仙石さんやすらかに

舞台芸術で日米結ぶ

二人の息子、葬儀で涙の「ありがとう」

仙石さんの訃報を掲載した10月7日付NYタイムズ紙

 9月30日に83歳で亡くなった演劇プロデューサーの仙石紀子さんの葬儀が、アッパーイーストサイドのフランク・E・キャンベル葬儀場でしめやかに行われた。会場には生前仙石さんが招聘を手がけた作品ポスターやニューヨークタイムズ紙の演劇評などの切り抜きが置かれ、ビデオモニターには世界を飛び回っていた頃の映像が流れていた。

 中川顕實法師による読経と法話があり、子息のジェームズさん、クリスさん兄弟がそれぞれ来場した列席者に生前の母親への協力と友情に感謝の言葉を述べ目頭を押さえた。

 仙石さんは蜷川幸雄演出「王女メディア」、「Ninagawa マクベス」、野田秀樹演出「彗星の使者」、セントラルパークでの梅若六郎による薪能など、数々の日本の舞台をプロデュースしたことで知られる。当日は、BAM のエグゼクティブ・プロデューサーを長年務めたジョー・メリロ氏、ラ・ママ実験劇場から理事長のフランク・カルッチ氏ら4人、ブロードウエーのプロデューサーでゴージャスエンターテインメント社長の吉井久美子氏、演出家の河原その子氏、映画監督・俳優の鈴木やす氏、ニューヨーク日系人会事務局長の野田美知代氏、同郷から愛知県人会、鈴木食堂の鈴木啓一氏など70人近くが出席した。日本から歌舞伎俳優の中村勘九郎、中村七之助両氏と、劇団四季から献花が届いた。吉井久美子さんは「仙石さんが亡くなって、ひとつの時代が終わったと感じました」と話していた。

すっぴん美人が時代のリーダーに

87歳現役美容研究家

小林 照子さん

 30年以上、顔の印象に特化して研究をしている美・ファイン研究所(東京都渋谷区)が9月28日、「光と意識を集める美容」というテーマでオンラインセミナーを開催した。当日は87歳現役美容研究家の小林照子さんが「美容の力を意識する」と題して講演、皮膚が脳に働きかける関係性や感覚を形にすることで得られる効果を美容的側面から解説した。講演に続いてメイクアップアーティストの山口童子さんが実際にどう日本人の顔を美しくするかの技術論を解説、最後にトータル・ビューティープランナーの三島宏美さんが「表情筋のチューニングで立体美」の作り方をモデルを使って実演した。

 同オンラインセミナーは、商品企画やマーケティングに携わる人や、接客する機会の多い人、またその教育を担う人などを対象にした企業セミナーで、海外で日本の技術や最新情報、美容に対する時代の流れなどを敏感にキャッチできる講座として注目されている。

 小林さんは、かねてから「医・美・心研究会」という研究会を作り、医療と美容、心理的な相関関係について指導してきている。医療現場における美容の関わりは、病院で亡くなった人にする化粧を看護師に教えることから始まった。現在も日本全国500近い病院で何万人もの看護師たちがエンゼルメイクという名の元で最期の看取りの仕事として関わっているという。またこれまで解剖学の医師と美容との仕事に向かい合う上での共通点を見い出し、リンパを中心にしたマッサージから静脈に特化したマッサージなどが効果をあげているという。特に大切に思っていることは、美容は脳と密接に繋がっているということ。「人間は母体の中で外胚葉から脳と皮膚が形成されていく。分かりやすく言うと脳を薄く伸ばしたものが皮膚であると。脳が寒いと感じる前に鳥肌が立つように、暑いと感じる前に汗をかくように、肌は脳と直結している。皮膚に触れることで脳に刺激がいき、落ち込んだ気持ちが晴れたり、気持ちが前向きになったりする意識への作用が美容効果をもたらす。皮膚に触れることでホルモンの分泌を促し新陳代謝を促して若さを保つことに影響する感覚的な美容の力を医学の学会でも発表してもらいたい」と話し、「美容は医療を超える」という持論を紹介した。

 「時代と共に美しさのリーダーは変わって行きます。ある時代は、映画女優だったりファッションモデルだったり、知性の光る女性だったり、生き方のかっこいい女性が時代のリーダーとしてもてはやされましたが、その時代背景がリーダーを作るのです。いまは、なんといっても、すっぴんの美人が時代のリーダーです」日本で最初に美容液を考案した小林さんの話から素肌の美しさが日本女性の美しさの要であることが伝わってくる。「パンデミックで長い間、マスクを着用していますが、外す時に自信を持ってすっぴん美人でいられるようにしましょう」とアドバイスした。(三浦良一記者、写真も)

編集後記 2022年10月8日

【編集後記】 みなさん、こんにちは。ニューヨークで公演された蜷川幸雄演出の「王女メデイア」「Ninagawa マクベス」、野田秀樹演出の「彗星の使者」BAM公演、セントラルパークでの梅若六郎による薪能。どれもが、日本の伝統文化と現代芸術を見事に表現した舞台。それら数々の話題の舞台をプロデュースした演劇プロデューサーの仙石紀子さんが9月30日、ニューヨークの病院で亡くなられました。享年83歳でした。今週号の1面に速報と社会面5面にカタガミ・ユーコさんによる追悼記事が掲載されていますのでぜひご覧ください。厳しい批評眼を持つニューヨーカーに本物の日本の古典芸能や先端芸術を紹介しただけでなく、「オズの魔法使い」「ビッグ・リバー」などブロードウエーの秀作を日本に紹介しました。そして、イーストビレッジにあるラ・ママ実験劇場の財政危機時にはNPO法人を立ち上げ支援しました。日本からやって来る多くの若手製作者たちの作品の本紙記事にも快く舞台評やコメントを数多くいただきました。1970年代から2000年までの20世紀後半の4分の1が、勢いのあった日本の芸術文化の大きな一つの塊の時代だったように思えます。インターネットも携帯もない時代、その真ん中の時間をニューヨークから日米交流に尽力されました。今より不便な時代だったのに、なんだか舞台のスポットライト、役者の表情、仙石さんの声、どれもが焼き付くように記憶に残っています。現代の便利この上ないYouTubeにはない、不便だけれどもリアルな舞台の魅力をきっと誰よりも感じてライフワークとして生き遂げた方でした。仙石さん、ありがとうございました。天国で安らかにおやすみください。「三浦さん、まだ、間に合う?」締め切り間際にかかってくる電話の声が聞こえるようです。それでは、みなさん、よい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2022年10月8日号)

(1)パスポートの更新 オンラインで可能に

(2)忠臣蔵NYで アマテラス座

(3)仙石紀子さん逝く 舞台芸術通し日米交流 

(4)W 2NXT モデル顔負けの抜群スタイル

(5)週刊NY生活ギャラリー 第二次募集受付開始

(6)実録・小野田少尉の帰還 7日から全米公開

(7)あめりか時評 冷泉彰彦

(8)花と歌の祭典 りんともシスターズ

(9)不安なく永住帰国するための3つのポイント

(10)赤ちゃんの睡眠科学で 保育者を救う 愛波あやさん

パスポートの更新、オンラインで可能に

来年3月から

 外務省は9月30日、今年4月に公布された改正旅券法について、9月30日に同法施行令等の閣議決定が行われ、オンラインでの旅券切替申請に関する同改正旅券法令が2023(令和5)年3月27日から施行されると発表した。パスポートの更新がオンラインでできるようになる。

 今回の改正は、旅券に関する国際的な動向や情報技術の進展を踏まえ、(1)申請者の利便性の向上、(2)旅券事務の効率化、(3)旅券の信頼性の向上、(4)新型コロナウイルスの感染拡大等の社会情勢の変化に対応した制度の見直しを図るために行われた。 

 まず来年3月27日から、旅券(パスポート)の発給申請手続きが一部オンライン化される。具体的には、旅券の残りの有効期間が1年未満の場合に新たな旅券の発給を申請する「切替申請」の場合、電子申請が可能となり、申請時の出頭が不要となる。

 また、旅券を紛失または焼失した場合などにも、オンラインでの届出が可能となる。さらに、大規模災害時の旅券手数料の減免が可能となるほか、電子申請の場合のクレジットカードによる手数料のオンラインでの支払いも、一部の在外公館から順次可能となる。

 なお、過去に旅券を申請したものの受領せず失効した場合、同じ申請者が5年以内に再度申請をする際、手数料が通常より高くなる。

 外務省では、国民の利便性の向上や事務の効率化に向け、今後とも領事業務の電子化を着実に進めて行くとしている。

週刊NY生活ギャラリー、第二次募集受付を開始

本紙オンラインサイトに常時展示

新規作家が続々参加中

 本紙が主催するオンライン「週刊NY生活ギャラリー」(https://nyseikatsu.com/gallery/)では、現在2023年度の第二次作家募集を行っている。第一募集には新規で9人の日米在住のアーティストが登録した。

 募集対象は、過去に本紙で作品が紹介された人、ニューヨークで個展、グループ展に参加されたことのある人、または、将来何らかのNYにおける企画展に参加する予定のある人。作家のポートフォリオ、顔写真、絵画、写真、彫刻などの作品を期限1年間で掲載。参加料金は、作品を最大10点まで展示できて1年間200ドル。翌年からの更新料は50ドル。(2年間75ドル)。作品の入れ替えは1点につき手数料20ドル。

 作家にとっては、作品を展示して多くの読者に見てもらえるだけなく、自分の作品を広く一般に販売するチャンネルとして利用できる。同ギャラリーは、本紙「週刊NY生活」のウェブサイト(www.nyseikatsu.com)で常設展示されている。第二次の応募受け付け枠は20人。先着順で締め切りは11月31日まで。(10月中の応募者には10%OFF=20ドル割引)。

 問い合わせはEメール [email protected]   担当・編集部・三浦まで。

【展示作家】(新規参加作家)羽山奈保、中山美紀子、藤田創一、井上賢一、Masako Takamasu、下條ユイ、小野田昌子、沙山有為、サカイ。(常設作家)高波壮太郎、飯塚国雄、服部夏子、三浦良一、マサ、マックス・藤島、岩沢あさ子、遊真あつこ、上住雅恵、岡本悍久。

忠臣蔵NYで

アマテラス座

NY邦人俳優初のオフブロードウエー公演

 日米両語の非営利劇団アマテラス座(AMATERASU ZA、芸術監督・Ako=アコ)は18日(火)から11月6日(日)日まで、オフブロードウエーのARTNYシアター(西53丁目502番地)で時代劇「忠臣蔵〜47人の浪人」を上演する。ニューヨーク在住の日本人俳優による正式なオフブロードウエー公演は初めて。

  内容は1702年から03年にかけて江戸で起きた赤穂浪士の事件を題材にした本格的な侍劇。討ち入り場面では殺陣波濤流NY代表の香純恭の構成で、侍アクター、ヨシ天尾らが見事な殺陣を披露するのが見もの。主に日本語で上演、英語字幕が付く。

 出演は、アコ、ヨシ天尾、小野功司、合田沙おり、市川達生、前嶋利菜、ジュンスエナガ、鈴木やす、米倉裕子、よしむらみなみ。

 芸術監督を務めるAko(あこ)は、宝塚歌劇団52期生(1972年退団、芸名=夏海陽子)で、2018年に同劇団を立ち上げた。Akoは「ニューヨークで頑張っている日本人俳優に今回演じ甲斐のある役を与えられたこと、また、俳優組合アクターズ・エクイティ・アソシエーションに参加出来る機会を与える機会が出来たことを嬉しく思っています」と話す。

 上演は火曜から土曜が午後7時30分。土日午後3時開演。(土曜は2回公演)。入場料はプレビュー期間(10月22日まで)が一般45ドル、学生・シニア25ドル。23日以降は一般60ドル、学生・シニア30ドル。チケット・詳細はウェブサイトhttps://amaterasuza.ticketspice.com/chushingura-47-ronin

本紙読者プレゼント=週間NY生活の読者先着2名を10月18日から10月22日のプレビュー期間無料招待。応募は「週刊NY生活を見た」と記載し、希望の日時を書いてEメールで[email protected]まで。

仙石紀子さん逝く

舞台芸術通して日米交流に尽力

 演劇プロデューサーの仙石紀子さんが、9月30日、ニューヨークの病院で亡くなった(享年83歳)。手掛けた作品は、蜷川幸雄演出「Ninagawa マクベス」、野田秀樹演出「彗星の使者」BAM公演、セントラルパークでの梅若六郎による薪能など多岐にわたったほか、米国のブロードウエー作品を日本に紹介した。

追悼 日米交流を舞台芸術で実現

演劇プロデユーサー仙石紀子さんの軌跡
ラ・ママ実験劇場の存続危機に支援活動

 演劇プロデューサーの仙石紀子さんが、9月30日午後3時すぎニューヨーク市の病院で永眠した。 

 蜷川幸雄演出「王女メデイア」、「Ninagawa マクベス」、野田秀樹演出「彗星の使者」、セントラルパークでの梅若六郎による薪能など、数々の日本の舞台をプロデュース。目の肥えたニューヨークの人々に日本の古典芸能や先端芸術を見せたいという思いは、「オズの魔法使い」「ビッグ・リバー」などブロードウエーの秀作を日本に紹介する情熱に勝るとも劣らなかった。 

 1939年、名古屋生まれ。中高生のころからの芝居好き。南山大学を卒業した1963年、縁あって劇団四季の浅利慶太に出会う。日生劇場のこけら落としをはじめ、同劇団の実験的な作品や海外からの招聘に制作部として携わるうちに〈本場体験欲〉が高まり、米国留学を決意する。組織の支えなき身でアメリカの地を踏んだ瞬間、「自由」を実感。その重みを感じながら、開放感に包まれたという。 

 1968年からニューヨーク大学演劇科の特別研究生に。劇場に通う毎日を送る。1971年から劇団四季のニューヨーク事務所長を務めたのちの1980年、満を持してインター・アーツNY社を創設。舞台を軸とした文化芸術のプロデューサーとして、アーチストのエージェントとして、日米文化のハブ的役割を果たした。 

 劇団四季時代からの盟友、ヨシ笈田が演出・出演する芝居やオペラの「追っかけ」を自認。ホンモノを体験するためにミーハーに世界中を飛び回った。ふたりの息子を育て上げたシングルマザーは、テレビ・映画のコーディネーターとしてアメリカ全50州のうち48州を訪れてもいる。 

 イーストビレッジにあるラ・ママ実験劇場の財政危機時にNPO法人を立ち上げ支援した行動の人。教わること・教えることに労を厭わなかった好奇心のひと。美しいもの、心あるもの、共鳴できるもの=芸術こそが、国を超えて私たちに力を与えてくれるーー。

 日米の文化が〈接続可能〉であることを50年前から信じ続けた自由人の意思は、彼女と接したすべてのひとに受け継がれている。(カタガミ・ユーコ)

 葬儀は10月9日(日)午後1時から4時まで、アッパーイーストサイドのフランク・E・キャンベル葬儀場(マジソン街1076番地、81丁目)で行われる。詳細は www.frankecampbell.com

(写真左)ラ・ママ実験劇場の創設者エレン・スチュワートと courtesy of the La MaMa Archive 

モデル顔負けの抜群スタイル

 9月のマンハッタンはNYファッションウィークで一気に華やかになる。全米から飛んできたモデルがイベントの合間のショッピングで溢れかえるソーホーの街角でファッションインタビューを行った。モデルかと思ったとのコメントに「ありがとう、でも私はモデルじゃないのよ。ファッションショーを見に行ったけど満席で入れず、ドアの間からモデルが出てくるところを見て興奮しちゃったわ」と言うモデル顔負けの抜群スタイルな彼女が身に着けていたのは白いジャガーのジャケットと、その下には黒のブラレット。アーバンアウトフィッターズのスカートに古着の黒ブーツ。黄色いバグーのバッグが白いジャケットにマッチして際立つ。「グッチやフェンディーなんかも好きよ。やってることが常に最先端よね。後は古着屋で初めてのブランドを気軽に試したりしてるわ」。お勧めの古着屋は“L Train Vintage”。他のインタビューでもよく挙がる、古着ファンのニューヨーカーに人気のショップだ。「週末はよくブルックリンのウィリアムスバーグに足を運ぶわ。クラフトビールを飲めるバーが豊富だから。そして時折フェリーでNYCを離れてゆっくりするの。喧騒と静寂のバランスが大事よね」。ファッションウィークの週末をソーホーで満喫した彼女はこれからトライベッカの自宅へ帰り、ピザをつまみながら映画鑑賞を楽しむ予定。マンハッタンに到来する秋に向け、おしゃれニューヨーカーの充実した余暇の過ごし方を真似てみたい。

(Wear 2Nextチーム/アパレル業界関係者によるファッション研究チーム)

実録小野田少尉の帰還

10月7日から映画米国公開

 『Onoda: 10,000 Nights in the Jungle』(2021年、フランス、ドイツ、ベルギー、イタリア、日本合作、邦題『ONODA  一万夜を越えて』として日本公開は2021年)が、10月7日(金)より米国公開される。

 第2次世界大戦が1945年に終了した後も、敵を倒すゲリラ作戦完遂のためフィリピンのルバング島のジャングルの中に留まり、1974年に日本に帰還した元日本兵・小野田寛郎(1922-2014)の実話に基づく映画である。1980年生まれのアルチュール・アラリ監督は脚本家・俳優としても活躍し、本作は長編監督として2作目。日本人とフィリピン俳優で、カンボジアで撮影された。

 小野田の帰還は、1973年グアム島のジャングルから日本に帰還した元日本兵・横井庄一の事件に驚愕した後だったので、戦後28年半という小野田が体験したジャングル生活の長さよりも、それを止める方法が衝撃的であった。家族が説得してもジャングルから出ることを拒否した小野田は、戦時の直属上官がジャングルまで赴き作戦任務解除令を直接告げるまで投降しなかった。このことは当時の日本で、大きな話題となっていたことを思い出す。

 日本軍勝利のために生き延びよと命じられた小野田が、徹底抗戦を貫こうとした恐るべき軍人精神と、過酷なジャングルの環境を生き延びる人間性について、フランス人の若手監督が解明しようとした本作、2時間53分の上映時間の長さが意外と感じられず、緊張感の連続で過ぎて行く。雨と蚊に悩まされ、風に癒される熱帯ジャングル。一人、また一人と欠けていく仲間を送る孤独。食料調達のための現地人との軋轢など極限状態の中での生存の実態が、登場人物の心理的葛藤を間近に表現するクローズ・アップの多様によって丁寧に追体験させられる。それと共に人間が囲まれている自然の巨大さを、遠景ショットのデザインで圧倒的に見せる。

 映画の途中でメイン・キャストの若い2人の俳優が中年の俳優と入れ替わるが、小野田役に遠藤雄弥と津田寛治、小野田と行動を共にした小塚役に松浦祐也と千葉哲也、島田役にカトウシンスケ、赤津役に井之脇海、直属上官役に尾形イッセイ、小野田の帰還を説得する旅行者役に仲野太賀は、いずれも好演である。(平野共余子)

 NYの劇場公開はFilm Forum (209 West Houston Street, New York City)で10月7日より。詳細は
www.filmforum.org

(写真)Photo credit: Courtesy of Dark Star Pictures

日本の歴代政権が脆弱なのは「選挙が多すぎる」から

 新たな総理大臣が誕生しても、1年も経つと支持率が低下しやがて交代に追い込まれる。こうした現象は昭和の末期、福田赳夫政権の頃から延々と続いている。例外は、中曽根、小泉、安倍(第二次)だけで、その他はほぼ全ての政権が似たような運命を辿ってきた。理由としては、総理の器が小さくなったからだとか、与野党伯仲、あるいはねじれ国会に苦しんだからだという解説がされることが多い。

 けれども、今回の岸田政権は必ずしもそうではない。高い支持率で出発して、その水準を維持していたのである。ところが、国葬と旧統一教会の問題で支持率が急落した現在は、一気に更迭論が出入りするところまで来ている。その前の菅義偉政権も、コロナ禍と五輪の強行開催で簡単に崩壊した。民意の振幅に揺さぶられているとしか言いようのない事態である。余りに情緒的で激しい民意の揺れを目にした私は、まるで「ろうそくデモ」で朴槿恵政権を潰した韓国の民主主義のようだという解説をしたことがある。少々強引な比較であったようで、左右両方の支持者からお叱りを頂いた。

 批判されたからというわけではないが、その後色々と検討をしてみた結果、1つの大きな問題があることに気づいた。それは、日本の選挙が「多すぎる」ということだ。まず、日本の選挙のサイクルは参議院が3年おきで基本的に7月である。また、衆議院は解散があるので時期は不規則だ。衆参同時選をやっても、衆院の任期は4年であるから解散がなくても次は同時にならない。その他には統一地方選があるが、これは4年サイクルで時期は4月となっている。だが、任期途中で首長の交代があったり地方議会の解散があると「統一」のサイクルから離脱するケースも多くなってきた。

 そんな中で、今回の岸田政権は2021年秋の衆院選に勝利し、2022年7月の参院選に勝利したことから「黄金の3年」、つまり国政選挙が向こう3年はないことから安定的に政権を運営できるはずであった。では、どうして更迭論が出ているのかというと、来年2023年4月には統一地方選があるからだ。現在、日本の野党は政権担当能力という点では民意の信頼を全く得ていない。だが、与党への不満があると、地方選ぐらいはということで民意が「野党に浮気」することは十分に有り得る。そんな中で、自民党の地方議員としては政権が不評なために自分が議席を失っては大変だ、ということで浮足立っているのである。

 つまり、衆院選以外に多くの選挙が異なったタイミングで発生する、要するに選挙を小刻みにやるように日本の選挙制度ができているのだ。そうなると、政権選択選挙である衆院選以外では、有権者は「平気で浮気」をする。自民党としては、これを恐れる余りに、政権の支持率が下がるとすぐに「顔」をすげ替えるという習性が身についたというわけだ。これでは、新しい政権を作っても、結果を出す前に交代させられるわけで、国としての政策が迷走するのも仕方がない。

 アメリカの場合は、11月2日以降の最初の火曜日が「選挙の日」と定められていて、大統領選、上下両院選、地方選もこのタイミングに集中し、巨大な「同時選」となる。では日本のダブル選挙のように「常に与党有利」になるかというと、全くそうではない。「大統領は人権を重視して民主党から、知事は税金の無駄遣いを避けるために共和党に」などと、投票行動を変える有権者は多い。連邦議会の選挙も、党議拘束がないので候補の政策を吟味して投票がされる。

 勿論、二大政党制の確立に苦しむ日本の場合は、アメリカ流を即時に導入することは非現実的だ。だが、選挙が多すぎるために、総理大臣をクルクル「交換する」ことになるという問題は、一度冷静に考えてみる必要はありそうだ。

(れいぜい・あきひこ/作家・プリンストン在住)

花と歌の祭典

カーネギーホールでカジキスショー

りんともシスターズ

 一般社団法人KJ、IFA国際アート連盟主催の花と音楽の祭典、第10回カジキス・ショーが4日、カーネギーホールのワイル・リサイタルホールで開催された。前半はフラワーアーティストとモデルによる華やかなブーケショーが舞台でくり広げられ、華麗なイザベラ・マリア・トーレスのバレエのあと、主催者代表で、本紙コラム「風のままに」を連載する梶木敏巳氏がMCを務める歌謡ショーに。出演者は、りんともシスターズ、山崎賢一、松本藍、和嶋静代。メインゲストのりんともシスターズは、ザ・ピーナッツの残した昭和の名曲を主軸に日本の歌を歌い続ける姉妹。「デビュー15年の節目の年にこうして今回NY在住の皆様の前で歌えて感無量です」と挨拶し、この日もメドレーで恋のバカンス、恋のフーガ、コーヒールンバ、プティトフルール、情熱の花、最後に美空ひばりの真っ赤な太陽を熱唱した。2人の出演には、所属事務所の社長でもある俳優の松平健さんから公演開催への応援のメッセージが寄せられ舞台で読み上げられた。りんともは「松平もニューヨークのことが大好きで何度もきているようです。一緒にまた来れたらいいわね」と二人で顔を見合わせた。

 声楽家の和嶋静代さんは佐賀県伊万里市出身。声楽&ピアノ教室「星の子音楽教室」を主宰している。スタンドアローンに続いて故郷、里の秋などメドレーで日本の童謡唱歌の秋をテーマに歌い、最後はさだまさしの「いのちの理由」をしみじみと聞かせた。

 歌手の松本藍さんは佐賀県唐津市出身。単身で渡米。ゴスペルやミュージカルの歌唱を学んだが米国滞在中に高橋真梨子のステージをカーネギーホールで見て日本の歌に目覚め、帰国後も日本の歌を歌っている。オリジナルの「舞い上がれ」を夢の舞台で熱唱した。

 NYから参加のバレリーナ、イザベラ・トーレスさんは、東京生まれ。NYでバレエ教室Petit Allongé Bella NYを主宰。NYデビューの舞台がカーネギーホールとなった。花をテーマにチャイコフスキーのくるみ割り人形から花のワルツを披露した。シンガーソングライターの山崎賢一は「君が笑えば」を熱唱、華やかな日舞の尚蘭月も登場し、書道家の山口観風も歌で客席を沸かせた。

(写真)メインゲストで歌うりんともシスターズ(写真・三浦良一)