ブルックリン発祥の名物屋外イベント

 春になり、屋外イベントも次々スタート。ブルックリン発祥の名物屋外イベントといえば、さまざまなグルメが味わえるスモーガスバーグとフリーマーケットが今年も4月上旬から毎週末に開催されている。天気のいい日は散歩がてら、新作グルメや掘り出し物を見つけに行こう!

●スモーガスバーグ(フードマーケット)

 2011年5月に生まれた、ブルックリンの職人技が光るフードシーンを紹介するイベント。毎年、新たなメニューを携えて地元・地域のレストランや業者が出店する。今年も去年と同様に、ウィリアムズバーグ、プロスペクトパーク、マンハッタンのワールドトレードセンターと、お隣りのNJ州ジャージーシティの4か所で開催される。開催日は金・土・日のいずれかで、時間は午前11時から午後6時まで。

詳細はhttps://www.smorgasburg.com/

Chelsea Flea and Brooklyn Flea on Sept 19, 2020.

●ブルックリン・フリー(フリーマーケット)

 2008年にスタートしたブルックリン・フリーでは、家具、古着、収集品、アンティーク、地元のアーティストやデザイナーによるジュエリー、アート、工芸品などを販売。ダンボ地区で毎週末(土・日)午前10時から午後5時、12月ごろまで開催中。公式サイトにはいまも出店募集があるので、今年は自慢の作品を持参して参加してみては。出店料は1日150ドル。

詳細はhttps://brooklynflea.com/

●タイムアウトマーケットNY(フードホール)

 2017年にオープンした、情報誌「タイムアウト」によるダイニング&カルチャー施設。1階フードホールには各国の料理店のほか、デザートやスイーツショップがずらりと並び、コーヒーやバーのドリンクメニューも豊富。屋内施設だが、ルーフトップのテラス席での飲食も可。間近に迫るブルックリン橋やマンハッタンの夕暮れの美しさは一見の価値あり。年中無休、午前8時から午後10時まで営業中。

詳細はhttps://www.timeoutmarket.com/newyork/

冷泉彰彦氏と行くアイビーリーグキャンパス・ツアー

6月29-30日実施
名門大を巡る

 日本クラブスペシャル・ウェビナー「アイビーリーグの入り方」でお馴染みの作家・ジャーナリストの冷泉彰彦氏とアイビーリーグ・キャンパスを巡る、「冷泉彰彦氏と行く米国東海岸アイビーリーグ大学キャンパス・ツアー」(催行・JTB USAインク)が、6月29日(水)から30日(木)までの1泊2日で開催される。1日目はコロンビア大学、イエール大学、夜はボストンにて冷泉氏との夕食・交流会を予定。2日目はハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、ブラウン大学を巡る。

 参加費は1部屋2人利用の場合ひとり1160ドル、1部屋1人利用の場合ひとり1340ドル。料金には2日間の行程の車両代、ガイド代、施設使用料、宿泊代、食事代4回分が含まれる。

 問い合わせ・予約は電話201・288・5592、またはEメールmeetings-events@jtbusa.com(JTB USAインク)まで。希望者は6月7日(火)までに申し込みサイトHTTPS://CVENT.ME/Z1NGDAから。詳細はウェブサイトhttps://www.nipponclub.orgを参照。

■冷泉氏のプロフィール
作家でジャーナリスト

 ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部ディレクター。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。ベルリッツ・インターナショナル社経営企画ディレクター、州立ラトガース大学常勤講師などを歴任。著書に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)。『民主党アメリカ 共和党のアメリカ』(日経出版)。『アメリカの警察』(ワニブックスプラス新書)。『「関係の空気」「場の空気」』(講談社現代新書)など。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。Newsweek日本版公式ブログ、毎週更新中。雑誌『鉄道ジャーナル』に「鉄道技術を読み解く」連載。

マイケル・ジャクソンのミュージカルレビュー

 コロナ禍の闇の時代を経て、昨秋から再開されたブロードウェイミュージカルの数々!なかでも興味深い現象が鳴り物入りで開幕したマイケル・ジャクソンを描いた新作「MJ The Musical」である。このミュージカルには、色々な人たちから、”どうよっ”てな問い合わせがやたらと来るのである。面白いことに連絡してくるのは決まって、普段、酒、ゴルフ、ピアノバーなどにしか興味がなさそうな中年男や韓流ドラマやBTS命のおばさま達ばかり。いったい何が彼らの興味を駆り立てるのか!?  

 鑑みるにMJ氏のソロデビューアルバム「Off the Wall」は1979年、爆発的ヒットとなったアルバム「Thriller」は82年にそれぞれリリースされている。これは例えば去年恥ずかしながら還暦を迎えた私の、花も恥じらう番茶も出花の18歳と20歳の新成人となった年である。今じゃ見る影もないが、私だって、当時はお肌プルプル。恋に身を焦がし、永遠に続くと見える人生は目前に燦然と輝いてた。要は私がいっちゃんブイブイ言わせてた時の青春のBGMがMJやEW&FやABBAなんかだったのだ。こりゃ普段ミュージカルなんかに関心ゼロの、みーちゃんはーちゃん達だって、俄然興味津々となるわけである。  

 となると、この子育ても一段落ついたあたりの、暇と小金持て余してそうなベビーブーマー後期には、かなりの潜在的需要がありそうである。ブロードウェイが世界の頂点に上り詰めたマイケル・ジャクソンをほっておくはずがない。 これまで多くのブーマー世代(1946〜64)のスーパースターがジュークボックス化された。例えばビートルズ、エルビス・プレスリー、ビリー・ジョエルなど枚挙にいとまがない。これはつまり制作側にとって、ZEROベースから脚本と曲作りを始めて行くのに比べたら、知名度&人気が既に保証済みの楽曲を使った方が宣伝や話題作りもカンタンだからだ。しかも観客からすればお馴染みの曲を一緒に口ずさめるというとっつき易さも魅力。その点、マイケルのヒット曲と人気度は折り紙付なのだ。  

 脚本は世界の報道、文化、芸術に貢献した者に与える高尚なピューリッツァー賞を2度も受賞しているリン・ノッテージ。 92年には『デンジャラス・ツアー』の舞台裏を描き、日頃見れないスーパースターの得意稀な言動や、マイケルを伝説的な地位に押し上げた類稀な才能を垣間見ることができる。 これまでの所謂ジュークボックミュージカルの中には、多少なりとも、主役の光の部分だけでなく、闇の部分も描き出そうとする作品もあった。しかしながらMJ氏の晩年にスキャンダルとなったゲイ疑惑、幼児虐待など、暴露系ゴシップネタは一切描かれておらず、セリフに膨らみもユーモアもなく、舞台芸術という観点からは、薄っぺらいと言わざるを得ない。これは親族がクレジットされている事からみて、マイケルの家族に忖度したのであろう。なので細かい内省的な諸事は取っ払って、単純にお馴染みの曲とダンスで70〜80年代のパーティ気分に浸りたいという向きにはうってつけなのかも知れない。なので冒頭に述べたおっちゃん&おばちゃん達なら、フィーバーできるかもかもーん。

 ブロードウェイって、ミュージカルって、楽しいだけでなく、人生訓がいっぱい詰まった素晴らしいもんなんですね。

(写真)@Matthew Murphy

トシ・カプチーノ:キャバレー・アーティスト/ 演劇評論家、ジャーナリスト130名で構成されるドラマ・デスク賞の数少ない日本人メンバー。週刊NY生活「新ブロードウエー界隈」連載中。TV:TBS「世界の日本人妻は見た!」日本テレビ『愛のお悩み解決!シアワセ結婚相談所』「スッキリ」「ZIP!」studio82℉所属タレント

ミニマリズム宮本和子の展覧会JSで29日から

「挑む線」

 ジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリー(東47丁目333番地)は29日(金)から7月10日(日)まで、宮本和子の展覧会「宮本和子:挑む線」を開催する。宮本は60年代に男性中心に発展を遂げていたミニマリズム運動に風穴を開け、貢献をしたアーティストで、今回は宮本の美術機関での世界初の個展となる。展覧会デザインは、NY拠点のデザイン事務所、ランスマイヤー社の創設者であるレオン・ランスマイヤーが担当する。

 宮本は1942年東京生まれ。64年NYに移住し、マンハッタンのローワー・イーストサイドを拠点に制作を続けてきた。同展では、ミニマリズム運動に独自の表現法で挑んだ60年代後半の絵画やドローイング、70年代の空間的構造体の作品、87年から2000年代のパフォーマンスによる概念的実験や「キモノ」シリーズなどを展示する。

 入場料は一般12ドル、学生・シニアが10ドル、JS会員・16歳以下、障害者とその付添者は無料。開廊時間は木〜日曜の正午から午後6時まで。チケット・詳細は電話212・715・1258、またはウェブサイトhttps://www.japansociety.org/を参照。

(写真)Courtesy of the artist and Zurcher Gallery, New York/Paris

【今週の紙面の主なニュース】(2022年4月16日号)

(1)米要人が次々コロナ感染 ペロシ下院議長やアダムス市長も

(2)地下鉄駅で発砲事件  ブルックリンで16人が負傷 

(3)花束を抱えた者同士 ニューヨークの魔法

(4)JAPAN Fes開催 日本の食とアート

(5)在米邦人の声を 国会に届ける方法

(6)平和の鐘の音 ウクライナとロシア大使館に

(7)暴力団幹部をNYで逮捕 対戦車砲を薬物で購入

(8)生ビールの注ぎ方 サントリーが披露

(9)JFK空港でローラースケート  レトロなTWAホテル

(10)ミュージカルCATS  松浦麻未さん

米要人が次々コロナ感染

訪日延期のペロシ下院議長やアダムズNY市長も

 米国ではマスク着用義務などの規制が撤廃されつつあるが、ここに来て思わぬ感染も出ている。ナンシー・ペロシ連邦下院議長(82)は7日、新型コロナウイルスの検査で陽性と判定され、9日から予定していた日本や台湾などアジア訪問は延期となった。追加接種(ブースター接種)済みで症状はなく、CDC(米疾病対策センター)の規定に従い自己隔離に入った。

 ペロシ氏は5日と6日にホワイトハウスでのイベントに参加し、バイデン大統領の近くにマスクなしで同席していた。ホワイトハウスによれば、大統領は6日に受けた定期検査は陰性だった。

 10日にはニューヨーク市のエリック・アダムス市長(61)が新型コロナウイルスに感染したことが確認された。症状は声がれのみのため、自己隔離でリモートで公務を続けると発表された。

 市長の感染については、9日に首都ワシントンのグリディロン・クラブで開かれた夕食会が疑われている。出席したメリック・ガーランド司法長官やジーナ・レイモンド商務長官、米下院情報特別委員会のアダム・シフ委員長など感染者が相次いでおり、ワシントン・ポスト紙は9日、出席者のうち67人が感染したと報じた。

 日本の厚生労働省は11日、米国から成田空港に3月26日到着した30代女性がオミクロン株派生型「XE」に感染しているのを確認したと発表した。XEは従来型BA・1と派生型BA・2の遺伝情報が交ざっており、感染者の確認は国内で初めて。女性は米国に滞在歴があり、ファイザー製ワクチンを2回接種済みだった。無症状だったが入国時の検査で陽性反応が出たため陽性者用の施設で所定の期間療養した後、退所している。国立感染症研究所が詳しく解析した結果、XEと判明した。

 世界保健機関(WHO)によると、XEは1月19日に英国で初めて検出され、3月29日時点で約600件の症例が確認されている。欧州では、デルタ株とオミクロン株のBA・1の遺伝子が交ざった「XD(デルタクロン株)」も80例以上見つかっている。

 米国の新型コロナウイルスの感染状況は、4月10日の時点で1日平均3万2883人の新規感染者で、ピークだった今年1月14日の4%まで下がってはいるが、過去2週間で見ると横ばいとなっている。入院数、死亡者数はともに減少し続けている。しかしニューヨーク州など北東部ではオミクロン株の派生型「BA・2」の広がりで新規感染者が増加。NY市では陽性率が、8日時点で3・3%となっている。

花束を抱えた者同士

ニューヨークの魔法 27
岡田光世

 真紅のバラの花束を抱えて、友人のアパートメントのエレベーターに乗る。中には男の人が三人いて、ひとりがリボンの付いた色とりどりの花束を抱えて立っていた。

 まあ、偶然ね。なんてきれいな花、と私が声をかけると、私の花に手を向け、君のもね、とその人がほほ笑んだ。

 これはフラワー・ディストリクトで買ったんだよ。あそこはすばらしいんだ。

 フラワー・ディストリクトは、マンハッタンの六番街と七番街の間の二十八丁目を中心とする一帯だ。観葉植物、鉢植え、切り花、ドライフラワー、造花、資材など、花に関連するものなら何でも扱う店が、軒を並べている。

 ジャングルのように造花だけで埋めつくされた店もあれば、店そのものが冷蔵庫になっている、切り花の専門店もある。

 結婚式のとき、私たちもあそこで大量に花を買ってきたわ。もうずいぶん前のことだけど、と私が思い出話を語る。

 ウエディングドレスの色に合わせて、オフホワイトや淡いピンクのバラをたくさん買い込んだ。

 フラワーアレンジメントを習っていた友人が、私が持つブーケや夫の胸に刺すブートニアなどを作ってくれた。   

 教会の結婚式では、証人が男女三人ずつ、前に立った。彼らのブートニアやブーケも用意しなければならない。

 式の日まで花が新鮮であるようにと、友人はアパートメントで冷房をかけ続け、彼女の夫は風邪を引いてしまった。ニューヨークの緯度は青森と同じで、五月上旬でもまだ肌寒い日がある。

 それは大変だったね、と男の人が笑った。

 で、と彼が続ける。

 Are you still married

the same man?

 今も同じ男と結婚してるのかい?

 みんなが笑った。二組に一組が離婚する、アメリカ人らしい質問だ。

 そうよ。

 Then   was worth it, right?

 じゃあ、友だちもその甲斐があった、ってことだろ?

 君たち夫婦が今も一緒なら、友だちの夫も風邪を引いた甲斐があったね、ということだろう。

 彼はそう言うと、エレベーターを降りていった。

 自分の思い出ばかり話して、彼の花束について聞くのを忘れてしまった。

 ユーモアたっぷりの紳士から、あの花束を贈られる人は、想像するしかない。

 このエッセイは、文春文庫「ニューヨークの魔法」シリーズ第8弾『ニューヨークの魔法のかかり方』に収録されています。

https://books.bunshun.jp/list/search-g?q=岡田光世

地下鉄駅で発砲事件

ブルックリンで通勤の朝16人が負傷

 ブルックリンのサンセットパークにある地下鉄36丁目駅で11日午前8時30分、発砲事件があり、通勤客など16人が負傷した。このうち10人が銃で撃たれた。現場から逃走した容疑者と見られる男はガスマスクとオレンジ色のベストを着用していたという。現場では複数の発炎筒が見つかり駅構内が煙で包まれ、ブルックリン地域の地下鉄が午後まで駅が封鎖されるなど大混乱となった。警察はテロ事件の可能性を否定。ニューヨーク日本総領事館によると日本人が事件に巻き込まれたという情報はない。(写真)道路や地下鉄が封鎖された事件現場(写真・三浦良一)

地下鉄銃撃事件
重要参考人の顔写真公開

 エリック・アダムズ市長は「私たちは暴力的な少数の者たちに私たちの街を明け渡すことはしない」と述べるとともに、36丁目駅にある防犯カメラの一部が作動していなかったことなどから犯人特定が難航しているようだと語った。

 目撃者によれば銃撃者が乗り込んだのはキングスハイウェイ駅で、警察は午後4時30分頃、その駅から5ブロックのところにバンが置き去りにされているのを発見。バンのキーは、グロック9ミリ拳銃、弾倉3個、手斧、花火、ガソリンと思われる液体など、犯人が残したものと思われる地下鉄車両内の持ち物の中から見つかったという。

 また、名前が書かれたクレジットカードが銃撃現場で発見され、警察は重要参考人としてフランク・R・ジェームズ氏(62)を特定し、顔写真も公表した。フィラデルフィアとウィスコンシンに住所を持っており、数日前にフィラデルフィアでUホールのバンを借りていた。ユーチューブに何十本もの動画を投稿しており、さまざまなニュースを罵詈雑言で非難していた。黒人の暴力は黒人女性のせいであるとか、ロシアのウクライナ侵攻は白人がジェノサイド(大量虐殺)をする証拠だなどと述べている。

速報

銃乱射事件犯人を逮捕
NY市警が発表

 ニューヨーク日本総領事館は13日午後3時17分、4月12日午前8時24分ころ、ブルックリン区中西部に位置するサンセットパークの地下鉄36丁目駅(D・N・Rライン)に向かっていたマンハッタン方面行きNライン車両内おいて発生した銃乱射事件に関して、犯人を逮捕したとニューヨーク市警が発表したと在留邦人に伝えた。「邦人の皆さまにおかれましては、引き続き日常生活において十分に周囲の状況に配意するようお願いいたします」と注意を呼びかけている。 (13日19:55)

JAPAN Fes 日本の食とアート

ニューヨーカーを魅了

 日本のストリート祭り「ジャパンフェス」が9日、6番街24丁目から26丁目までを貸し切りで祭を行った。文字で絵を書く書道アーティストの原愛梨さんが来米し、地面に広げた紙いっぱいにマイケル・ジャクソンの姿を描き、絵の中にking of popの文字を描き入れると大きな拍手が湧いた。ジャパンフェスは今年12回の開催を計画、4月31日と5月1日にはヌードルフェスを開催する予定だ。(写真・植山慎太郎)

「在外邦人の声を一括して国会へ届ける方法」

 今年は日本の参議院選挙があり、在外選挙も行われる。今回の選挙にあたっては、以前とは全く意味が違っていることを感じる。以前の在外選挙というのは、いわば在外の観点から日本の国政に関して選択を行なって母国に貢献するという性格のものであった。今回は違う。在外邦人の権利について、強く声を上げて行く時期が来ている。

 契機となったのは、新型コロナウイルスの感染拡大だ。今般のパンデミックが収束するまでは、日本の厚生労働省、法務省、外務省の措置に対して、とにかく協力する姿勢を持つ、これは全ての在外邦人の共通の態度であることは間違いない。だが、「その後」は違う。事態が落ち着いた時点で、一連の「水際措置」の制度と運用に関する徹底した検証を求めたい、この点においても在外邦人の姿勢に大きな違いはないであろう。

 例えば、日本様式の検査証明書が使いづらい問題、自主隔離に強制隔離、航空機内における濃厚接触の事後通知など、具体的な点に関しては、検証して現実的な改善を協議することは可能であろう。また、この間、多くのクレームの矢面に立って来られたであろう、在外公館の現場の皆さまのご苦労にはむしろ頭を下げるしかないと思っている。

 けれども、次の4つの問題は深刻さのレベルが違う。1つ目は、検査証明書の不備を理由に日本国籍者の入国が拒否された事例である。2つ目は、日本国籍者の配偶者の入国が不可能となったことで、外国人を配偶者に持つ日本人の人権が著しく毀損された事例。3つ目は、公職に就任等の理由で現地国籍を取得し、法務省等の勧告に従って正直に国籍離脱をした方の日本入国が不可能になった事例だ。これに加えて、4つ目としては、ウクライナ避難者を政府専用機で日本に収容する際に「日本国籍者を除外」したという驚愕すべき事件が発生した。

 つまり役所の判断が、狭い意味の法律・規則に縛られてしまった結果、国家を構成する要素である国民の権利が侵害されたのである。これは著しい国のかたち(=国体)の歪みであり、在外邦人として看過できない。また同時に、所轄の官庁と、その判断の背後にある国内世論には、在外邦人の置かれた状況に対して、絶望的なまでの無理解があるということも示している。

 これは緊急事態だ。伝染病、そして戦争という災禍において、母国が自分達を守ってくれない、そこに悪意はないが、しかし絶望的な無理解と制度の不備があるという現状は深刻だ。これに対しては、主権者がその権利を行使することで声を上げて行かねばならない。

 手段はある。今年7月の選挙で参議院の比例区を使うのだ。比例区というのは全国における単純集計によって個人と政党が得票する制度だが、在外からも投票できる。ここの当選ラインは全く単独の政党を結党して戦うと100万票必要になるが、政党内の名簿に乗せてもらえれば自民党で10数万票、野党だと数万票で当選可能だ。主要な政党の名簿に「在外代表」を送り、例えば、最初に頑張って世界中で30万の人が参院選の在外選挙に投票することとして、その票を自民の2人に10万、10万、野党の2人に5万、5万という割り振りができれば、在外邦人の代表を4名参議院に送れる。

 この4名が国会内で活動することで選挙制度改正が進み、仮に在外投票率が50%になれば、次の参院選では、自民3名、野党4名が送れて、参院での勢力は11名になる。これは一大勢力である。つまり、議員に一種のロビイストになっていただくのである。次のステップとしては、参院地方区に1区在外代表区をもらうのだ。今は、最低で福井選挙区で2議席ある。在外区の議席というのは十分視野に入ってくる。更に衆院についても、「直前の住民票のある選挙区」などという根拠薄弱な割り当てではなく、どこかのブロックに付けて衆院在外区を設置するのだ。

 勿論、権利には義務も伴う。これは皆さん様々なご意見があって簡単に一本化できないかもしれないが、将来的には日本国籍者には全世界合算課税で日本に納税(但し二重課税は回避)という制度を考える必要があるかもしれない。この夏の参院選、こうした在外邦人の「志」に応えてくれる候補者の登場を待ちたい。

(れいぜい・あきひこ、作家、ニュージャージー州プリンストン在住)

平和の鐘の音聞いて

国連平和の鐘を守る会の高瀬代表レプリカ寄贈

ウクライナとロシア在日両大使館に

 一般社団法人国連平和の鐘を守る会(本部東京都)の代表、高瀬聖子さんが3月18日、東京の在日ウクライナ大使館を訪問し、平和を願う「国連平和の鐘」のレプリカを贈呈した。この鐘は、世界のコインを溶かして鋳造した4キログラムの鐘で、国連本部にある鐘を寄贈した中川千代治が行ったように鎌倉宮で入魂式を行った。

 高瀬代表によると、同大使館で対応したセメニューク公使と共に平和の鐘を鳴らし、ウクライナの平和が一日も早く訪れるよう祈った=写真右=。また 3月22日には、在日ロシア大使館を訪問し、同様にガルージン駐日大使に「国連平和の鐘」のレプリカを贈呈した=写真左=。高瀬代表が平和の鐘について説明すると、同大使は今のウクライナ問題に至る経緯と歴史を1時間以上にわたり説明したあと「平和を祈る気持ちはロシアも同じ」と述べ鐘を鳴らし、「この音が駐日ウクライナ大使館とホワイトハウスにも届くよう願った」と話したという。

 高瀬さんは「どちらの国にも平和になって欲しい、国連平和の鐘は国も民族も宗教も考え方の違いも乗り越えるところに平和があるという中川千代治の思いですから、この様な時こそ両方に必要だと考えています」と話している。

暴力団幹部を逮捕

盗品の対戦車砲を薬物で購入

マンハッタン

 アフガニスタンの米軍基地から盗まれたと思われる地対空ミサイルなどの武器を薬物と引き換えに購入しようとした疑いで、日本国籍のエビサワ・タケシ容疑者(57)ら3人が4日、タイ国籍のソンホップ・シンガハシリ容疑者(58)が5日、マンハッタンで逮捕された。マンハッタン連邦地方裁判所が7日、明らかにした。

 連邦司法省ニューヨーク南部地区の声明によれば、エビサワ容疑者は「ヤクザとしても知られる日本の多国籍組織犯罪シンジケートのリーダー」で、日本、タイ、ミャンマー、スリランカ、そして米国を結ぶ麻薬および武器取引ネットワークに関わっているとして、2019年から米麻薬取締局(DEA)の捜査対象となっていた。

 昨年2月、デンマークのコペンハーゲンに渡航したエビサワ容疑者に覆面捜査官が接触し、アフガニスタンの米軍基地から盗まれた兵器を購入する計画を立てていることを突き止めた。エビサワ容疑者は仲買人として、ミャンマーの複数の反政府武装民族グループに、携帯型M-72軽量対戦車ロケットランチャー、M-60機関銃10丁、全自動小銃10丁などを送る予定だったという。

 この支払いの一部として計画されたのが大量の薬物で、エビサワ容疑者はタイ国籍のソンホップ・シンガハシリ容疑者(58)とともに、ニューヨークでメタンフェタミン500キログラムとヘロイン500キログラムの麻薬を販売しようとした。

 覆面捜査官が昨年6月と9月にエビサワらに接触したところ、シンガハシリ容疑者は米と麺の箱に入れて麻薬を密輸したと覆面捜査官に語り、見本として麻薬の一部を提供した。

 ほかに逮捕されたのは、タイと米国籍両方を持つ国スクサン・ジュラナン(53)とタイ国籍のソンパック・ルクラサラニー(55)。兵器は竹、メタンフェタミンとヘロインにはアイスクリームとケーキという暗号を使っていた。エビサワ容疑者はマネーロンダリングの容疑でも逮捕された。麻薬輸入や武器所有の陰謀などにより、4人は最高で終身刑の可能性がある。

 NYポストやNBCニュースなど米国メディアはエビサワ容疑者を「ヤクザのボス」として報じた。

(写真)兵器を構える海老沢容疑者(写真・米司法省提供)