遣米使節団160年

NYで 侍大行進
沿道市民 50万歓迎

国務省を訪問中の使節団一行
日米の国旗が翻るブロードウェー Photo courtesy collection of Tom Burnett

  使節団は6月16日にニューヨークに到着。ニューヨーク市では街をあげての大歓迎を受け、ブロードウェーでは正装した侍たちが練り歩く「侍パーレード」が行われた。パレードはダウンタウンからユニオンスクエアまでを行進、軍による閲兵式もあった。この時、沿道には米国の国旗と日本の「日の丸」が各所に掲げられ、約50万人もの観客で溢れたという。ビルの窓から身を乗り出す人、電柱に登って見物する人もいたとか。当時のニューヨークタイムズ紙は「市の歴史のなかでもっとも華々しいイベントだった」と評したと記録にある。タイムマシーンがあるのなら当時にタイムスリップしてパレードを見てみたいものである。当時、侍たちはどんな思いでブロードウエーを練り歩いたのか、感慨深いものがある。
 夜にはニューヨーク市主催のレセプションが当時、ソーホーにあったメトロポリタンホテルで開かれた。一行は当時のニューヨーク州知事やニューヨーク市長と会見し、セントラルパークや学校見学など市内視察も行った。1860年6月19日付けのニューヨークトリビューン紙にはニューヨークに来た70人の侍のフルネームが掲載され、それぞの役目と人物像なども紹介されている。
 ニューヨークでは使節団に関する演劇や歌が上演されたり、土産物が売られたり、「Japanese」と名づけられたカクテルが人気になったりと、1860年のニューヨークの夏は「日本」であふれかえったという。
 当時のアメリカを代表する詩人ウォルト・ホイットマンは、彼の代表作の詩集『草の葉』のなかで、ブロードウェーを行進した侍たちの詩「ブロードウェーの華麗な行列」という一編を残している。ホイットマンも侍の行進を実際に見たのであろう。

“A Broadway Pageant,”
Over the Western sea hither from Niphon come, Courteous, the swart-cheek’d two-sworded envoys, Leaning back in their open barouches, bare-headed, impassive, Ride to-day through Manhattan.

(原文)
 西の海を越えて遙か日本から渡米した、頬が日焼けし、刀を二本たばさんだ礼儀正しい使節たち、無蓋の馬車に身をゆだね、無帽のまま、動ずることなく、きょうマンハッタン街路をゆく…
日本語訳:志村史夫『いま「武士道」を読む』(丸善ライブラリー)より