日」を認定した。
 その運動の中心人物の一人として活躍したのが、NJ州やNY市で長く不動産業を営む古本武司さん。自身も戦時中に強制収容所で生まれ、ベトナム戦争時には米軍兵として出兵し戦ったという経歴を持ち、退役後に不動産会社を立ち上げた。古本さんは、本業とは別に日系アメリカ人の地位向上や移民の自由と平等のために日々活動を続けている。
そんな古本さんや妻のキャロルさんの地道な努力の結果、このほど、古本不動産の本社があるNJ州フォートリー区が、東海岸では二例目の「フレッド・コレマツの日」を認定。その式典が、1月30日木曜日に同区の区庁舎で行われた。
マーク・ソコリッチ区長は急用で式典を欠席したが、宣言書は古本キャロル夫人が代読。古本さんは、「私は幸いビジネスを興し幸せな日々を過ごさせてもらっているが、『戦時中の日系人への対応が不当だった』と認められる前に辛い思いをしたまま亡くなった方は大勢いる。そんな人たちのためにも、この活動はライフワークにしたい。ニュージャージーではフォートリーの町だけで終わることなく、州議会と州知事にもこれから働きかけて、カリフォルニアのように州全体でフレッド・コレマツの日を制定し、今後、移民の米国人が不当な扱いを受けない社会が作られるよう努力していく」と語っていた。(本紙・久松茂、写真も)

白と黒で描かれる世界

砥上 裕將・著
講談社・刊

 著者は1984年、福岡県生まれの水墨画家。本作で第59回メフィスト賞を受賞し作家デビューした。また、2020年本屋大賞にノミネートされたほか、ブランチBOOK大賞2019を受賞している。日本版アマゾンの東洋・日本画カテゴリにおいてベストセラー1位となっている(2020年1月末時点)。温厚な性格で、お年寄りの趣味と思われがちな水墨画の魅力を、小説を通して広い世代に伝えたいという志をもって本作を書き上げた。
 メフィスト賞は講談社が主催する文学新人賞で、京極夏彦、森博嗣、乾くるみといった破天荒な作家たちを輩出している。受賞作品もなかなかクセのあるものが多く、本作もそうなのかと思いきや、水墨画を題材とした王道の青春芸術小説である。水墨を描くことを通して自身を見つめ直す主人公の姿とそれを見守る周囲の人たちの心遣いに胸を打たれる作品だ。
 また現在、漫画版が週刊少年マガジンで連載されており、コミックス第3巻が今年1月17日に発売された。漫画は「この剣が月を斬る」の堀内厚徳氏が、漫画内の水墨画は本書の著者、砥上裕將が描いており、人気を博している。
 さて、本作の主人公は2年前に両親を交通事故で失い、喪失感のなかにある青山霜介という大学生である。友人に頼まれて行ったアルバイト先の展覧会場で、そうとは知らず水墨画の巨匠・篠田湖山と出会い、話をするうちになぜか気に入られて、その場で内弟子にされてしまう。はじめての水墨画に戸惑いながらも、大学の友人たちやライバル、先輩水墨画家に支えられつつ、次第に水墨画に魅了されていく主人公の心の移ろいが美しく描かれている。
 本作の面白いところはなんと言っても水墨画を題材としているところだ。目で見て感じとって味わう芸術を言葉だけでどう読者に伝えるのか、著者の手腕が試されると思うが読むだけで絵が容易に想像できる文章に感嘆する。
 また、主人公と師匠のやりとりも心に響くものがある。例えば、主人公・青山が初めて師匠・湖山から水墨画の講義を受けた際、湖山のお手本を真似しようとして何度も失敗する。そのうちに、青山は、どうせ失敗するのだからと気楽な気持ちになって絵筆を握り、新しい紙に次々に向かっていることに気付く。そこで湖山から「真っ白い紙を好きなだけ汚していいんだよ。どんなに失敗してもいい。失敗することだって当たり前のように許されたら、おもしろいだろ?」と言われるのだ。
 とりわけ社会人になると失敗することはあんまり喜ばしいことではなく、悪くすれば他者から疎まれ蔑まれることにもなりかねない。だから大人になるほど慎重になり、楽しむことを忘れてしまう。本作を読んでいるとそういった失敗することの楽しさを思い出したり、新しいことに挑戦してみたくなったりしてくるはずだ。(西口あや)