クオモ知事が退任演説

公職復帰には関心示さず

 セクハラ(性的嫌がらせ)疑惑を受けて辞任を表明していたニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事(民主党、63)=写真=が23日、退任演説を行なった。演説は約16分で、冒頭で「州の政府機能を麻痺させないため辞任するが、セクハラは事実ではない」と改めてセクハラ疑惑を否定した。「誰もが告発する権利があり、その勇気は賞賛する。しかし、それを政治化することによって司法制度を弱体化させ、事実なしに非難した」として政治家やメディアを批判、「事実は明らかになる。私は自信がある」と語った。

 後半は、ラガーディア空港の再建をはじめとするインフラ整備、グリーンエネルギー計画、同性婚合法化や銃規制、最低賃金引き上げなど2011年から3期務めた知事としての実績について語った。コロナウイルス禍についても「全米でもっとも高かった感染率を最も低いレベルにまで下げるなど、誰も考えられないことをやり遂げた」と強調した。

 最後に自身の政権チームと家族に感謝の意を述べ、後任の知事となるキャシー・ホークル副知事と、次期ニューヨーク市長になるのがほぼ確実とされているエリック・アダムズ氏の成功を祈るとした。「皆さんに仕えたことを光栄に思います。忘れないでください。ニューヨークは不屈、賢明で、団結と規律があり、そして愛があることを。それがニューヨーカーを特別なものにしている本質なのです」と締めくくった。

 クオモ知事は同日の午後23時59分をもって知事を退任、キャシー・ホーカル(民主党、62)副知事が知事となった。24日に宣誓式と就任演説が行われた。ニューヨーク州初の女性知事として2022年の12月末まで務める。なお、ホーカル新知事は2022年に行われる同州知事選への出馬を表明している。クオモ知事の側近であるメリッサ・デローザ補佐官によれば、「知事は家族との時間を楽しみにしていて、再び公職に立候補することに関心がない」という。

 クオモ知事のセクハラ疑惑をめぐっては、複数の女性からの告発を受けて州のレティシア・ジェームズ司法長官が独立捜査官による調査を行い、8月3日にクオモ氏が州職員など女性11人にセクハラをしていたとする報告書を発表、セクハラに関する連邦法と州法に違反したと断定した。また少なくとも5つの地方検事局が犯罪の可能性の調査を開始した。共和党はもちろん民主党内からもクオモ知事を擁護する声は皆無に近く、NY州議会では知事弾劾に向けての調査が開始されていた。

 NY州民主党委員会のジェイ・ジェイコブス委員長やビル・デブラシオNY市長など地元政治家に留まらず、チャック・シューマー連邦上院院内総務(NY州選出)、そしてバイデン大統領やペロシ連邦下院議長も知事は辞任すべきと発言していた。

 父マリオ・クオモと親子二代でNY州知事を務めたが、父親がイタリア系マフィアとの関わりで中央政界への道を断念し、息子は女性問題で失脚した。