遣米使節団160年

ワシントンDC
大統領と謁見

記事部分が消失しているため、日時場所が不明だが、大規模な謁見の場面を報じたものと見られる挿絵(NY公立図書館蔵)

 使節団一行は3月末にワシントンDCに到着。ここでも大歓迎を受けた。船が港に着いてから馬車に乗り滞在先のワシントン・ウィラード・ホテルまで、騎兵隊や楽隊、縦隊に先導されて移動。沿道では熱狂する観衆が花束を投げたり、鐘をならしたりと大歓迎。副使の村垣の日記には「まるで、江戸の祭りのようだった」と記されていたという。このワシントン・ウィラード・ホテルは現在もワシントンDCにある。また、同ホテルの昼食で一行はアイスクリームを食べている。「口の中でとろける甘い氷菓子」と使節団の日記にも記されている。ジョン万次郎や咸臨丸で先にサンフランシスコに到着した勝海舟や福沢諭吉らも彼らよりも先に米国でアイスクリームを食べたかもしれないが、記録に残るなかでは、おそらく初めてアイスクリームを口にした日本人がこの遣米使節団一行だと言われている。日記にも書き留めているくらいなので、その美味しさにさぞかしびっくりしたことだろう。
 ワシントンDCでは米国政府は当時5万ドル、現在の価値で約150万ドルをかけて歓迎、ホワイトハウスでは歓迎会も開かれた。3月28日には第15代米国大統領のブキャナン大統領を公式に謁見している。この時、3人の使節は武家の正装である狩衣(かりぎぬ)に萌黄色の烏帽子(えぼし)をかぶり飾り太刀を身に付けていたという。
 一行はワシントンDCに3週間滞在し、スミソニアン博物館や国会議事堂、海軍造船所などを訪れたのち、ボルティモア、そしてフィラデルフィアでは米国政府の造幣局を見学し、ニューヨークへと向かった。