米国の台湾、沖縄、尖閣に対する曖昧戦略

 高市早苗首相は国会で、いわゆる台湾有事で、(中国が)「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、『存立危機事態』になり得る」と答弁しました。これは、日本が直接攻撃を受けていなくても、友好国が攻撃を受け、政府が存立危機事態と認定すれば、自衛隊が海外で武力行使を行えるという意味です。

 台湾を国の一部とする中国は、内政干渉として猛反発し、レアアース輸出規制、日本産水産物の輸入停止、日本への渡航制限などの強硬策を拡大させています。

 安倍晋三首相を含む歴代首相は、何が存立危機事態にあたるかを明言せぬ曖昧戦略で対応してきました。

 米国も台湾に関する曖昧戦略を取っています。トランプ大統領は、今年2月「米国は中国の台湾への武力制圧を許すのか」との質問に対し「コメントしない。その立場に自分を置きたくない」と答えました。

 11月24日に電話会談した習近平国家主席が「中国と米国は肩を並べてファシズムと軍国主義と戦った」と述べたのに対し、大統領は「中国にとっての台湾問題の重要性を米国は理解している」と述べています。

 米国の尖閣諸島に対する対応も二面的です。日本の施政権は認める一方で、日本の領有権(主権)は認めないという使い分けで、中国にも一定の配慮を示しています。

 米国と沖縄との特別な関係はペリー提督に始まります。彼は1853年に黒船で日本開国を迫る前に沖縄に立ち寄り、琉球王国と国交を樹立しました。第2次大戦後も1972年の日本への返還までは、米国が施政権を保持していました。

 これらの米国の台湾、沖縄、尖閣などに対する曖昧戦略は、外交の知恵である一方で、中国や朝鮮半島の分断構造を支えてきた側面もあります。

 他方、トランプ現政権は米国本土への攻撃能力を持つロシア、中国、北朝鮮との関係維持も重視しているように見え、注視が必要です。万が一台湾を巡り米国と中国が戦う場合、米軍基地は台湾にはなく日本にあるという事実も重要です。

 今回の日中対立を、東アジアの分断構造に代わる新体制作りへの好機としたいものです。鉄と石炭を9か国が共同管理して独仏両国が「戦争できない仕組み」として設立された欧州石炭鉄鋼共同体が今日のEUの原点です。東アジアでも「戦争できない仕組み」を目指す時です。独仏両国ともに譲り合った歴史に学びながら。

 ふじた・ゆきひさ=オックスフォード大政治国際問題学部客員研究フェロー(英国在)。慶大卒。国際MRA(現IC)や難民を助ける会等の和解・人道援助活動を経て国会議員、財務副大臣、民主党国際局長、等を歴任。現在、国際IC日本協会長、岐阜女子大特別客員教授も兼任。