命のビザで日米交流

渕上敦賀市長が来米

 渕上隆信・敦賀市長が世界最大のユダヤ・コミュニティが存在するニューヨークを来訪し、同コミュニティとの関係を強化する目的で12日、ニューヨーク日本総領事公邸で同市にある「人道の港 敦賀ムゼウム」の紹介と感謝の挨拶を行った。

 敦賀港は、明治から昭和初期にかけて、シベリア鉄道を経由して日本とヨーロッパを結ぶ国際港として発展した。1920年代にはロシア革命の動乱によってシベリアで家族を失ったポーランド孤児、1940年代には杉原千畝氏が発給した「命のビザ」で救われたユダヤ難民たちが上陸した歴史がある。当時の建物を復元した資料館「人道の港 敦賀ムゼウム」では、孤児と難民が上陸した歴史、彼らに手を差し伸べた人々、そして敦賀の人たちが迎え入れた様子を後世に伝えている。

 同日はニューヨーク日本総領事館主催により、日本とユダヤ・コミュニティとの交流を促進するため、当地における各種ユダヤ団体の代表やホロコースト・サバイバーを集めたレセプションが開催された。当日は、親や親族がナチスからの迫害を逃れて日本を経由してアメリカに渡ったユダヤ系市民の子孫や関係者60人余りが招待された。

 渕上市長は当時敦賀に上陸した人々に子供たちがりんごを手渡して苦労を労った話、難民が腕時計を質屋に入れてお金を借りたが、

質屋は持ち主が取りにくるかもしれないと思い、自分の娘が欲しがった1つの時計以外は質流に出さなかった話、唯一残った娘の腕時計が展示されていることを紹介、「水際対策が大幅に緩和された日本へどうぞみなさん敦賀へお越しください」と感謝の挨拶をした。

 レセプション前の式典では、ニューヨーク総領事の森美樹夫大使、渕上市長、イエガー・NY市議、アサフ・ザミール在NYイスラエル総領事による挨拶、ホロコースト・サバイバーの娘ローラ・レオンさんによるピアノ演奏「マーシャのありがとう」=写真=が披露された。福谷正人・敦賀市議会議長の発声で乾杯し、コーシャ料理、酒、和食などがブッフェ形式で振る舞われ、和やかに懇談した。

(写真左)ユダヤ系市民の招待客たちを入り口で歓迎する左から森大使、渕上市長、福谷市議会議長(12日NY総領事公邸で)

(写真右)© 2020 Musical Tapestries Inc.

命のビザに感謝

生存者の娘が演奏、NYで3姉妹育てた母

杉原千畝の出したビザで日本を通過してNYに来た母親の故マーシャさん

 第二次世界大戦中にヨーロッパから逃げるために陸路シベリア鉄道を使って、さらに船に乗って日本経由でアメリカに渡った多くのユダヤ人がいた。手にしていたのは戦時下に海外渡航するための唯一の手段である第3国を通過する「命のビザ」だった。

 その2000余りの手書きのビザを書いた外交官、杉原千畝と日本に感謝する家族がニューヨークにいる。当時10歳だった少女、マーシャ・ベルンスタイン(後に結婚して姓はレオン)さん。5年前に86歳で他界したが、3人の娘たちは協力して1枚のCD「マーシャのありがとう」を作った。

 ニューヨーク総領事公邸で渕上隆信敦賀市長を迎えて12日開かれたレセプションで曲を披露した娘のローラさんはピアノを弾く前にこう語った。「私たちの母マーシャは、1941年2月に敦賀に着き、神戸に2月24日に着きました。当時10歳だった母は、聖マリア・カトリック小学校でフランス人の尼に可愛がってもらったようです。母と祖母ゼルダ・バーンスタインは、神戸を拠点に東京、奈良、大阪、宝塚などへも日本滞在中の6か月間で足を伸ばし、侍映画を見たり、本町を歩いたりした思い出を私たちに話してくれました。その時の経験が、後に、米国に渡って母親が結婚し、3人の娘を産んでユダヤ系新聞社の記者として働きながら私たちを歌舞伎公演や文楽に連れて行くなど日本文化に触れさせて育てました。母が天草丸に乗って大航海した経験は、現在の私たちの平和な生活につながっています」。

 CDは、命のビザ80周年を記念して2020年にピアニストのローラさん、写真家でイラストレーターのカレンさん、作曲家のニーナさんの三姉妹が協力して作ったものだ。

 「揃って3人が芸術の世界で生きてこれたのも、母が少女時代に日本のみなさんからの温かいもてなしを受けたことを心から感謝して、日本の文化を愛情を持って私たちに教育したからでしょう。本日は米国初公演となる『マーシャのありがとう』をお楽しみください」。 


左からスティーブン・コーエンさん(ローラさんの息子)、ローラさん、カレンさん、渕上敦賀市長、森NY総領事・大使、西川人道の港発信室長

マーシャのありがとう
日本の思い出を曲に込める

 「マーシャのありがとう」は、杉原と日本への感謝の気持ちを表すためのビアノソロ作品であり、イディッシュ民謡「 A Kleyn Meydele」と日本民謡「さくら」を基に、ニーナ・レオンさんによって作曲された。説明書によるとこのCDは、「母親、マーシャ・レオン(1931年〜2017年)への3人の娘からの賛辞であり、第二次世界大戦中におけるカナウスの英雄的な日本人外交官杉原千畝、そして日本の人々への感謝の気持ちを表すための作品でもある」と書かれている。

 マーシャはポーランドのワルシャワで生まれ、ホロコーストを生き延びた後、国際的に有名なコラムニストとなった。彼女と母親のゼルダ・バーンスタインは杉原が発給した「命のビザ」を受け取り、1941年2月に日本の敦賀に逃れた。10歳の少女だったマーシャは、神戸に滞在していた6か月の間に日本語を学んだ。「マーシャのありがとう」は、2020年11月3日、人道の港敦賀ムゼウムのリニューアルオープン式典で、堂田展江氏によって初演された。CDジャケットの表紙には、1941年にマーシャが暮らした神戸での子供時代の思い出の品であり、人道の港敦賀ムゼウムに寄贈された扇子がセーラー服姿の当時のマーシャさんの写真と共にデザインされている。CDの詳細は https://lauraleonpiano.com/cds/cds/c/241

musicaltapestries inc.com

上陸の地福井県敦賀市
人道の港 敦賀ムゼウム

住所:〒914-0072 福井県敦賀市金ケ崎町23-1

電話:+81-770-37-1035

定休日:水曜、年末年始

料金:大人500円,小学生以下300円

公式サイト:tsuruga-museum.jp

(日本語・英語・ポーランド語)

外交官に救出されたユダヤ人

北出明さんの続・命のビザ英語版を会場で配布

北出明さん

 「命のビザ」に関連したテーマで2010年から調査・執筆・講演活動を行ってきた北出明さんが、2012年に出した前著『命のビザ、遥かなる旅路〜杉原千畝を陰で支えた日本人たち〜』の続編で一昨年11 月に出版された『続・命のビザ、遥かなる旅路〜7枚の写真とユダヤ人救出の外交官たち〜』の英語版(キャッツ邦子・訳)が当日の招待客に配布された。

ジャズマンの父親の物語
ウラジオストクから日本

左からデービッドさん、ドブさん、シラさん

 レセプションがまだ盛大に続いている時に記者は総領事公邸を出た。後ろから総領事館の職員が追いかけてきて青いトートバックを敦賀からの土産だと言って手渡してくれた。地下鉄に乗ってオフィスに戻る車内で、目の前で同じ青いトートバックを持っている若いカップルに気づいた。「レセプションにいたのですか」と尋ねた。そうだという。二駅目で降りなくてはならず、詳しい話はできなかったが、自分が記者であることを伝えて名刺を渡して連絡してくれるよう頼んで別れた。話せたのは2分くらいだった。翌日、メールがきた。

おはようございます。

 こちらはドブ・マンスキーです。妻のエリン・パーシュと昨夜、電車であなたに会いました。お会いできて、簡単にお話できてうれしいです。以下は、昨夜のイベントに参加した私の父David Manskiが語った、私の家族のポーランドからの脱出についての詳細なストーリーです。このメールは父とも共有していますので、私の家族の物語についてさらに質問がある場合は、そちらをご覧ください。

あなたは音楽ファンなので、今夜の私のライブに招待したいと思います。私はジャズ・ギャラリーで演奏し、私の両親と西川明氏は7時30分のセットに参加します。もしお時間があれば、ぜひご参加ください。

 ここで、私の父デービッド・マンスキーが語る、私の家族の物語をご紹介しましょう。

 私の祖父(父の父)は1937年にポーランドのリダからアメリカに渡りました。彼の妻(父の母)は、1939年にアメリカに来るための手続き(ビザの取得)をすでに始めていたようです。その後、ドイツとロシアがポーランドに侵攻し、彼らはワルシャワのアメリカ大使館に書類を取りに行くことができなくなったのです。リダは東部にあり、ロシアに侵攻されたので、祖母、サム(叔父)、ミラ(叔母)、父サウル(当時10歳くらい)はリトアニアに行き、いとこの家に泊まりました。また、父の叔父と叔母、1番目の従兄弟とその年老いた祖母も一緒に出発しました。リトアニアでは、おそらくカウナス(当時の首都)でアメリカ政府からビザを取得したのだろうが、ロシアで取得しなければならないと言われた(あるいはそのようなことを言われた)。そして、杉原氏が通過ビザを出したという話を聞いたのでしょう。カウナスまで行ってビザを取ったのは、祖母とミラおばさんです。叔父のサムは19歳くらいで、徴兵されやすいので、隠れて人前に出なかった。父はまだ若かったので、カウナスまで行くのは無理だったようです。彼らは、祖母とミラと父に1枚、サムに1枚の計2枚の通過ビザを取得した(18歳未満の場合は、親のビザ)。そのおかげで、彼らはモスクワに行き、そのままシベリアを横断してウラジオストクに行き、日本に行くことができたのです。1941年1月初旬に日本に到着し、5月に船でシアトルへ向かった。彼らは他のユダヤ人難民と一緒に神戸にいました。父の祖母は高齢でこの旅には出られず、他の親族と一緒にリトアニアに残されましたが、全員ナチスによって殺されました。私の家族のようにアメリカのビザを持っていなかった叔父、叔母、従兄弟は、昨晩お話した上海のゲットーに送られたそうです。

 もし、これが興味深く、お役に立てれば幸いです。

また、質問があれば教えてください。

よろしくお願いします。

Dov Manski

 終日外出していてこのメールに気がついたのは、午後6時を過ぎていた。演奏は午後7時30分。「まだ間に合う」。マンハッタンのブロードウエー27丁目の会場まで急いだ。 トリプルブラインドというジャズグループで、ドブ・マンスキーはピアノとキーボード奏者だった。チック・コリアを思わせる繊細な演奏だった。父親のデービッドさんと母親のシラさんも来ていた。敦賀市観光部・人道の港発信室の室長、西川明徳さんも一緒だった。3年ぶりの再会だという。演奏後会場を出ると土砂降りの雨だった。   (三浦)

朝日の影長く太陽が冬支度

 10月末のハロウィンを過ぎたあたりから

ニューヨークは足早にホリデーシーズンへと向かう

行き交う人々の足取りもどこかせわしなくなる

 朝晩の郊外は、すでにマンハッタンより

5度ほど気温が低い

グランドセントラル駅に朝着くと

朝日の影が長く尾を引いていた

太陽は一足早く冬支度に入った模様 

(10月12日午前9時、写真・三浦良一)

日本と世界を結ぶ美と学びの祭典

2022 ONE STORY AWARD IN NY
2022年11月8日(火) BROOKLYN, MIKAで開催

 株式会社ONE STORY AWARD(ワンストーリーアワード)は、一人一人の経験や人生の歩みを称賛する新しい祭典「ONE STORY AWARD」を11月8日(火)ブルックリンのMIKAで開催する。「人と人、人と国」を繋ぐことを目的として2022年9月には日本(宮城県仙台市)で華々しく開催され、次いで11月には米国ニューヨーク、そして今後は世界各地で開催が予定されている。

「ONE STORY AWARD」とは

 「ONE STORY AWARD」とは株式会社ONE STORY AWARD(福岡県福岡市、代表:鶴田一磨)が主催する心身美在をモットーとした女性たちのための新しいアワード。心と身体の美と健康、グローバルな言語、文化を学び続ける機会を提供し、参加する一人一人が紡いでいく人生の物語を讃える祭典となる。

(写真上)East Japan Miyagi 大会(9月27日、錦ケ丘アーリー迎賓館で)

美と学びをテーマにしたアワード現地からの参加者募集(無料)

 米国・ニューヨークで11月8日(火)に開催される本アワードでは、書類選考により選ばれたファイナリストがドレスでレッドカーペットを歩いた後、美と教育に対する自分自身の考えや、賞金3000USドルを人のためにどう使いたいかについてスピーチを行う(日本語、英語その他の言語でも可)。Top of AWARD に選出された1名には、賞金3000USドルのほか、次年度以降に開催される日本大会へ招待される。現地からの参加者を募集している。エントリー締め切りは、2022年10月31日(月)。エントリー申し込みは、公式ホームページから。https://us.onestoryaward.com/award-01/エントリーフィーは無料。

国際的なアワードを数多く受賞、、Oprah Winfrey の番組にもゲストとして出演をしているJoseph Monroe Webb氏。

関連イベント

特別講演 火星基地をNASAと共同開発
曽野正之氏「未来のプロトタイプ」
プロデユーサー 中井勉

 人類の火星基地をNASAと共同開発する曽野正之氏による未来の建築、これからの可能性についてスピーチを予定している。子どもたちが国際交流や宇宙に興味を持つような未来への展望にも触れる。また、NYと日本をジャズギタリストとして橋渡しをする中井勉氏が大会をプロデュース。グラミー賞受賞のトップミュージシャンによる演奏やタップダンスが行われる。


2022 ONE STORY AWARD IN NY

2022年11月8日(火)

19:00開場  19:30開演

会場:MIKA(25 Thames St, Brooklyn, NY 11205, USA)

入場料無料(要予約)※参加希望者、入店希望者は下記メールアドレスまで問合せをお願いします。

主催:株式会社 ONE STORY AWARD

共催:2022 ONE STORY AWARD in NY運営本部

後援:週刊NY生活

ニューヨーク生活プレス社

問い合わせ:

email:ny.onestoryaward@gmail.com

HP: https://us.onestoryaward.com/award-01/

Address: 667 Madison Avenue, 

4th and 5th Floors,  New York, NY 10065, USA

新作ミュージカルPresent Perfect

撫佐仁美が出演

 新作ミュージカル「Present Perfect」のプレゼンテーション・コンサートが、11月8日(火)午後7時から、マンハッタンにあるコンサートホール54Below(西54丁目254番地)で行なわれることになり、ニューヨークを活動拠点とする日本人ミュージカル俳優の撫佐仁美さん=写真=が出演する。

 このミュージカル「Present Perfect」は、ニューヨークの語学学校が舞台で、英語を第二言語とする外国人達が主役の物語。メキシコに家族を残して来ている不法移民カップル、ロシア人ジャーナリスト、シリア難民のラッパーなど、それぞれのバックストーリーを抱えた移民たちが、外国人として生きていく厳しい現実問題を組み込みながらも、キャッチーな音楽とともに明るく展開していくニューヨークのヒューマンドラマとなっている。

 撫佐さんは、ブロードウェイ女優を目指して留学中の日本人役で出演。制作段階から彼女自身の意見を脚本に多く取り入れ、まさに撫佐さん自身のニューヨークでのサクセス・ストーリーがそのままミュージカルになるような内容となっている。

 鑑賞チケットは一般席で35ドルから(飲食代25ドル〜)。ウェブサイト https://54below.com/ から購入が可能。なお、同コンサートはオンラインによるライブ配信も行われる予定となっている。

豚(トン)でもない生姜焼きほか

プロに聞く、生き生きEATS(イーツ)

元気と美味しいを求めて料理の達人が腕を振るう (30)

 今年の5月にイーストビレッジの1番街と東15丁目の角にオープンしたJ‘s Kitchenは、日本各地の有名洋食店の人気メニューを一堂に集めて提供するユニークなレストランです。「地域の食を世界に」を合言葉に、神奈川県相模原から伝説の店「福よし」のとろけるハンバーグ、東京・神田の「神保町ビーフ」、福岡の「博多黒カレー堂」、栃木「神楽」のトンカツ定食など、いずれもアメリカ風のアレンジを全く加えずニッポンの味を直球で届けるコンセプトが、ニューヨーカーにも大ウケしています。今回は、同店の店長シェフ沼尻竜乃介さんに家庭でも簡単に作れる「洋食」を3品紹介していただきました。


豚(トン)でもないしょうが焼き(1人前)

食材

★タレ(8人前)

A

生のしょうが 50g

生のにんにく 15g

玉ネギ 150g

アップルソース 80g

B

料理酒(日本酒でも可) 200g

みりん 50g

C

砂糖 70g

醤油 200g

★お肉(1人前)

肩ロース薄切り 100g

玉ネギ薄切り 50g

★白ご飯 250g

〈作り方〉

 「しょうが焼きの命はタレ」と言い切る沼尻シェフ。Aの材料をミキサーにかけてペースト状にしたらBと混ぜて加熱。アルコール分を飛ばしたあとで、砂糖と醤油を加えて溶けるまでさらに加熱。「タレさえ丁寧に作ればお店に負けない味になりますよ」とシェフ。味の決め手は生ショウガと生ニンニク。アップルソースがまろやかな甘みを作る。またタレにお酒を使うことで洋食らしいオシャレ感が出るそうだ。

 フライパンで油(適量)を中火で熱して、サラサラになったところでポークを2分ほど焼く。玉ねぎの薄切りを加えてさらに1分焼いたら、上記のタレを投入して30秒で焼き上がり。ざざっとご飯に載せれば、ショウガ焼き丼の完成だ。タレは冷蔵庫で1週間保存できるので多めに作り置きすれば、忙しいときでもわずか5分で「トンでもなく」美味いしょうが焼きができる。


豆腐カツ丼

食材

木綿ごし豆腐 約半丁

黒胡椒 適量

塩 適量

片栗粉 大さじ1

卵 ころも用1個、トッピング用2個

パン粉 適量(たっぷりと)

薄切り玉ネギ 40g

麺つゆ(市販のもので可) 100cc

小口ネギ(お好みで) 砂糖大さじ1杯

〈作り方〉

 「これはニューヨークのお客様のリクエストを反映してオリジナルに考案したレシピです」と胸を張る沼尻シェフ。洋食の技術を日本が誇るヘルシー食材「豆腐」に応用したところ地元イーストビレッジのベジタリアンの間で評判を呼んでいるという。シェフによると「豆腐はあえて歯ごたえのある木綿ごし(Hard)を使う」とのこと。

①豆腐一丁の片側を切り落として正方形を作り、さらにそれを2分の1の厚さに薄切りしたら、キッチンペーパーで水気をしっかり取る。

②黒胡椒と塩をやや多めに振る。

③片栗粉をまぶし、溶いた卵一個分にからめパン粉をまんべんなくつける。

④摂氏170度の油で4分間あげる。

⑤出汁100ccを小ぶりのフライパンに開け玉ねぎを投入。

⑥上記の豆腐カツを出汁の中に入れて強火にかける。

⑦沸騰したら、中火に下げる。

⑧2個分の溶き卵と砂糖を入れる。

⑨火力は中火のまま。沸いたら蓋をして2分間加熱を続ける。

⑩卵の白身に火が通ったら火を止めて蓋をとる。


チキンから揚げ

食材

鶏むね肉 150g

白だし 15g

おろしニンニク(生) 2g

おろししょうが(生) 2g

片栗粉      適量

 洋食屋のチキンから揚げは、J’s Kitchenでも最大の人気メニュー。美味しさの秘密をこっそり教えてもらった。沼尻シェフは「日本ではから揚げ専門店でのキッチン経験が長かったので、ニューヨーカーがから揚げを美味しそうに食べているのを見ると嬉しいですねえ」と目を細める。

〈作り方〉一人前

 いたってシンプルである。ただし、計量をグラム単位で正確に行うこと。

①チキンはむね肉を食べやすい大きさに切ったものを140グラム使用。

白だし15グラム、おろしニンニク(生)2グラム、おろししょうが(生)2グラムを混ぜた液と一緒にジップロックに入れて軽く揉み込み3時間置く。

②片栗粉をまぶして4分間揚げる。

 軽く噛んだだけで前歯がスーッと吸い込まれるような柔らかい歯ごたえ。しょうがとニンニクのアクセントが控えめなため飽きの来ない味付けになっている。


 「開店からまだ5か月ちょっとですが、毎日、目の回るような忙しさです」と言う沼尻シェフ。「ニューヨークの人たちの食に対するこだわりは半端じゃないですね。期待に応えるように頑張るのが楽しくてしょうがない。日本には全国各地にまだ海外では知られていない名メニューがいっぱいあります。今後は、そういう料理をニューヨークにもっと伝えていきたいです」と熱く抱負を語った。

沼尻竜乃介

1994年生まれ(28歳)出身:茨城県

2017年J’s Kitchenの親会社TGAL(テガル)入社。2018〜20年シンガポールにて同社傘下のデリズ・キッチン立ち上げとオペレーションに参画。2020〜21年日本各地で新店舗の開店に携わる。2022年5月よりニューヨークJ’s Kitchen店長シェフ。

J’s Kitchen

ジェイズ・キッチン

261 First Avenue NY, NY10003

Tel: 917-262-0434

https://jskitchen.nyc/

各種宅配アプリにも対応。

自由の女神、王冠展望台オープン

エレベーターはありません

 自由の女神像の王冠部分が11日から、2020年3月のパンデミック開始以降初めて入場できるようになった。 

 王冠部分までは、まず台座まで215段、さらに162段の螺旋階段を登る。展望台は昨年7月に入場者数を50%に制限して再開した。トーチ(聖火)部分は、1916年にジャージーシティで発生したブラック・トム大爆発事件以降未だに閉鎖されている。自由の女神像があるリバティ島までは、ローワー・マンハッタンのバッテリー・パークまたはジャージーシティのリバティ・ステイト・パークからフェリーを利用する。乗船券の値段は13歳以上は24ドル30セントから、4〜12歳は12ドル30セントで、事前にスタチュー・シティ・クルーズ社のサイトcityexperiences.comまたは電話877・523・9849で予約が必要となっている。 

窓辺のパンプキン

 ハロウィンの二週間ほど前に、ゲイルと、五歳になる彼女の甥のイーサンと三人で、パンプキンを買いに行った。そこは郊外の大きなスーパーマーケットで、外には何百個もの大小さまざまなパンプキンや、飾りつけに使う干したコーンなどが無造作に置かれている。リンゴも大きな袋に入って売られており、秋を感じさせる。

 まん丸で形がよくて、ヘタの長いのを選んでね。これはどう? 完璧な形よ、とゲイルがイーサンに言う。

 だが、イーサンはどれも気に入らない。

 No,I hate that.  I don’t want that.  That’s not what I want. 

 やだよ、そんなの大きらいだよ。そんなのほしくないよ。ぼくがほしいのは、そんなのじゃないよ、と、言いながら、延々とパンプキンの周りを歩き続ける。彼には彼なりの基準があるのだ。

 一時間も費やしただろうか(気の短い私はもちろん、ふらふらほかをのぞいて楽しんでいた)。おじいちゃんとおばあちゃんにひとつ、自分用にふたつと、大きなパンプキンを三つ選んだ。

 イーサンと私は待ち切れず、さっそく彼の家でひとつ、目と鼻と口をくり抜くことにした。私は十四年もアメリカに住みながら、jack-o’-lantern (カボチャちょうちん)を作ったことがない。

 自然に役割分担ができた。私がパンプキンをくり抜き、中身をほじくり出す。ゲイルはその中から種を拾い、塩をふりかけ、オーブンで焼く。そしてイーサンは、ホウキとチリトリを持ってきて、私たちが汚した床をせっせと掃除している。

 Hey, you guys!

 もうこれ以上、汚さないでよ、とイーサンが私たちに命令する。

 この you guys を子どもが大人に向かって口にするのを聞くたびに、アメリカだなと思う。guys は女の人への呼びかけにも使われるが、もともと、やつとか男という意味で、Hey, you guys! は、やあみんな、ちょっと君たち、といった感じだろうか。

 最後に、くり抜いたパンプキンの中に白いロウソクを立て、火を灯した。かなり不気味で、みんな、大満足だ。からっとローストされた種も、塩がきいていておいしい。

 ねえ、ダディ。パンプキンを窓のところに置いていい?

 リビングルームでテレビを見ている父親に、イーサンはしきりに頼んでいるが、願いは聞き入れられない。

 Hey, buddy! ハロウィーンは一週間先だから、まだ早いよ、と父親は言う。

 イーサンがHey, guys! なら、父親は Hey, buddy! だ。

 buddy は相棒のような意味で、Hey, buddy! も おい、という呼びかけだ。

 だって、外から見た人がびっくりしておもしろいよ、とイーサンは説得に必死だ。

 そうだ、そうだ、と私も密かに応援するが、それでも許可は下りず、不気味なパンプキンは人目に触れないキッチンに、ひっそり置かれたままだ。

 長く窓辺に置けば、それだけ長く楽しめるのに。ああ、もったいない。大人の考えることはまったくわからない。

 Hey, you guys.

 イーサンにこう声をかけられて、抵抗を感じるまでもないようだ。どうやら、私の精神年齢はイーサンと同じらしい。

 このエッセイは、文春文庫「ニューヨークの魔法」シリーズ第1弾『ニューヨークのとけない魔法』に収録されています。

https://books.bunshun.jp/list/search-g?q=岡田光世

女性狙撃兵が見た戦争

逢坂冬馬・著
早川書房・刊

 今年の本屋大賞と紀伊國屋書店「キノベス2022」でも1位を獲得した傑作戦争小説である。昨年8月の第11回アガサ・クリスティー賞では選考委員全員が5点満点をつけて大賞を獲得、デビュー作にもかかわらず第166回直木賞候補となったことでも話題となった。第二次世界大戦中の独ソ戦でのソ連赤軍の女性狙撃兵を主人公にした話で、今年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻と重なることもあり、昨年11月の発売以来、半年で47万部を超えた人気小説だ。 

 主人公はモスクワ近郊の村に住む18歳の少女セラフィマ。村に迷い込んだドイツ兵によって村人たちは惨殺され、セラフィマの母親もドイツ人狙撃兵イェーガーによって殺される。偶然だろうが漫画の「進撃の巨人」や「鬼滅の刃」の出だしのような展開だ。セラフィマも殺されるそうになるが、女性上級曹長イリーナ率いるソ連赤軍が到着し助かる。しかしイリーナは母親の遺体もろとも村をすべて焼き払ってしまう。セラフィマはイェーガーとイリーナ両方に憎悪を燃やすが、イリーナに「戦いたいか、死にたいか」と問われ、イリーナが教官を務める訓練学校で狙撃兵になることを決意する。同じく戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとの訓練を経てスターリングラード攻防戦に、そして運命のケーニヒスベルクの戦いへと突き進む。

 双方で3000万人もの死者が出たといわれる独ソ戦だが、ソ連には女性が従軍しており、実際に女性狙撃兵がいた。小説では虚実織り交ぜており、309人射殺という成績で史上最高の女性狙撃手といわれるリュミドラ・パヴリチェンコも出てくる。訓練学校での厳しい訓練の様子などはもちろん、出自や性別による差別や軍組織の理不尽さなどが描かれる一方、銃や狙撃方法、作戦なども詳述されリアリティーがある。女性狙撃兵らの人物造形も素晴らしく、人間関係の組み立ても秀逸、すんなりストーリーに溶け込める。500ページ近い大作だが、展開も早いので飽きない。そしてなにより過酷な戦場、とくに市街戦の描写には驚くばかりだ。

 作者の逢坂さんは、ベラルーシの作家・ジャーナリストのスベトラーナ・アレクシェービッチさんの『戦争は女の顔をしていない』(2015年ノーベル文学賞受賞)で500人以上の元女性兵士たちの証言を読み、女性から見た戦争を小説として描くという考えが固まったという。何のために戦うのかを女性兵士からの視点というジェンダー的テーマにして、戦争の残酷さ、理不尽さ、無意味さを表したかったそうだ。したがって戦場における性暴力も避けることなく描いている。

 本屋大賞の受賞の際、「あまりにタイムリーになりすぎたことが本当につらい」と語っていた逢坂さん。確かにニュースで流れるロシア軍の攻撃を受けたウクライナの街の様子は小説のなかの市街戦とだぶって見えてくる。状況は違うが同じエリアが舞台であり、ウクライナ出身の女性狙撃兵も出てくる。家族が殺され「戦うこと」を選んだセラフィマが、最後に知った「真の敵」とは何だったのか。「誤読」することなく、読み取りたい。(武末幸繁)

ジャパン・ソサエティーで現代人形劇

和紙の風船爆弾の物語

 ニューヨークを拠点に活躍する人形劇アーティスト・菊池麻衣子と同スペンサー・ロットによる現代人形劇『9000のペーパー・バルーンズ』が28日(金)から30日(日)までの3日間、ジャパン・ソサエティー(JS:東47丁目333番地)で上演される。

 第2次世界大戦終盤、日本軍は和紙で作った気球に爆弾を吊り下げ「風船爆弾」を大量に製造。ジェット気流に乗せて放つことでアメリカ本土への攻撃を試みた。『9000のペーパーバルーンズ』はこの歴史を軸に、日本とアメリカそれぞれの視点から「距離」をテーマとした物語—2人の友人、2つの敵国、2つの文化、2つの世代間の距離を展開する。太平洋を渡り、オレゴン州の小さな町の森の中に着地した風船爆弾の爆発が生んだ悲劇の実話をベースに複雑な過去と向き合いながらも、将来への前向きな姿勢を独自の視点から伝える、子供にも優しく訴える現代人形劇。

 28日 (金) 終演後に「MetLife Meet-the-Artists レセプション」、29日(土)終演後の「アーティストQ&A」には、菊池とロットが参加する。

 入場料は一般30ドル、JS会員24ドル。公演の詳細はウェブサイトwww.JapanSociety.orgを参照。 

友情が暴いた世紀の陰謀

Amsterdam

 「スリー・キングス」「アメリカン・ハッスル」の脚本・監督デヴィッド・O・ラッセルがまたもウィットに富んだコメディを仕掛ける。脚本は「実話とフィクションを巧みに混ぜ合わせ」とあるが、どうもほぼフィクションの香りがプンプン。

 永遠の友情を誓いあった3人の男女が巻き込まれる殺人事件と全米を揺り動かす陰謀の裏舞台。危険に満ちた事件捜査を背景にどこかドタバタ風ではあるが心温まる友情がふつふつと浮かび上がるプロットだ。クリスチャン・ベール、マーゴ・ロビー、ジョン・デビッド・ワシントンを初めロバート・デ・ニーロ、ラミ・メレク、テイラー・スイフトら豪華キャスティングにも注目が集まる。

 第1次大戦中に同じ軍隊で戦ったバート(ベール)とハロルド(ワシントン)はアムステルダムの病院で看護婦のバレリーと出会い3人は意気投合。アーティストのバレリーは負傷兵から取り出した数百個の銃弾の破片で作品を作り出すなど創造力逞しい鋭さを蓄えていた。つらい時期を乗り越え、前向きに人生を切り開こうとする3人は固い友情で結ばれ、新たな経験を積み楽しい思い出もたくさん作った。その後バートとハロルドはニューヨークに戻り、それぞれ医者、弁護士として活動するも、バレリー(ロビー)とは音信不通に。

 ある日、戦時中に所属していた部隊指揮官の娘リズ(スウィフト)が父親の死に疑問を持ちバートとハロルドに相談に来るが、死因を調べているうちにリズが殺され、なんと、現場に居合わせたバートとハロルドに容疑がかかる。2人は真相究明に奔走し、その過程で十数年ぶりにバレリーと再会。3人は知らず知らずのうちに米政権の中枢を手に入れようとするファシズムの渦に巻き込まれていく。

 ストーリーの山場はデ・ニーロ扮するギル・ディレンベック将軍が会場を埋めつくした退役軍人らに語り掛けるスピーチ場面だが親友3人の新たな門出が本編の根幹だ。主役、脇役いずれも非の打ちどころない演技で物語の展開がぐっと濃くなる。2時間14分。R。(明)

(写真)(左から)バート、バレリー、ハロルドは十数年ぶりに再会する Photo:20th Century Studios


■上映館■

AMC Empire 25

234 West 42nd St.

AMC Loews 19th Street East 6

890 Broadway 

AMC Lincoln Square13

1998 Broadway

編集後記 2022年10月15日号

【編集後記】 みなさん、こんにちは。コロンブスデー(当地ではコロンバスデーと日本人でも発音)が終わると、ハロウィンがきて、冬時間になって、感謝祭。そうなるともう年末まで駆け足。この時期は、新聞社はどこも来年の新年号に向けて動き出します。テーマは何で行こうかとあれこれ独自の視点の特集などを組みます。去年まではコロナ禍との闘いと生きることの大切さなどなどが紙面を賑わせました。去年の今頃は、まだ、ウクライナへのロシアの軍事侵攻など想像もできなかったです。そして、今、首都キーウをはじめウクライナ全土に同時にミサイル攻撃の日々です。これを戦争と呼ばずしてなんと言うのでしょうか。報復の報復がエスカレートすればどちらかが降伏するまでの闘いになってしまいます。戦争を終わらせるための国連が、当事者のロシアと今やおよび腰ながらもそれに加担する中国の拒否権によって平和への道のりが見えないどころか、武器を送りこみ、防空システムのサポートとエスカレートさせる方向です。ふと、思いました。アメリカ国内、ニューヨークのブルックリンには、ロシア人コミュニティがあります。アメリカ生まれのロシア系の若者や一世、二世がいます。本国のロシアにはきっと、おじいちゃんやおばあちゃんがいることでしょう。アメリカのテレビやネットで欧米の情報に接している在米ロシアコミュニティーはどんな思いでいるのか。二つの祖国の狭間で葛藤する人々がいるのではないか。それは、第二次世界大戦中に敵性外国人として強制収容所に入れられた日系米国人の親子の断絶、意思の行き違いに悩む姿とどこかだぶるのです。サマセット・モームが『世界の十大小説』で「あらゆる小説の中でもっとも偉大な作品」と評したトルストイの名作「戦争と平和」を生んだロシアの今はあまりに遠い存在です。在米ロシア移民たちの現代の「戦争と平和」を、ブルックリンのロシアンコミュニティーの肉屋のおじさん、洗濯屋のおばさんに聞きに行こうと思います。それを新年号でやろうかなと思ってます。同業他社の人でこの編集後記を読んで、お、いいね!と思った人、どんどん書いてください。私も読んでみたいです。まだ、そんな記事を目にしたことはないですから。自分がどんな記事を書くことになるのか、取材の現場に行くまで自分でも分からないところがこの商売の面白いところでしょうか。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2022年10月15日号)

(1)銃所持禁止地区にまった NY州連邦地裁が違憲判断

(2)NYでサクラコレクション 尾州再生ウールでコンテスト

(3)JAPAN STORE  対面式でPR促進

(4)鬼そば藤谷が優勝 NYラーメングランプリ

(5)岩手日報が号外配布 エンゼルス大谷を故郷が応援

(6)カジュアルスーツ イケメン男子

(7)おかえりなさい  JET帰国者歓迎レセプション

(8)NYの治安さらに悪化 観光客斬りつけられる

(9)仙石紀子さん葬儀 舞台芸術で日米結ぶ

(10 )すっぴん美人の時代 小林照子さんオンライン講演