I am sorryと首相が言える国 海外日本人サポート

英国のスナク首相のsorry

 英国のリシ・スナク首相は7月5日、爽やかな辞任会見を行いました。国民の皆さんに対してと、一緒に闘い落選した保守党の議員に対してI am sorry と2回述べました。

 そして、次期首相となるスターマー労働党党首に対して「政敵ではあるが、彼が首相として成功することは、私達全員の成功です。彼は立派で、社会を思う心にあふれる人で、私は彼を尊敬しています」と述べました。

 スナク首相はまた「your Prime Minister」と何回か述べました。首相と国民との相互信頼の強さを感じました。

豪州のラッド首相のsorry

 この演説は、2008年の豪州のケビン・ラッド首相が、先住民アボリジニに対して行った演説を思い起こさせます。

 豪州では、約10万人のアボリジニの子供を親から引き離す分離政策が1910年代から1970年代まで行われました。ラッド首相は首相として、政府を代表して、議会を代表して6回I am sorry と述べました。歴代政権の間違いを正し、奪われた世代の苦しみを癒すためにと。全国で白人を含む多くのアボリジニの人々がこの演説を聞き、抱き合って涙を流しあいました。

 その後の歴代首相も党派を超えて、アボリジニの住宅・食料などの格差是正政策を講じています。

岸田首相のお詫び

 岸田文雄首相は、7月17日障害などを理由に強制的な不妊手術を認めていた旧優生保護法が憲法違反だと裁判を起こしていた原告約130人を首相官邸に迎え謝罪しました。「旧優生保護法は、憲法違反で、政府の責任は極めて重大だ。心から申し訳なく思っており、政府を代表して謝罪を申し上げる」と。日本の首相にしては稀なI am sorry ですが、2008年までの48年間も約2万5000人が強制手術を受けていたこと、最高裁判決まで政府が対応を怠ってきたこと、そしてこの謝罪が国民的広がりに欠けていることが残念です。

 日本ではsorryが「ご免、ご免」と軽くとられがちですが、公式謝罪であることも認識すべきです。

米国や日本のトップのsorry

 米国の大統領がI am sorryと述べたことはあまり聞いたことがありません。黒人問題やインディアン問題など幾つかの課題があるのではないかと拝察します。

 米国に加えて日本でも、今年選挙が行われる可能性があります。トップがI am sorryと言えることが国民との信頼関係を高め、民主主義を強化すると思いますが、いかがでしょうか?

 ふじた・ゆきひさ=慶大卒。世界的な道徳平和活動MRAや難民を助ける会で活動した初の国際NGO出身政治家。衆議院・参議院議員各二期。財務副大臣、民主党国際局長、民進党ネクスト外務大臣、横浜国立大講師等歴任。アメリカ元捕虜(POW)の訪日事業を主導。現在国際IC(旧MRA)日本協会会長。岐阜女子大特別客員教授。

日本語学ぶ1万7000人

全米113大学にコース

日本語教師4100人に増加

 在米日本国大使館は今年2月、米国で日本語学習者が約1万7000人いると公表した。また国際交流基金の調査によると教育機関は2018年に米国で1446あったが21年には1241と205機関が減少したものの、日本語教師数は、2018年の約4000人から21年には約4100人に増加した。

(写真上)学生たちによる日本語研究の発表会(5月9日、ハンターカレッジで)

 「日本語学習の目的」=別表=によると、日本のポップカルチャーや文化や旅行などの人気の高い学習目的が大きな動機となっていることが分かる。

 さらに、米国の大学における日本語学部が最近増えてきており、現在、国内には113の大学に日本語学部や学科が設置されている。そのひとつニューヨークのハンターカレッジの日本語・日本文化の専攻学料が、高等教育における日本語学習の良い実例だ。

 今年5月9日、NYの日系コミュニティーの各分野で活動する日本人を訪ね、日本文化や日本語の研究をした時の成果を発表した。同大学では、学生たちに日本語のスキルを身につけるだけではなく、日本文化や社会について深く学ぶ機会を提供しているといえる。

 このような教育機関の存在が、日本語学習の普及に大きく貢献している上、大学生が日本人と異なる視点から、日本のことを分析できるようになると考えられている。

 また、JETプログラムの同窓会組織であるUS JET Alumni Association (USJETAA)も日本語の普及に貢献している。アメリカには約3万5800人のJETプログラムの同窓生がおり、日本語学習者の強いネットワークを構築している。

 特に、ニューヨークにはJETプログラムの同窓会ニューヨーク支部があり、イベントにはJET以外の人も参加できる活動が行われている。日本のグローバルシフトが進む中で、アメリカ人に向ける日本語教育が不可欠である。

 (フェデリコ・グルソン)

ローカル屋外イベント

■ダック・ダービー

 ウェストチェスター郡の公園の保護・改善を目指すNPO財団「WPF」主催による初のダックダービーで、ヨンカースにあるティベッツブルック公園内のプールに約1000羽のラバーダックを放流して順位を競う。入場料として大人はラバーダックを購入し(1羽20ドル、3羽45ドル、10羽125ドル)ダービーに参加する。収益金は公園の湖の維持と再生費用に使われる。ダービーの賞金は1位1000ドル、2位・3位と最下位には賞品が贈られる。各ダックには購入者に対応した番号が記されるので、参加者はその場にいなくてもOK。後日WPFから入賞通知が届く。イベントは8月1日(木)午後5時30分から7時30分まで(雨天の場合7日に順延)。会場には飲食の屋台のほか、バウンスハウスなど子供向けアトラクションがあり、子供全員にアイスクリームが無料で提供される。Tibbetts Brook Park(355 Midland Ave,Yonkers)

https://www.thewpf.org/events/duckderby

■ダッチェス・カウンティ・フェア

 ウェストチェスターの北がパトナム郡、その北のダッチェス郡が開催するお祭りで、今回178回目を迎える。農業と酪農が盛んなダッチェス郡ならではのユニークなアトラクションが満載。家畜の品評会、草競馬、警察犬やフリスビー犬のデモンストレーション、バイクとBMXのスタントショーのほか、ミニゴルフに農業のうんちくを絡めた「アグリゴルフ」や簡易釣り堀などの参加型アトラクション、子供向けふれあい動物園などなど。会場では各種飲食店とギフトショップのテントが並び、各所で生演奏やジャグリングなどのパフォーマンスも行われる。会期は8月20日(火)から25日(日)まで、時間は午前10時から午後10時まで(最終日の日曜日のみ午後8時まで)。移動遊園地のライドは午前11時から閉園まで。チケット18ドル(11歳以下無料)、ライドは別料金。会期前日までオンラインにて割引チケット販売中。会場はDutchess County Fairgrounds (6636 Springbrook Ave, Rte. 9, Rhinebeck)

https://dutchessfair.com/

■森林浴コンサート&フェスティバル

 伝説の音楽イベント「ウッドストック」が開催されたのは実はウッドストックではなく、サリバン郡べセルの農場で、その跡地は現在、美術館や野外シアターを備えた「ベセルウッズ芸術センター」となっている。その芸術センターから車で5分ほどの農園を会場に9月7日(土)森林浴コンサートが開催される。この森林浴コンサートは当農園で有機栽培の花を育てている阿部かやさんが、4年前にコロナのパンデミックで活動の場を失ったミュージシャン達を集めて始めたもので、その後毎年開催し、今回で4回目を迎える。

 コンサートは午後4時30分から、ジャズシンガーのマンデー満ちるさん(=写真上)をメインアーティストに迎え、ミーシャ・ツィガノフ(ピアノ)、ボリス・カズロフ(ベース)、ドナルド・エドワーズ(ドラム)らが演奏する。会場では午後3時からお茶や生花、習字、折り紙、手織り機のワークショップ(一部有料)が行われるほか、おにぎり、ビビンバ、フィリピン料理と地元のアップルサイダー、ハチミツ、日本酒の獺祭、陶芸、京都しぼりエコバッグなどのベンダーが出店。コンサート終了後にはスイカ割りを楽しむ。マンハッタンから車で約2時間、豊かな自然の中で森林浴と共に楽しむ音楽と、アジアの文化に触れるユニークなイベント。入場料としてひとり20ドルの寄付を募る(18歳以下無料)、犬も入場可。会場Momoglobalflowers Biodynamic Flowers Farm (414 Swiss Hill Rd, Jeffersonville)

イベント詳細とチケットhttps://gofund.me/16b4a59d 

問い合わせEメール[email protected]まで。

米語ウオッチ 米国で続々と生まれる新語 

旦  英夫・著

PHPエディターズ・グループ・刊

 本紙経済面に隔週で連載されているコラム「米語Watch」の単行本第2弾が出版された。「米語ウォッチ・アメリカの『今』を読み解くキーワード131」(PHP刊)だ。

 このコラムは2013年から始まり、「米語」を表題にして読者にアメリカの現状と変化を刻々と伝え、好評を博してきた。6年前に、第1弾「米語でウォッチ・日本からは見えないアメリカの真実」が出版され、今回はその後に書かれたコラムの中から131を選び、内容を更新して本にしたもの。

 本書は、文化・生活、社会、経済・ビジネス・技術、政治・法律の4章に分かれていて、全編カラー版でキーワードの解説と例文を見開きにし、とても読みやすくできている。 

 著者による本の紹介はこう綴られる。「今、アメリカは大きな変動の渦中にあります。保守派と進歩派の対立が社会の分断を招き、国内に大きな混乱を生み出しています。そのような状況の中、人種間対立、犯罪対策、銃規制、人工中絶、 移民問題、気候変動、所得格差、LGBTQ対応などの課題で論議が沸騰しています。またパンデミックの収束に伴い、アメリカ社会・文化には多様な新しい現象が生まれ、それに伴う興味深いキーワードがたくさん出てきています」

 最近のコラムの中では、Hallucinate(AIが誤った回答・情報をばら撒く)、Mocktail(ノンアル・カクテル)、Spoiler Candidate(壊し屋候補者)、DINKWAD  ( 共稼ぎ、子供はなくてワンちゃんと)、Gambling Addiction(ギャンブル中毒)などのフレーズが読者の関心を惹く。

 著者によると、ニューヨーク・タイムズなどの主要紙に目を通し、アメリカの友人たちとの会話の中から、キーワードを探すのが最大の楽しみだそうだ。

 旦英夫氏は総合商社駐在員、ニューヨーク州弁護士、会社役員として約45年の歳月をアメリカで過ごしてきた。弁護士として、クライアントに法律のアドバイスをするのに加えて、アメリカという国の仕組みを理解してもらい、ビジネスを成功に導くと同時にリスクを避けることを大事にしたとのこと。その中から、米語をベースに米国社会の実相を説明する発想が生まれたそうだ。

 米語コラムは、今では朝日新聞とAsahi Weeklyにも「米国が分かるキーワード」として連載されている。そこで使われている「あしたのんき」さんによるユーモアたっぷりのイラストが各ページを飾り、この本を非常に楽しい読み物にしている。アメリカ人との付き合いやビジネスにおいて、 変貌するアメリカの「今」を理解するために、貴重な情報を提供する一冊と言える。米国では、今週から紀伊國屋書店ニューヨーク本店に入荷し、店頭に並んだ。9月には同書店で著者、旦英夫さんによるトークと著者サイン会が行われる予定だ。言葉は時代を映す鏡のような存在。鏡に映った姿を見て今を感じるか古くなったと感じるかは己のブラッシュアップ次第だ。(三)

アートの力を信じてこれからも生きる

NYで個展開催中の日本画家

吉澤 舞子さん

 ブルックリンのパークスロープにある非営利団体Jコラボで、6月21日から8月25日まで個展を開催している。同所は日米文化交流研究所「ブルックリン・ビューティー・ファッション・ラボ」としてこのほどリニューアルオープンしたもので、その開幕初日に来館者たちを魅了したのが1階ギャラリーで開催された吉澤舞子さんのボディペインティングの実演だった。

 千葉県出身で、2008年に女子美術大学短期大学部造形学科絵画専攻で卒業、多摩美術大学美術学部絵画学科日本画専攻三年次に編入し、在学中に雪梁舎美術館フィレンツェ賞展ビアンキ賞を受賞、11年に1か月のフィレンツェ研修滞在をした。12年に多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻日本画研究領域修了。

 日本国内では秋野不矩美術館『加山又造と継承者たちー新たな地平を求めてー』(2023)ほか数多くの作品展を開催しているが、最近ではポーラ本社食堂に『エルピスの花冠』が所蔵され、企業のシンボルロゴなども手がける現代日本画家だ。

 大学卒業当時は、感覚として、ナルシシズムを満たす行為を官能、方法として、欠如したものを取り入れる行為を生殖と考え、制作する動機とそれらの行為は、非常に近しいものと感じていたが、現在は、当初のテーマから少しはなれて東洋医学、全体として生きることへの表現を主軸にしている。内経図という医学解剖図があって、西洋医学のようにくまなく光を当て悪い部分を取るというのではなく循環をよくする方法で、漢方のような自浄作用で自己と他者、個と社会のかかわりを取り上げる。絵もまた循環をよくしないといけない対象であり、感情を吐き出す、自分にとって絵は箱庭療法でもあるという。

 これまでの人生では絵が自分を救ってくれたと思っている。紆余曲折あった20代のなかで、絵が神様みたいなものになっていった。感情は人それぞれ、いろんな感情、蓄積された物語を作品に詰め込む。

 「私の作品は、自己の体験を受け入れ、認識し、アイデンティティを再構築していく過程をテーマにしています。このテーマは、日本の自然環境と、その中での人々の生き方に深く根ざしています。日本は豊かな自然に恵まれていますが、同時に地震や台風などの自然災害とも共存しています。私たちは、これらの自然の力を受け入れ、それに順応することで、強靭さと調和の精神を育んできました。毎日絵日記のように言葉や文章を描き溜め、それを本画で組み合わせながら絵を作っています。AIが進む時代において、自らの中に蓄積された物語を平面の中で再構築し、それを発表することで絵画の持つ素晴らしさを伝えたいです」

 ニューヨークでは、アウトプットばかりで日本で過ごした時間を自分のために少しだけ使うつもりだ。この地でインプットするものによって自分の中にどのようなケミカルの変化が起こるのかはまだ現在進行中の身には分からない。8月4日には、ヨガのイベントとアフターパーティーが作品展示会場である。この地における人との出会いもまた楽しみだという。

 (三浦良一記者、写真も)

千葉さん空手道場で和菓子作りを指導

 日本とニューヨークで活動する料理研究家の千葉真知子さんが7月10日、ニューヨークの本間空手道場(本間雅彦会長)で和菓子の指導を行った。当日は、生徒9人がお干菓子、練り切りを体験した。

 千葉さんは、国内外の学校では和菓子の解説やデモンストレーションをしたことはあるが、空手道場での指導は初めて。空手道場といっても空手を指導するわけではなく、日本文化と食文化の両方を紹介するとあって、指導を受ける子供たちも興味津々。道場の和のテイストがする空間で、空手を学ぶ子供たちが大きなテーブルと椅子を運び入れ、テーブルを拭くとすぐに水やおしぼりを用意、和菓子ワークショップの場はあっという間にできあがった。

 子供たちはテーブルの前に立ち並び、大きな声で「おはようございます」と挨拶。道場で学ぶ子供たちは全員米国で育ったアメリカ人だが、日本の伝統文化である空手道を学びながら、礼儀作法も正しい言葉使いも習得しているようだ。 

 今回、空手道場の子供たちに和菓子の指導をするきっかけとなったのは、長野県松本にあるリーダー養成の学校として有名な才教学園の紹介。千葉さんが、日本の学校として初めてSTEM教育(Science, Technology ,Engineering、Art、Math)を導入している同校をサポートしてきた関係から、この空手道場での和菓子の指導の提案を受けたという。

 千葉さんは「すべての面で生徒たちの礼儀作法がとても行き届いていて、和菓子を作るときの相手に対する思いやりなどにもあらわれ、生徒たちは、和菓子の材料を手にしたときに他の人の材料にもちゃんと気配りをしてくれたのには驚きました。また同時に皆アイデアに富み、お干菓子と練りきりのそれぞれ違う材料をミックスした新しい作品まで作り出してくれるなど、それまでの私の指導経験でも初めての一味違う和菓子の完成品に、この生徒たちから本当に多くのことを経験させていただいた想いでした」と話していた。 

NJ州でグループ展


 ニューヨーク在住の日本人アーティストと、アメリカ人アーティストが参加するグループ展「アート・オブ・サマー」が、8月30日(金)まで、NJ州のハッケンサック・パフォーミング・アーツ・センター(102 State St, Hackensack)で開催されている。日本人作家は、廣瀬公美、平之内美穂、板東綾子、鴨澤誓子、大槻素子の5人。 入場無料。詳細はウェブサイトhttps://www.hacpac.org/を参照する。

編集後記

【編集後記】

 みなさん、こんにちは。 今週はニューヨークで日本映画に関係する大きな映画祭が2つ同時期に開催されました。一つはジャパン・ソサエティーが開催した「JAPAN CUTS」。もう一つは第23回NYアジアン映画祭。そのどちらでも日本の俳優がアワードを受賞しました。アジアン映画祭では「キングダム 大将軍の帰還」で山﨑賢人さんが「BEST FROM  THE EAST」賞を受賞しました。JAPAN CUTSでは、その年の最優秀賞ともいえるCUT ABOVE賞が森山未來氏に贈られました。そして生涯功労賞が映画「大いなる不在」(近浦啓監督)の主演俳優、藤竜也さん(81)に贈られました。藤さんは「俳優生活の晩年に素晴らしい仕事をさせていただきました」と述べたあと「今回ニューヨークで映画祭に参加して、感慨深いストーリーがあります」と切り出し、いまから48年前の1976年のNY映画祭に参加した藤さんが主演した大島渚監督の日仏合作映画「愛のコリーダ」が検閲にひっかかり、上映中止になって大変残念な思いをしたエピソードを語り始めました。そして今回の滞在中に、なんとそのオリジナルの「愛のコリーダ」ノーカット版が48年ぶりにニューヨーク市内の別の劇場メトログラフで米国初の劇場公開されるとあって、藤氏はそちらの劇場にも顔を出し、上映後の挨拶で「ほぼ50年経って、観客の皆さんの前でハローと言えるのは本当に嬉しい」と語りました。今週号の1面、19面(EVENT GUIE欄)、20面で紹介しています。俳優生活62年の間に100本以上の映画に出演した藤さん。「私の出演した映画で何が一番大事な仕事かと問われると1つは『愛のコリーダ』、もうひとつがこの『大いなる不在』です。それほどこの2つの作品は私にとって重要な仕事です」と述べました。今回はその両作品が、滞在中に場所を変えてほぼ同時期に上映されたわけですから、藤氏にとっての半世紀ぶり2度目の今回のNY訪問は、実りのある、ダブルの喜びだったに違いありません。私もこういう取材は、この仕事をしていてよかったなと記者冥利に尽きます。それでは、みなさんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)
  

【今週の紙面の主なニュース】(2024年7月27日号)

(1)確トラに対抗 吹くかハリスの旋風

(2)藤竜也 ジャパン・カッツ 生涯功労賞 

(3)山﨑賢人さん NYアジアン映画祭で受賞

(4)米国民に放射能汚染 映画米各地で上映

(5)和牛の美味しさPR NYでジャパンフェス

(6)生き生きEATS  東京老舗の天丼をご家庭で

(7)BROOOKLYN のヤマモトさん

(8)羽ばたくパワーをNYで充電中 赤松美咲さん

(9)日本の紙フィルム映画 NYで上映会を開催

(10)48年目のありがとう 「愛のコリーダ」米国初の劇場公開 

確トラに対抗

吹くかハリスの旋風

 民主党のジョー・バイデン大統領(81)が21日に11月の大統領選からの撤退を表明、米国の各メディアはすぐさま報じるとともに評価・分析記事を掲載した。

 リベラル系だがバイデン氏の撤退を社説で2度にわたり訴えるなど「バイデン降ろし」を先導してきたニューヨーク・タイムズは「バイデン氏は勇気ある撤退をした。民主党はチャンスをつかまなければならない」との社説を21日付電子版に掲載。「バイデン氏はトランプ氏が決してやらないことを成し遂げた。自身のプライドや野心よりも国益を優先したのだ」と称賛し、撤退により「トランプ前大統領再選の危険から民主党が米国を守る可能性を大きく高めている」と期待を示す。

 一方、保守系のFOXニュースは21日、バイデン氏が撤退と同時に後任候補にカマラ・ハリス副大統領(59)を推薦したことに対し、「もはや一般の有権者は民主党の大統領選指名候補者を選ぶことができない」と指摘。党大会に招集される代議員など「数千人のエリートたち」が決めることになり、「これは建国の父たちが築き上げた民主国家にふさわしいプロセスではない」と批判した。また、ハリス氏の資質を疑問視し、民主党には「偉大な米国を率いる人物は誰一人いない」としている。

 リベラル系のワシントン・ポスト21日付電子版は、大統領候補にハリス副大統領が既定路線かのようになっていることに対し、「民主党は開かれたプロセスを受け入れるべきだ」と注文。予備選は必要はないが、有力候補同士の討論会は実施可能だと訴えた。ハリス氏が「唯一の選択肢ではない」とも主張している。撤退したバイデン大統領に対しては、ガザの紛争解決やインフレ・物価高からの脱却など、「米国をより良い状態にすることに取り組むことで選挙戦を助けることができる」と主張した。

 リベラル系のCNNは、撤退表明があって数分後にトランプ氏が「ハリス氏のほうがバイデン氏よりも倒しやすい」と電話インタビューで述べたと伝えた。一方で保守系のウォール・ストリート・ジャーナル21日付電子版は、「撤退は必ずしも共和党に有利とは言えない」と分析。共和党内にはバイデン氏が高齢であることがトランプ氏に有利になるため、バイデン氏は撤退しないほうがいいという見方もあったためだ。ブルームバーグ22日付電子版はトランプ氏の大統領返り咲きを以前から想定し、暗号資産の買いを増やすなどの動きが見られたが、投資家は難しい見極めを迫られていると報じた。選挙まで14週間に迫るなかハリスの旋風が吹くのか注目される。

藤竜也 ジャパン・カッツ、生涯功労賞

 ジャパン・ソサエティー(JS)が開催した日本映画祭「ジャパン・カッツ」で18日、ベテラン俳優・藤竜也氏(81)に生涯功労賞が授与された。主演映画「大いなる不在」(近浦啓監督)では、Cut Above Award受賞の森山未來氏と親子として共演し、記憶、家族、喪失という深いテーマを力強く演じた。藤は「俳優生活晩年に素晴らしい仕事をさせていただいた」と挨拶、続けて「ニューヨークは今から約50年前に来て今回が2度目。感慨深いストーリーがあります」と切り出し、1976年のNY映画祭に参加した大島渚監督の「愛のコリーダ」が上映中止になったエピソードを語った。今回の滞在中に同作品が48年ぶりにNYで劇場公開されるとあって、藤にとってはダブルの喜びとなった。

映画祭JAPAN CUTSの生涯功労賞を手にする藤竜也氏(18日JSで、写真・三浦良一)

JAPAN CUTS
映画で日本社会描く

生涯功労賞に藤竜也
「二度目のNY。感慨深い思い出が」

森山未來にCUT ABOVE賞
「演技の中で日本文化模索」

森山さん(左)と塚本監督 © Ayumi Sakamoto

 ジャパン・ソサエティーが開催した日本映画祭「ジャパン・カッツ」で18日、生涯功労賞がベテラン俳優・藤竜也氏(81)、またCut Above Awardが実力派俳優の森山未來氏にそれぞれ授与された(1面に記事)。映像、舞台、ダンスとジャンルにとらわれず活躍を続ける森山氏は、例年注目作を上映する「センターピース」枠として今年上映される塚本晋也監督「ほかげ」に主演、戦後の絶望の中を生きる片腕の動かない男という難しい役柄を見事に演じ切った。

 生涯功労賞受賞の藤氏は、最新主演作「大いなる不在」の上映会に、近浦啓監督と共に出席した。藤氏は、大島渚監督の「愛のコリーダ」などに代表される約60年にわたる輝かしいキャリアを持つ日本を代表する俳優。『大いなる不在』では、Cut Above Award受賞の森山と親子として共演し、記憶、家族、喪失という深いテーマを力強く体現している。

 CUT ABOVE賞受賞の森山氏は、「映画、パフォーミングアーツも含めて、日本と欧米で起こっているアクションに流れているものは違うものがあって、それはどちらもあって面白い。どういう風に自分たちの文化を関わらせればいいのかというのは今でも考えている。日本で映画を撮り続けて、とてつもない純度と強度で映画を作り続けてきた塚本晋也さんと今回出会うことができ、このCUT ABOVE賞というものにつながったと思う。本当にこの賞を励みにこれからも模索していきたいと思います。今日はありがとうございました」と挨拶した。

 生涯功労賞を受けた藤氏は「俳優生活62年の晩年に、素晴らしい仕事をさせていただいて感謝しています。仕事への情熱を維持する秘訣は、飽きないようにやることです。お腹が空いているからご飯が美味しい。満腹なら美味しく感じません。収入は減りますが、飽きないように仕事を少なくしてやっています。今回ニューヨークで映画祭に参加して、感慨深いストーリーがあります。映画人として2度目のニューヨークです。前回は約50年前にリンカーンセンターで開催されたニューヨーク映画祭に、大島渚監督と参加した『愛のコリーダ』の時でした。残念ながらニューヨーク州の検閲にひっかかり、フィルムが没収され上映されませんでした。私の出演した映画で一番大事な仕事は何かと言われると1つは『愛のコリーダ』、もう一つがこの『大いなる不在』です。それほどこの2つの作品は私にとって重要な仕事です。『愛のコリーダ』では、日本で裁判が8年かかり、大島渚は無罪を勝ち取りました。私も警視庁で尋問されました。いい意味でも悪い意味でも私にはレッテルを貼られました。でもそのレッテルは私にとって勇気になりました。バネになりました。今回、その映画がメトログラフという劇場で上映されます。50年ぶりにNYの観客にこうしてハローと言えて嬉しいです」。

アイスクリームフィーバー
千原監督に聞く

 グラフィックデザイナーの千原徹也氏が初めて手がけた映画「アイスクリームフィーバー」。20日ジャパン・カッツで上映された。川上未映子の『アイスクリーム熱』(『愛の夢とか』講談社文庫)を原案に吉岡里帆、モトーラ世理奈、詩羽(水曜日のカンパネラ)、松本まりかの4人の独身女性が東京渋谷のアイスクリームショップを舞台に展開する青春物語。

 千原監督が登場人物たちの年代だった頃の90年代の空気の中に、現代のZ世代+の若者の世界観を投入し、カラフルな映像のなかで、若い女の子たちの人生の葛藤を甘く軽快に表現している。

 「デザインするように映画を撮る」ので、映画人になったという気概などはなく、デザインの延長線で取り組んだため、異なるジャンルに足を踏み入れたという感覚もないという。

 「デザイナーの仕事はCDのジャケットをデザインしてもデザイナーからしか反応がなかったが、映画は広い層から反応があることが何よりも面白かった」と映画を作ってみて実感した。20回以上来ているニューヨークだが、今回はまだアイスクリームを食べていないので「そうかあ食べたいなあ」と言った。(三浦)