遣米使節団160年

人気者のトミー、女性ファン熱狂
米紙も注目の立石斧次郎

「私はアメリカが大好きで友達もたくさん」

 ここで一人の若者を紹介したい。遣米使節に随行していた通訳見習いの立石斧次郎だ。養父の立石得十郎が幕府のオランダ語通詞だったこともあり、幼少期より養父に連れられ、外国人に接することも多く外国人なれしていた。彼は横浜にある現在の税関に当たる役所で外国人相手に雑務に従事、語学に才があった斧次郎はそこで英語や社交性を身に付けた。幼名が為八(ためはち)で日本の同行者から「タメ」と呼ばれていたので、それが米国人の海軍士官には「トミー」と聞こえたようだ。人なつっこい性格の斧次郎はポーハタン号の船員たちともすぐに打ちとけ、彼らから「トミー」と呼ばれるようになった。当時16歳で最年少の侍だった斧次郎は使節団の行く先々で人気者となり、ニューヨークのパレードでは米国人女性からもらったハンカチを笑顔で振るなど、その姿にニューヨークの女性たちが熱狂し、現代のジャニーズ・タレント顔負けの人気ぶりたったようだ。滞在先のホテルにはラブレターもたくさん届いたという逸話も残っている。 
 当時のニューヨークの地元新聞ニューヨークタイムズ紙やニューヨークトリビューン紙にも彼のことが事が書かれた記事が掲載された。トリビューン紙のインタビューに彼は「I very sorry to go! I love America very much, Made many friends here. Very kind gentleman, beautiful ladies. I Remember them all in my own country. Be sure I come back, sometime. Good by my friend! Seionada! 」(原文のまま)とコメントしている。「私は帰国しなければなりません! 私はアメリカが大好きで、この地にたくさんの友達ができました。非常に親切な紳士や美しい女性たち。自分の国に帰っても忘れません。いつの日か必ずまた戻ってきます。さよなら!」と語っている。