広島・原爆投下のトランプ発言に日本で怒り

「戦争を終わらせた本質同じ」

 トランプ米大統領が6月25日、米軍によるイラン核施設攻撃について、長崎と広島に投下された原爆になぞらえる発言をし、日本で非難する声が上がった。

 トランプ大統領は6月25日、NATO(北大西洋条約機構)のマルク・ルッテ事務総長との会談の際、イラン核施設への米軍による攻撃の成果を強調した上で、「あの攻撃で戦争は終わった」、「広島の例は使いたくない。長崎の例も使いたくない。しかし本質的には同じことだった」と述べた。また、同日の記者会見でも「広島や長崎をみれば、あれが戦争を終わらせたことがわかる。これは違う形で戦争を終わらせた」と語った。

 こうした発言に対し、ノーベル平和賞を受賞した「日本原水爆被害者団体協議会」(日本被団協)の代表委員の箕牧智之氏は「受け入れられる発言ではない。被爆80年を迎えるのにあの悲惨な経験がわかっていない。広島、長崎で(1945年末までに)21万人が亡くなった重さを受け止めていない」と述べた。横山照子代表理事は「原爆投下はどういう理由があってもやってはいけないことで、正当化するような発言には怒りしかない」と語った。

 長崎市の鈴木史朗市長は26日、「仮に原爆投下を正当化するものであるとすれば、被爆地として大変遺憾に思う」と話した。広島では26日、県被団協と原水爆禁止広島県協議会(県原水協)の呼びかけで約50人が集まり抗議集会が開かれた。広島市議会は同日、「原爆使用を正当化する発言を看過、容認することはできない」とする決議を可決した。(日本政府の見解と米国の論調7面に)

 林芳正官房長官は同日の記者会見で、トランプ氏の発言について「広島、長崎に対する原爆投下は大変多くの尊い命を奪い、病気や障害などで言葉に尽くせない苦難を強いた人道上極めて遺憾な事態をもたらしたと認識している」と述べた。政府として抗議する考えがあるかとの質問には「累次の機会に米側に伝達している」と答えるに留まった。

 トランプ大統領の発言は、イラン核施設を「完全に破壊した」とする自身の主張に対する疑問が起きる中、それを払拭する狙いがあっと思われる。ロイターやニューヨーク・タイムズ、CNNなどの主要メディアは、完全に破壊できたかどうかは疑問で、その意味で原爆との比較は不適切であるとしている。ただし原爆が戦争を終わらせたこと自体を否定しているわけではない。


原爆との比較不適切
NYタイムズ報道

 林芳正官房長官は同日の記者会見で、トランプ氏の発言について「広島、長崎に対する原爆投下は大変多くの尊い命を奪い、病気や障害などで言葉に尽くせない苦難を強いた人道上極めて遺憾な事態をもたらしたと認識している」と述べた。政府として抗議する考えがあるかとの質問には「累次の機会に米側に伝達している」と答えるに留まった。

 トランプ大統領の発言は、イラン核施設を「完全に破壊した」とする自身の主張に対する疑問が起きる中、それを払拭する狙いがあったと思われる。ロイターやニューヨーク・タイムズ、CNNなどの主要メディアは、完全に破壊できたかどうかは疑問で、その意味で原爆との比較は不適切であるとしている。ただ原爆が戦争を終わらせたこと自体を否定しているわけではない。