レジオンドヌール勲章を授与

フランス政府、医師の園田明淑さんに

リセ・ケネディ日本人学校とフランス人学校理事長

  リセ・ケネディ日本人学校(新元良一校長)及び同フランス人学校の理事長を務める園田明淑医師が9日、NYフランス領事館においてレジオンドヌール勲章を授与された。ナポレオン・ボナパルトによって1802年に創設されたこの勲章は、さまざまな分野で同国に貢献した人物に与えられる栄誉ある賞として広く知られる。1964年に創立されたリセ・ケネディ国際学校は、1985年に故園田幸司博士が経営権を取得した後、日本人学校が併設された。アメリカとフランス、そして日本との文化交流の発展に、同校が長年寄与したことに対し、同館のロベール総領事から感謝の言葉が述べられた後、厳かな空気が漂うなか勲章が園田医師に授与されると、会場は出席者たちからの大きな拍手で包まれた。産婦人科医として多数の子どもたちをとり上げる一方、夫の遺志を引き継ぎ、両校の運営を続けてきた園田医師は、栄えある受賞の日に自身のスピーチで、学校に関わったすべての児童生徒、保護者、さらに職員などの関係者に心からの感謝の意を示した。ニューヨークにおいて、いまなお日仏双方のコミュニティから厚い信頼を寄せられる同校の歴史にあって、新たなページが刻まれる一日となった=写真左・同校提供=。

 レジオンドヌール勲章はまた連隊、教育機関、共同体、企業(フランス国鉄など)、結社(フランス赤十字社(フランス語版))などにも授与される。

 高等教育機関としてはパリ国立高等鉱業学校、サンテティエンヌ国立高等鉱業学校、エコール・サントラル・パリ、エコール・ポリテクニーク、パリ国立工芸学校(現在のParisTech)、ドゥエー高等工業学校(フランス語版)、フランス国立古文書学校、ナンシー大学(現・ロレーヌ大学)など、中等教育機関としてはブール=カン=ブレスのリセ・ラランド エクス=アン=プロヴァンスの軍事リセ、ラ・フレーシュの国立軍事幼年学校(フランス語版)などが受章している。

仏政府から騎士の称号

リセ・ケネディ理事長 園田明淑さん

 リセ・ケネディ日本人学校・フランス人学校理事長の園田明淑さん(90)がフランス政府から今月9日、ナポレオン・ボナパルトによって1802年に創設された名誉あるレジオンドヌール勲章を授与された。この勲章は、さまざまな分野で同国に貢献した人物に与えられる賞として広く知られ、騎士(ナイト)としての称号を与えられた。

 1964年に創立されたリセ・ケネディ国際学校は、1985年に夫の故園田幸司博士が経営権を取得した後、日本人学校が併設された。アメリカとフランス、そして日本との文化交流の発展に、同校が長年寄与したことに対し、在ニューヨークフランス総領事館のロベール総領事から勲章が伝達された(1面に記事)。

 「すべては夫が築いたことを引き継いだまでで、私はもらう資格はないです」と控えめに語る園田さんは、産婦人科医として長年ニューヨークでクリニックを開業し、これまで日本人を含む1万人以上の赤ちゃんをとりあげてきた人だ。1963年にニューオリンズのチュレーン大学医学部を卒業し、69年にブルックリンで産婦人科クリニックを開業。横浜国立大を卒業してコロンビア大学大学院の学生だった夫の幸司氏と64年に結婚、幸司氏がニュージャージー日米協会会長(会員300人、1985年当時)だった86年6月に私費で経営権を買い取り日本人高校を同年9月に開校した。それが現在のリセ・ケネディ日本人学校(新元良一校長、在籍児童170人)の土台となっている。当時の開校の様子を伝える読売新聞の米国現地版「ザ・ニューヨーク・ヨミウリ」1986年8月7日号によると、日本人高校ができたのはミッドタウン44丁目、五番街と6番街の間。その後、ウエストチェスターのアーズレーの校舎でフランス人学校のキャンパスを使って日本人学校としての経営をしていた。しかし2005年1月2日に幸司さんが肝臓がんのため急逝したことから学校経営を引き継ぐことに。産婦人科医と学校経営との両立は大変だったが、医師の長男・幸男さんと弁護士の長女・ミドリさんが力となって支えてくれた。日本からの医学生たちを世話するのが大好きだった夫の言葉が今でも忘れられない。「僕は90歳になっても杖をついてでも学校経営をやっていくよ」。今、自分がその年になり、改めて夫からバトンを渡された気持ちだ。(三浦良一記者、写真右も)

大麻喫煙お断り

タイムズスクエアに禁止看板
「臭う!」観光客の苦情殺到

 ニューヨークのタイムズスクエアを管理する同アライアンス事務所に、国内外の観光客などから「マリファナの臭いが立ち込めて気持ち悪い。歩くだけでどこでも臭ってくる」との苦情が殺到し、このほど「あらゆる種類の喫煙を禁止する」と書いた立て看板を立てた。

 ニューヨーク州では2021年春に娯楽用大麻の使用を合法化し、規制された娯楽用販売も1月24日から始まったばかりだ。しかしNY州は昨年10月に全ての州立公園や公共の野外スペースで大麻やたばこを吸うことを違法とし、自治体が違反1回につき50ドルの切符を切ることを決めた。にもかかわらず、タイムズスクエアに留まらず、マンハッタンの繁華街を中心にマリファナの臭いが立ち込め、歩いているだけで間接喫煙して頭がクラクラするなどの苦情が相次いだ。

大麻不法販売増加

合法店は苦戦
前科者に優先販売権

大麻販売店を巡回パトロールする警察官(NY1のテレビ画面から)

 NY市内では、グリニッチビレッジに合法の娯楽用大麻薬局「スマックドLLC」が1月24日にオープンした。場所はブリーカー通り144番地でデュアンリードがあったところ。ニューヨーク州では昨年12月にイーストビレッジにオープンしたハウジング・ワークス・カンナビス(ブロードウェー750番地)に続く2番目の合法薬局となる。開店初日はハウジング・ワークスほど混雑はしなかったが数十人が列に並んだ。

 ハウジング・ワークスは非営利団体だが、スマックドは過去に大麻関連の有罪判決を受けた人が経営する最初の薬局となる。州は、社会的公平を目指す目的で大麻の販売許可を非営利団体および大麻関連の犯罪者からの申請を優先している。スマックドのオーナーはローランド・コナーさん(50)。90年代に有罪判決を受けたコナーさんだが、現在は建物管理会社を所有しており危険にさらされている人に緊急の仮設住宅を提供している。今回は仮オープンで1か月ほどしたら改装し、正式オープンする予定という。

 3番目となる薬局「ユニオンスクエア・ファーマシー」はユニオンスクエアの近く、ブロードウエー13丁目のチェース銀行跡に2月13日にオープンする予定だ。所有者は刑期を終えて出所した人やホームレス、薬物乱用者を支援する非営利団体のドゥ基金(The Doe Fund)だが、実際の運営はハーバー・コミュニティーが行う。ドゥ基金が収益の51%を得る仕組みだ。このほかミートパッキングエリアに非営利団体が経営する薬局が開店する予定がありこれが4番目となりそうだ。

 州の大麻管理委員会は約150件の大麻販売許可証を付与する予定だが現在までに付与されたのは36件。そのうち28件はマリファナの前科がある人やその家族に渡され、8件は非営利団体に渡された。さらに30件の許可証を付与するが、その半分はブルックリンを除くニューヨーク市になる予定だ。ブリックリンは特定地域での大麻小売禁止を求める訴訟が進行中のため1件も付与されていない。

 ニューヨーク市および周辺には無許可の非合法大麻小売店が1400ほどあるといわれており、合法店は苦戦も予想されている。しばらくは大麻の臭いに非喫煙者が迷惑を被りそうだ。

ありがとう、ウクライナ支援団体NY日系社会に

 「こんなに多くのニューヨークの日系社会の皆さんが、ウクライナのために支援してくれていたことを知って本当に嬉しい」。ニューヨークのイーストビレッジに本部を置く非営利のウクライナ支援団体、RAZOMのドーラ・ホミアク代表は6日、本紙の新年号で特集した「激動の時代を生きる」=在米ロシア系、ウクライナ系市民の証言=の新聞を手に感激した表情で語り、ニューヨークの日系社会に感謝の気持ちを伝えて欲しいと語った。

 記事の中で、 ホミアク代表は「私たちが2月から10か月間にしたことは、私たちが過去10年間やってきたことにほぼ等しい。支援の柱は人民の命を守ることと、ウクライナが勝利するための二つ」などと説明していた。

 本紙新年号で在米ロシア人の声、ウクライナ人の声を伝え、国連平和の鐘の活動、TICグループの寄付、NY日本総領事館主導で開催したジャパンパレードやストリートフェアでの支援、増田セバスチャン氏の平和展、NY日本商工会議所(JCCI)と日本クラブのメトロポリタン美術館での支援コンサート、ジャパン・ソサエティーのウクライナ人留学生の支援、岸田首相、林外相はじめ、冨田駐米大使、石兼国連大使、森NY総領事や各日系団体代表の挨拶の中で、ウクライナを応援しているコメントが紙面にあることを本紙の三浦良一発行人が伝え、記事の英訳を手渡すと「心から感謝しています。ニューヨークの日本の友人がこんなに応援してくれていることを決して忘れません」と語った。戦争から24日でまもなく1年。ホミアク代表は同日夕、2週間の予定でウクライナに向かった。

(写真)ウクライナ支援を特集した本紙新年号を手にするホミアク代表(6日、RAZOM事務所で)

東日本大震災縦軸に父娘描く

映像ディレクター 堀江貴さん

18日に映画完成披露イベント

 ニューヨーク在住で宮城県出身の映像ディレクター、堀江貴氏(51)が監督した映画「最後の乗客」の完成記念ファンドレイジングイベントが18日(土)午後6時からマンハッタンのスカンジナビアハウス(パーク街58番地/37丁目と38丁目の間)で開催される(主催・CATCH US PERFORMING ARTS 、後援・NY宮城県人会、おむすび権兵衛)。

 東日本大震災から10年目の2021年3月の公開を目指して制作を進めてきた同作品は、ドキュメンタリーではなく、親子の関係が震災で変わってしまったドラマ。ストーリーは東日本大震災から10年。とある東北の小さな駅のロータリー。タクシードライバーの遠藤は受験で東京へ行ったきり音信不通の娘みずきの帰りを待っている。遠藤は娘と喧嘩別れしたきり一度も会っていないのだ。そんなある日、幽霊がでると噂の沿岸道路で一人の謎の女性客を乗せる。女は「浜町まで」と告げる。そして、その途中、同じく「浜町」へ行きたいという親子も同乗し、4人は浜町を目指す。

 出演は、娘役に岩田華怜。宮城県出身の俳優。元AKB48、みやぎ絆大使が台本を読んで快く出演を快諾してくれた。ホリプロでオーディションができたのは堀江監督がニューヨークに戻る日の午前中だった。父親役は宮城県出身の俳優、冨家規政。83年NHK連続テレビ小説「おしん」でデビュー。以来、テレビドラマを中心に映画、舞台、CMなどで活躍するベテランだ。撮影は宮城県出身の佐々木靖之。昨年「ドライブ・マイ・カー」でアカデミー賞を受賞した濱口竜介監督の震災の記録映像をアーカイブするドキュメンタリー作品「東北記録映画三部作」、「寝ても覚めても」を撮影した実力派で、いずれも宮城県出身者で出演、スタッフを固めている。

 苦労したのは、やはりコロナ禍による撮影延期だった。「映画作りというのは本当に一期一会なんだということを実感しました。決められた撮影スケジュールの中で出演者、スタッフ、カメラマンなどが総力をあげて一気に作るわけで、今回だめでまた来年やりますと言っても無理なんです。2020年3月下旬からの撮影直前、新型コロナの蔓延防止条例が発令され、撮影が延期に。2021年11月19日、万全の対策をとりながら撮影をスタート。奇跡的に同じメンバーが揃い寒風が吹く中、多くの人々からの協力と支援を得て、撮影は11月25日にクランクアップした。

 「東日本大震災から、パンデミックを乗り越え、12年の年月が経過しましたが、その間には悲しいことばかりではなく、多くの人々の心にも一条の光が射すことがあったと信じています。この映画『最後の乗客』は、過去を乗り越え、未来へ導く光を力強く描いています。ぜひ皆さんに観ていただきたいと思います」と堀江監督は笑顔を見せた。

 (三浦良一記者、写真も)

 映画「最後の乗客」完成記念ファンドレイジングイベント=東日本大震災10年メモリアルプロジェクトは18日(土)午後5時半開場。寄付は30ドルから。参加申し込みは下記のリンクから。問い合わせはEメール、[email protected]  河野さん。

[申込先] https://www.eventbrite.com/e/10-tickets-530700077217


プロフィール:ほりえ・たかし:1971 年生まれ、宮城県仙台市出身。ニューヨーク在住映像ディレクター。1995 年、南カリフォルニア大学映画学科を卒業後、2016 年に制作した大江千里のミュージックビデオ「Tiny Snow」がニューヨークジャズフィルムフェスティバルで最優秀ミュージックビデオ賞とジャズゴールデンタイム賞をダブル受賞。プロモーションビデオ、ミュージックビデオなど多数手がける。2017年には、自主制作短編映画「Ordinary Days」がサンタモニカのThe Artemis Women in Action Film Festivalと東の登竜門といわれるペンシルバニアNew Hope Film Festivalで短編フィクション部門で上映された。


NYファッションウィーク、活躍する日本女性たち

ネイルなら名取さんご指名

 ニューヨーク・ファッション・ウイークが10日から15日まで市内各所で開催された。今回、ラカン・スミス、アルツザラ、ビビアン・タムなどのファッションデザイナーの7つのランウエーのネイルを担当したのが、名取由稀江さん(=写真右)率いるYNNY(YUKIE NATORI NEW YORK)のネイリストたち8人。

 13日にロックフェラーセンター56階のレインボールームで開催されたラカン・スミスのショーに登場するモデル35人のネイルを手際良くつけていく。あらかじめサロンで用意したつけ爪だ。「あなたとても指が美しいわ。写真撮らせて」「ああいいよ」とモデルとの会話も弾む。名取さんはこれまで春と夏のファッションウィークに15年間も有名デザイナーたちのご指名に応えている。日本のネイル学校を経営するのと同時にニューヨーク市内ではスキン・ディープNYCという美容皮膚クリニックも開業しており、日米の女性たちを美しくすることがライフワークだ。

羊毛ファッション、ニューヨーカー魅了

北海道美深町で羊と暮らし創作

逸見さん手応え

 北海道美深町で10頭の羊と暮らしながら、草木染めでフェルト服を作っている逸見吏佳(へんみ・りか=写真左、中央)さんが12日、ニューヨークファッションウィークで羊毛ファッションをランウエーで披露した。この日、マンハッタンのチェルシー地区26丁目の会場となったハドソン川を臨む14階のカノエ・スタジオは、昼前から熱気にあふれる盛況で、大勢のファッションジャーナリストやバイヤーたちが詰めかけた。そして観衆の見守る中、トップバッターで逸見さんの作品を纏ったモデルたちが颯爽とランウエーを歩きギャラリーの注目を集めた。札幌市出身の逸見さんが羊のいる風景に憧れ、2004年に美深町に移住して現在は牧場で羊を家族と共に飼いながら羊毛ファッションを手がける。

 昨年、バンクーバーファッションウィーク参加後にニューヨークファッションウィークの主催者から案内のメールが届き、興味を持って今回の参加となった。「私たちの暮らしとは真逆の世界一の都会ニューヨークで、ショーをして、大勢の笑顔を送っていただき、なんというか、共感を得ることができました」とショーの後、興奮気味に逸見さんは話していた。薄い生地に羊毛を載せる布フェルトで、縫製することなく無駄なく作りあげる洋服作りを発案。身近な植物で草木染めするなど、周囲の環境に調和したものづくりを目指している。コンセプトは「生きている服」。そこには命として感じられるような愛が溢れる服を作りたいという思いがある。ロングコートやショールカラーは、縫い目がなく、一体化しているウエアで、「見た目の良さだけではなく羽織った時の心地よさがあります」という。ブランド名は「粗清草堂」(soseisodo)。8作品のショーはあっという間だったが、それは、天然素材を使った手作りファッションのローライフスタイルがニューヨーカーたちを魅了した瞬間でもあった。(三浦良一記者、写真も)

花柄イエローキャブとむっつりおじさん

 ニューヨーク市で、これまで行ったことがない地域を夫とぶらぶら歩いた。とくに治安が悪いというわけでもないのだろうが、殺伐とした倉庫街のようなところだ。用がなければ、わざわざ地下鉄を降りることもないだろう。

 イエローキャブが五十台ほど止まっている青空駐車場を見つけた。何台ものボンネットに、花柄などのかわいい絵がペンキで描かれている。こんなキャブが走っているのを、目にしたことがない。私は写真を撮りたくなった。

 駐車場の入口に、二畳ほどのバラックのような小屋があった。ドアはなく、防寒のために厚めのビニールが長い暖簾のように、地面まで垂れ下がっている。中に人がいるようだったので、ビニールの暖簾を少し開けてみる。

 小さな机が置かれ、体格のいい白人の男の人がすわっていた。

 中に入って、イエローキャブの写真を撮ってもいいでしょうか、と聞いてみる。

 Photos for WHAT?

 何のための写真だよ。

 男の人はこちらを向き、憮然とした表情で聞き返す。

 アクセントのある英語だ。東ヨーロッパ系の移民だろうか。

 ボンネットに描かれている絵が素敵なので、写真を撮りたいと思ったんです。 

 ま、いいよ、とぶすっとしたまま、答える。

 礼を言って、写真を撮る。キャブの多くは、ナンバープレートが外されている。ティーバッグが入ったままの紙コップが、運転席の隣に置かれたままになっている車もある。

 写真を撮り終えて、さっきの小屋に寄った。 

 再び、ビニールの暖簾を少し開けて、男の人に声をかける。

 ここにはどうして、キャブが何台も集まっているんですか。

 WHAT??

 何だ!?

 相変わらず、感じが悪い。が、聞こえなかったのかもしれない。私は質問を繰り返す。

 BECAUSE THEY BELONG HERE!

 ここの車だからだ!

 口調がきつくなってきた。

 そうですか。わかりました。どうも。 

 そう答えて、去ろうとすると、男が背後から怒鳴った。

 Are you from the FBI or what??

 お前は、FBIかどっかの人間か!? 

 自分が質問好きなのは認めるが、何もそんなに怒らなくてもいいではないか。

 虫の居所が悪そうなので、すごすごと立ち去った。

 誰が見ても能天気そうで、ときには子どもにも間違えられる私のような人間を、FBIが捜査に送り、いろいろ聞き出しているとでも、思っているのか。彼も命がけなのかもしれない。ドアもないあの小屋で、駐車料金を預かっているとしたら、いつ現金を狙われるかわからない。身を守るために恐そうな表情で、無愛想を装っているのだろうか。

 しばらく辺りを散歩し、駅に戻るときに、その小屋の前を通った。

 ビニールの暖簾を開けて、スーツの内ポケットからバッジを取り出して見せ、「FBIだ」と男に声をかける。

 そういきたいところだったが、夫が横で冷や冷やしながら、お前、そのうち、ニューヨークで撃たれるぞ、と真顔で言うので、やめておいた。 

 このエッセイは、文春文庫「ニューヨークの魔法」シリーズ第5弾『ニューヨークの魔法のじかん』に収録されています。

https://www.amazon.co.jp/dp/4167717220

日本語ツアーを再開

メトロポリタン美術館

 メトロポリタン美術館(五番街1000番地)では昨年夏から、コロナ禍で中止していた日本語によるハイライトツアーが再開されている。毎週火・金・日曜午前11時15分から約1時間、知識豊富なガイドが、見どころやおすすめの展示を案内してくれる。

 1月20日、山本伸子さんによるツアーに参加した。まずはエジプトのデンドゥール神殿。ダムに沈む遺跡を丸ごと移築したことで知られる同館必見の展示だ。神と王の見分け方、移築にまつわる逸話など興味深い語りに、早速引き込まれる。フェルメールやルノワールの絵画説明も非常に詳しく、「フェルメールが語っているみたい」「そんな制作秘話があったとは!」と感嘆する参加者もいた。シカゴ駐在中ニューヨークに観光で来た山上圭吾さん真理子さん夫妻は「普段何気なく見ていた作品にいろいろな意味があることに気づかされました」と話していた。この日は他にアメリカ美術、印象派、現代彫刻などを凝縮した内容で廻り、同美術館の魅力の一端を短時間で堪能した。

 日本語ガイドは現在、平日8人、日曜は3人が交代で担当し、全員ボランティア。マニュアルはなく各人がそれぞれ独自の内容で案内するので、同じ作品でもガイドによって異なるそうだ。ガイドになるための勉強は約1年、絶えず情報や知識を収集し、ツアー直前に予定コースを廻り展示が案内する位置にあるかを確認して本番に臨む等、その労力は計り知れない。同美術館やアートを愛する気持ちだけではなく、少しでも深く楽しんでもらいたいという奉仕精神あってこそ。山本さんは「観光でいらした方に限らず、ぜひ地元の方や国内観光の方にも参加してほしい」と話している。

 参加料金は美術館の入場料を払えば無料。集合場所は、大階段の手前左側1階のベレスブランコの回廊(ギャラリー534)。詳細は同館の公式サイトwww.metmuseum.org/visit/plan-your-visit/met-fifth-avenueで「日本語」をクリックする。(小味かおる、写真も)

NJ日本人会名刺交換会、新体制役員を発表

 2008年に設立されたニュージャージー日本人会は8日夜、3年ぶりのイベントとなる「名刺交換交流会」をエッジウォーターの「アメリカン・リージョン」で開催し、NJ州居住者、NJに拠点を置いていたりNJ居住者へサービスを提供するビジネスパーソンやアーティストら、約100人の参加者が集った。

 参加者同士のネットワーキングや食事のあと、香純恭師範と三宅由利子さんによる殺陣波濤流ニューヨークの迫力ある演武、そして藤原昌人インテレッセ社長の音頭で乾杯した。

 新体制の発表会でもあった同イベントは、まず13年も同会の運営に携わり7年間会長を務めあげて1月に退任した吉岡まこさんがスピーチ。先日NJ州が正式に記念日と認定した「フレッドコレマツデー」に言及し、今後毎年1月30日にNJ州内各町に同会で桜の木を植樹する計画を披露した。そして、2月から新会長に就任した近藤三奈さんから、吉岡元会長と本木裕子元副会長へお礼の花束贈呈と吉平健治副会長、ハリー西谷経理担当、近藤亜紗美総務担当ら新体制役員の紹介があった。(写真上:新体制発表に伴い新旧役員の交代を紹介)

会長就任挨拶をする近藤さん

 会の発足当時、発起人で初代会長でもあった近藤三奈会長のスピーチでは、1993年から25年間フォートリーで「国際子どもの日」イベントを毎年開催した流れから日本人会の立ち上げに繋がった話。同会の英語の正式名称を昨年9月より、NYをはじめ全米各州で活動する「日系人会」と肩を並べるしっかりした組織となるよう「Japanese American Association of New Jersey」に変更して登記したものの、日本語の呼び名は以前から親しまれている「NJ日本人会」を継続使用していくという報告がされた。また近藤さんは、「今回参加されている様々な業界のプロの力を借り、若い世代にもしっかり引き継いで、一緒に100年続く会を作り上げていきたい」と語った。同会では、今後、法律相談、ビジネスネットワーキング、若い世代の会、奥様の会、お子様イベント、教育、資産形成、老後計画など様々な世代のニーズに合うような企画を行う予定。

 その後、同夜のイベントは、約30人の参加者による「1分PRコーナー」やラッフルで、夜遅くまで盛り上がっていた。(本紙・久松茂、写真も)

空手の強さ世界に示す

59年前の極真空手VS タイ式ボクシング
フルコンタクトKARATE誌2月号で特集

 力よりも技、技よりも心を大切にする「人間空手」をモットーに米国で創立44年の世界誠道空手を広げ、米国40支部、日本国内30支部を含め世界120支部を持つ道場の創設者、中村忠氏が、日本の空手雑誌「フルコンタクトKARATE」の2月号の表紙を飾った。極真空手の大山道場の代表として1964年にタイ王国へ遠征。ルンピニー・スタジアムでムエタイ選手とムエタイルールで対戦し、2ラウンドKO勝利した時のエピソードが紹介された。当時、3人の空手家がタイ式ボクシング(ムエタイ)との他流試合を行うため、同年1月15日羽田発の日航機で旅立った。異種格闘技に挑んだのは、極真会(大山倍達総裁)の師範代・黒崎健時(当時四段)、中村忠(同二段)、藤平昭雄(同初段)。しかし、バンコクのナショナル・スタジアムでの試合は、延期に次ぐ延期で精神を消耗し、対戦相手も現地で変わるというハプニングの連続だった。いかに3人が逆境を乗り越え、空手を勝利に導いたのか。生きる伝説とも言われる「世界誠道空手道連盟誠道塾」の創設者、中村会長を大特集している。

 中村氏は、1942年2月22日生まれ。段位は十段。樺太真岡郡真岡町(現在のロシア極東連邦管区サハリン州ホルムスク)出身。駒場東邦高校一期生。1965年に日本大学理工学部建築学科卒業後、初代首席師範に任命される。門下生の増加や定着を良くするために、夜だけであった稽古を朝・昼・夜の三クラスに増やし、夏冬の合宿も指揮。これらは極真会館の公式行事となった。10月15日には百人組手を完遂した。

 66年からニューヨーク市ブルックリンで指導を始める。門下生にはウィリアム・オリバー、チャールズ・マーチンらがいる。中村含め、彼らは劇画「空手バカ一代」の重要人物としても登場している。中村はアメリカ各地の他にも、南米・ヨーロッパ・ニュージーランドへも行き、現地門下生の指導や演武を行った。演武の真剣白刃取りや氷柱割りは、極真会館主催のオープントーナメント全日本空手道選手権大会およびオープントーナメント全世界空手道選手権大会でも披露した。これら選手権大会で主審を務め、決勝戦も裁いている。71年に北米本部を設置し、初代北米委員長に任命される。76年に極真会館を離れ(当時の段位は六段)、世界誠道空手道連盟誠道塾を設立。大山は中村を「将来の後継者に」と考えていたようで、中村が極真会館を去った時には日本と世界の極真関係者への激震は多大なものであったという。

 中村が88年に出版した自著『人間空手』(主婦の友社)で、中村は「今思うと大山館長の生徒を育てる愛情と情熱、親しみやすく素朴な面、頭が良くて努力家、夢をたくさん語る事、など僕が影響を受けたり、見習わなくてはならない事が随分あります」と回顧している。

 現在は本部マンハッタンチェルシー校の道場と、ウエストチェスターの浄心本山道場を持ち、二代目の彰氏と共に人間空手の普及に今も努めている。 (三浦)

芥川作品が人形劇に

芥川作品が人形劇に

 ジャパン・ソサエティー(JS)は23日(木)から25日(土)までの3日間、午後7時30分からJS内劇場(東47丁目333番地)にて作家・芥川龍之介の5つの代表作をベースに創られた人形劇「AKUTAGAWA」を上演する。同作品は、日本の短編小説の父と言われるほど傑出した短編を多く残した文豪・芥川による5つの短編『羅生門』『地獄変』『竜』『杜子春』『河童』を紡いだもの。各ストーリーを通して、芥川の作家としての洞察力や不安定な精神世界を描き出す。

 出演は、八王子車人形・五代目家元西川古柳とアメリカ人パペット・アーティスト、トム・リー。また、ニューヨークで長年活躍するミュージシャン辻幸生のライブサウンドが加わり、躍動感に溢れたステージを披露する。23日(木)の終演後には観客全員招待の「MetLife Meet-the-Artists レセプション」、24日(金)の終演後には「アフター・トーク/アーティストQ&A」が実施される。

 入場料は一般30ドル、JS会員24ドル(13歳以上推奨)。チケット・詳細はウェブサイトhttps://japansociety.org/を参照。

編集後記 2月11 日号

【編集後記】

 みなさん、こんにちは。世界各国の新型コロナ対策の水際制限の緩和が進む中で、日本政府も5月8日からインフルエンザと同じ感染症5類にカテゴリーを移行します。それに伴い、海外との人の往来が増えそうです。空の国際線は各社軒並みの増便ラッシュです。日本航空の羽田路線は、5月28日からニューヨーク線の2番目となる003便と004便を新規増便します。ANAは3月26日からジョン・F・ケネディ=羽田線を現行の週7往復から3往復増やして週10便運航します。9月からさらに4便増便して毎日2往復運航します。ユナイテッド航空も1月5日から悲願のニューアーク=羽田路線を週3便体制で開設。デルタ航空もミネアポリス=羽田便の毎日の運行を再開、4月1日からホノルル=羽田便も運行するなど続々と空の旅行が再開しています。これを待ちわびていたのが、これまでじっと我慢の利用者です。日系旅行代理店のアムネットが2月4日からユナイテッド航空の日米往復航空券を1070ドルの特別価格で期間3日間の限定でセールをしたところ、開始直後から電話が鳴り止まず、3日間で予約1,000件が殺到しました。インフレの影響で、航空運賃も高止まりしていて、個人ではおいそれとはまだ行き来ができない感じですが、あとは価格の需給バランス次第で利用客は今後増えていくのでしょうね。日本では物価高と連日報道されていますが、ニューヨークから帰れば、何もかもがまだまだ安く感じることでしょう。ドルの使い勝手があるうちに帰国したい気分です。日本全国・漁港のある町・特選回転寿司銘店めぐりツアーなんてあったら絶対行くんですけどねえ。あ、関係ないですけど今週号で発行900号でした。読売アメリカの18年・870号を知らないうちに超えていました。うーん、回転寿司でお祝いしたい気分。でもNYにはないのですよね。それでは皆さんよい週末を。(週刊NY生活発行人兼CEO、三浦良一)

【今週の紙面の主なニュース】(2023年2月11日号)

(1)国際線の増便相次ぐ 3日間で予約1000件

(2)街角ファッション NYUの学生が女子会へ

(3)坂茂氏がNYで講演 木材建築の美を語る

(4)引き続き「円安」で本当に良いのか?  あめりか時評

(5)日本ふるさと名産食品店 ジャパンビレッジで23日から26日まで

(6)NY日系人会5階に 移転無事に完了

(7)北海道で羊と暮ら羊と作る服 NYファッションウィークに

(8)週刊NY生活ギャラリー 今週の参加アーティスト

(9)現代舞踊家の田中いづみ 樹のエネルギーを舞台で

(10)日本の新作映画5本上映  文化庁がIFCセンターで

(11 )JSでアニメ 「耳をすませば」