広島G7サミット、米国の論調広島G7サミット、

核軍縮の機運は高まらず

 日本を議長国に広島で開かれた先進7か国首脳会議(G7広島サミット)では、G7や招待国の首脳らが広島平和記念公園を訪れ、原爆の生存者と面会し、資料館を見学、献花なども行われたことは米国のメディアも写真や動画付きで大きく報じた。

 5月19日付ニューヨークタイムズ紙電子版は「(バイデン大統領は)厳粛な表情で原爆死没者慰霊碑を見つめたが、何もコメントしなかった。ましてや一部の日本人がいまも米国に望んでいる謝罪については何も述べなかった」と報じた。

 ワシントンポスト紙はウクライナのゼレンスキー大統領が電撃訪問し、各国首脳らと対面で会合したことで核軍縮から焦点が移り、終了後は「ウクライナに焦点が移ったままG7終了」(5月21日付)と報じた。

 AP通信(21日付)は「ゼレンスキー大統領の訪問は、平和を愛する都市である広島にはふさわしくない」との広島の被爆二世の活動家の中谷悦子さんの話を伝えた。また若手活動家の高橋悠太さんが「(この訪問は)ウクライナが第二の広島になるのを防ぐために核抑止力の必要性を正当化する」メッセージを送る恐れがあり、「広島は平和のメッセージを送るために核保有国によって利用されただけであると私たちに感じさせるだけです」と答えたことを報じた。記事はワシントンポストやザ・ヒル、ABC、FOXなど幅広いメディアが掲載した。

 ウォールストリートジャーナル(22日付)は、核の恫喝を行なっているロシアや軍備増強を続ける中国など「核兵器のリスクの高まりが、広島G7での核軍縮に影を落としている」と報じた。「広島でのG7には世界初の核攻撃の恐怖が漂っていた」と書いている。ブルームバーグ(21日付)は、「G7が、中国、ロシアに取り込まれた国々の説得に苦戦」と報じた。各国に「国連憲章を守るように求める」に留まり、「ブラジルのルラ首相はG7に歩み寄る様子はなくバイデン大統領を非難」と報じている。

 ブラジルはロシアの侵略行為を非難する一方、対露制裁も武器供与も行なっていない。

(写真)ゼレンスキー大統領の広島電撃訪問を報じる20日NYタイムズ電子版