全米日系人博物館が非難声明
全米日系人博物館(ロサンゼルス、JANM)は6月18日、第二次世界対戦中にアメリカの日系人が強制収容されたマンザナー国定史跡やミニドカ国定史跡を含む国定史跡や国立公園において「訪問者にアメリカ史を批判する内容とみなされる情報」を報告するよう促す標識を設置したことを非難した。
これは、大統領令「アメリカ史に真実と健全性を回復する」に基づき、2025年5月20日に米国内務省長官が発行した覚書、および2025年6月9日に国立公園局の会計監査官が発行した指示書に続くもの。同博物館のアン・バロウズ館長兼CEOは「これらの指針は、公園管理者に、アメリカ史をおとしめるものと判断された標識、展示、映画、その他の一般公開コンテンツを特定し、注意書きを付けることを求めている。これらはいずれも、現政権のより広範で継続的なキャンペーンの一部であり、多様性と民主主義の基盤となる原則を解体し、現政権が好ましいとする歴史解釈に反する歴史的な叙述を制限し、有色人種や女性、LGBTQIA+、その他のコミュニティーの貢献をアメリカ史から抹消する目的を有している」と非難している。
特にJANMはこの新たな指針に、第二次世界大戦中に日系アメリカ人が不当に収容されたマンザナーやミニドカのような歴史的な場所に対して行われていることに、深く懸念を抱いている。「活動を支援している連邦の機関が広く解体され、歴史の全面的な抹消を試みる動きが行われている中で、これらは、より公正なアメリカを実現する上で何の役にも立たないことを改めて強調する。これらの影響は、アメリカの国定史跡や国立公園の枠組みをはるかに超える。だからこそ、歴史の改ざんや民主主義への脅威に対し、対峙し続ける必要がある」としている。さらに「歴史は検閲や政治的イデオロギーに屈しない。歴史は正直で透明な対話と、過去が現在と未来を形作る方法を理解する継続的なコミットメントを求める。当館は、私たちのミッションを体現し続け、歴史が完全な形で、真実に基づいて伝えられ、歴史の教訓が未来に継承されるよう活動を続けていく」とバロウズ館長は発表している。
マンザナー強制収容所=(Manzanar internment camp)は、カリフォルニア州インヨー郡にあった、日系アメリカ人収容所のひとつ。正式名称は「Manzanar War Relocation Center」。現在はマンザナー国定史跡(Manzanar National Historic Site)として整備・保存されている。第二次世界対戦中の1942年2月19日にフランクリン・ルーズベルト大統領が発した大統領令9066号によって翌3月に開設された。日系2世、3世を含む日本人約11万2000人が強制立ち退きさせられた。マンザナー収容所は日系アメリカ人が収容された10か所の収容所の中で最もよく知られており、最大時には1万46名を収容し、収容された総数は合計で1万1070名となった。北アメリカ大陸において第2位の標高を持つホイットニー山を含むシエラネバダ山脈の麓、モハビ砂漠に設置された。建造物のほとんど全てが1940年代後半に売却・解体され、土地は1942年から所有していたロサンゼルス市水道電力局に返却された。後年に収容所問題が取り沙汰されるに伴って、国立公園局によって同地区は史跡として保存され、バラックとトイレが復元された。
全米日系人博物館=(JANM、ロサンゼルス)は、1985年リトル東京に設立。日系アメリカ人の経験を共有することによって、アメリカの民族的・文化的多様性への理解と認識を促進。日系人の強制収容の苦難から得た教訓が忘れられることのないよう、公民権の擁護を目的とする中心的な存在。
(写真)有刺鉄線の中で
第二次世界大戦中、カリフォルニア州マンザナーの日系人収容所で密かに記録写真を撮り続けた日系人写真家、宮武東洋(1895〜1979)が撮影した写真の一枚。(少年たちは、左からタカモト・ノリト、マサイチ・アルバート、サンスイ・ヒサシ)。(Photo :Toyo Miyatake Studio/Three Boys Behind Barbed Wire, Manzanar Internment Camp)
日系強制収容を謝罪
1988年レーガン大統領

ロナルド・レーガン大統領は、第二次世界大戦中の日系アメリカ人強制収容について、1988年に「人種差別による重大な過ちだった」と公式に謝罪し、生存者への補償を定めた「1988年市民自由法」に署名した。この法律は、強制収容された日系人1人あたり2万ドルの補償金の支払いを承認した。1988年市民自由法は、日系人に対する強制収容が人種差別によるものであり、不当であったことを認め、生存者への補償を定めたもの。この法律は、1970年代から始まった日系人による賠償金請求運動の結果成立した。運動は、日系人だけでなく、日系人以外の人々も協力して行われた。
ニューヨーク州の州都オルバニーで6月9日、日系コミュニティ代表団がNY州議会議事堂内の下院本会議場を訪問した後、NY州下院議員と意見交換を行った。また、同日夕刻には、森美樹夫在ニューヨーク日本国総領事館総領事・大使がラリー・エヴァンス在オルバニー日本国名誉領事及びロン・キムNY州下院議員(選挙区:クイーンズ)と共に、アジア太平洋島諸国系米国人(AAPI: Asian American and Pacific Islander)ヘリテージ月間を祝賀するレセプションを開催した(本紙6月21日号既報)。
このなかで佐藤貢司NY日系人会(JA)会長とフルモト・タケシJAA理事が「フレッド・コレマツ・デー」制定法案をNY州議会で採択することの重要性をアピールしている。フレッド・コレマツ記念日は 第二次世界大戦中の日系人強制収容の不当性を訴えた権利擁護活動家、フレッド・コレマツ氏(1919年〜2005年)の誕生日に当たる1月30日を2017年にニューヨーク市が記念日としたのを受け2020年、東海岸で二例目となる記念日がニュージャージー州フォート・リー区で制定され、2023年にはニュージャージー州が州全体でも記念日に制定している。