文明のもろさ笑い飛ばす

1回ごとにセットがぶち壊しになる迫力の笑いを爆発させたラ・ママの舞台

ONE GREEN BOTTLE 上演中

野田秀樹NYで
「演劇人として気分は絶好調」

 日本演劇界を牽引する劇作家・演出家・役者の野田秀樹が舞台「ワン・グリーン・ボトル」(「表に出ろいっ!」)英語版を2月29日からニューヨークのラ・ママ実験劇場(東4丁目66番地)で上演中だ。同劇場は、70年代に寺山修司作品を上演するなど、日本の現代演劇や実験的な作品を米国に紹介してきた歴史ある劇場。その舞台が、日本の「ドタバタお茶の間笑劇場」と化し、気難しいニューヨーカーたちを刹那の笑いの渦に巻き込んでいる。

 家族を描いたスラップスティックな3人芝居「One Green Bottle(ワン・グリーン・ボトル)」。2010年に野田、故・中村勘三郎、黒木華・太田緑ロランス(Wキャスト)で上演された「表へ出ろいっ!」を、新進気鋭の英国人脚本家ウィル・シャープを迎えて英語版にリメイクしたものだ。

 「ワン・グリーン・ボトル」は男優が女を、女優が男を演じる点も大きな見どころとなった。英語版「THE BEE(ザ・ビー)」にも出演したグリン・プリチャードが娘役、本人も「自分でもおばちゃん役に対する違和感はまったくない」と言うほどハマっていた野田が母役、そして、新たに参入したリロ・バウアーが父を演じた。

 歌舞伎囃子方の田中源一郎が生演奏。狂騒的な舞台に、品格と迫力と彩りを与えた。第1回ニューヨーク国際芸術祭に参加した1988年の「彗星の使者」をBAMで上演してから32年。「30年前は、今の20倍くらい動いていたと思うけど、来る前は意外と観客は厳しいんじゃないかと思っていたら、素晴らしいリアクションをもらえて。しかも寺山修司さんという素晴らしい演劇人がかつてやった歴史あるこの劇場で、また来いよと言われたような気分で、演劇人としては気分は絶好調です」と話した。8日(日)まで。

 (三浦良一記者、写真も)

初恋は知らぬ間に Emma.

 エマ( テイラー=ジョイ)はキューピット役が気に入っている 
         PHOTO :  Box Hill Films 

 イギリス作家 ジェーン・オースティンの作品は 「高慢と偏見」「分別と多感」など18世紀、19世紀イングランドの中流社会における女性の暮らしぶりを描いたものが多く、中でも「エマ」は明るくチャーミングなコメディだ。 

 すでにグウィネス・パルトロウ主演(1996年)で原作に忠実な正統派と、アリシア・シルバーストーン主演で舞台をビバリーヒルズに置き換えた現代風脚色の「クルーレス」(95年)などがあり今さら、という気もするが、それなりの新鮮味を取り入れた最新版だ。 

 というのも主演のエマが「ウイッチ」「スプリット」などのアニヤ・テイラー=ジョイというのが大きい。「サラブレッド」(17年)でも冷酷かつかわいい不思議な雰囲気を醸し出す役柄をさらりとやってのけ、今、20代前半で最も注目される女優の一人だ。 

 物語は小説に沿っているがパルトロウがややウエットだったのに比べてテイラー=ジョイのエマはドライで快活、ナイーブな部分は「はっ?」という雰囲気で回りを煙に巻く。 

 共演は珍しくコミカルなビル・ナイ、歌手で俳優のジョニー・フリン、ミア・ゴスら。本作が長編映画監督デビューとなるオータム・デ・ワイルドは写真家、ミュージックビデオ監督で彼女が描き出す映像は清楚と艶やかが混ざり合う絶妙の美しさが際立つ。 

 今日は長年、エマの家庭教師を務めたアナが嫁ぐ日。二人の仲を取り持ったのはエマだ。適齢期の娘たちがこれぞという男性に胸ときめかせている一方でエマはすっかりキューピット役が気に入っている。 

 そこで次は友人ハリエット(ゴス)にだれかふさわしい相手を見つけてあげようと牧師のエルトンを紹介する。ハリエットが農夫のマーティンに求婚されたときもエマは断らせたりしている。 

 父や隣人のナイトレー(フリン)らはあまり出しゃばったことをするのは好ましくないと助言するがエマは聞く耳を持たない。 

 2時間2分。         (明) 

https://www.focusfeatures.com/emma


■上映館■
AMC Lincoln Square 13 
1998 Broadway 
Cinepolis Chelsea 
260 W. 23rd St. 
City Cinemas 1, 2 & 3 
1001 Third Ave.

米国に令和の春

天皇陛下誕生日祝う
NY総領事公邸で

 ニューヨーク日本総領事公邸で2月27日夕、山野内勘二大使主催の天皇陛下誕生日を祝う会が開かれた。一部と2部に分かれ日米招待客が大勢集った。大使は、令和の元号になって最初の天皇陛下の誕生日であること、令和が美しい調和を示すこと、子年は日本の干支の中でも最初の動物で物事の最初を示す大切な節目であることなどを紹介した。

 また天皇陛下がオックスフォード大学に留学した水上交通研究者であり、音楽家、山岳家であることも伝えた。

 2020年が終戦75年、日米修好通商条約60周年、東京ニューヨーク姉妹都市60周年であること、メトロポリタン美術館での日本展が開催れていること、日本は英国に次ぐ対米投資大国であることも披露した。また160年前に徳川将軍が対米使節団を送り、それを再現するような現代の日本パレードが5月10日はジャパンデーに開催されることをPRした。

品のある人の英語表現

田村明子・著
青春出版社・刊

 英語表現を磨きたいと思っている日本人の大人は案外多いのではないだろうか。テレビ英会話教室の番組や、ラジオ英語講座で何度も発音の方は練習した経験は過去にあっても、実際の商談やレセプションで、知らない人と自分から自己紹介して仕事と関係ない話を5分以上英会話で続けた経験となると、海外出張や国際見本市会場での場数体験がないとそう多くは得られない。

 本紙読者は、すでにニューヨークまたはその近郊在住者なので、アメリカ人と接する機会は、接客業で外国人専門の店員でもない限り普通に日本国内で生活している人以上には多いはずだ。しかしこちらで生活していても、極端な話、スーパーに買い物に行ったり、街中のコーヒー店で注文するくらいの日常生活では大した英語力は必要もなく、問題は、アメリカ人の中に入った時にいかに、見下されることもなく、冷たくあしらわれることもなく、お互いの立場を尊重しながら会話を維持していけるかだ。だいたいこういうことを考えていること自体、実際にそれが自然と身についていなくて、会話もできていないことの証のようなものなのだが。だが、住んでいれば自然と会話力が身につくというそんな簡単なものではないことは、住んだ人が一番よく知っている。 15歳で米国に留学して帰国せず、そのまま40年以上英語と日本語のバイリンガル生活を続けてきた著者が気づいたのは「英単語や文法の知識より、ずっと大切なことがある」ことだ。それは相手の目を見て(アイコンタクト)、にっこり微笑んで、「Hi, how are you?」と第一声をかけるだけで break the ice 、打ち解けた雰囲気になる。ものを頼んだときには必ず「Please」をつける。それだけでとりあえずは失礼なヤツだとは思われずに済む。エレガントな言い回し、社交術は、自然と身に付くものではなく、学んで体得するものだということがわかる。何を話すのか、その中身がもちろん大切だが、それをいかに美しく表現できるのかもまたある意味、何を話すのかと同等以上に大切だということを教えてくれる一冊だ。  (三浦)

ただいま若手注目度ナンバーワン

アルト・サックス奏者


寺久保(てらくぼ)エレナさん

 ニューヨークで活動するアルト・サックス奏者の寺久保エレナさんは、1992年に札幌市で生まれた。6歳でピアノを習い始めたが、親に連れて行ってもらったビッグバンドの演奏を聞いてすっかりサックスの虜となり、9歳、小学校3年生で札幌ジュニア・ジャズ・オーケストラに参加。13歳の時、最年少でボストン・バークリー・アワードを受賞。渡辺貞夫、山下洋輔、日野皓正、佐山雅弘、本田雅人、タイガー大越など有名ミュージシャンとの共演やセッションに多数参加する現在、若干27歳、日本の若手では注目度ナンバーワンのサックス奏者だ。

 2010年、高校3年生の時に、ケニー・バロンやクリスチャン・マクブライドが参加した『ノース・バード』でメジャー・デビューを果たし、一躍大きな注目を集めた。同アルバムでスイングジャーナルゴールドディスクを受賞。所ジョージの「笑ってこらえて」や、「題名のない音楽会」などのテレビ番組に出演。同年9月、日本最大のジャズフェスティバル、東京ジャズ2010に、ロンカーターやオマーハキムらを従えリーダーとして出演。

 2011年、2枚目のアルバム『ニューヨーク・アティチュード』をリリース。同年、日本人初のプレジデント・フルスカラーシップ(授業料、寮費免除)を獲得して、アメリカのバークリー音楽大学に留学。2013年、第3作『ブルキナ』を発表。

 15年バークリー音大の学士号を取得し卒業、活動の拠点をニューヨークに移した。16年、アルバム『ア・タイム・フォー・ラブ』をカナダのCellar Liveからリリース。アメリカのジャズ誌、ダウンビートで紹介された。18年、札幌のテレビ局HTBに開局50周年記念テーマソングを提供。3月、日本のレギュラー・カルテットによるリーダー・アルバム『リトル・ガール・パワー』をキングレコードからリリース。「ニューヨークでもっと自分のキャリアを積んで、もっとたくさんの人に聞いてもらって活躍したい。将来はグラミー賞を狙えるプレーヤーを目指したい」と大きく見えるサックスを手にしっかりと語った。

 (三浦良一記者、写真も)

 ■公演案内=バードランドで5月28日(木)午後5時会場、午後5時半開演。寺久保エレナカルテットのメンバーは、寺久保エレナ(サックス)、マット・ウォン(ピアノ)、ジェイソン・クロッター(ベース)スペシャルゲストにジョナサン・ブレイク(ドラム)。

新型コロナウイルス 日本を厳しく批判

米有力各紙

 新型コロナウイルスの検疫のため横浜に停泊中のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」について、11日付けのニューヨーク・タイムズは「政府が公衆衛生危機に対処しないという教科書に載る(悪い)例だ」という危機管理の専門家の声を紹介。記事ではダイヤモンド・プリンセスが「中国以外で最も感染者が多い場所」であり、「停泊を続けることで感染を拡大させている」と指摘している。

 13日付のワシントン・ポストは「日本政府がなぜもっと早く乗客の検査をし、下船させるための迅速な対応が取れなかったのか疑問だ。船にいる乗客乗員は感染の危険にさらされ続ける」と指摘、「これは基本的人権の侵害だ」とまで批判した。 

 世界保健機関(WHO)の当局者は、ダイヤモンド・プリンセスでは感染者の「劇的な増加」が見られると指摘しており、オンラインのハフポストは「感染拡大の第2の震源地」、インターネットメディアのVOXは専門家は「日本政府は、乗客がより高い感染リスクにさらされることよりも、国内での流行を食い止めることを重視しているのだろう」と指摘した。

 米国に限らず、「場当たり的」(ロシアのノーボスチ通信社)、は「まるで浮かぶ監獄」(フランスの国際ニュース専門チャンネル24)、は「右往左往が招いた惨事」(韓国のニュースチャンネルYMT)など日本の対応を批判している。

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カオルコ Animism

Lyons Wier Gallery
27日から個展

 ニューヨークで活動する吉本アーツ所属アーティストのカオルコが27日(木)から3月21日(度)まで、Lyons Wier Gallery(西24丁目542番地)で個展アニミズム(Animism)」を開催する。

 日本の伝統文化などをアートに取り入れ、女性をモチーフにした作品を得意とする。今回は近年テーマとしてきた「アイドル」をキーワードにした作品を展示し、ポジティブな意味でのフェミニズムを表現する。

 入場無料。開廊時間は火〜土曜の午前11時から午後6時まで。オープニングレセプションは27日(木)午後6時から8時。詳細はウェブサイトwww.lyonswiergallery.comを参照。

富山県立山町に注ぐ黒部の太陽

黒部ダム

日本一有名なダムを見に行く

 北アルプスの立山連峰と後立山連峰にはさまれた黒部渓谷にある「黒部ダム」。昭和38(1963)年に7年の歳月をかけて完成した黒部の水力発電用ダム建設は、東京タワーや青函トンネルと並ぶ戦後日本の一大事業といわれている。平成の時代、このダムをさらに有名にしたのは2001年に放送されたNHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトX〜挑戦者たち〜」だろう。番組放送後に話題となり「その現場を訪れてみたい。延べ1000万人もの男たちが危険がともなう過酷な現場で完成させた巨大ダム建築を見たい」と、訪問者が飛躍的に増えた。私もいつか行ってみたいとずっと思っていた。

 黒部ダムへ行くには、長野県側と富山県側からの2つのルートがある。私たちは関越道から上信越道に乗り替え快適にドライブし、長野ICで下りて善光寺を参詣してから千曲川に沿って1時間ほど走り、立山黒部アルペンルートの長野県側玄関口として発展した小さな温泉町、信濃大町に到着した。「名峰あるところに名湯あり」といわれるように、旅や登山の疲れをいやす温泉宿が点在する信濃大町は、豊かな自然と水をたたえた美しいところだった。訪れたのは昨年10月上旬、まだ紅葉は始まっていなかったが、トンボが飛び交う夕暮れ時を楽しく散歩した。大きな台風が近づいているとテレビで言っていたが、そんな不安も忘れてのんびり過ごし、ゆっくり温泉に浸かった翌朝、ダムに向けて出発した。

ハサイダー

 50階建てビルと同等の186メートル、日本一の高さがあるだけにダムに到着してからは階段が多い。いくらなんでも長い、このままずっと階段なのかと思っていると、ついに巨大アーチ式ダムに到着し、轟音とともに毎秒10トン以上の水が大きなしぶきをあげながら霧状になって落ちる放水が目に入って来る。堤から下を覗くと吸い込まれそうな、足がぞわっとする怖さがある。迫力の景色を写真に納めることができるビューポイントは展望台や外階段、新展望広場のほか、レインボーテラスでは放水を間近に見ることができ、風向き次第で細かいミストとなって降りかかってくる。もちろん晴れた日には大きな虹がかかる。世紀の難工事と言われた黒部ダム建設の苦闘、特に「破砕帯(はさいたい)」(地下水が含まれる軟弱な地盤でトンネル工事では危険地帯)工事の困難を描いた1968年公開の映画『黒部の太陽』のポスターや資料の展示もある。売店には破砕帯から湧き出した天然水や、その水を使ったアイスコーヒー、ご当地サイダーの「ハサイダー」などが販売されているので、ダムカレーと合わせてお試しあれ。

 また、長野と富山を横断する立山黒部アルペンルートの料金について「結構かかります」という情報も入れておきたい。大町からダムへ行くための「扇沢駅」で車を駐めトロリーバスに乗車(1570円・16分)、ここで観光放水が見られる「ダム駅」に到着する。見事な紅葉が見られるもっと先や立山を越えて富山まで行く場合はそこからケーブルカー(870円、5分)、ロープウェイ(1320円、7分)、トロリーバス(2200円、10分)、高原バス(1740分、50分)、ケーブルカー(730円、7分)と乗り継ぎごとに料金がかかる。ハイシーズンになるとそれらの切符を買うにも乗車するにも、そのつど長い列に並ばなくてはならない。なので個人旅行よりツアーで行く方がお得かも知れない。

 料金について多少気になったとしても、ミシュラングリーンガイドで「わざわざ旅行する価値がある」とされる3つ星を獲得した黒部ダム。観光できる期間は今年も4月中旬から11月末まで、観光放水は6月中旬から10月中旬まで実施される。時間があったら、映画『黒部の太陽』かプロジェクトX「シリーズ黒四ダム」を見てから行くとさらに楽しめるだろう。たとえばトロリーバスが走るトンネル途中に約80メートル青い光で照らされた場所があり、「破砕帯」の看板表示がある。何も知らなければ一瞬で通り過ぎてしまうが、プロジェクトXを見ていれば「ここが! 掘っても掘っても天井から崩れてきた、凍えるように冷たい地下水が毎秒660リットルも吹き出したあの破砕帯か!」と感慨深く思えるだろう。

 旅を終えた2日後、巨大な台風19号が上陸。子供の頃に体験した台風とは規模が格段に違うと思えるような暴風雨を体験した。翌朝、ほんの数日前に見たばかりの千曲川が決壊し、冠水した道路や畑に収穫直前のリンゴが泥水に浮かんでいるニュース映像を信じられない気持ちで見た。高速道路も通行止め、新幹線も運転見合わせとなっていた。あののどかな景色が、鈴なりになっていた信州のリンゴが泥だらけになってしまったと思うと胸が痛んだ。被害を受けたリンゴ生産者が1日も早く復興されることを心からお祈り申し上げます。 (本紙/高田由起子)

サマーツイードの男

イケメン男子服飾Q&A 78
ケン 青木

 若い世代の皆様はもしかしたら聞かれたことのない言葉かもしれませんが、「梅春」、または「梅春物」と呼ばれる服地、洋服があります。言葉通りに意味を御説明いたしますと、梅春、梅春物とは、年が明け新春となり、桜の花の開花前の季節、つまり今くらいの時期から春先もしくは初夏まで着られる素材、またはそうした素材を用いた衣服について意味をいたします。

 私がこの仕事についた当時は、新春と言えば”売り出し“の時期ではあったのですが、合わせていかにも春の訪れを告げるがごとく、新鮮な「梅春物」の商品が入荷しても来たものでした。例えば、実はこれは梅春に限った素材というわけでもないのですが、春らしい明るい色調のウール・

ギャバジンのスラックス、はたまたザックリとしたオックスフォード地の様な厚手の綿シャツ、さらにはシルクや綿・リネン麻等のセーター、さらにはそれらの素材の混紡セーターなど、素材もなのですが、春らしい優しい色味のブルー、イエロー、ピンクといった秋冬の色調とは対照的な明るいトーンが中心でした。

 そして紳士モノのジャケットについてですが、私たちが「梅春物」と呼んでいる生地の多くは当地において”Summer Tweed”(サマーツイード)などと言われることが多いのですね。

 当地ニューヨークに限らずアメリカ東部一帯、さらにはシカゴ、サンフランシスコ、ロスアンゼルスといったアメリカ国内の大都市におきましては、一般にこの様な「梅春物」が活躍する時期は1年の半分くらいはあるかと思うのです。つまり日本よりもより長い期間着れるワケですね。

 「梅春物」紳士服のジャケットにおける素材につきましてもウールにシルク、そしてリネンといったところが中心でしょうか。特にウールとシルクという代表的な獣毛を組み合わせた素材、サマーツイードの生地は素材感も良くてとてもお奨めです。御参考までに一部宗教的な戒律について厳しいユダヤ教徒の皆様にはウールとリネンを混紡した生地を着用してはいけないことになっておりますので、念のため。

 サマーツイードと呼ばれます、主にシルクとウールをブレンドした生地は、ザックリした風合いながら

も秋冬物の様に厚手で重くはなく、上着の下にシャツさらには明るい色の同系素材を合わせたニットのヴェストやセーターを組み合わせいただくとvery goodかと思います。さらにスラックスにつきましてもあらゆる生地や素材を試されてみてください。なぜにウール・ギャバジンを真っ先に御紹介したのかと申しますと、歩いている時の足の運び具合、これもドレープ(生地のゆとり)と言いますが、とても美しいのです(笑)、生地のフワフワした動きが(笑)。そして用途、シチュエーションに応じて綿のチノ・パンツやジーンズなども是非組み合わせてみてください。

 靴についても表革でもスウェードでもお好みで。そうそう、上着の脇のポケットはパッチ・ポケットと呼ばれます、共布を張り付けたスポーティのものがいいかも(笑)です。そして”ウインドウペイン“と呼ばれます英国カントリー風の格子柄も御奨めなのですが、格子に使われている色をセーターやヴェスト、もしくはスラックスの色として拾われますと気が利いて見えます。それではまた。

 けん・あおき/日系アパレルメーカーの米国代表を経て、トム・ジェームス.カンパニーでカスタムテーラーのかたわら、紳士服に関するコラムを執筆。1959年生まれ。