ワクチン・パスポートNY州で発行

接種状況や感染及び抗体検査履歴を証明するアプリ

  アンドリュー・クオモNY州知事は3月26日、米国では初の試みとなる新型コロナウイルスのワクチン・パスポートを発行する計画を発表した。 

 同プログラム「エクセルシオール・パス」(エクセルシオールは、向上を意味するNY州の標語)は、ワクチン接種状況や感染および抗体検査の履歴を証明するアプリで、イベント参加やビジネスの場で利用できる。報道発表によると、同アプリは「モバイル搭乗券のように印刷またはスマートフォンにダウンロードでき、QRコードで感染状況を相手に提示できる」という。 

 マジソン・スクエア・ガーデンやオールバニーのタイムス・ユニオン・センターなどの大型施設では2日から同アプリを導入しており、今後は小規模の芸術、娯楽、イベント施設での使用を拡大していく。同州知事は「市民の健康かそれとも経済かという質問の答えは、両方とも重要であるということ。次々とニューヨーカーが接種を受けていき、今後数か月で市民の健康指標は順調に最低値に向かって減少していくだろう。エクセルシオール・パスは、配慮ある、科学に基づいたツールとして復興に導くだろう」と伝えている。同アプリの詳細、ダウンロードはepass.ny.govを参照する。 

市内ワクチン6月で完了

デブラシオNY市長が見通し

500万全市民接種へ

 デブラシオNY市長は3月24日、市内でこれまでに約350万回のワクチン接種を提供したと発表した。市が目標としているすべてのニューヨーク市民約500万人への予防接種が6月までに達成できるとの見通しを示し、市は新たな接種サイトを開設するため宗教関連機関との連携も明らかにした。その一つ、レビティス神教会は3つの宗教施設を設けており、市長は「過去数週間にわたって予防接種を行ってきたが、信仰によって結びつけられている地域社会がより多くの人々を接種に参加させるための大きな機動力となっている」と述べた。地域社会での取り組み拡大とワクチン接種が、ニューヨーク市経済を再開させ市民生活を復活させる鍵であると述べた。クオモNY州知事によると、これまでに州内で1回目の接種を受けた人を含め合計800万人がワクチンを接種したという。

 また3月29日のクオモ・ニューヨーク州知事の会見で、翌30日午前8時から30歳以上のワクチン予約・接種を開始、4月6日午前8時から16歳以上のワクチンの予約・接種を開始することが発表されているため、今後一気に接種人口が拡大するものとみられる。電話でのワクチン予約は833・697・4829。

ライオンズ大学 大人の教養シリーズ

オンライン、無料
JAAサクラフェアに参加

日本から講師4人講義
お金の問題や健康

 NY日系ライオンズクラブは4月25日(日)から5月2日(日)まで、4人の講師による、第13回春のサクラフェア「ライオンズ大学:大人の教養講座シリーズ」の第2弾インターネット配信を行う。(共催:ニューヨーク日系人会・邦人医療支援ネットワーク、後援:在ニューヨーク日本国総領事館)

 講義は、山口里美さん(司法書士)の「どうする住まい?お金?これからのおひとりさまの備え」、小池理雄さん(5つ星お米マイスター)の「お米屋さんが教える『お米を楽しく、美味しく食べる方法』」、岩崎真理依さん(ロースイーツ講師)の「自宅で簡単!デトックス効果で元気になれる『健康ロースイーツ』」、うまさきせつこさん(ダンスインストラクター)の「痛みなく使える体!誰でもできる楽チン簡単ストレッチ7選」を配信する。各講師が30分の講義を行い、希望者は申し込み後に好きな時間に何度でも視聴できる。

 視聴無料。問い合わせは電話212・840・69429NY日系人会まで。申し込みはEメールinfo@jaany.orgまで。

アジア系差別続く

マンハッタン区長が事件現場で記者会見

見て見ぬふり

日系のスキ・ポーツさん怒り

 深刻なヘイトクライムが止まらない。暴行行為をする人のみならず、事件場面に居合わせながらも何もしない人たちが多いことが問題となっている。

防犯カメラが捉えた犯行映像

 3月29日ミッドタウン西43丁目360番地で65歳のアジア系の女性が男に蹴るなどの暴行を繰り返されて地面に倒される事件があった。当時、現場前のビルにドアマン2人が勤務していたが、暴行を阻止することや911に連絡するなどの行動を起こさず、さらには迷惑が被らないように、犯人が立ち去った直後ドアを閉めた。その時被害者の女性はまだ歩道に倒れたままだったが、駆け寄って助け起こすことはしなかった。これについてニューヨーク市長はツイッターで、被害に遭っている人を見かけたら傍観しないで警察に通報したりして助けるよう市民に呼び掛けた。30日午後4時半には事件があったビルの前でマンハッタン区長が記者会見し、市内アジア系コミュニティー団体のメンバーたちが差別に対する抗議スピーチを行い、日系のスキ・ポーツさんが「アジア系社会への無関心、無視が差別の元凶だ」と訴えた。ニューヨーク市警は犯人の写真を公開して捜査し、事件翌日の30日深夜、西40丁目のホームレスシェルターに住む無職ブランドン・エリオット(38)を襲撃罪及び増悪犯罪容疑で逮捕した。エリオット容疑者は2002年にブロンクスで実母殺害の前科があり、17年間刑務所に服役したあと2019年11月に仮釈放されていた。被害者の女性はフィリピンからの移民であることが確認されている。

(写真)事件現場でアジア系差別に抗議するポーツさん(3月30日、写真・三浦良一)

海老屋流茶箱 企画展

日本クラブWEBギャラリー

 日本クラブWEBギャラリーは4月15日(木)から5月26日(水)まで、「海老屋流茶箱」と題した企画展を開催する。(協賛:ニューヨーク日本商工会議所基金)

 茶箱は大きさ約20センチほどの小さな箱や籠のなかに、お茶を点てるために必要な茶道具、棗や茶筅、茶碗などがすべて入ってるセットのことで、今から約400年前、千利休が野外でお茶を愉しむために小さな茶道具を仕組んだのが始まりと言われている。同展では延宝元年(1673年)から続く骨董店海老屋九代目三宅正洋氏の「見立て」で作られた遊び心満載の茶箱30点を紹介する。

 また、4月15日(木)午後7時から「海老屋流茶箱展」バーチャル・オープニング・レセプションが開催される。三宅正洋氏による骨董茶箱についての解説、表千家教授中澤宗寿氏のお点前と、西川流宗家家元西川扇蔵十世(人間国宝)の長女西川祐子氏による日本舞踊「お江戸日本橋」が披露される。 参加費無料(任意で医療従事者へのお弁当プロジェクトへ寄付)。先着500人。申し込み・詳細はウェブサイトhttps://www.nipponclub.orgを参照。

気軽に行けるカリブ海リゾート「バハマ」

NYからたったの2時間!安心・安全

It’s better in The Bahamas!

 「バハマに来れば、何もかもが楽しくなる!」これはバハマ政府観光局が1970年代から現在も掲げているスローガンです。この一言がバハマへの旅の全てを表しています。アメリカ東部標準時間に入るバハマは、ニューヨークとは時差がなく、直行便で2時間で遊びに行ける、カリブ海の中でも最も身近な旅行先です。たった数時間で到着する先には、カリブ海の蒼い海が皆さまをお待ちしています。

バハマにおけるCOVID-19の現状

 世界中の国と同じく、やはりバハマも新型コロナウイルスの影響を受けていますが、2020年12月頃から新規感染者数の増加はかなり抑えられており、ここ最近は感染者数が1桁の日もあるほど落ち着きを取り戻しています。21年3月14日からはバハマ国内のワクチン接種も開始され、初日に首相が接種をするなど国を挙げて取り組んでいます。

 各リゾートではアメリカに戻る際に必要な抗原検査を無料で行うホテルもあり、ナッソー空港内にも検査を受けられる施設(有料)があり、帰国もスムーズに手続きを行うことができます。

バハマと言えば!テーマパーク型ホテルリゾート

 やはりバハマの一番人気のリゾートは「アトランティス・パラダイスアイランド」。5つの宿泊タワーや水族館、ウォータースライダー、流れるプール、カジノ、イルカやアシカと遊べる施設、キッズクラブはもちろんのこと、美しいパラダイスアイランドのビーチやクラブ、多くのグルメレストランなど、設備の充実は世界トップレベル!朝から夜までホテル内で充分楽しめるのも、感染の心配がない大きな魅力です。

バハマの人気ローカルフード

 ローカルフードで一番人気はコンク貝を使った料理です。生で食べるコンクサラダは特に地元では人気!テイクアウトで帰宅途中に買って帰る人や、食事の前菜として食べる人も多いお手軽フードです。コンク貝、玉ねぎ、ピーマン、トマトのみじん切りにライム・オレンジを絞り、塩とペッパーで味付けしたオリジナルコンクサラダは、さっぱりとした味わいがビールのお供に最高!

世界唯一!野生のブタと泳げるビーチ

 人気のおすすめアクティビティーは、泳ぐ豚さんと会うツアーです。エグズーマ諸島のビッグメイジャーキーに泳ぐ豚さん、コンパスキーにはサメ、アランズキーではイグアナに会うこともできます。ボートで行く日帰りツアーがおすすめです。ただし、ナッソーからエグズーマへは距離があり、天候にも左右されやすいため、首都ナッソーでのツアーもおすすめです。ナッソーでもニュープロビデンス島の南側のビーチで豚さんたちと触れ合うことができます。

今後の期待

 昨年からキャンセルが続いているクルーズ船業界からも良いニュースが入ってきています。クリスタルクルーズが21年7月4日から、出港地のナッソーを含めてバハマの島を6島を1週間で周るという、新しい路線を発表しました。ナッソー、ハーバーアイランド、エグズーマ、サンサルバドル、ロングアイランド、ビミニの6島を1度のトリップで全て周れるという贅沢なクルーズです。

バハマ渡航入国規制

 現在、バハマの入国にはトラベルヘルスビザが必要です。ビザの申請には5日以内に受けたPCR検査の陰性結果が必要となっております(10歳以下は免除)。5泊以上ご滞在の方は、5日目に再度抗原検査を受ける事になり、その検査費用が含まれるビザと含まれないビザがありそれぞれ料金が異なります。アメリカからの観光客の方で4泊以下のビザは40ドルです。

 ちなみに、首都ナッソーの空港にはアメリカ合衆国の入国審査が常駐しており、アメリカへ戻る観光客の方が利用する専用のターミナルにて、アメリカ合衆国入国審査を通過することができるのも大きな魅力です。

 アメリカからの距離の近さ、東海岸では時差がない、USドルがそのまま利用できる、元イギリス領なので言葉が英語など、アメリカからの旅行先としては身近な存在のバハマです。リゾートの形態も、大人オンリーのオールインクルーシブからご家族連れが楽しめるホテルなどさまざま。一度はカリブ海に行ってみたいという方は是非バハマへ!

※記事作成時の情報となりますので、最新情報は各公式機関にてご確認ください。※現在地域により移動制限等が発表されておりますので、各州の最新情報や現地大使館・総領事館からの安全情報をご確認ください。

旅行会社 アムネット バケーション/テーマパークデスクamnet-usa.com

編集後記 3月27日号

編集後記

 みなさん、こんにちは。新型コロナ禍が始まって以降、アジア系に対する犯罪が増加しています(本紙今週号1面、4〜5面)。ジョージア州アトランタで16日、マッサージ店など3カ所が次々と男に襲われ8人が死亡、うち6人がアジア系女性という事件が発生しました。移民を排斥したトランプ前大統領が新型コロナウイルスをチャイナウイルスと呼んだことでアジア差別に火が着き、20世紀初頭に欧米を席巻したイエロー・ペリル(黄禍論)の再燃とも見られる現象がいま全米規模で起こりつつあります。それは何故でしょう。昨年夏はコロナパンデミックの中、黒人差別に抗議したブラック・ライブズ・マター(BLM)運動が起りました。その運動のあまりの反動のため、ファッションメーカーがモデルを白人から全て黒人に変えたり、100年続いたシロップの黒人女性のラベルも消され、黒人差別に対するタブー(不可侵)の聖域ができて、これまでのように警察もうかつに黒人被疑者に対する踏み込んだ捜査に手が出せなくなっていることに対し「社会全体としてもいじめの対象として黒人がダメなら大人しいアジア系、しかも抵抗しない女性が差別的攻撃の標的、スケープゴートになる」と指摘する人もいました。もともと黄禍論は大国のロシアと戦争をして勝ったアジアの小国、日本に対する驚きと恐れの「脅威」から発生したもの。いまの中国の経済・政治、軍事的覇権拡大に対抗する米国の国力の低下から発生する「脅威論」がアジア憎しの増悪犯罪を生み出しているという見方もできます。日本は、1980年代半ばにあった日米貿易摩擦と自動車摩擦での米国における日本バッシングのような状況には今はなく、アジアの中でもアメリカと同じ価値観を共有する同盟国として、アジアの一員であること以上にその軸足はアメリカの同胞意識の方が強いです。国連加盟国の中で圧倒的に日本は親近感を持たれる好感度の高い国だそうですが、アジアの中では中国、韓国、北朝鮮ともお互いに相譲れない感情的な最悪の衝突事案を抱えています。そんなことが理由か、反アジア差別抗議集会でも日本人の姿をほとんど見かけません。総領事館が「危ないところには近づかないで」と呼びかけているからかもしれませんが、日系人は戦争中に強制収容所に入れられたという人種差別を受けた国で、アメリカはそのことに謝罪しています。日系社会には、フレッド・コレマツというその人種差別と戦った歴史上の勇気ある人物がいるので、そこをバックボーンにしてアジア差別反対をさらに強く訴えかける武器を持ってはいます。しかし、なんと言っても人類最大のアジア増悪犯罪は「戦争の早期終結のため」という後付けの嘘ばっかな理由によって落とさなくてもよかった原爆を2つも日本に落とした「アメリカの過ち」だと思いますが。原爆は今なら確実にジェノサイド条約違反ですが、それにも日本は加盟してません。すべてアメリカの顔色を伺ってというのが、突き詰めて行くとアジア差別にも強い姿勢にでられない日本の宿命かもしれません。この部分はニューヨーク日系人会などの日系米国人組織の健闘を祈りたいです。それではみなさん、良い週末を。(三浦良一、週刊NY生活発行人兼 CEO)

【今週の紙面の主なニュース】(2021年3月27日号)

(1)アジア系差別に抗議広がる

(2)この夏は上演シェークスピアin ザ・パーク

(3)ブライアントパークでアイスショー

(4)マジソン街で日本刀振るった男逮捕

(5)NY州ワクチン接種年齢50歳に引き下げ

(6)ジャパンビレッジに江戸情緒の建物

(7)生き生きEATS  お魚の南蛮漬け

(8)日本女性の外見の美しさは肌

(9)ワクチンの場所地下鉄地図に

(10)New Comer’s Eye 中華街のマーケットは迫力あり

黄禍論再びの怒り、現代の米国になぜ

アジア系差別の増悪犯罪が全米で激増

連続8人殺害事件6人がアジア女性

 米国では新型コロナ禍が始まって以降、アジア系に対する犯罪が増加している。ジョージア州アトランタで16日、マッサージ店など3カ所が次々と男に襲われ8人が死亡、うち6人がアジア系女性という事件が発生した。

 男はロバート・アーロン・ロング容疑者で監視カメラの映像をもとに特定、アトランタの南約240キロにあるクリスプ郡で17日に逮捕された。単独犯と見られる。アジア系に対する「ヘイト・クライム」(憎悪犯罪)の疑いが強いが、取り調べでは人種を動機とした襲撃ではないと否定してしている。男は「性依存症」で、自分を誘惑する店を潰したいと思っていたと見られるという。

 連続銃撃事件は16日午後5時ごろ、アトランタ近郊のチェロキー郡アクワースの「ヤングス・アジアン・マッサージ・パーラー」で発生、アジア系女性2人と白人の男女の4人が死亡した。午後6時ごろにはアトランタ北東部の「ゴールド・スパ」で発生。通報で警察が駆けつけた時は女性3人が亡くなっていた。直後に道路を隔てたすぐ近くの別のマッサージ店「アロマセラピー・スパ」からも通報があり、警察が駆けつけた時はすでに女性一人が死亡していた。警察によれば死亡したアジア系6人のうち少なくとも4人は韓国系だという。 

 バイデン大統領は19日、ハリス副大統領と共にアトランタを訪問。アジア系に対する憎悪犯罪が急増していることを指摘し、「沈黙は共犯だ。我々は行動しなければいけない」と述べた。また大統領とハリス副大統領は地元のアジア系市民のリーダーらと会談した。

 移民を排斥したトランプ前大統領が新型コロナウイルスをチャイナウイルスと呼んだことでアジア差別に火が着き、20世紀初頭に欧米を席巻したイエロー・ペリル(黄禍論)の再燃とも見られる現象がいま全米規模で起こりつつある。

 昨年夏はコロナパンデミックの中、黒人差別に抗議したブラック・ライブズ・マター(BLM)運動が起ったが、今年はアジア系が立ち上がろうとしている。   

(写真)今年に入り全米規模で開催されているアジア系差別に対する抗議集会(2月27日NY市庁舎近くで、三浦良一撮影)

ヘイトクライムに立ち上がる
全米で3795件、NY市で500件

アジア系増悪犯罪に抗議する集会(21日、チャイナタウンで、写真・藤澤希世紀)

 人権団体「ストップAAPI(アジア・太平洋諸島系)ヘイト」が昨年の2月28日から今年3月19日までの間に受け取ったアジア系米国人に対する差別的忌避、中傷、暴行などの憎悪事件は全米で3795件にのぼることがわかった。一昨年の同期間の約2600件に比べ1000件以上増加しており新型コロナウイルス禍の影響があると見られる。

 これらがすべて警察に報告されているわけではない。また「憎悪犯罪」として成立するのは被疑者の差別的発言が必要で、例えばアジア系アメリカ人同盟(AAF)によれば、ニューヨーク市では昨年1年間で約500件の憎悪事件があったとされるが、憎悪犯罪として立件されたのは30件ほどになっている。

 3795件のうち女性に対してが68%、男性に対しては29%と、女性は男性に比べ2・3倍被害にあっている。サンフランシスコ州立大学のラッセル・ジョン教授(アジア系米国人研究)は「アジア系女性は柔和で従順であるというステレオタイプがあり、人種差別と性差別の融合の可能性が高い」と指摘、「アジア人女性を簡単な標的として見ているかもしれない」と述べている。

 種類別でもっとも多かったのは言葉による嫌がらせで68・1%、次いで差別的忌避で20・5%だった。物理的攻撃(暴行)は11・1%を占めた。事件の3分の1は職場で起きており、4分の1が公道など公共の場だった。ある中国系米国人は地下鉄で男から平手打ちを喰らい、ライターを投げつけると脅かされ、差別的言動もされた。ワシントンDCの地下鉄駅ではあるフィリピン系米国人女性が、男から「中国人の××」と言われ、咳をされ、脅かされたという。

抗議のパフォーマンスをするリーさん(左)とツービーユーさん(23日、34丁目で、写真・三浦良一)

 バイデン大統領は今年1月にアジア系に向けられた差別を非難する覚書に署名した。憎悪犯罪の増加に司法省がどのように対応すべきかについての指針も含めた。3月11日には国民向けの演説で、アジア系米国人がコロナ禍の間に耐えて来た暴力を非難した。アジア系が「攻撃され、嫌がらせを受け、非難され、スケープゴートにされたアジア系に対する悪質な憎悪犯罪が起きていることを取り上げ、「それは間違っており、非アメリカ人であり、止めなければならない」と訴えた。バイデン政権では、公道、交通機関、民間企業そのほか含めより包括的に取り組む必要性があり、米司法省が憎悪犯罪により積極的に取り組むことが進められている。

 ニューヨーク市では21日、マンハッタンのチャイナタウンで市民数千人が集まってアジア系ヘイトクライムに抗議する集会が開かれた。また23日には韓国系アーティストのジェイソン・リーと日本人女優のツービー・ユー(TUBEE U)がコリアンタウン近くの34丁目ブロードウエー交差点で「STOP KILLIN ASIAN」と抗議ペイントと、顔に血を流したメイクで増悪犯罪への抗議パフォーマンスをした。

治安悪化進む
NY日本総領事館が警告

 ニューヨーク市において拳銃発砲事件が多発している。NY日本総領事館が15日、注意を呼びかけた。それによると、ニューヨーク市では引き続き拳銃発砲事件が多発しており、先週末は少なくとも13件の発砲事件が発生し20人が死傷した。例として13日(土)午前10時15分頃、17歳の男性がブルックリン地区カナーシーの東82番ストリートを友人と一緒に歩いていたところ、灰色のセダンから飛び出してきた男がいきなり発砲し、17歳の男性が死亡、友人も足などを撃たれて負傷した。また、クイーンズ地区のアストリアでは、12日(金)午後8時30分頃、37歳の女性が銃撃の流れ弾に当たって死亡する事件が発生している。

 ニューヨーク市警の統計によれば、殺人や拳銃発砲事件等の暴力犯罪は昨年6月以降に急増し、結果として2020年の殺人事件は前年対比44・8%、拳銃発砲事件は97%とほぼ倍増している。この傾向はその後も継続しており、今年2月中の拳銃発砲事件は77件で昨年2月中の44件よりもいる。

 同総領事館では、暴力犯罪が増加している原因として、長期間のロックダウンや失業等による精神的不安や怒りの感情を抱える人々が増えていることなど様々な要因を挙げている。また、ホームレスによる嫌がらせ事案やアジア系住民に対するヘイトクライム等も依然として報告されており、引き続き注意が必要と警戒を呼びかけた。

被害に遭わないために

 被害に遭わないためには、危険に近づかないことが何よりも重要であり、拳銃発砲事件が多発している地域や危険性の高い地域を通過する必要がある場合には、遠回りでも別のより安全な道を選ぶことも被害防止上有効な対策の一つ。夜間の外出や人通りの少ない道は避ける、不審な人物には近づかないなど、安全を確保するように十分注意を呼びかけている。

最近NYで発生した事件

●15日午後7時頃西37丁目8番街で、41歳アジア人女性が背後から近づいてきた男に液体をかけられる。

●19日午後、1番線車内で68歳のスリランカ人男性が頭部を殴打される。目撃者によると犯人は人種差別的な言葉を発していたという。犯人は36歳の男性で逮捕済み。

●20日午前9時ごろ、初老のアジア人男性がAllen StとHouston Stのあたりでホームレスの男に顔を殴られる。目撃者によると加害者の男は「もしもこのあたりでお前と姿を再び見たら尻を殴りつけてやる。」などと怒鳴っていたという。

●21日午後1時ごろ、41歳のアジア人女性が西31丁目の6番街近くで背後から掴まれ地面に投げつけられる。容疑者は37歳の女性で攻撃中にスペイン語で何かを叫んでいたという。警察はヘイトクライムと見て捜査している。

●20日午前5時30分ごろアストリア/LIC地区の38丁目で、61歳のアジア人男性がナックルダスターを持った男に地面に押し付けられて殴られた。犯人は男性の右目に怪我を負わせたのちバックパックを奪い逃走中。警察がヘイトクライムとして捜査しているかどうかは現在まだ不明。

■安全対策の参考としてNY日本総領事館ホームページには「ニューヨーク安全マニュアル」 (https://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/j5/index.html)を掲載している。同マニュアルの「事件や事故に巻き込まれたら」(https://www.ny.us.emb-japan.go.jp/jp/j5/nyanzen-manual_2019.pdf)には緊急時の連絡先等を記載している。万が一、犯罪被害に遭った場合には、警察に被害を届け出るとともに、総領事館にも通報するよう呼びかけている。

警察・消防・救急は全て「911」

 緊急時には「911」をダイヤルし(公衆電話ではコイン不要)、オペレーターに緊急事態の場所と内容(警察・消防・病院の別)を告げる。英語で説明できない時には「ジャパニーズ・プリーズ」と告げれば、日本語通訳サービスを介しての通話が可能。緊急時以外には、「911」ではなく管轄の警察署へ直接連絡。 

総領事館への通報

 思わぬ事態に遭遇し、困っている人は、総領事館の「邦人援護担当官」へ連絡すること。週末・休日は緊急時のための 24 時間対応可能な電話システム(日本語オペレーター対応)も導入している。電話:1-212-371-8222

この夏は上演、シェークスピアinザ・パーク

セントラルパークで7月5日から8月29日まで

 パブリック・シアターは16日、毎年夏にセントラルパークで開催していた無料イベント「シェイクスピア・イン・ザ・パーク」を上演すると発表した。期間は7月5日(月)から8月29日(日)まで、シェイクスピアの喜劇で唯一の現代劇である「ウィンザーの陽気な女房たち」(The Merry Wives of Windsor)を、物語の舞台をサウスハーレムの移民コミュニティに変えて上演する。会場となるデラコルテシアターは最大で2000人収容可能だが、同シアター責任者のサヒム・アリ氏は「観客数は400人程度になるだろう」と述べている。

 ニューヨーク州は4月2日から、芸術やエンターテインメント会場での集会が許可される予定。新型コロナウイルス検査を義務付けているイベントに関しては、屋外会場で500人まで収容することができる。

ブライアントパークでアイスショー

アメリカン・アイス・シアター

多様性テーマに開催
島田美樹さんが企画

 3月12日、ブライアントパークで「Diversity on Ice! Skating Show」と題したアイスショーがアメリカン・アイス・シアター(AIT)とミキズ・アイス・イベンツ(MIE)のコラボで開催された。

 フィギュアスケートも他スポーツと同様にパンデミックで競技会やアイスショーなど全てキャンセルされている。このショーは、日々トレーニングに励んでいるスケーター達にその努力の成果を披露する場と、エンタメ業界がほぼ全滅のなかで人々に活気を与えたいというフィギュアスケートコーチ島田美樹さんの強い思いから実現した。

 アイスショーのタイトルにあるように、スケーターの国籍やバックグラウンドはさまざまで、アメリカ、日本、南米、ヨーロッパ、アフリカなどからスケーター達が集結し、エキシビジョン演技を披露した。ショーでは5歳から60歳までの、ソロ、 ミニグループ 、アイスダンス、ペアなど、22人のスケーターと、AITのグループ計45人がそれぞれのプログラムを披露。オリンピアンのコーチ達が教える全米選手権のメダリストであるスタースケーターや自閉症のスケーターも参加し、スケートファンだけではなく通りすがりの人も集まり、 多くの観客からたくさんの温かい応援を受けていた。